最高で最悪な一夜

お別れの時間

「雪起きて!!雪!雪!ねぇ雪!」

雪が倒れ込んで30分が経過した
私はずっと呼び続けた
これでお別れなんて嫌!

「んぁぁ」
「雪!大丈夫?」
「あぁ、大丈夫だ、心配かけてすまん」
「私なら大丈夫だよ、倒れる前に言ってた『俺にはもう時間が無い』ってどういう意味?」
「簡単に言うと、消えるって事だよ」
「....消える?それは人間の姿じゃなくなるってこと...?」
「いや、違うんだ」

外はいつの間にか雨が降っていた
二人の声は雨音と重なり、静かな部屋に消えていった

「......どういう意味......?」
「死ぬって事だよ...2人で過ごす夜は今日で最後なんだ」
「え...嘘...嘘でしょ...私を1人にするの?」
「1人にはしたくない、でもね生きる事も出来ないんだ」
「なによそれ....誰が決めたの....?なんで雪が死ななきゃいけないの.....」

雪に激しい頭痛とめまいが襲った
もう少しでお別れだと雪自身、再確認した

「雪...大丈夫...?」
「大丈夫だよ、気にしないで、別れの時間が近付いてる証拠だから。お別れまであと１時間だね」
「そう....だね」
「そんなに悲しい顔しないで、またどこかで会えるよ」
「会えたらいいね」

結衣は泣くのを堪えているのか声が小さい
目には大粒の涙があった

「一緒にいなくても大好きだよ」
「私だって大好きだよ、一生忘れたりなんかしない」
「俺も忘れないよ、ありがとう結衣」
「ううん.....こちらこそありがとう....雪....」

雪の体が徐々に冷たくなっていく

「結衣大好きだ」「雪大好きだよ」

0時の鐘が鳴った。
雪が『さよなら』と言ったが鐘の音で掻き消された

---2月15日---午前0時の事---
---雪は天国に行ってしまった---

雪の体はとても冷たく、ぐったりとなっている
結衣は泣いた、人生で1番泣いた
結衣の心には複雑な思いがあった
人間の姿になり、告白された事は嬉しいが
天国に行ってしまった もう元気で愛しい雪は居ないのだ
悲しすぎる。嬉しいけど悲しい。複雑すぎるよ神様!

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その日の就寝時
冷たい雪の体をベットに移し二人で寄り添うように寝た
雪の体は当然冷たいが構わず
雪の体にハグをした
なんとなく、雪がハグを返してくれたような気がして
嬉しくなり、そのまま目を瞑り夢の中に入っていった


---短そうで長い 一夜が終わりを告げた---