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第零章 砕けた氷
第十話 一日の終わり
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私たちは、お昼ご飯を食べたあと、4人でかなりの時間喋ってしまった。別に会話の内容は大したことはない。
個々の近況報告や近くにある武器屋が新しく仕入れた武器の評判、Aクラスの恋愛の噂……まぁ、本当になんてことはない会話だ。
……それでも、いつ死ぬか分からない私たちにとっては、こんなどうでもいい会話をしている楽しい時間が、とても大事なのだ。
「じゃ、また明日」
「また明日、校舎で会いましょう」
そう言って、恵梨香と胡桃の2人は去って行った。
「氷華、楽しかった?」
「はい、2人とも面白い人でした。……またいつか、こんな風に4人で楽しめる時間があれば良いですね」
「……そうね。きっと、いや、多分、またこんな時間を過ごせるわ」
私は、きっと過ごせる、とは言い切れなかった。
この世界は理不尽だ。
どれだけ、善行を積もうと……一切悪いことをしなくても、災害に等しい圧倒的な力が突然現れて……あっさり人間は殺されるのだ。
だから私は……言い切ることは出来なかった。
窓から外を見る。
真っ暗になりつつある……もう夕方か。
もちろん、夕焼けなんてものは見れない。
空は、いつでも分厚い雲で覆われているのだから。
「じゃ、私はあのバカが壊して行ったドアを直しとくから……あなたは部屋に入って暇つぶしでもしてて」
「分かりました」
……さて、この豪快に破壊されたドアをなんとかしよう。
もちろん、私は物理的にこれを直す手段はないので、魔術でどうにかするしかない。
「……復元」
私がそう唱えると、ドアは淡く輝きながら瞬時に壊れる前の姿に戻る。
……汎用魔術、ひょっとして戦闘よりも日常での方が使えたりする?
ま、いいや。
一応、ドアを何回か開閉したが、大丈夫そうだ。
私も、部屋の中に入る。
部屋の中を見渡す。
氷華が、机に座って必死に何かを書いていた。
近づいて、横から覗き込んでみる。
……火属性魔術の術式か。
しかもこれ、一番単純な術式"魔弾"のヤツ……この子、自分の適合属性火だったよね。
……間違いだらけね、これ。
ていうか、火属性なのに温度下げてる式あるし。
……大丈夫かしら? この子。
「ねぇ、氷華」
「……」
彼女は、魔術式を書いてるのに熱中してて気づかない。
肩を揺らしてみる。
「ひゃ、ひゃい! ……痛い……」
この子、びっくりして舌噛んじゃってるし……。
「大丈夫……?」
「だ、大丈夫です。それで、何ですか?」
「ここ、温度下がっちゃってるわよ」
私は、間違っている場所を横から指差す。
「あ、ほんとですね」
「あと、ここも……」
途中、近くのコンビニで買ってきた弁当を夕食として食べたり、シャワーを交代で浴びたりしながら、私たちは魔術式を結局21:00まで書き続けた。
「……もう消灯時間ね」
寝巻きに着替えながら、私はそう呟く。
「そうですね。今日は、ありがとうございました」
……やたら氷華は嬉しそうだ。
魔術式なんか書いたって楽しくないだろうに。
「じゃあ、電気消すから。貴女は早く上に登って」
氷華は、二段ベッドの上だから、彼女が登ってから電気を消さないと大惨事になりそうだ。
「はい、おやすみなさい。宵月先輩」
私は電気を消して、自分のベッドに潜り込む。
目を閉じる前に、スマホを開き、情報屋と書かれたアドレスに1本のダイレクトメールを送ってから眠りについた。
個々の近況報告や近くにある武器屋が新しく仕入れた武器の評判、Aクラスの恋愛の噂……まぁ、本当になんてことはない会話だ。
……それでも、いつ死ぬか分からない私たちにとっては、こんなどうでもいい会話をしている楽しい時間が、とても大事なのだ。
「じゃ、また明日」
「また明日、校舎で会いましょう」
そう言って、恵梨香と胡桃の2人は去って行った。
「氷華、楽しかった?」
「はい、2人とも面白い人でした。……またいつか、こんな風に4人で楽しめる時間があれば良いですね」
「……そうね。きっと、いや、多分、またこんな時間を過ごせるわ」
私は、きっと過ごせる、とは言い切れなかった。
この世界は理不尽だ。
どれだけ、善行を積もうと……一切悪いことをしなくても、災害に等しい圧倒的な力が突然現れて……あっさり人間は殺されるのだ。
だから私は……言い切ることは出来なかった。
窓から外を見る。
真っ暗になりつつある……もう夕方か。
もちろん、夕焼けなんてものは見れない。
空は、いつでも分厚い雲で覆われているのだから。
「じゃ、私はあのバカが壊して行ったドアを直しとくから……あなたは部屋に入って暇つぶしでもしてて」
「分かりました」
……さて、この豪快に破壊されたドアをなんとかしよう。
もちろん、私は物理的にこれを直す手段はないので、魔術でどうにかするしかない。
「……復元」
私がそう唱えると、ドアは淡く輝きながら瞬時に壊れる前の姿に戻る。
……汎用魔術、ひょっとして戦闘よりも日常での方が使えたりする?
ま、いいや。
一応、ドアを何回か開閉したが、大丈夫そうだ。
私も、部屋の中に入る。
部屋の中を見渡す。
氷華が、机に座って必死に何かを書いていた。
近づいて、横から覗き込んでみる。
……火属性魔術の術式か。
しかもこれ、一番単純な術式"魔弾"のヤツ……この子、自分の適合属性火だったよね。
……間違いだらけね、これ。
ていうか、火属性なのに温度下げてる式あるし。
……大丈夫かしら? この子。
「ねぇ、氷華」
「……」
彼女は、魔術式を書いてるのに熱中してて気づかない。
肩を揺らしてみる。
「ひゃ、ひゃい! ……痛い……」
この子、びっくりして舌噛んじゃってるし……。
「大丈夫……?」
「だ、大丈夫です。それで、何ですか?」
「ここ、温度下がっちゃってるわよ」
私は、間違っている場所を横から指差す。
「あ、ほんとですね」
「あと、ここも……」
途中、近くのコンビニで買ってきた弁当を夕食として食べたり、シャワーを交代で浴びたりしながら、私たちは魔術式を結局21:00まで書き続けた。
「……もう消灯時間ね」
寝巻きに着替えながら、私はそう呟く。
「そうですね。今日は、ありがとうございました」
……やたら氷華は嬉しそうだ。
魔術式なんか書いたって楽しくないだろうに。
「じゃあ、電気消すから。貴女は早く上に登って」
氷華は、二段ベッドの上だから、彼女が登ってから電気を消さないと大惨事になりそうだ。
「はい、おやすみなさい。宵月先輩」
私は電気を消して、自分のベッドに潜り込む。
目を閉じる前に、スマホを開き、情報屋と書かれたアドレスに1本のダイレクトメールを送ってから眠りについた。
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