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第17話
偽りの祝福、分断の刃
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夜の王城は、昼とはまるで別の顔を持つ。
静寂は安らぎではなく、むしろ何かが忍び寄る前触れのようだった。
レオは、与えられた私室で1人、窓辺に立っていた。
誓約が公になって以降、警護は倍増し、自由は確実に狭められている。
(……守られてる、んだよな…?)
そう思おうとするたび、胸の奥が微かに疼いた。
カイルは、今夜も戻らない。
誓約に関する緊急会議だと言っていた。
そのときだった。
――コン、と。
扉を叩く音。
「レオ様…」
女の声。
柔らかく、落ち着いた声音。
「聖庁より参りました。夜分に失礼いたします。」
胸の刻印が、僅かにざわめく。
(……聖庁?)
昼間の一団とは違う。
だが、“同じ匂い”がする。
扉を開けると、そこに立っていたのは、
白金の髪を持つ若い女司祭だった。
年は、レオとさほど変わらない。
「お1人で?」
その一言に、刻印がはっきりと反応した。
(……狙いは、分断…)
「用件は?」
警戒を隠さずに問う。
女司祭は、わずかに目を伏せ、静かに言った。
「祝福です。国家級誓約に対し、正式な“聖なる承認”を…」
(来たな……)
「必要ありません。」
即答すると、女司祭は微笑んだ。
「そう言われる方が多いのです。ですが…」
1歩、距離を詰める。
「誓約は、安定していなければ、双方を蝕みます。特に……」
視線が、刻印に落ちる。
「転生者の魂は、脆い。」
その瞬間、レオの中で、はっきりと怒りが立ち上がった。
「……俺を、分かった気になるな。」
声が低くなる。
女司祭は、驚いたように目を見開いた。
「あなたは、守られている。騎士団長に。彼がいなければ、あなたは……」
そこまでだった。
胸が、熱を持つ。
刻印が、はっきりと光った。
(……あ)
初めてだ。
カイルがいないのに、誓約が自律的に反応している。
「やめろ。」
レオは、はっきりと言った。
「その言葉、この誓約を否定してる。」
空気が、歪む。
女司祭が、息を詰める。
「な……何を…」
「誓約は…」
1歩、踏み出す。
「俺だけのものでも、あの人だけのものでもない。2人で在るって決めた、“関係そのもの”だ。」
刻印が、強く脈打つ。
それは攻撃ではない。
拒絶だ。
女司祭の足元に、見えない壁が生まれたように、動けなくなる。
「……これは…」
「祝福じゃない。」
レオは、静かに言い切る。
「“奪うための準備”だ。」
女司祭の表情が、崩れた。
「……やはり」
「完全同調…」
次の瞬間。
部屋の扉が、勢いよく開く。
「レオ!」
カイルだった。
視線が、即座に女司祭へ向く。
「下がれ。」
「誓約相手に、単独接触する許可は出していない。」
女司祭は、悔しそうに歯を噛みしめ、
深く一礼して退いた。
扉が閉まり、ようやく2人きりになる。
「……無事か?」
カイルが、レオの肩に手を置く。
その瞬間、誓約が安堵のように静まった。
「……使えた……」
レオは、呆然と呟く。
「誓約の力」
カイルの目が、わずかに見開かれる。
「自覚したか?」
「はい。」
「でも、分かりました。」
顔を上げる。
「狙われてるのは、俺じゃない。この関係、そのものだ。」
カイルは、しばらく黙っていたが、
やがて、低く言った。
「……すまない。1人にした。」
レオは、首を振った。
「大丈夫です。守られっぱなしじゃ、誓約は完成しない。」
一瞬の沈黙。
それから、カイルは強くレオを抱き寄せた。
「2度と、独りにしない。誓約にかけて。」
その言葉に、刻印が静かに輝いた。
偽りの祝福は、退けられた。
だが同時に、敵は確信したはずだ。
――この誓約は、
――奪えない。だから、壊すしかない。
次に来るのは、
もっと露骨で、もっと残酷な手段。
それを、2人はまだ知らない。
静寂は安らぎではなく、むしろ何かが忍び寄る前触れのようだった。
レオは、与えられた私室で1人、窓辺に立っていた。
誓約が公になって以降、警護は倍増し、自由は確実に狭められている。
(……守られてる、んだよな…?)
そう思おうとするたび、胸の奥が微かに疼いた。
カイルは、今夜も戻らない。
誓約に関する緊急会議だと言っていた。
そのときだった。
――コン、と。
扉を叩く音。
「レオ様…」
女の声。
柔らかく、落ち着いた声音。
「聖庁より参りました。夜分に失礼いたします。」
胸の刻印が、僅かにざわめく。
(……聖庁?)
昼間の一団とは違う。
だが、“同じ匂い”がする。
扉を開けると、そこに立っていたのは、
白金の髪を持つ若い女司祭だった。
年は、レオとさほど変わらない。
「お1人で?」
その一言に、刻印がはっきりと反応した。
(……狙いは、分断…)
「用件は?」
警戒を隠さずに問う。
女司祭は、わずかに目を伏せ、静かに言った。
「祝福です。国家級誓約に対し、正式な“聖なる承認”を…」
(来たな……)
「必要ありません。」
即答すると、女司祭は微笑んだ。
「そう言われる方が多いのです。ですが…」
1歩、距離を詰める。
「誓約は、安定していなければ、双方を蝕みます。特に……」
視線が、刻印に落ちる。
「転生者の魂は、脆い。」
その瞬間、レオの中で、はっきりと怒りが立ち上がった。
「……俺を、分かった気になるな。」
声が低くなる。
女司祭は、驚いたように目を見開いた。
「あなたは、守られている。騎士団長に。彼がいなければ、あなたは……」
そこまでだった。
胸が、熱を持つ。
刻印が、はっきりと光った。
(……あ)
初めてだ。
カイルがいないのに、誓約が自律的に反応している。
「やめろ。」
レオは、はっきりと言った。
「その言葉、この誓約を否定してる。」
空気が、歪む。
女司祭が、息を詰める。
「な……何を…」
「誓約は…」
1歩、踏み出す。
「俺だけのものでも、あの人だけのものでもない。2人で在るって決めた、“関係そのもの”だ。」
刻印が、強く脈打つ。
それは攻撃ではない。
拒絶だ。
女司祭の足元に、見えない壁が生まれたように、動けなくなる。
「……これは…」
「祝福じゃない。」
レオは、静かに言い切る。
「“奪うための準備”だ。」
女司祭の表情が、崩れた。
「……やはり」
「完全同調…」
次の瞬間。
部屋の扉が、勢いよく開く。
「レオ!」
カイルだった。
視線が、即座に女司祭へ向く。
「下がれ。」
「誓約相手に、単独接触する許可は出していない。」
女司祭は、悔しそうに歯を噛みしめ、
深く一礼して退いた。
扉が閉まり、ようやく2人きりになる。
「……無事か?」
カイルが、レオの肩に手を置く。
その瞬間、誓約が安堵のように静まった。
「……使えた……」
レオは、呆然と呟く。
「誓約の力」
カイルの目が、わずかに見開かれる。
「自覚したか?」
「はい。」
「でも、分かりました。」
顔を上げる。
「狙われてるのは、俺じゃない。この関係、そのものだ。」
カイルは、しばらく黙っていたが、
やがて、低く言った。
「……すまない。1人にした。」
レオは、首を振った。
「大丈夫です。守られっぱなしじゃ、誓約は完成しない。」
一瞬の沈黙。
それから、カイルは強くレオを抱き寄せた。
「2度と、独りにしない。誓約にかけて。」
その言葉に、刻印が静かに輝いた。
偽りの祝福は、退けられた。
だが同時に、敵は確信したはずだ。
――この誓約は、
――奪えない。だから、壊すしかない。
次に来るのは、
もっと露骨で、もっと残酷な手段。
それを、2人はまだ知らない。
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