蒼誓(そうせい)の騎士は転生者を離さない ― 異世界転生BL/騎士×転生者 ―

遊羽(ゆう)

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第20話

王命、そして引き裂かれる誓約

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それは、あまりにも静かに下された。

夜明け前。
王城の回廊に、重い足音が響く。

金属音。
鎧が擦れる音。
そして――複数の気配。

レオは、胸の刻印がはっきりと警告を発するのを感じて、跳ね起きた。

(……来た)

扉が叩かれる前から、分かっていた。

「騎士団長カイル・ヴァルグリム」

外から、硬い声が響く。

「王命により、貴殿を一時拘束する。」

その言葉が、空気を切り裂く。

「誓約に関する調査が完了するまで、王城地下拘束区画へ移送する。」

――拘束。

思考が、一瞬遅れる。

「……理由を聞こう。」

カイルの声は、驚くほど落ち着いていた。

「国家秩序を乱す危険誓約の保持。ならびに、
誓約相手を政治的混乱に巻き込んだ疑い。」

「……ふざけるな!」

レオが、思わず声を荒げる。

扉を開けようとした瞬間、カイルの手が、静かにそれを制した。

「レオ。」

低い声。

「落ち着け。」

「だが――!」

「今、俺が抵抗すれば。」

蒼い瞳が、真っ直ぐこちらを見据える。

「それは“反逆”になる。」

「そうなれば、お前が無事で済まなくなる。」

その言葉で、凍りついた。

(……俺を、人質に)

理解した瞬間、怒りよりも恐怖が込み上げる。

「……っ」

「大丈夫だ。」

カイルは、レオの額にそっと額を当てた。

「拘束は、形式だ。処刑ではない。必ず戻る。」

その声音に、嘘はなかった。

だが――
“必ず”が、保証されていないことも、分かってしまう。

扉が、ゆっくりと開く。

王直属の近衛騎士たち。
その数、6名。

全員が、視線をレオから逸らしている。

――見るな、と命じられている。

「カイル!」

レオが、思わず腕を掴む。

刻印が、激しく反応した。

拒絶。
分離への本能的抵抗。

胸が、焼けるように痛む。

「……っ」

カイルが、一瞬だけ顔を歪めた。

同じ痛みを、感じている。

「……レオ」

囁くような声。

「聞け」

「今から、俺はお前に触れられない。それでも、誓約は切れない。だから…」

手を、ゆっくりと外す。

「ここで、耐えろ。」

それは命令ではない。
信頼だった。

レオは、歯を食いしばって頷く。

「……分かりました。」

声が、震えた。

「……必ず、迎えに行きます。」

その一言で、
カイルの目が、確かに揺れた。

「……ああ。待っている。」

近衛騎士が、一歩前に出る。

「時間です。」

拘束具が差し出される。

魔術抑制用の腕輪。
誓約者用ではないが、一般騎士には十分すぎる拘束。

「……これを、俺につけるのか?」

カイルは、静かに腕を差し出した。

「誓約相手の前で。」

誰も答えない。

金属音が、やけに大きく響いた。

その瞬間。

刻印が、悲鳴のように共鳴した。

「……っ!」

レオが、膝をつく。

心臓を、直接掴まれたような感覚。

分かる。
今、強制的に“距離”が作られた。

「レオ!」

カイルが叫ぶ。

だが、近衛騎士が遮る。

「接触は禁止です!」

「離れてください!」

「……触るな!」

カイルの声が、低く、凶暴に響く。

一瞬、場の空気が凍る。

だが、彼は動かなかった。

――動けば、レオが危険に晒される。

その選択を、選んだ。

「……大丈夫だ。」

視線だけで、そう伝えてくる。

「誓約は、生きている。距離では、壊れない。」

近衛騎士に挟まれ、カイルは回廊の奥へ連れて行かれる。

足音が、遠ざかる。

レオは、その背中を見送ることしかできなかった。

(……くそ)

拳を、床に叩きつける。

「……許さない。」

誰に向けた言葉か、自分でも分からない。

王か。
聖庁か。
この世界そのものか。

ただ1つ、確かなことがある。

――奪われた。

奪われたまま、待っていられる性格じゃない。

胸の刻印に、手を当てる。

まだ、熱はある。
確かに、繋がっている。

「……待っててください。」

低く、誓う。

「今度は、俺が迎えに行きます。」

誓約は、守られるものじゃない。

取り戻すものだ。

そしてレオは、初めてはっきりと理解した。

この誓約が、愛であり、武器であり、そして――

反撃の合図であることを。
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