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第二章 迷宮都市ロベリア
066 言う事聞かない悪い子は……
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「ちょっと、マック君……」
「危ない!」
オークが生きていることに気付いた俺は、マック君に警告しようとしたのだが、それよりも早くマイアさんがオークに向かって走り出していた。
「そいつから離れなさい!」
「え? ええ?」
突然の事態に狼狽えるマック君を、マイアさんが突き飛ばす。
「うわぁっ! な、なんだ!?」
「向こうへ行ってなさい!」
倒れていたオークは、すぐに攻撃する対象をマイアさんに切り替え、残っている左手で掴みかかってきた。
「くっ、このぉっ!」
マック君を突き飛ばしたせいで、体勢を崩してしまっていたマイアさんは、オークの手から逃れようと必死に抵抗するが、短剣ではオークの手を押し返すことは出来ず、足を掴まれ引きずり倒されてしまう。
「きゃぁ!」
オークはふらつきながらも、地面に手をついて立ち上がる。
マイアさんの足を掴んだままの左手を。
"ゴキリッ"
「あ゛あぁぁあああっっっ!!」
足の骨が折れる嫌な音がここまで聞こえてきた。
「マイアッ!」
ジグガンドさんが、マイアさんを引きずって歩き始めたオークに向かって走り出す。
「あ、ああぁっ……」
あまりの事態に混乱して立ち竦んでいるマック君に、オークは手に持ったマイアさんを叩きつけた。
"ゴッ!"
「がはっ」
「ギャァアッ」
マック君はボーリングのピンのようにはじけ飛び、壁にぶつかるとそのまま動かなくなってしまった。
「マック兄ちゃんっ! あぁ……あぁあ!」
ゴルテガ君は両手で抱いているカイヤさんと、壁の下に転がっているマック君を交互に見て、どうすればいいのかわからないといった感じで泣き出してしまった。
くそっ! 俺が、俺がなんとかしないと……カンストの俺が!!
手に持っていた盾を地面に放り投げて、リュックに刺していた杖を引き抜き構える。
しかし、杖を構えた俺の両手にエレクさんの手が添えられて、無理やり下に降ろさせられた。
「ゴルテガ君はそこから動くな! シーナ君、キミもだ!」
ゴルテガ君と俺にそう言い残して、エレクさんもオークの元へと走っていく。
こんな……こんなのアリか! オークは楽勝なモンスターじゃなかったのかよ!
さっきまでの和やかな雰囲気は一転して、殺伐とした命のやり取りの場へと一気に切り替わってしまった。
「マイア! おいっマイア! 返事をしろよ!!」
マイアさんは既に意識は無いようで、ジグガンドさんの必死の呼びかけにも答えない。
頭から血を流し、両手はダラリと力なく垂れている。
オークに捕まれている右足からは、血で染まった赤い部分と内側から突き出た骨の白い部分が、手の隙間からチラチラと見え隠れしている。
「ラウニ、早く風魔術を!」
「もうやっている! だが、まだ時間がかかるのは知っているだろう!」
「くそっ!」
ジグガンドさんは、オークに向かって、一度は盾を前に突き出した構えをとったが、すぐに盾で受け止めるとマイアさんが無事では済まないと思い直したのか、盾を放り捨てて背中のリュックを盾替わりに構えた。
エレクさんも、マイアさんを盾にするように構えたオークに攻めあぐねて、槍を構えたままオークの周りをグルグルまわって牽制をしている状態だ。
今攻撃しても、マイアさんに当たってしまいそうだ。それに、下手に刺激をして暴れられると、どうなるかわからない。
「ラウニ、まだかよ!!」
「まだだ! なんとか時間を稼げ!」
「時間を稼げったって……どうすりゃいいんだよ!」
「落ち着けジグガンド、とにかく刺激しないように牽制するしかない」
「落ち着いてなんかいられるかよ! マイアが……マイアが!」
みんなが手詰まりの状況で、次の一手を考えあぐねている中で、俺は右手でバッグからポーションを取り出して、左手で冒険の書をポケットから引っ張り出した。
「ゴルテガ君、これをお兄さんに飲ませて! お姉さんは俺が守るから!」
そう言って、ポーションの小瓶をもった手を、ゴルテガ君に向かって突き出した。
反対の手では地面に広げた冒険の書のページをめくり、ネームリストの欄を必死で探す。
くそっ! 手が……手が震えて上手く本がめくれない。
「おめぇ、こんな時になんで本なんて読んでやがるんだ! お前みたいな変なヤツにカイヤ姉ちゃんを任せられるかよ!」
ゴルテガ君が騒いでいる。
くそっ、お前らのせいでこんな事態になってるんだろうが、少しは協力してくれよ。
「おれはマック兄ちゃんにカイヤ姉ちゃんを頼まれたんだ。お前みたいなやつの前に姉ちゃんをほっぽっていくわけにはいかないんだ!」
コイツ……状況を全然理解してない。
「何言ってるんだよ、マック君は大怪我を負ってるんだよ? 早くポーションを使ってあげないと……」
「おれは兄ちゃんと姉ちゃんの言う事しか聞きたくないんだ。お前の言う事なんて聞いてやるもんか!」
くっ……ダメだ、このクソガキ、全然話が通じない。
「じゃあ、その兄ちゃんが死んでもいいっていうんだな?」
「う、それは……で、でも、兄ちゃんはこんなことじゃ死なないんだ!」
ふぅ~……、俺は深く息を吐いてなんとか血が上った頭を冷やす。
これが最後だ。これで言うことを聞かないなら、悪いがマック君は見殺しにさせてもらう。
「いいか、二度は言わないぞ……兄ちゃんを死なせたくなかったら、早くこのポーションを飲ませろ」
そう言って手に持っていたポーションを、ゴルテガに向かって転がしてやる。
これでもポーションを使わないのなら、もう知らん。
「う……お、おれ……」
ゴルテガは足元に転がってきたポーションを見て考え込んでいるが、俺はそれを無視する。
さっきから足元に広げてページをめくっていた冒険の書は、なんとかネームリストのページを開くことに成功していた。
俺はすぐに、ネームリストからマイアさんをターゲットに選択して、上級回復魔法"ハイヒール"の詠唱を始めた。
「な……なんだ? 身体が光ってる? おめぇ何をしてるんだ!」
ゴルテガが何か言っているが、俺は無視を決め込む。
詠唱を始めた俺の足元から、幾つもの光の帯と光の粒が立ち昇る。
ハイヒールなら、部位欠損もある程度は回復できる、どうか間に合ってくれ!
俺の願いが通じたのか、オークが何か行動を起こす前に、無事に数秒の詠唱時間が終了して、ハイヒールが発動した。
オークに足を握られていたマイアさんに、光の粒がキラキラと降り注ぎ……一瞬ふわりと光った後、マイアさんの怪我は完治していた。
「あ……あれ、なにこれ? オ、オーク? イヤーッ! なんなのよこれ!!」
どうやらマイアさんは、すぐに気絶から回復したようである。
さすがは有名PTの探索者だ。ずっと気を失っていられるとこちらも打てる手が減ってしまうので、とても助かる。
「マイア、気が付いたのか!」
「なんだ、今の光は?」
マイアさんの回復に喜ぶジグガンドさんと、謎の光に警戒をするエレクさん。
俺はマイアさんを助けるために、連続で魔法を使用していく。
「マテリアルシールド、プロテクション、ストーンスキン、リジェネレーション」
とにかくダメージを押さえる魔法を幾つか重ね掛けした後、徐々にHPが回復するリジェネレーションをかけた。
「な、なにこれ……体が光ってる」
俺の魔法が発動する度に身体が光るマイアさんは、とても不安そうな表情をしているのだが……そのマイアさんの足を掴んでいるオークはもっと不安そうな顔をしていた。
さっきまで死にかけていたはずの獲物が、ピカピカ光ったと思ったら元気になってしまったのだ、不安にもなるだろう。
「グゥゥッ……」
そして、ゴルテガはなぜかオークよりも、もっと慌てている。
足元に転がっていたポーションの小瓶を拾い上げて、じっと見つめて考え込んでいたのだが……
「お……おれ……マック兄ちゃんにコレ、使ってきます。ご、ごむぇんなさい……あ、あの、カイヤ姉ちゃんをよろしくお願いします!」
そう言うと、ゴルテガは抱きかかえていたカイヤさんを、ゆっくりと地面に横たえさせたあと、離れた場所に転がっているマック君に向かって走っていった。
こういう極限の状態で、初対面の人間を信じられないというのは俺だって理解できるんだけど……もう少し早く行動してほしい。
まったく……マック君、助かるといいんだけど。
「危ない!」
オークが生きていることに気付いた俺は、マック君に警告しようとしたのだが、それよりも早くマイアさんがオークに向かって走り出していた。
「そいつから離れなさい!」
「え? ええ?」
突然の事態に狼狽えるマック君を、マイアさんが突き飛ばす。
「うわぁっ! な、なんだ!?」
「向こうへ行ってなさい!」
倒れていたオークは、すぐに攻撃する対象をマイアさんに切り替え、残っている左手で掴みかかってきた。
「くっ、このぉっ!」
マック君を突き飛ばしたせいで、体勢を崩してしまっていたマイアさんは、オークの手から逃れようと必死に抵抗するが、短剣ではオークの手を押し返すことは出来ず、足を掴まれ引きずり倒されてしまう。
「きゃぁ!」
オークはふらつきながらも、地面に手をついて立ち上がる。
マイアさんの足を掴んだままの左手を。
"ゴキリッ"
「あ゛あぁぁあああっっっ!!」
足の骨が折れる嫌な音がここまで聞こえてきた。
「マイアッ!」
ジグガンドさんが、マイアさんを引きずって歩き始めたオークに向かって走り出す。
「あ、ああぁっ……」
あまりの事態に混乱して立ち竦んでいるマック君に、オークは手に持ったマイアさんを叩きつけた。
"ゴッ!"
「がはっ」
「ギャァアッ」
マック君はボーリングのピンのようにはじけ飛び、壁にぶつかるとそのまま動かなくなってしまった。
「マック兄ちゃんっ! あぁ……あぁあ!」
ゴルテガ君は両手で抱いているカイヤさんと、壁の下に転がっているマック君を交互に見て、どうすればいいのかわからないといった感じで泣き出してしまった。
くそっ! 俺が、俺がなんとかしないと……カンストの俺が!!
手に持っていた盾を地面に放り投げて、リュックに刺していた杖を引き抜き構える。
しかし、杖を構えた俺の両手にエレクさんの手が添えられて、無理やり下に降ろさせられた。
「ゴルテガ君はそこから動くな! シーナ君、キミもだ!」
ゴルテガ君と俺にそう言い残して、エレクさんもオークの元へと走っていく。
こんな……こんなのアリか! オークは楽勝なモンスターじゃなかったのかよ!
さっきまでの和やかな雰囲気は一転して、殺伐とした命のやり取りの場へと一気に切り替わってしまった。
「マイア! おいっマイア! 返事をしろよ!!」
マイアさんは既に意識は無いようで、ジグガンドさんの必死の呼びかけにも答えない。
頭から血を流し、両手はダラリと力なく垂れている。
オークに捕まれている右足からは、血で染まった赤い部分と内側から突き出た骨の白い部分が、手の隙間からチラチラと見え隠れしている。
「ラウニ、早く風魔術を!」
「もうやっている! だが、まだ時間がかかるのは知っているだろう!」
「くそっ!」
ジグガンドさんは、オークに向かって、一度は盾を前に突き出した構えをとったが、すぐに盾で受け止めるとマイアさんが無事では済まないと思い直したのか、盾を放り捨てて背中のリュックを盾替わりに構えた。
エレクさんも、マイアさんを盾にするように構えたオークに攻めあぐねて、槍を構えたままオークの周りをグルグルまわって牽制をしている状態だ。
今攻撃しても、マイアさんに当たってしまいそうだ。それに、下手に刺激をして暴れられると、どうなるかわからない。
「ラウニ、まだかよ!!」
「まだだ! なんとか時間を稼げ!」
「時間を稼げったって……どうすりゃいいんだよ!」
「落ち着けジグガンド、とにかく刺激しないように牽制するしかない」
「落ち着いてなんかいられるかよ! マイアが……マイアが!」
みんなが手詰まりの状況で、次の一手を考えあぐねている中で、俺は右手でバッグからポーションを取り出して、左手で冒険の書をポケットから引っ張り出した。
「ゴルテガ君、これをお兄さんに飲ませて! お姉さんは俺が守るから!」
そう言って、ポーションの小瓶をもった手を、ゴルテガ君に向かって突き出した。
反対の手では地面に広げた冒険の書のページをめくり、ネームリストの欄を必死で探す。
くそっ! 手が……手が震えて上手く本がめくれない。
「おめぇ、こんな時になんで本なんて読んでやがるんだ! お前みたいな変なヤツにカイヤ姉ちゃんを任せられるかよ!」
ゴルテガ君が騒いでいる。
くそっ、お前らのせいでこんな事態になってるんだろうが、少しは協力してくれよ。
「おれはマック兄ちゃんにカイヤ姉ちゃんを頼まれたんだ。お前みたいなやつの前に姉ちゃんをほっぽっていくわけにはいかないんだ!」
コイツ……状況を全然理解してない。
「何言ってるんだよ、マック君は大怪我を負ってるんだよ? 早くポーションを使ってあげないと……」
「おれは兄ちゃんと姉ちゃんの言う事しか聞きたくないんだ。お前の言う事なんて聞いてやるもんか!」
くっ……ダメだ、このクソガキ、全然話が通じない。
「じゃあ、その兄ちゃんが死んでもいいっていうんだな?」
「う、それは……で、でも、兄ちゃんはこんなことじゃ死なないんだ!」
ふぅ~……、俺は深く息を吐いてなんとか血が上った頭を冷やす。
これが最後だ。これで言うことを聞かないなら、悪いがマック君は見殺しにさせてもらう。
「いいか、二度は言わないぞ……兄ちゃんを死なせたくなかったら、早くこのポーションを飲ませろ」
そう言って手に持っていたポーションを、ゴルテガに向かって転がしてやる。
これでもポーションを使わないのなら、もう知らん。
「う……お、おれ……」
ゴルテガは足元に転がってきたポーションを見て考え込んでいるが、俺はそれを無視する。
さっきから足元に広げてページをめくっていた冒険の書は、なんとかネームリストのページを開くことに成功していた。
俺はすぐに、ネームリストからマイアさんをターゲットに選択して、上級回復魔法"ハイヒール"の詠唱を始めた。
「な……なんだ? 身体が光ってる? おめぇ何をしてるんだ!」
ゴルテガが何か言っているが、俺は無視を決め込む。
詠唱を始めた俺の足元から、幾つもの光の帯と光の粒が立ち昇る。
ハイヒールなら、部位欠損もある程度は回復できる、どうか間に合ってくれ!
俺の願いが通じたのか、オークが何か行動を起こす前に、無事に数秒の詠唱時間が終了して、ハイヒールが発動した。
オークに足を握られていたマイアさんに、光の粒がキラキラと降り注ぎ……一瞬ふわりと光った後、マイアさんの怪我は完治していた。
「あ……あれ、なにこれ? オ、オーク? イヤーッ! なんなのよこれ!!」
どうやらマイアさんは、すぐに気絶から回復したようである。
さすがは有名PTの探索者だ。ずっと気を失っていられるとこちらも打てる手が減ってしまうので、とても助かる。
「マイア、気が付いたのか!」
「なんだ、今の光は?」
マイアさんの回復に喜ぶジグガンドさんと、謎の光に警戒をするエレクさん。
俺はマイアさんを助けるために、連続で魔法を使用していく。
「マテリアルシールド、プロテクション、ストーンスキン、リジェネレーション」
とにかくダメージを押さえる魔法を幾つか重ね掛けした後、徐々にHPが回復するリジェネレーションをかけた。
「な、なにこれ……体が光ってる」
俺の魔法が発動する度に身体が光るマイアさんは、とても不安そうな表情をしているのだが……そのマイアさんの足を掴んでいるオークはもっと不安そうな顔をしていた。
さっきまで死にかけていたはずの獲物が、ピカピカ光ったと思ったら元気になってしまったのだ、不安にもなるだろう。
「グゥゥッ……」
そして、ゴルテガはなぜかオークよりも、もっと慌てている。
足元に転がっていたポーションの小瓶を拾い上げて、じっと見つめて考え込んでいたのだが……
「お……おれ……マック兄ちゃんにコレ、使ってきます。ご、ごむぇんなさい……あ、あの、カイヤ姉ちゃんをよろしくお願いします!」
そう言うと、ゴルテガは抱きかかえていたカイヤさんを、ゆっくりと地面に横たえさせたあと、離れた場所に転がっているマック君に向かって走っていった。
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