蒼誓(そうせい)の騎士は転生者を離さない ― 異世界転生BL/騎士×転生者 ―

遊羽(ゆう)

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第19話

誓約に下される“罪”の名

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異変は、翌朝に訪れた。

王城の鐘が、いつもより低く長く鳴り響く。
それは「招集」ではなく――**「非常宣告」**の音だった。

「レオ。」

カイルの声が、いつもより早く響く。
扉が開かれ、鎧姿の騎士が立っていた。

「王議会が、誓約について緊急審問を行う。俺は、出頭を命じられた。」

レオの胸が、嫌な予感で締まる。

「……理由は…“国家秩序を乱す危険誓約の保持”」

一瞬、理解できなかった。

「……それ、俺たちが?」

「そうだ。」

カイルの声は冷静だった。
だが、瞳の奥には明確な怒りが燃えている。

「聖庁が動いた。誓約を“神域侵犯”と位置づけた。国家は、それを無視できない…」

つまり――
誓約が、違法とされた。

「……じゃあ…」

レオが息を呑む。

「カイルは、罪人扱いに?」

「現時点では、“被疑者”だ。」

だが、それは時間の問題だ。

騎士団長が、危険誓約を私的に結んだ。
それが王権を脅かす――
そう仕立て上げられれば、結末は1つ。

「……俺も行きます。」

レオは即座に言った。

だが、カイルは首を振る。

「ダメだ。今回、狙われているのは俺だ。お前が出れば、“誓約相手の自白”に利用される。だから――」

1歩、距離を詰める。

「ここにいろ。必ず戻る。」

それは命令であり、懇願だった。

「……嫌です。」

レオは小さく、しかしはっきり言った。

「一緒に立つって、決めました。守り合うって、言いました。」

カイルの眉が僅かに動く。

「それは戦場の話だ。今回は政治だ。お前が傷つけば――」

「もう傷ついてます。」

レオは胸元の刻印に手を当てた。

「このまま離れて待ってるほうが、よほど壊れます。」

沈黙。

そしてカイルは、ゆっくりと息を吐いた。

「……分かった。だが、絶対に俺の許可なく発言するな。約束できるか?」

レオは頷いた。

「はい。」

王議会の間は、石造りの冷たい空気に満ちていた。

貴族、重臣、軍上層部、そして聖庁代表。
中央に立たされるカイル。

その隣に立つレオ。

ざわめき。
だが、すぐに沈黙へ変わる。

「騎士団長カイル・ヴァルグリム」

議長の声が響く。

「貴殿は、国家の許可なく“魂誓約”を結び、
その強度により国家魔術均衡を乱した疑いがある。認めるか?」

カイルは、1歩も引かず答えた。

「誓約は、個人の自由意志に基づく。国家が介入する権利はない。ゆえに、罪は存在しない。」

聖庁側が声を挟む。

「魂誓約は、神域に属する。私的結合は、神意の越権である。」

つまり…
“神に許可なく魂を繋げた罪”。

馬鹿げている。
だが、政治とは常に理屈より力だ。

「では問おう。」

別の貴族が声を上げる。

「誓約相手、転生者レオ殿。」

全視線が、レオへ向く。

「貴殿は、自ら望んで誓約を結んだか?強制、誘導、精神干渉はなかったか?」

ここだ。

レオは、胸の奥で刻印の鼓動を感じた。

答えは決まっている。

だが――
ここで一言でも誤れば、カイルは有罪になる。

「……」

カイルが、横目で見てくる。

“約束を忘れるな”と。

だがレオは、理解した。

沈黙こそが、最大の同意になる。

だからこそ。

1歩、前へ出る。

「俺は…」

静かな声が、議場に響く。

「自分の意志で選びました。強制も、命令も、魔術操作もありません。むしろ――」

1度、息を吸う。

「俺が望まなければ、この誓約は成立しなかった。」

空気が張りつく。

聖庁側の表情が、僅かに歪んだ。

「では問う。」

別の声。

「その誓約が、国家に危険を及ぼすと証明された場合、貴殿は誓約を解消するか?」

それは、刃だ。

誓約を守るか。
国家に従うか。

選べと言っている。

レオは、笑った。

「解消は、できません。」

「この誓約は、俺とこの人が生きている限り存在します。壊すなら――」

視線を上げる。

「俺ごと壊すしかない。」

ざわめきが走る。

カイルの手が、僅かに震えた。

「レオ……」

だが、もう止まらない。

「国家がそれを望むなら。俺は、“国家の敵”になります。」

静寂。

それは宣戦布告だった。

議長が、顔を引きつらせる。

「……誓約者双方の意思は確認された。本件は、評議を継続する。本日はここまでとする。」

形だけの閉会。

だが本質は違う。

――2人は、国家と対立する側に立った。

王城の廊下を出た後。

カイルは、しばらく無言だった。

やがて、低く言う。

「……俺は。お前を守るためなら、世界を敵に回す覚悟はあった。だが…」

蒼い瞳が、揺れる。

「お前が、そこまで言うとは思わなかった。」

レオは、少し笑った。

「誓約は、守り合うものなんですよね?だから、俺も守ります。」

カイルは、深く息を吐き、そして、強くレオを抱きしめた。

「……もう後戻りはできない。」

「はい。それでいいです。」

刻印が、激しく共鳴した。

それは危機ではない。

完全な同意の証。

こうして。

誓約は“愛”であると同時に、
反逆の旗になった。

次に来るのは、裁きか、戦いか。

だが1つだけ確かだった。

――この2人は、もう誰にも引き離せない。
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