蒼誓(そうせい)の騎士は転生者を離さない ― 異世界転生BL/騎士×転生者 ―

遊羽(ゆう)

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第8話

触れてはいけない線を、越える夜

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夜が、深くなる。

王城おうじょう私室ししつは、灯りを落とすと輪郭りんかくだけを残して闇に沈んだ。
寝台に並んで横になりながら、レオは自分の鼓動が、やけに大きく聞こえることに気づいていた。

隣に、カイルがいる。
それだけで、眠れるはずがない。

「……起きているな?」

低い声が、闇の中で響く。

「……はい。」

否定する意味もない。
沈黙のまま、空気が張りつめる。

「刻印が…」

カイルが続ける。

「……落ち着かない?」

その言葉通り、胸元が熱い。
蒼い鼓動が、内側から主張してくる。

「俺もだ…」

短く、苦い息。

「触れなければ、しずまらない気がする。」

その“触れる”が、どこまでを指すのか。
聞かなくても分かってしまう。

「……それでも…」

レオは、ゆっくりと口を開いた。

「一線は、越えないって……」

「分かっている。」

即答だった。
だが、その声は限界をはらんでいる。

「分かっているが……」

寝返りを打つ音。
次の瞬間、視界が近づいた。

暗闇の中、蒼い瞳が、至近距離でこちらをとらえている。

「今夜は、越えない“代わりに”」

低くささやかれる。

「確認させろ。」

「……何を…」

返事の代わりに、指先が顎に触れた。
力はないのに、逃げられない。

「お前が、俺をこばまないこと。」

呼吸が、触れ合う。
近すぎて、思考が溶ける。

「……こばみません…」

言葉にした瞬間、カイルの瞳が揺れた。

「……レオ…」

名を呼ばれ、胸が締めつけられる。

ゆっくりと、距離が縮まる。
唇が触れる直前で、一度、止まった。

確認するような、ためらい。

レオは、そっと目を閉じた。

次の瞬間、
触れたのは――熱を含んだ、静かなキスだった。

深くはない。
だが、逃げ道のない、確かな接触。

「……っ」

息が漏れると、すぐに離れる。

「今夜は、これだけだ。」

自分に言い聞かせるような声。

「これ以上は……」

言葉が途切れ、代わりに、強く抱きしめられた。

腕の中。
心音が、はっきりと伝わってくる。

「……苦しいです」

小さく言うと、わずかに腕の力が緩む。

「すまない。」

だが、離れない。

「欲しい…」

低く、正直な声。

「だが…壊したくない……」

その言葉が、胸に沁みた。

刻印の熱が、ゆっくりと引いていく。
まるで、今夜はここまでだと理解したかのように。

しばらくして、カイルは額をレオの額に軽く触れさせた。

「……次は」

それ以上は、言わなかった。

だが、その“次”が何を意味するのか。
分からないふりは、もうできない。

同じ寝台、同じ体温。
触れてはいけない線を、確かに一度、越えた夜。

レオは知っている。
もう――戻れない場所に、2人は立っている。
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