蒼誓(そうせい)の騎士は転生者を離さない ― 異世界転生BL/騎士×転生者 ―

遊羽(ゆう)

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第18話

代替誓約という名の誘惑

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それは、静かに、だが確実に仕掛けられた。

王城の一角、誓約管理局。
レオは、カイルの隣を歩きながら、異様な視線を感じていた。

――見られている。

だが敵意ではない。
むしろ、値踏み。

「ここは?」

「誓約の記録と、魔術的安定を管理する場所だ。」

カイルは低く答えた。

「本来、誓約者本人が来る必要はない。だが今回は――」

言葉を切る。

「聖庁が“確認”を求めてきた。」

(……確認、ね…)

広間に足を踏み入れた瞬間、空気が変わる。

そこに立っていたのは、1人の男だった。

黒髪、柔らかな物腰。
年齢は20代後半だろうか。

聖職者の衣をまといながらも、
どこか騎士のような体躯たいくをしている。

「はじめまして。」

男は穏やかに微笑んだ。

「私はエリオ。聖庁直属、“誓約補佐官”です。」

胸の刻印が、わずかにざわめく。

(……こいつ)

「補佐官?」

カイルが1歩前に出る。

「聞いていない。」

「でしょうね。」

エリオは、気分を害した様子もなく頷いた。

「今回の件は、極秘ですから。」

視線が、まっすぐレオに向く。

「転生者レオ殿。あなたの誓約は、極めて稀だ。強すぎる、と言ってもいい。」

(来た)

「強度が高い誓約は、世界に歪みを生む。」

エリオは淡々と続ける。

「ですから聖庁は、“緩衝材”を用意しました。」

「緩衝材?」

「代替誓約です。」

その言葉に、カイルの気配が一変した。

「ふざけるな。」

低く、殺気を含んだ声。

「誓約は1対1だ。」

「原則は、そうです。」

エリオは静かに頷いた。

「ですが、補助誓約――感情を伴わない、魔術的結合のみの誓約であれば、転生者の魂を安定させ、主誓約の負荷を軽減できる。……つまり」

レオが口を開く。

「俺に、別の“繋がり”を持てと?」

エリオは、微笑んだ。

「選択肢を提示しているだけです。」

「あなたが壊れれば、主誓約も共倒れになる。それは、騎士団長殿にとっても不幸でしょう?」

沈黙。

空気が、張り詰める。

刻印が、はっきりと熱を帯び始めた。

(……嫌だ)

理由は、はっきりしている。

――考えたくもない。

自分が、
カイル以外と繋がることを。

「……レオ」

カイルが、抑えた声で呼ぶ。

「答える必要はない。」

「今すぐ、ここを――」

「いいえ。」

レオは、1歩前に出た。

自分でも驚くほど、迷いはなかった。

「答えます。」

エリオが、興味深そうに目を細める。

「ほう。」

「代替誓約は感情を伴わない、と言いましたね。」

「ええ。」

「でも…」

レオは、胸元に手を当てた。

刻印が、はっきりと光る。

「この誓約は、感情そのものです。削ったら、それはもう別物だ。俺は――」

言葉を、選ぶ必要はなかった。

「壊れない。この人がいる限り。」

カイルの息が、止まったのが分かった。

エリオはしばらく黙っていたが、やがて小さく笑った。

「……なるほど。これは失礼した。既に、“守られる側”ではない。」

視線が、今度はカイルへ向く。

「騎士団長殿」

「あなたの誓約者は、自ら選びました。その選択が、世界にとって脅威であっても、聖庁は……次の段階に進むでしょう。」

それだけ言い残し、エリオはかかとを返した。

広間に残ったのは、2人だけ。

しばらくして、カイルがレオを抱き寄せた。

「……怖くなかったか?」

低い声。

レオは、首を振った。

「怖かったです。でも…」

カイルの胸に額を預ける。

「失う想像の方が、ずっと怖かった。」

抱き締める腕が、強くなる。

「……執着だな。」

カイルが、苦く笑う。

「似た者同士ですね。」

レオも、小さく笑った。

刻印が、穏やかに脈打つ。

それは、誓約が
選び直された証だった。

だが同時に――

聖庁は理解したはずだ。

説得も、分断も、代替も通じない。

ならば次は。

――力ずくで、引き剥がす。

次に来るのは、
誓約を“犯罪”に仕立て上げる策。

嵐は、もう目前だった。
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