あの娘はきっとヒロインじゃない

ゴン

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第一章 異世界召喚と旅立ち

016 深夜の脱出劇7 異世界にニッ〇レスはございませんので

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「それじゃあ、手を縛らせてもらいますね」

 なんとかエマさんを説得できたので、ベルトを使ってエマさんの両手を縛らせてもらうことにした。

「あの、私初めてなので、優しくしてくださいね?」

 そう言っておずおずと両手を揃えて突き出してくるエマさん、なぜか顔を赤くしている。
 ふむ、エマさんは縛られるのは初めてか、俺も女性を縛るのは初めてだ。

「ちょっとまってください!」

 田仲君がまったをかける、また変なことを言い出すんじゃないか?

「手は後ろで縛って下さい。そんな簡単に抜け出せそうな縛り方だとエマさんが疑われてしまいますから」

 確かに、こういうのはしっかりと縛っておかないと意味がないな。
 そう思い、エマさんの手を後ろにしてもらって縛りなおす。
 よし、これで簡単には抜け出せないだろう。
 縛り終えると、手が後ろにいっているエマさんは、強制的に胸を張るような姿勢になっていた。

「ふむ」

 そこに近づいてきた田仲君、下からエマさんを見上げている。

「まぁ、こんな感じでいいんじゃないですか?」

 そう言ってOKを出してきた。
 お前、今胸しか見てなかっただろ。

 エマさんには牢屋の中に入ってもらって、外から鍵を閉めたので、これでエマさんが疑われるようなことにはならないだろう。
 ちなみに二人の見張りの兵士は脱がせた服を使って縛ってある。
 そのへんに転がしてあるが、まだまだ起きる気配はない、スリープミストは結構強力な魔法だったようだ。

「それじゃあ、俺たちはこれで……エマさん、お元気で」
「エマさん、さようなら! いろいろありがとね!」

 エマさんに最後の挨拶をする。

「はい、お二人もお気をつけて、外には沢山の見張りの兵士がいると思いますが、魔術を扱える上にあれだけの強さをお持ちの貴方様なら、なんとかなるかもしれません。」

 牢屋の中でエマさんはこちらの心配をしてくれている。

「今回のことが露見して、先輩さんが召喚された勇者だと証明されれば、処刑しようとした騎士団長もきっと罰が与えらえると思います。召喚された勇者を処刑しようとしたとすれば、騎士団長の行いは王国の歴史を踏みにじるような行いです」

 なるほど、そういえば建国の祖となった初代国王は、召喚勇者という話だったからな。
 結構俺って偉いのかもしれない。

「もし、勇者様が私たち王国のことを信用できるようになったときには、もう一度お会いましょう……ご武運をお祈りしております」

 そう言って深く頭を下げるエマさん。
 俺が召喚されてから酷い扱しか受けていなかったから、この国のやつらを信用していないのも気付いていたんだろう。
 それもあったから、こんなにすんなりとこちらの言う事を聞いてくれたのかもしれない。
 本当に最後まで良い人だった。

 さて、それじゃあそろそろ出発しないといけないな。
 とりあえず、田仲君に渡そうと思って用意していたものを装備してもらおう。
 何かあったときに少しでも守備力があったほうが安心だ。

「じゃあ、田仲君。俺が持ってきた防具を装備してもらっていい? たしか戦士にするって言ってたよね」
「あ、最初のジョブですか? それなら"灰魔導士"にしました」



 は?

 灰魔導士はバリバリの後衛ジョブで、白魔導士と黒魔導士の両方の特性を中途半端に持っているジョブだ。
 ある程度高Lvになると、専用のアビリティーや魔法のおかげで専門の立ち回りが出来るようになるのだが、今の時点では劣化の白魔導士と黒魔導士のといった感じで、正直序盤ではハズレのジョブだ。
 Lv1だと回復魔法も攻撃魔法も使えない。
 プロテスだけ使えるから防御力を上げて杖で殴るしか戦う方法がないのだ……もちろん力も体力も後衛のまま。

「戦士なんて、こんなに可愛い女の子を、そんな物騒なジョブに就かせるわけにはいかないでしょう!」

 何を考えてるんですか!とプンスコ怒っている。
 まぁ、そりゃそうなんだけど……

「じゃあ、俺のこのローブを装備しとく? 結構鍛えてるから贅沢を言わないならLv20近くまで使えるくらいの装備だよ」
「むぅ~、あんまり可愛いくないけど、しょうがありませんね」

 俺が可愛い装備をしてるわけがないだろうに、そう文句を言いながら着ていたワンピースを脱ぎ始めた田仲君。

「ちょ、なんで脱いでるの!? 上から! 上から着ればいいから!」

 びっくりして声が大きくなる俺、急いで着ていたローブを脱いでから、顔を背けて手渡した。

「なぁんだ、それならそうと言ってくださいよ~、素肌に木綿のローブなんてチク〇が擦れて大変だな~とか思っちゃったじゃないですか~」

 そう言って脱いでいた服をなおしてから、上から木綿のローブを着こんでいる。

「よし! これでチ〇ビも擦れませんね♪」

 と、ニコニコ顔だ、その顔でチク〇を連呼しないでほしい。

「あとは、この靴と、軽装用の軽い盾と……守りの指輪も一応装備しておいて」
「はいはい、武器はどうします?」

 貰ったものを順番に装備していく田仲君、なかなか様になってきた。

「武器はここから出るまではやめておこう。俺の今の手持ちに後衛に向いた武器はこれだけだからね」

 そう言って、手に持っていた両手持ちの樫の杖を見せる。

「これを持つくらいなら、盾で防御に専念してほしいかな。攻撃が必要なら俺がなんとかするから」
「わかりました、じゃあ今できる装備はこんなもんでしょうか?」

 そう言って両手を広げて自分の格好を見せてくる。
 よし、ゲームと同じでサイズはぴったりになるようだ、俺の装備の使いまわしが出来ないとかなり不便になるところだったが、これなら一安心だ。

 そんなことをやっていたら、階段の上からなにか物音がする。
 交代の見張りが来たのかもしれない。

「先輩! 誰か来ちゃいますよ、どうしましょう!?」

 そう言って焦る田仲君を宥めながら説明をする

「落ち着いて、俺が今から相手から見えにくくなる魔法を唱えるから。静かにゆっくりと俺の後をついてきて。こっちから声を掛けない限りは、暗い場所にいれば大丈夫だから。いいね?」
「は、はい! わかりました、お願いします!」

 そう言って気合を入れる田仲君。
 その気合が空回りしなければいいんだけど……そう心配しながら田仲君と自分にシャドウクロスの魔法をかける。
 黒い影に包まれた格好はいかにも影の魔物といった感じだが、暗がりに移動すると、全くといって良いほど見えなくなる。

「よし、階段の入り口ですれ違おう、そのあとは急いで階段を登ってから、外につながる窓から脱出だ!」
「らじゃー!」

 作戦を確認してからゆっくりと物音を立てないように移動を開始する。
 さぁ、あとは上手くいくことを祈るのみだな。
 どうか上手くいきますように……そう祈りながら暗がりで降りてくる人を待ち構える。





「本当に、最後まで騒がしい人たちでしたね。初代勇者様、どうかあの二人の旅路をお守りください」

 そう言って、牢屋の中のエマさんも、俺たちの無事を祈ってくれているのだった。
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