13 / 51
第12話
誓約の余韻、朝に残るもの
しおりを挟む
蒼い光が、完全に静まったあとも。
レオはしばらく、動けずにいた。
胸元の刻印は、もう暴れるような熱を持っていない。
それなのに、体の奥が、じんわりと温かいまま残っている。
(……終わった、はずなのに…)
誓約は、確かに結ばれた。
それ以上の何かをしたわけではない。
それでも――空気が、違う。
「……大丈夫か?」
低い声が、すぐ近くから聞こえた。
顔を上げると、カイルがこちらを見下ろしている。
その視線は、これまでと同じようでいて、決定的に違った。
「はい……」
短く答えると、そっと額に手が触れられる。
「刻印は安定している。無理はしていないな。」
確認するような声音。
騎士としての冷静さと、個人的な気遣いが混じっている。
「……不思議な感じです…」
正直な言葉が、口をついた。
「体はここにあるのに、どこか別の場所と、繋がったみたいで……」
カイルは、わずかに目を細めた。
「正しい。」
短く、断言する。
「誓約とは、そういうものだ。お前は今、俺の“内側”にいる。」
その言い方に、胸がきゅっと縮む。
「……それ、逃げ場ないやつですよね?」
冗談めかして言うと、カイルは小さく息を吐いた。
「逃がすつもりは、ない。」
即答。
だが、その声は、柔らかい。
「ただし…」
続く言葉を待つと、視線が真っ直ぐに重なる。
「お前の意思は、常に尊重する。誓約は、支配ではない。」
それが、何よりの安心だった。
夜は、そのまま静かに更けていった。
抱き寄せられたまま、互いの体温を確かめるだけの時間。
触れ合っているのに、どこか慎重で。
だが、その慎重さすら、甘い。
やがて、意識がゆっくりと沈んでいく。
次に目を覚ましたとき、窓の外は白み始めていた。
(……朝だ)
隣を見ると、やはりカイルがいる。
眠っているはずなのに、気配が微動だにしない。
「……起きてます?」
小さく声をかけると、すぐに返事があった。
「起きている。」
「お前が目を覚ます前からな。」
「え?」
「誓約直後は、そうなる。」
淡々とした説明。
「感覚が、研ぎ澄まされる。」
「特に――」
そこで一度、言葉が切れる。
「誓約相手に対しては…」
なるほど、と妙に納得してしまう。
「……過保護ですね。」
そう言うと、今度は否定されなかった。
「自覚はある。だが……後悔はない。」
朝の光の中で見る蒼い瞳は、昨夜よりも落ち着いている。
それなのに、視線の奥にある熱は、確かに強まっていた。
「今日から…」
静かに告げられる。
「お前は、俺の誓約相手として扱われる。公にも、私的にもだ。」
レオは、ゆっくりと息を吸った。
「……世界が、変わった感じがします…」
「変わった。」
カイルは、即座に肯定した。
「だが、お前自身は変わらない。選ばれたという事実が、加わっただけだ。」
その言葉が、胸に落ちる。
異世界に来てから、流されるように生きてきた自分が。
今は、誰かの「選択」になっている。
それは、重くて――
同時に、驚くほど温かい。
「……ちゃんと、ついていけるかな…」
不安が滲むと、カイルの手が、自然に指を絡めてきた。
「置いていかない。」
短く、確かに。
「俺の誓約は、一方通行じゃない。」
朝の光が、2人を照らす。
昨夜の蒼い光は、もうない。
だが、その代わりに――
逃げ場のない、確かな繋がりが、そこにあった。
誓約の余韻を残したまま、世界は、何事もなかったように動き出す。
けれどレオは知っている。
もう、自分は1人ではない。
そしてこの騎士は、
これから先、ますます手放さなくなる。
それを思いながら、
レオは、そっと目を閉じた。
新しい日常の始まりを、受け入れるために。
レオはしばらく、動けずにいた。
胸元の刻印は、もう暴れるような熱を持っていない。
それなのに、体の奥が、じんわりと温かいまま残っている。
(……終わった、はずなのに…)
誓約は、確かに結ばれた。
それ以上の何かをしたわけではない。
それでも――空気が、違う。
「……大丈夫か?」
低い声が、すぐ近くから聞こえた。
顔を上げると、カイルがこちらを見下ろしている。
その視線は、これまでと同じようでいて、決定的に違った。
「はい……」
短く答えると、そっと額に手が触れられる。
「刻印は安定している。無理はしていないな。」
確認するような声音。
騎士としての冷静さと、個人的な気遣いが混じっている。
「……不思議な感じです…」
正直な言葉が、口をついた。
「体はここにあるのに、どこか別の場所と、繋がったみたいで……」
カイルは、わずかに目を細めた。
「正しい。」
短く、断言する。
「誓約とは、そういうものだ。お前は今、俺の“内側”にいる。」
その言い方に、胸がきゅっと縮む。
「……それ、逃げ場ないやつですよね?」
冗談めかして言うと、カイルは小さく息を吐いた。
「逃がすつもりは、ない。」
即答。
だが、その声は、柔らかい。
「ただし…」
続く言葉を待つと、視線が真っ直ぐに重なる。
「お前の意思は、常に尊重する。誓約は、支配ではない。」
それが、何よりの安心だった。
夜は、そのまま静かに更けていった。
抱き寄せられたまま、互いの体温を確かめるだけの時間。
触れ合っているのに、どこか慎重で。
だが、その慎重さすら、甘い。
やがて、意識がゆっくりと沈んでいく。
次に目を覚ましたとき、窓の外は白み始めていた。
(……朝だ)
隣を見ると、やはりカイルがいる。
眠っているはずなのに、気配が微動だにしない。
「……起きてます?」
小さく声をかけると、すぐに返事があった。
「起きている。」
「お前が目を覚ます前からな。」
「え?」
「誓約直後は、そうなる。」
淡々とした説明。
「感覚が、研ぎ澄まされる。」
「特に――」
そこで一度、言葉が切れる。
「誓約相手に対しては…」
なるほど、と妙に納得してしまう。
「……過保護ですね。」
そう言うと、今度は否定されなかった。
「自覚はある。だが……後悔はない。」
朝の光の中で見る蒼い瞳は、昨夜よりも落ち着いている。
それなのに、視線の奥にある熱は、確かに強まっていた。
「今日から…」
静かに告げられる。
「お前は、俺の誓約相手として扱われる。公にも、私的にもだ。」
レオは、ゆっくりと息を吸った。
「……世界が、変わった感じがします…」
「変わった。」
カイルは、即座に肯定した。
「だが、お前自身は変わらない。選ばれたという事実が、加わっただけだ。」
その言葉が、胸に落ちる。
異世界に来てから、流されるように生きてきた自分が。
今は、誰かの「選択」になっている。
それは、重くて――
同時に、驚くほど温かい。
「……ちゃんと、ついていけるかな…」
不安が滲むと、カイルの手が、自然に指を絡めてきた。
「置いていかない。」
短く、確かに。
「俺の誓約は、一方通行じゃない。」
朝の光が、2人を照らす。
昨夜の蒼い光は、もうない。
だが、その代わりに――
逃げ場のない、確かな繋がりが、そこにあった。
誓約の余韻を残したまま、世界は、何事もなかったように動き出す。
けれどレオは知っている。
もう、自分は1人ではない。
そしてこの騎士は、
これから先、ますます手放さなくなる。
それを思いながら、
レオは、そっと目を閉じた。
新しい日常の始まりを、受け入れるために。
12
あなたにおすすめの小説
大学一軍イケメンにいちご狩りに誘われた陰キャの俺、なぜかいちごじゃなくて俺が喰われたんだが(?)
子犬一 はぁて
BL
大学一軍イケメン×大学九軍陰キャ
喰われるなんて聞いてないんだが(?)
俺はただ、
いちご狩りに誘われただけだが。
なのに──
誘ってきた大学一軍イケメンの海皇(21)に
なぜか俺が捕まって食われる展開に?
ちょっと待てい。
意味がわからないんだが!
いちご狩りから始まる
ケンカップルいちゃらぶBL
※大人描写のある話はタイトルに『※』あり
氷の檻に閉じ込められた月~兄上のすべては、私のもの~
春野ふぶき
BL
『兄上は私のものだ。魂も、肉体も。永遠に―—』
アーヴェント侯爵家の長男ライカは、妾腹として正妻に虐げられ続けてきた。
唯一の救いは、次期当主を目される異母弟カイエンの存在。
美しく聡明で、氷の騎士と呼ばれる彼だけは、常にライカの味方だった。
だが、その愛情は兄を守るものではなく、深く歪んだ執着だった。
母を排除し、兄を囲い込み、逃げれば鎖で捕らえる。
そしてついに、ライカの心身は限界に追い詰められていく。
——カイエンが下す「最後の選択」とは。
ふたりが辿る結末は、幸福か、それとも狂気の果てか。
異世界転移して美形になったら危険な男とハジメテしちゃいました
ノルジャン
BL
俺はおっさん神に異世界に転移させてもらった。異世界で「イケメンでモテて勝ち組の人生」が送りたい!という願いを叶えてもらったはずなのだけれど……。これってちゃんと叶えて貰えてるのか?美形になったけど男にしかモテないし、勝ち組人生って結局どんなん?めちゃくちゃ危険な香りのする男にバーでナンパされて、ついていっちゃってころっと惚れちゃう俺の話。危険な男×美形(元平凡)※ムーンライトノベルズにも掲載
みなしご白虎が獣人異世界でしあわせになるまで
キザキ ケイ
BL
親を亡くしたアルビノの小さなトラは、異世界へ渡った────……
気がつくと知らない場所にいた真っ白な子トラのタビトは、子ライオンのレグルスと出会い、彼が「獣人」であることを知る。
獣人はケモノとヒト両方の姿を持っていて、でも獣人は恐ろしい人間とは違うらしい。
故郷に帰りたいけれど、方法が分からず途方に暮れるタビトは、レグルスとふれあい、傷ついた心を癒やされながら共に成長していく。
しかし、珍しい見た目のタビトを狙うものが現れて────?
イケメンダブルセンターとアンチ>ファンな平凡な俺
スノウマン(ユッキー)
BL
アイドルグループ【オーバーウェルミング】は圧倒的な歌唱力の深山影月、圧倒的なパフォーマンス力の漣陽太、そして圧倒的な平凡力な俺間桐真緒の3人で結成されている。
大人気の二人と違いアンチしかいない俺だが、メンバーからもファンからも愛される日が果たしてくるのか!?
異世界転移してΩになった俺(アラフォーリーマン)、庇護欲高めα騎士に身も心も溶かされる
ヨドミ
BL
もし生まれ変わったら、俺は思う存分甘やかされたい――。
アラフォーリーマン(社畜)である福沢裕介は、通勤途中、事故により異世界へ転移してしまう。
異世界ローリア王国皇太子の花嫁として召喚されたが、転移して早々、【災厄のΩ】と告げられ殺されそうになる。
【災厄のΩ】、それは複数のαを番にすることができるΩのことだった――。
αがハーレムを築くのが常識とされる異世界では、【災厄のΩ】は忌むべき存在。
負の烙印を押された裕介は、間一髪、銀髪のα騎士ジェイドに助けられ、彼の庇護のもと、騎士団施設で居候することに。
「αがΩを守るのは当然だ」とジェイドは裕介の世話を焼くようになって――。
庇護欲高め騎士(α)と甘やかされたいけどプライドが邪魔をして素直になれない中年リーマン(Ω)のすれ違いラブファンタジー。
※Rシーンには♡マークをつけます。
平凡高校生の俺にイケメンアイドルが365回告白してくる理由
スノウマン(ユッキー)
BL
高校三年生の橘颯真はイケメンアイドル星宮光に毎日欠かさず告白されている。男同士とのこともあり、毎回断る颯真だが、一年という時間が彼らの関係を少しずつ変えていく。
どうして星宮は颯真に毎日告白するのか、そして彼らの恋の行方は?
転移先で辺境伯の跡継ぎとなる予定の第四王子様に愛される
Hazuki
BL
五歳で父親が無くなり、七歳の時新しい父親が出来た。
中1の雨の日熱を出した。
義父は大工なので雨の日はほぼ休み、パートに行く母の代わりに俺の看病をしてくれた。
それだけなら良かったのだが、義父は俺を犯した、何日も。
晴れた日にやっと解放された俺は散歩に出掛けた。
連日の性交で身体は疲れていたようで道を渡っているときにふらつき、車に轢かれて、、、。
目覚めたら豪華な部屋!?
異世界転移して森に倒れていた俺を助けてくれた次期辺境伯の第四王子に愛される、そんな話、にする予定。
⚠️最初から義父に犯されます。
嫌な方はお戻りくださいませ。
久しぶりに書きました。
続きはぼちぼち書いていきます。
不定期更新で、すみません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる