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第16話
奪えぬ誓約に、牙を立てる者
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違和感は、はっきりと形を持ち始めていた。
王城の中庭。
午後の訓練が一段落し、騎士たちが散っていく中で、レオは胸元に走る微かな痛みに足を止めた。
(……今の、なに…?)
刻印が、ほんの一瞬――
「警戒」を告げるように脈打った。
「レオ。」
即座に、カイルの声が飛ぶ。
「今、何か感じたか?」
「……はい。」
否定する理由はなかった。
「怖い、というより……嫌な視線、みたいな…」
カイルの表情が、明確に硬くなる。
「やはり、始まったか…」
「始まった?」
問い返す前に、周囲の空気が変わった。
中庭の入口。
見慣れない法衣の一団が、静かに歩み寄ってくる。
宗教組織――
それも、誓約研究を専門とする古派。
(……あ、これ、完全にアウトなやつだ)
直感が告げる。
先頭に立つ老齢の男が、深く一礼した。
「騎士団長殿、そして――誓約相手殿。」
最後の言葉で、はっきりとレオを見た。
「我々は、“祝福”を携えて参りました。」
「祝福?」
カイルの声は、氷のように冷たい。
「頼んだ覚えはない。」
老齢の男は、穏やかに微笑んだ。
「国家級誓約が成立したと聞けば、確認に来るのは当然でしょう。特に……」
視線が、刻印へと向けられる。
「完全同調の刻印は、歴史上、例が少ない。」
その瞬間、刻印が、明確に拒絶の反応を示した。
(……触るな)
感情が、直接流れ込んでくる。
「下がれ。」
カイルが1歩前に出る。
「それ以上、視線を向けるな。誓約相手は、研究対象ではない。」
だが、老齢の男は引かなかった。
「奪うつもりはありません。ただ……“確かめたい”だけです。」
その言葉に、レオの中で、何かが静かに切り替わった。
1歩、前に出る。
「……確かめて、どうするんですか?」
自分でも驚くほど、声が落ち着いていた。
「安定していなければ?問題があると判断したら?」
老齢の男の瞳が、わずかに細まる。
「場合によっては、誓約の“再調整”を…」
その瞬間。
殺気が、走った。
「それ以上、言うな。」
カイルの声が、地を震わせる。
「誓約は、完成している。再調整などという概念は存在しない。」
だが、レオは気づいてしまった。
彼らは、壊す気はない。
奪えないから、形を変えようとしている。
レオは、静かに息を吸った。
「……誓約は」
自分の胸に、手を当てる。
「物でも、力でもありません。」
刻印が、穏やかに応じる。
「俺が選んで、この人が選んだものです。外から測れるものじゃない。」
一瞬、場が静まり返った。
老齢の男は、ゆっくりと息を吐く。
「……なるほど」
「噂以上に、意志が強い。」
それは、評価の言葉だった。
「だからこそ…」
最後に、はっきりと言う。
「狙われる。」
その言葉を残し、一団は去っていった。
しばらくして。
「……出過ぎた真似をした」
カイルが低く言う。
「いや…」
レオは首を振った。
「言わなきゃ、奪われると思いました。」
その瞬間、強く、腕を掴まれる。
だが、それは怒りではない。
「……守るつもりだった。」
「だが…」
蒼い瞳が、真っ直ぐに射抜く。
「お前は、もう、守られるだけの存在じゃないな。」
刻印が、静かに共鳴した。
対等。
それが、はっきりと形になる。
「誓約相手として。」
カイルは、ゆっくりと言う。
「共に、戦う覚悟は…あるか?」
レオは、迷わなかった。
「あります。奪われる気は、ないので。」
その答えに、カイルはわずかに笑った。
「なら、世界を敵に回してもいい。」
誓約は、守られるものではない。
守り合うものだ。
そしてその夜、2人は確信する。
この誓約を巡る戦いは、
もう始まっているのだと。
王城の中庭。
午後の訓練が一段落し、騎士たちが散っていく中で、レオは胸元に走る微かな痛みに足を止めた。
(……今の、なに…?)
刻印が、ほんの一瞬――
「警戒」を告げるように脈打った。
「レオ。」
即座に、カイルの声が飛ぶ。
「今、何か感じたか?」
「……はい。」
否定する理由はなかった。
「怖い、というより……嫌な視線、みたいな…」
カイルの表情が、明確に硬くなる。
「やはり、始まったか…」
「始まった?」
問い返す前に、周囲の空気が変わった。
中庭の入口。
見慣れない法衣の一団が、静かに歩み寄ってくる。
宗教組織――
それも、誓約研究を専門とする古派。
(……あ、これ、完全にアウトなやつだ)
直感が告げる。
先頭に立つ老齢の男が、深く一礼した。
「騎士団長殿、そして――誓約相手殿。」
最後の言葉で、はっきりとレオを見た。
「我々は、“祝福”を携えて参りました。」
「祝福?」
カイルの声は、氷のように冷たい。
「頼んだ覚えはない。」
老齢の男は、穏やかに微笑んだ。
「国家級誓約が成立したと聞けば、確認に来るのは当然でしょう。特に……」
視線が、刻印へと向けられる。
「完全同調の刻印は、歴史上、例が少ない。」
その瞬間、刻印が、明確に拒絶の反応を示した。
(……触るな)
感情が、直接流れ込んでくる。
「下がれ。」
カイルが1歩前に出る。
「それ以上、視線を向けるな。誓約相手は、研究対象ではない。」
だが、老齢の男は引かなかった。
「奪うつもりはありません。ただ……“確かめたい”だけです。」
その言葉に、レオの中で、何かが静かに切り替わった。
1歩、前に出る。
「……確かめて、どうするんですか?」
自分でも驚くほど、声が落ち着いていた。
「安定していなければ?問題があると判断したら?」
老齢の男の瞳が、わずかに細まる。
「場合によっては、誓約の“再調整”を…」
その瞬間。
殺気が、走った。
「それ以上、言うな。」
カイルの声が、地を震わせる。
「誓約は、完成している。再調整などという概念は存在しない。」
だが、レオは気づいてしまった。
彼らは、壊す気はない。
奪えないから、形を変えようとしている。
レオは、静かに息を吸った。
「……誓約は」
自分の胸に、手を当てる。
「物でも、力でもありません。」
刻印が、穏やかに応じる。
「俺が選んで、この人が選んだものです。外から測れるものじゃない。」
一瞬、場が静まり返った。
老齢の男は、ゆっくりと息を吐く。
「……なるほど」
「噂以上に、意志が強い。」
それは、評価の言葉だった。
「だからこそ…」
最後に、はっきりと言う。
「狙われる。」
その言葉を残し、一団は去っていった。
しばらくして。
「……出過ぎた真似をした」
カイルが低く言う。
「いや…」
レオは首を振った。
「言わなきゃ、奪われると思いました。」
その瞬間、強く、腕を掴まれる。
だが、それは怒りではない。
「……守るつもりだった。」
「だが…」
蒼い瞳が、真っ直ぐに射抜く。
「お前は、もう、守られるだけの存在じゃないな。」
刻印が、静かに共鳴した。
対等。
それが、はっきりと形になる。
「誓約相手として。」
カイルは、ゆっくりと言う。
「共に、戦う覚悟は…あるか?」
レオは、迷わなかった。
「あります。奪われる気は、ないので。」
その答えに、カイルはわずかに笑った。
「なら、世界を敵に回してもいい。」
誓約は、守られるものではない。
守り合うものだ。
そしてその夜、2人は確信する。
この誓約を巡る戦いは、
もう始まっているのだと。
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