69 / 85
第二章 迷宮都市ロベリア
069 ???階層
しおりを挟む
ガイアの大穴に飛び込んだ俺は、落下傘(フォーリングアンブレラ)を使って、フワリフワリと暗闇の中をゆっくり落下していく。
しばらくすると、下の方にぼんやりと明かりが見えてきた。
あれは……地面かな?
壁に開いた穴から光が入ってきて、茶色い土の地面を明るく照らしている。
なんだ、ちゃんと地面も明りもあるじゃないか。
落ちたら誰も帰ってこないなんていうから、何があるのか身構えていたというのに、実際に来てみたらなんてことはないな。
俺は、ゆっくりと地面に降り立ち、落下傘を閉じると光りの射し込む方へと目を向けた。
20階層までの壁に備え付けられていた、青や黄色の魔道具の灯りとは違う自然な光だ。
もしかして、この穴の外は屋外なのか?
確かめるために、穴の外へと踏み出そうとした俺の背後から、かすかなうめき声が聞こえた。
"うぅ……"
何かいる!
咄嗟に、手に持っていた傘を構えて振り向くが、穴の中は暗くてよく見えない。
しばらくじっと目を凝らしていたのだが、特に動くものは見当たらない。
「もしかして……ジグガンドさんですか?」
暗闇に向かって声をかけてみる。
"……ぁぅ"
「ジグガンドさん?」
俺は魔法の鞄から、初心者七つ道具の"魔法のカンテラ"を取り出して辺りを照らす。
奥の方の壁際に倒れている人がいる!
俺は倒れている人影に走り寄り、膝をついて顔を覗き込んだ。
「ジグガンドさん! 大丈夫ですか!?」
間違いない。
全身血だらけで、ボロボロになっているが、この人は間違いなくジグガンドさんだ。
地面に血だまりが出来ている。
尋常じゃない量の血だ。
この出血量はまずいんじゃないか?
「ジグガンドさん、俺がわかりますか!?」
ダメだ、全然反応が無い。
とにかく急いで回復魔法をかけよう。
「魔法詠唱:ハイヒール!」
回復魔法が発動して、ジグガンドさんの怪我を癒していく。
念のため、容体をチェックする。
脈拍も安定しているし呼吸も穏やかだ。
今にも死にそうだった真っ青な顔に、少しずつ赤みが差してきた。
ふぅ……どうやら間に合ったみたいだな。
なんとか落ち着いたので、穴の中を見回してみる。
ジグガンドさんの近くには、斧と盾、ひしゃげてはじけ飛んだ鉄の肩当が転がっている。
他にもジグガンドさんがいつも背負っていたリュックが破けて中身をまき散らしていた。
もしかして、ポーションの小瓶の欠片だろうか?
リュックの近くには、魔法のカンテラの光に照らされて、キラキラと光るガラスの破片が周囲に散らばっている。
落下した衝撃で割れたポーションの中身が、運良くジグガンドさんに降りかかったのかもしれない……。
そうか……いくらこっちの世界の人たちが、元の世界の人間に比べて丈夫だといっても、普通の人はあの高さから落ちた時点で、死んでしまってもおかしくないのだ。
オルガの大穴の中ということで、特殊な状況ばかりを想像していたが……なるほど、落ちただけで大抵の人は死んでしまうから帰ってこれないという単純明快な理由だったのかもしれない。
さてと、とりあえずはどうにかなったかな。
今いる穴の中は、ジグガンドさんと俺以外には何もないようだし、ジグガンドさんの目が覚めるのを待つ間に、少し外を確認しておこう。
俺は、暗い穴の中から、明るい光の射し込む外へと歩き出した。
壁の穴から外に出てみると、そこは木々に囲まれた森の中だった。
「おお、やっぱり外なのか?」
よく見ると、木の隙間や根っこの下から見える岩は、苔むした白い煉瓦造りの建造物の一部の様だ。
アユタヤ遺跡みたいな感じだろうか?
樹木に浸食された古代遺跡……すごいな、ロマンを感じる。
振り向いて俺が今出てきた穴を確認すると、その穴は見上げるような大樹のウロだった。
この大樹の中に転移魔法が仕込んであったのだろうか?
外側からこの木を登っても、みんなのところへは戻れそうにない。
空を見上げると、太陽は既に夕方と言っていいくらいの高さまで落ちてきており、石造りの壁とその上に根を張り、遺跡をまさに飲み込まんとする大樹達を照らしていた。
ダンジョンの外の時間と同じくらいか?
冒険の書を使って現在時刻を確認してみると、表示された時計の時刻は夕方の5時を過ぎていた。
こちらの世界に来てから、特に冒険の書の時計の設定を変更したりはしていないのだが、どういうわけか、そのまま違和感なく日本時間のままで時計は使用できている。
6時になったらいつも、リコットちゃんが迷宮の出口にある素材買取所まで迎えに来るのだが……今日は流石に帰れないだろうな。
あの子のことだから、きっととても心配してしまうんだろう。
はぁ……居候の分際で、また彼女に迷惑をかけてしまう。
なんとかして早く帰らなくては。
しばらくすると、下の方にぼんやりと明かりが見えてきた。
あれは……地面かな?
壁に開いた穴から光が入ってきて、茶色い土の地面を明るく照らしている。
なんだ、ちゃんと地面も明りもあるじゃないか。
落ちたら誰も帰ってこないなんていうから、何があるのか身構えていたというのに、実際に来てみたらなんてことはないな。
俺は、ゆっくりと地面に降り立ち、落下傘を閉じると光りの射し込む方へと目を向けた。
20階層までの壁に備え付けられていた、青や黄色の魔道具の灯りとは違う自然な光だ。
もしかして、この穴の外は屋外なのか?
確かめるために、穴の外へと踏み出そうとした俺の背後から、かすかなうめき声が聞こえた。
"うぅ……"
何かいる!
咄嗟に、手に持っていた傘を構えて振り向くが、穴の中は暗くてよく見えない。
しばらくじっと目を凝らしていたのだが、特に動くものは見当たらない。
「もしかして……ジグガンドさんですか?」
暗闇に向かって声をかけてみる。
"……ぁぅ"
「ジグガンドさん?」
俺は魔法の鞄から、初心者七つ道具の"魔法のカンテラ"を取り出して辺りを照らす。
奥の方の壁際に倒れている人がいる!
俺は倒れている人影に走り寄り、膝をついて顔を覗き込んだ。
「ジグガンドさん! 大丈夫ですか!?」
間違いない。
全身血だらけで、ボロボロになっているが、この人は間違いなくジグガンドさんだ。
地面に血だまりが出来ている。
尋常じゃない量の血だ。
この出血量はまずいんじゃないか?
「ジグガンドさん、俺がわかりますか!?」
ダメだ、全然反応が無い。
とにかく急いで回復魔法をかけよう。
「魔法詠唱:ハイヒール!」
回復魔法が発動して、ジグガンドさんの怪我を癒していく。
念のため、容体をチェックする。
脈拍も安定しているし呼吸も穏やかだ。
今にも死にそうだった真っ青な顔に、少しずつ赤みが差してきた。
ふぅ……どうやら間に合ったみたいだな。
なんとか落ち着いたので、穴の中を見回してみる。
ジグガンドさんの近くには、斧と盾、ひしゃげてはじけ飛んだ鉄の肩当が転がっている。
他にもジグガンドさんがいつも背負っていたリュックが破けて中身をまき散らしていた。
もしかして、ポーションの小瓶の欠片だろうか?
リュックの近くには、魔法のカンテラの光に照らされて、キラキラと光るガラスの破片が周囲に散らばっている。
落下した衝撃で割れたポーションの中身が、運良くジグガンドさんに降りかかったのかもしれない……。
そうか……いくらこっちの世界の人たちが、元の世界の人間に比べて丈夫だといっても、普通の人はあの高さから落ちた時点で、死んでしまってもおかしくないのだ。
オルガの大穴の中ということで、特殊な状況ばかりを想像していたが……なるほど、落ちただけで大抵の人は死んでしまうから帰ってこれないという単純明快な理由だったのかもしれない。
さてと、とりあえずはどうにかなったかな。
今いる穴の中は、ジグガンドさんと俺以外には何もないようだし、ジグガンドさんの目が覚めるのを待つ間に、少し外を確認しておこう。
俺は、暗い穴の中から、明るい光の射し込む外へと歩き出した。
壁の穴から外に出てみると、そこは木々に囲まれた森の中だった。
「おお、やっぱり外なのか?」
よく見ると、木の隙間や根っこの下から見える岩は、苔むした白い煉瓦造りの建造物の一部の様だ。
アユタヤ遺跡みたいな感じだろうか?
樹木に浸食された古代遺跡……すごいな、ロマンを感じる。
振り向いて俺が今出てきた穴を確認すると、その穴は見上げるような大樹のウロだった。
この大樹の中に転移魔法が仕込んであったのだろうか?
外側からこの木を登っても、みんなのところへは戻れそうにない。
空を見上げると、太陽は既に夕方と言っていいくらいの高さまで落ちてきており、石造りの壁とその上に根を張り、遺跡をまさに飲み込まんとする大樹達を照らしていた。
ダンジョンの外の時間と同じくらいか?
冒険の書を使って現在時刻を確認してみると、表示された時計の時刻は夕方の5時を過ぎていた。
こちらの世界に来てから、特に冒険の書の時計の設定を変更したりはしていないのだが、どういうわけか、そのまま違和感なく日本時間のままで時計は使用できている。
6時になったらいつも、リコットちゃんが迷宮の出口にある素材買取所まで迎えに来るのだが……今日は流石に帰れないだろうな。
あの子のことだから、きっととても心配してしまうんだろう。
はぁ……居候の分際で、また彼女に迷惑をかけてしまう。
なんとかして早く帰らなくては。
0
あなたにおすすめの小説
魔物に嫌われる「レベル0」の魔物使い。命懸けで仔犬を助けたら―実は神域クラスしかテイムできない規格外でした
たつき
ファンタジー
魔物使いでありながらスライム一匹従えられないカイルは、3年間尽くしたギルドを「無能」として追放される。 同世代のエリートたちに「魔物避けの道具」として危険な遺跡に連れ出され、最後は森の主(ヌシ)を前に囮として見捨てられた。
死を覚悟したカイルが崩落した壁の先で見つけたのは、今にも息絶えそうな一匹の白い仔犬。 「自分と同じように、理不尽に見捨てられたこの子だけは助けたい」 自分の命を顧みず、カイルが全魔力を込めて「テイム」を試みた瞬間、眠っていた真の才能が目覚める。
おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう
お餅ミトコンドリア
ファンタジー
パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。
だが、全くの無名。
彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。
若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。
弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。
独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。
が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
絶世の美少女が家を訪れた。
彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです!
何卒宜しくお願いいたします!)
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
『召喚ニートの異世界草原記』
KAORUwithAI
ファンタジー
ゲーム三昧の毎日を送る元ニート、佐々木二郎。
ある夜、三度目のゲームオーバーで眠りに落ちた彼が目を覚ますと、そこは見たこともない広大な草原だった。
剣と魔法が当たり前に存在する世界。だが二郎には、そのどちらの才能もない。
――代わりに与えられていたのは、**「自分が見た・聞いた・触れたことのあるものなら“召喚”できる」**という不思議な能力だった。
面倒なことはしたくない、楽をして生きたい。
そんな彼が、偶然出会ったのは――痩せた辺境・アセトン村でひとり生きる少女、レン。
「逃げて!」と叫ぶ彼女を前に、逃げようとした二郎の足は動かなかった。
昔の記憶が疼く。いじめられていたあの日、助けを求める自分を誰も救ってくれなかったあの光景。
……だから、今度は俺が――。
現代の知恵と召喚の力を武器に、ただの元ニートが異世界を駆け抜ける。
少女との出会いが、二郎を“召喚者”へと変えていく。
引きこもりの俺が、異世界で誰かを救う物語が始まる。
※こんな物も召喚して欲しいなって
言うのがあればリクエストして下さい。
出せるか分かりませんがやってみます。
【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~
ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。
王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。
15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。
国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。
これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。
異世界ビルメン~清掃スキルで召喚された俺、役立たずと蔑まれ投獄されたが、実は光の女神の使徒でした~
松永 恭
ファンタジー
三十三歳のビルメン、白石恭真(しらいし きょうま)。
異世界に召喚されたが、与えられたスキルは「清掃」。
「役立たず」と蔑まれ、牢獄に放り込まれる。
だがモップひと振りで汚れも瘴気も消す“浄化スキル”は規格外。
牢獄を光で満たした結果、強制釈放されることに。
やがて彼は知らされる。
その力は偶然ではなく、光の女神に選ばれし“使徒”の証だと――。
金髪エルフやクセ者たちと繰り広げる、
戦闘より掃除が多い異世界ライフ。
──これは、汚れと戦いながら世界を救う、
笑えて、ときにシリアスなおじさん清掃員の奮闘記である。
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活
シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる