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第二章 迷宮都市ロベリア
072 迷宮の中層 森の遺跡
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あの後しばらくは、色々と探索者の常識を教えてもらったりしていたのだが、とりあえずその日は樹洞の中で過ごして、朝を待ってから外の探索へと乗り出そうということになった。
夜の間は交互に睡眠を取り、起きているほうが見張りと火の番を担当する。
見張りの間、俺はずっと冒険の書を弄っていたので、なんとか眠気に耐えることが出来たが、ジグガンドさんは暇をつぶす手段が無いにもかかわらず、数時間の担当時間を一人でしっかりと勤め上げていた。
さすがは熟練の探索者、新米の俺とはこういうところで差がでてくるなぁ……なんて感心していたのだが、ジグガンドさんから見た俺もしっかりしている風に見えたらしい。「探索者は粗雑で乱暴な人間が多いのに、シーナは大層な読書家だな。やっぱり魔術師はそうじゃねぇといけねえな!」と感心されてしまった。
眠気覚ましにネットの動画配信サイトで昔のアニメを見ていたので、本を開いてはいたものの、俺がやっていたことは読書ですらなかったのだが……まぁ、あえて訂正することもあるまい。ジグガンドさんには、俺が読書家だと思っていてもらおう。
なんと言っても、俺は自称"魔法が使える大魔導士"だからな。
外が完全に明るくなったら、俺は魔法の鞄からドラゴンシチューを取り出して、朝食として提供した。
ジグガンドさんの荷物は、オルガの大穴から落ちてきたときに、グチャグチャになってしまっていたので、昨日の夕食も俺が提供したドラゴンステーキだったのだが……。
そのご飯がよっぽど美味しかったのか、食べている間のジグガンドさんは、目を見開いて、美味いうまいと泣きながら食べていた。
「生まれてから今まで食べた物の中で、一番美味かったぜ!」というのはジグガンドさんの談だ。
だが、いい大人がご飯を食べながら泣くというのは、見ていて怖いものがあるので、ちょっと勘弁してほしい。
そんな料理漫画顔負けのリアクションが飛び出す楽しい朝食を終えた後、焚火の後始末、装備の点検や整備をしっかりと済ませてから、俺たちは外の探索へと出かけた。
出口を塞いでいた木の枝を取り払い、外へと出て辺りを見渡す。
そこには、昨日と変わらない、森に浸食された石造りの遺跡が広がっていた。
「ジグガンドさん、ここがどこかわかりますか?」
隣に立って周囲を見渡していたジグガンドさんは、難しい顔をして黙り込んだままだ。
「ジグガンドさん?」
「おお、わりい。ここがどこかだったな……多分だが、ここは迷宮の中だと思うぜ」
なるほど、ダンジョン内だけど外みたいな不思議空間ってことか。
「そうですか、どのへんの階層なんでしょうかね?」
「迷宮内で森の中の遺跡って言えば中層、20~29階層だろうな……」
お~、さすがはベテラン探索者! 迷宮内の情報もバッチリじゃないか。
思ったよりも無茶な階層に飛ばされてはいなかったし、これは結構早く脱出できるんじゃないか?
そう楽観的に考えている俺の横で、ジグガンドさんは相変わらずの難しい顔だ。
「だが、中層のどのあたりかはちょっとわかんねぇな……なぁシーナ、正直なところ俺一人じゃあ20階層以降のモンスターは荷が重い、一匹相手だってかなり苦戦をすると思う」
ジグガンドさんは周囲を警戒しながら言葉を続ける。
「わりいが、お前の魔法頼みになっちまうと思う。どうだ、いけそうか?」
そう言ってジグガンドさんはこちらをうかがっている。
どうだろうか? あの19階層で戦ったオーク程度なら、俺に攻撃はまず通らないだろうが……う~む。
「19階層で戦ってたオーク程度なら、何匹いても大丈夫だと思うんですけど……20層以降ってどれくらい強くなるもんなんですか?」
「なっ……マジかよ」
そう答えた俺の返事に、固まったまま答えてくれないジグガンドさん。
「ジグガンドさん?」
「お、おお……どうだったかな? 30階層までなら行ったことあるんだが、20階層後半の戦闘ではあまり役に立ってなかったからなぁ……でも階層が変わったからと言って、急にとんでもなく強くなるってことはないはずだぜ? モンスターの特徴が変わって苦戦することはあるが……それも対処法さえ知ってれば大丈夫だしな」
「なるほど、ジグガンドさんが30階層まで行ったことがあるってことは、そのモンスターへの対処法もわかるってことでいいんですよね?」
「おう! 任せてくれ、それくらいは役に立って見せるぜ!」
ニッカリ笑って、力こぶをつくったジグガンドさん。
なかなかにマッチョだ。
「それじゃあ、しばらくは適当に歩いて道しるべの青い照明を探すか? 斥候の仕事は苦手なんだが、なんとかやってみるわ」
「いえ、斥候の仕事は俺がやりますんで、ジグガンドさんは後ろからついてきてください」
俺の斥候やります宣言を聞いて、いぶかし気な表情をするジグガンドさん。
「おい、シーナ……お前は魔術師じゃなかったのかよ? そんなこともできんのか?」
「たぶん大丈夫だと思います。ロベリアに来るまでは、そういうこともやってましたから。でも、ジグガンドさんも一応警戒はしておいてくださいね」
「おお、そりゃあいいけどよ……」
「それじゃあ、いきますよ。スキル発動:索敵!」
スキル"索敵"を発動させる。
100m以内の生物をマップに表示させる斥候のスキルだ。
冒険の書のMAPのページをを開いて、索敵結果を確認するが……ふむ、どうやら100m以内にはモンスターはいないようだな。
「近くにモンスターはいないみたいですね、先に進みましょう」
「お、おお……そうか」
それからしばらくは、スキルで敵の有無を確認しながら進む。
運よくモンスターと鉢合わせにはならず……というか、まったくモンスターは見つからず、順調に進めているのだが、いまだにガイドの青い松明も見つからない。
きっとこの階層も結構な広さがあるんだろう。19階層の正規ルート以外の場所に行った時も、かなりの広さがあるようだったし……先は長そうだ。
一人で考え事をしながらスタスタと無警戒に進む俺の後を、ジグガンドさんはなんとも不安そうな顔をしながらついてきていたのだが、とうとう我慢できなくなって声をかけてきた。
「お、おいシーナ、本当にそんなんでモンスターの位置がわかるのか? すげぇ無警戒に進んでるけどよ」
「えっと、たぶん大丈夫だと思いますよ、これでモンスターを見落としたことないですし」
「本当かよ。いや、別にお前を疑ってるわけじゃあねえんだけど……」
ジグガンドさんは言葉ではそう言いつつも、イマイチ納得できていないようだ。
不満が顔に出ている。
しょうがないので少し休憩にして、索敵のスキルを簡単に説明してみたのだが、ジグガンドさんはあまり理解できていないようだった。
う~む、どうやらこの世界にはスキルなるものは存在していないようだな。
ジグガンドさんに詳しく聞いてみたのだが、この世界でスキルといえば超常現象を発生させるようなものではなく、普通の人間の技術とのことなのだそうだ。
剣が上手く振れる、弓矢の扱いが上手い、動物の足跡から後を追跡できる等々……現実世界の技能に近いものをばかりらしい。
まぁ普通に考えれば、それが当たり前なんだろう。
ソード&ウィザードリィのスキルは、魔法が使えない職業の特殊能力的な扱いのものが多く、その効果は魔法と比べても遜色無いようなものばかりだ。
半径100m以内の生き物の位置がわかるというスキルだって、魔法としかいえないような効果だしな。
それに、こちらの世界の魔術は、使う人によってそれぞれ効果が全然違うようで、明確に分類して名前をつけてはいないそうだし……迷宮なんてものがあるのに、このへんはゲームっぽさがあまりないんだなぁ。
そんな考察をしながらも探索を続けていると、ひとつだけ大きな反応が索敵に引っかかった。
「あ、何かいますね。大きい反応が一つ……この先100mくらいです」
「お、おう……やっと出てきたか」
俺の索敵の情報に、ジグガンドさんが表情を引き締める。
「それじゃあ、俺が盾役としてモンスターを食い止めて、その間にお前が魔術……いや、魔法の詠唱を完成させて、それを撃ち込むって作戦で問題ないか?」
そういって盾を突き出し、斧を構えたジグガンドさん。
気合入ってるところ申し訳ないのだが、もっと安全にいかせてもらおう。
「あ~えっと、それは俺の作戦が失敗して、モンスターが突っ込んできた場合の作戦にしておきましょう。今回は他に安全な作戦があるので、そっちでいったほうがいいかと思うんですけど……どうでしょう?」
「あ、ああ、いい作戦があるってんなら、それでいいけどよ……どんな内容なんだ?」
よし、俺の考えた作戦を伝えよう。
これなら、複雑でもないし連携も必要なので大丈夫だろう。
「俺が使える魔法に、姿を隠す魔法っていうのがあるんですけど、まずはそれを使って近くに忍び寄ります」
「おおっ、そんな便利な魔法があるのかよ! 今度俺にもかけてくれよ!」
なにいってんだこのおっさんは、ダメに決まってるだろう。
顔が悪用する気満々の顔をしているじゃあないか!
俺はジグガンドさんの発言を無視して話を進める。
「え~っと、それで魔法の射程内に入ったら、ちょっと強めの攻撃魔法を撃ちこんでみます。多分一発で倒せると思うんですけど……まぁ、そのへんはやってみないと分からないんで、出たとこ勝負ですね」
「そうか……それで、何か俺にやれることはねぇのか?」
先輩探索者としての矜持だろうか? ジグガンドさんはこの状況でも、何か仕事をこなそうとしている。
だがジグガンドさんがモンスターに捕まったりして、マイアさんの二の舞になっては困る。
申し訳ないが、危ないことは俺一人でやらせてもらおう。
「いえ、ジグガンドさんは迷宮から脱出するまでは、自分の身の安全を守ることだけに徹してください。僕もどこまで戦えるのか未知数のところはありますから」
「そうか……わかった。それじゃあシーナ、わりぃがよろしく頼むぜ」
「はい、任せてください!」
そんな作戦とも呼べない様な作戦を立てた俺たちは、ゆっくりと反応があったポイントへと近づいていく。
シーナたちが今日これまで歩いてきた道には、生い茂る木々と建物の残骸が埋め尽くしていたのだが、この先にはそれがばっつりと途切れて無くなっている空間があった。
どうやらモンスターのいる付近は、円形の広場になっているようだ。
そして、その広場の真ん中には、昨日見たオークを一回り大きくして頭に角を生やしたような、巨大モンスターが座り込んでいた。
その体は毛むくじゃらのオークとは違い、上半身は毛が生えておらずムキムキのボディービルダーのような逞しい肉体をしている。
そして腕や足には金属製の防具を装備しており、傍らには大人の男程もありそうな巨大な斧を携えていた。
その姿はまるで、闘技場で対戦相手を待つグラディエーターのようだ。
顔が牛で身体が人間のモンスター、ミノタウロスってやつか?
ここはアイツの巣か何かなのだろうか?
「あいつ何してるんですかね? ジグガンドさん、どう思います?」
物陰に隠れて一緒に様子を窺っていたジグガンドさんに声をかけたのだが、なぜか返事が返ってこない。
どうしたのかと様子を窺ってみると、ジグガンドさんは脂汗を大量にかきながらガタガタと震えており、顔色は真っ青だった。
どうやらこちらの呼びかけは聞こえていないようだ。
「ちょ、ちょっと、どうかしたんですか?」
「ま、まさか……ここは……そんな!」
「ジグガンドさん?」
広場のモンスターを注視したまま、震えて返事をしないジグガンドさんだったが、急に立ち上がってミノタウロスがいる広場とは違う方向へと走り出した。
「え? ど、どこに行くんですか? 待って下さいよ、ちょっとぉ!」
ジグガンドさんを追いかけていくと、少し他の遺跡跡とは毛色が違う建物が見つかり、その建物の前のすこし開けた場所にジグガンドさんは立ちすくんでいた。
どうしたというのだろうか? あいつのことをなにか知っているのだろうか?
いや、なにか知っているのは間違いないだろうけど……。
ゆっくりとジグガンドさんに近付いていくと、彼の前には土が盛られた小さな山とそこに立てられた木の棒が5本。
そして、その木の棒の先には金属のネックレスの様なモノが掛けられている。
あれは……探索者の認識票か?
「ここは……ここには、俺の昔の仲間が眠っている」
背後に立っている俺のことを、振り返りもせずにジグガンドさんは語り始めた。
「俺たちのクラン"黒鉄の戦斧"が行った、3年前のあの作戦で死んじまったやつらなんだよ」
そう言ったジグガンドさんの体はもう震えてはいなかったが、聞こえてくる声はとても悲しそうだった。
「あの作戦って?」
うすうす想像はついているが、確認せねばなるまい。
俺はジグガンドさんの背中に、そう質問を投げかけた。
「転移石を手に入れるための作戦……ボス討伐作戦だ」
ジグガンドさんはこちらを振り向いて、俺の顔を真っすぐと見てくる。
その目にいつものおちゃらけた雰囲気は微塵もなかった。
「ここは30階層のボス部屋で間違いない。この部屋の扉は、ボスを倒さなければ決して内側からは開かないんだ。つまりは……俺たちはボスのいるこの部屋に閉じ込められちまってるってことだな」
なるほど……これでは、オルガの大穴に落ちた人は帰ってこれないはずだ。
これまで誰一人として帰ってくることがなかったという一種の謎の様なモノが、一気に腑に落ちるものになった。
さてと、これからどうすべきなのか……やはりボスバトル突入か?
夜の間は交互に睡眠を取り、起きているほうが見張りと火の番を担当する。
見張りの間、俺はずっと冒険の書を弄っていたので、なんとか眠気に耐えることが出来たが、ジグガンドさんは暇をつぶす手段が無いにもかかわらず、数時間の担当時間を一人でしっかりと勤め上げていた。
さすがは熟練の探索者、新米の俺とはこういうところで差がでてくるなぁ……なんて感心していたのだが、ジグガンドさんから見た俺もしっかりしている風に見えたらしい。「探索者は粗雑で乱暴な人間が多いのに、シーナは大層な読書家だな。やっぱり魔術師はそうじゃねぇといけねえな!」と感心されてしまった。
眠気覚ましにネットの動画配信サイトで昔のアニメを見ていたので、本を開いてはいたものの、俺がやっていたことは読書ですらなかったのだが……まぁ、あえて訂正することもあるまい。ジグガンドさんには、俺が読書家だと思っていてもらおう。
なんと言っても、俺は自称"魔法が使える大魔導士"だからな。
外が完全に明るくなったら、俺は魔法の鞄からドラゴンシチューを取り出して、朝食として提供した。
ジグガンドさんの荷物は、オルガの大穴から落ちてきたときに、グチャグチャになってしまっていたので、昨日の夕食も俺が提供したドラゴンステーキだったのだが……。
そのご飯がよっぽど美味しかったのか、食べている間のジグガンドさんは、目を見開いて、美味いうまいと泣きながら食べていた。
「生まれてから今まで食べた物の中で、一番美味かったぜ!」というのはジグガンドさんの談だ。
だが、いい大人がご飯を食べながら泣くというのは、見ていて怖いものがあるので、ちょっと勘弁してほしい。
そんな料理漫画顔負けのリアクションが飛び出す楽しい朝食を終えた後、焚火の後始末、装備の点検や整備をしっかりと済ませてから、俺たちは外の探索へと出かけた。
出口を塞いでいた木の枝を取り払い、外へと出て辺りを見渡す。
そこには、昨日と変わらない、森に浸食された石造りの遺跡が広がっていた。
「ジグガンドさん、ここがどこかわかりますか?」
隣に立って周囲を見渡していたジグガンドさんは、難しい顔をして黙り込んだままだ。
「ジグガンドさん?」
「おお、わりい。ここがどこかだったな……多分だが、ここは迷宮の中だと思うぜ」
なるほど、ダンジョン内だけど外みたいな不思議空間ってことか。
「そうですか、どのへんの階層なんでしょうかね?」
「迷宮内で森の中の遺跡って言えば中層、20~29階層だろうな……」
お~、さすがはベテラン探索者! 迷宮内の情報もバッチリじゃないか。
思ったよりも無茶な階層に飛ばされてはいなかったし、これは結構早く脱出できるんじゃないか?
そう楽観的に考えている俺の横で、ジグガンドさんは相変わらずの難しい顔だ。
「だが、中層のどのあたりかはちょっとわかんねぇな……なぁシーナ、正直なところ俺一人じゃあ20階層以降のモンスターは荷が重い、一匹相手だってかなり苦戦をすると思う」
ジグガンドさんは周囲を警戒しながら言葉を続ける。
「わりいが、お前の魔法頼みになっちまうと思う。どうだ、いけそうか?」
そう言ってジグガンドさんはこちらをうかがっている。
どうだろうか? あの19階層で戦ったオーク程度なら、俺に攻撃はまず通らないだろうが……う~む。
「19階層で戦ってたオーク程度なら、何匹いても大丈夫だと思うんですけど……20層以降ってどれくらい強くなるもんなんですか?」
「なっ……マジかよ」
そう答えた俺の返事に、固まったまま答えてくれないジグガンドさん。
「ジグガンドさん?」
「お、おお……どうだったかな? 30階層までなら行ったことあるんだが、20階層後半の戦闘ではあまり役に立ってなかったからなぁ……でも階層が変わったからと言って、急にとんでもなく強くなるってことはないはずだぜ? モンスターの特徴が変わって苦戦することはあるが……それも対処法さえ知ってれば大丈夫だしな」
「なるほど、ジグガンドさんが30階層まで行ったことがあるってことは、そのモンスターへの対処法もわかるってことでいいんですよね?」
「おう! 任せてくれ、それくらいは役に立って見せるぜ!」
ニッカリ笑って、力こぶをつくったジグガンドさん。
なかなかにマッチョだ。
「それじゃあ、しばらくは適当に歩いて道しるべの青い照明を探すか? 斥候の仕事は苦手なんだが、なんとかやってみるわ」
「いえ、斥候の仕事は俺がやりますんで、ジグガンドさんは後ろからついてきてください」
俺の斥候やります宣言を聞いて、いぶかし気な表情をするジグガンドさん。
「おい、シーナ……お前は魔術師じゃなかったのかよ? そんなこともできんのか?」
「たぶん大丈夫だと思います。ロベリアに来るまでは、そういうこともやってましたから。でも、ジグガンドさんも一応警戒はしておいてくださいね」
「おお、そりゃあいいけどよ……」
「それじゃあ、いきますよ。スキル発動:索敵!」
スキル"索敵"を発動させる。
100m以内の生物をマップに表示させる斥候のスキルだ。
冒険の書のMAPのページをを開いて、索敵結果を確認するが……ふむ、どうやら100m以内にはモンスターはいないようだな。
「近くにモンスターはいないみたいですね、先に進みましょう」
「お、おお……そうか」
それからしばらくは、スキルで敵の有無を確認しながら進む。
運よくモンスターと鉢合わせにはならず……というか、まったくモンスターは見つからず、順調に進めているのだが、いまだにガイドの青い松明も見つからない。
きっとこの階層も結構な広さがあるんだろう。19階層の正規ルート以外の場所に行った時も、かなりの広さがあるようだったし……先は長そうだ。
一人で考え事をしながらスタスタと無警戒に進む俺の後を、ジグガンドさんはなんとも不安そうな顔をしながらついてきていたのだが、とうとう我慢できなくなって声をかけてきた。
「お、おいシーナ、本当にそんなんでモンスターの位置がわかるのか? すげぇ無警戒に進んでるけどよ」
「えっと、たぶん大丈夫だと思いますよ、これでモンスターを見落としたことないですし」
「本当かよ。いや、別にお前を疑ってるわけじゃあねえんだけど……」
ジグガンドさんは言葉ではそう言いつつも、イマイチ納得できていないようだ。
不満が顔に出ている。
しょうがないので少し休憩にして、索敵のスキルを簡単に説明してみたのだが、ジグガンドさんはあまり理解できていないようだった。
う~む、どうやらこの世界にはスキルなるものは存在していないようだな。
ジグガンドさんに詳しく聞いてみたのだが、この世界でスキルといえば超常現象を発生させるようなものではなく、普通の人間の技術とのことなのだそうだ。
剣が上手く振れる、弓矢の扱いが上手い、動物の足跡から後を追跡できる等々……現実世界の技能に近いものをばかりらしい。
まぁ普通に考えれば、それが当たり前なんだろう。
ソード&ウィザードリィのスキルは、魔法が使えない職業の特殊能力的な扱いのものが多く、その効果は魔法と比べても遜色無いようなものばかりだ。
半径100m以内の生き物の位置がわかるというスキルだって、魔法としかいえないような効果だしな。
それに、こちらの世界の魔術は、使う人によってそれぞれ効果が全然違うようで、明確に分類して名前をつけてはいないそうだし……迷宮なんてものがあるのに、このへんはゲームっぽさがあまりないんだなぁ。
そんな考察をしながらも探索を続けていると、ひとつだけ大きな反応が索敵に引っかかった。
「あ、何かいますね。大きい反応が一つ……この先100mくらいです」
「お、おう……やっと出てきたか」
俺の索敵の情報に、ジグガンドさんが表情を引き締める。
「それじゃあ、俺が盾役としてモンスターを食い止めて、その間にお前が魔術……いや、魔法の詠唱を完成させて、それを撃ち込むって作戦で問題ないか?」
そういって盾を突き出し、斧を構えたジグガンドさん。
気合入ってるところ申し訳ないのだが、もっと安全にいかせてもらおう。
「あ~えっと、それは俺の作戦が失敗して、モンスターが突っ込んできた場合の作戦にしておきましょう。今回は他に安全な作戦があるので、そっちでいったほうがいいかと思うんですけど……どうでしょう?」
「あ、ああ、いい作戦があるってんなら、それでいいけどよ……どんな内容なんだ?」
よし、俺の考えた作戦を伝えよう。
これなら、複雑でもないし連携も必要なので大丈夫だろう。
「俺が使える魔法に、姿を隠す魔法っていうのがあるんですけど、まずはそれを使って近くに忍び寄ります」
「おおっ、そんな便利な魔法があるのかよ! 今度俺にもかけてくれよ!」
なにいってんだこのおっさんは、ダメに決まってるだろう。
顔が悪用する気満々の顔をしているじゃあないか!
俺はジグガンドさんの発言を無視して話を進める。
「え~っと、それで魔法の射程内に入ったら、ちょっと強めの攻撃魔法を撃ちこんでみます。多分一発で倒せると思うんですけど……まぁ、そのへんはやってみないと分からないんで、出たとこ勝負ですね」
「そうか……それで、何か俺にやれることはねぇのか?」
先輩探索者としての矜持だろうか? ジグガンドさんはこの状況でも、何か仕事をこなそうとしている。
だがジグガンドさんがモンスターに捕まったりして、マイアさんの二の舞になっては困る。
申し訳ないが、危ないことは俺一人でやらせてもらおう。
「いえ、ジグガンドさんは迷宮から脱出するまでは、自分の身の安全を守ることだけに徹してください。僕もどこまで戦えるのか未知数のところはありますから」
「そうか……わかった。それじゃあシーナ、わりぃがよろしく頼むぜ」
「はい、任せてください!」
そんな作戦とも呼べない様な作戦を立てた俺たちは、ゆっくりと反応があったポイントへと近づいていく。
シーナたちが今日これまで歩いてきた道には、生い茂る木々と建物の残骸が埋め尽くしていたのだが、この先にはそれがばっつりと途切れて無くなっている空間があった。
どうやらモンスターのいる付近は、円形の広場になっているようだ。
そして、その広場の真ん中には、昨日見たオークを一回り大きくして頭に角を生やしたような、巨大モンスターが座り込んでいた。
その体は毛むくじゃらのオークとは違い、上半身は毛が生えておらずムキムキのボディービルダーのような逞しい肉体をしている。
そして腕や足には金属製の防具を装備しており、傍らには大人の男程もありそうな巨大な斧を携えていた。
その姿はまるで、闘技場で対戦相手を待つグラディエーターのようだ。
顔が牛で身体が人間のモンスター、ミノタウロスってやつか?
ここはアイツの巣か何かなのだろうか?
「あいつ何してるんですかね? ジグガンドさん、どう思います?」
物陰に隠れて一緒に様子を窺っていたジグガンドさんに声をかけたのだが、なぜか返事が返ってこない。
どうしたのかと様子を窺ってみると、ジグガンドさんは脂汗を大量にかきながらガタガタと震えており、顔色は真っ青だった。
どうやらこちらの呼びかけは聞こえていないようだ。
「ちょ、ちょっと、どうかしたんですか?」
「ま、まさか……ここは……そんな!」
「ジグガンドさん?」
広場のモンスターを注視したまま、震えて返事をしないジグガンドさんだったが、急に立ち上がってミノタウロスがいる広場とは違う方向へと走り出した。
「え? ど、どこに行くんですか? 待って下さいよ、ちょっとぉ!」
ジグガンドさんを追いかけていくと、少し他の遺跡跡とは毛色が違う建物が見つかり、その建物の前のすこし開けた場所にジグガンドさんは立ちすくんでいた。
どうしたというのだろうか? あいつのことをなにか知っているのだろうか?
いや、なにか知っているのは間違いないだろうけど……。
ゆっくりとジグガンドさんに近付いていくと、彼の前には土が盛られた小さな山とそこに立てられた木の棒が5本。
そして、その木の棒の先には金属のネックレスの様なモノが掛けられている。
あれは……探索者の認識票か?
「ここは……ここには、俺の昔の仲間が眠っている」
背後に立っている俺のことを、振り返りもせずにジグガンドさんは語り始めた。
「俺たちのクラン"黒鉄の戦斧"が行った、3年前のあの作戦で死んじまったやつらなんだよ」
そう言ったジグガンドさんの体はもう震えてはいなかったが、聞こえてくる声はとても悲しそうだった。
「あの作戦って?」
うすうす想像はついているが、確認せねばなるまい。
俺はジグガンドさんの背中に、そう質問を投げかけた。
「転移石を手に入れるための作戦……ボス討伐作戦だ」
ジグガンドさんはこちらを振り向いて、俺の顔を真っすぐと見てくる。
その目にいつものおちゃらけた雰囲気は微塵もなかった。
「ここは30階層のボス部屋で間違いない。この部屋の扉は、ボスを倒さなければ決して内側からは開かないんだ。つまりは……俺たちはボスのいるこの部屋に閉じ込められちまってるってことだな」
なるほど……これでは、オルガの大穴に落ちた人は帰ってこれないはずだ。
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異世界ビルメン~清掃スキルで召喚された俺、役立たずと蔑まれ投獄されたが、実は光の女神の使徒でした~
松永 恭
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三十三歳のビルメン、白石恭真(しらいし きょうま)。
異世界に召喚されたが、与えられたスキルは「清掃」。
「役立たず」と蔑まれ、牢獄に放り込まれる。
だがモップひと振りで汚れも瘴気も消す“浄化スキル”は規格外。
牢獄を光で満たした結果、強制釈放されることに。
やがて彼は知らされる。
その力は偶然ではなく、光の女神に選ばれし“使徒”の証だと――。
金髪エルフやクセ者たちと繰り広げる、
戦闘より掃除が多い異世界ライフ。
──これは、汚れと戦いながら世界を救う、
笑えて、ときにシリアスなおじさん清掃員の奮闘記である。
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
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16歳になったばかりの高校2年の主人公。
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【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活
シマセイ
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大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!
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