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第22話
誓約は、鎖ではなく道になる
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地下へ続く通路は、王城の地図には載っていなかった。
それでも、レオは迷わなかった。
足が、勝手に向かう。
(……こっちだ)
理由は説明できない。
だが、胸の刻印が、確かに“下へ”と脈打っている。
「……本当に、行く気か?」
背後で、低い声がした。
振り返ると、そこにいたのは王城警備の副官――カイルの部下であり、数少ない理解者でもある人物だった。
「止めに来たなら、遅いです。」
レオは、静かに言った。
「……王命違反になる。」
「分かってます。」
「下手をすれば、お前も拘束される。」
「それでも…」
胸に手を当てる。
刻印は、はっきりと応えていた。
「行かない選択肢は、ありません。」
副官は、しばらく黙っていたが、やがて、短く息を吐いた。
「……騎士団長は」
「お前を、絶対に1人で戦わせるなと言っていた。」
レオは、少しだけ笑った。
「大丈夫です。1人じゃありませんから。」
副官は、それ以上何も言わなかった。
代わりに、通路脇の壁を押す。
石が、音もなく動いた。
「……行け。戻り道は、ない。」
「はい。」
一礼して、闇へ踏み込む。
地下は、冷たく、静かだった。
灯りは最小限。
魔術抑制の結界が、空気を重くしている。
(……ここまで、徹底してるのか)
王城が本気で、カイルを“封じる”つもりなのが分かる。
だが。
(……それでも)
歩みを進めるごとに、
胸の奥が、熱を帯びていく。
(……生きてる)
誓約が、確かに息をしている。
扉の前で、足が止まった。
重い鉄扉。
地下拘束区画、最深部。
守衛はいない。
――いや。
「……」
気配はある。
だが、眠らされている。
(……もう、始まってる)
誰かが、動いている。
聖庁か、王権側か。
時間は、ない。
レオは、ゆっくりと息を吸った。
「……誓約。」
小さく、名を呼ぶ。
今まで、守られてきた。
引き寄せられ、包まれてきた。
だが今は。
「……俺が、行く。」
言葉と同時に、刻印が、はっきりと光った。
魔術ではない。
詠唱でもない。
選択だ。
“誓約の力を使う”と、自分で決めた。
扉に、手を当てる。
一瞬、抵抗が走る。
抑制結界が、侵入を拒む。
だが――
「拒否します。」
低く、はっきりと言った。
「この誓約は、国家より深い。」
「神より、近い。」
空気が、震えた。
結界が、解けた。
(……嘘でしょ)
自分でも、驚いた。
だが、考える暇はない。
扉を開ける。
そこにいた。
拘束具をつけたまま、壁に背を預けるカイル。
蒼い瞳が、こちらを捉えた瞬間、はっきりと見開かれる。
「……レオ…」
声が、掠れていた。
「来るなと言った。」
「聞きました。」
レオは、歩み寄る。
「だから、来ました。」
数歩の距離が、やけに長い。
「……無茶だ……」
「政治も、軍も、神殿も。全部、敵に回る。」
「はい。」
頷く。
「でも…」
目を逸らさない。
「あなたを、ここに置いていく方が、無理です。」
刻印が、共鳴した。
今までで、最も穏やかで、
最も強い反応。
「……誓約は…」
カイルが、低く言う。
「守るものだ。」
「いいえ。」
レオは、首を振った。
「歩くものです。一緒に…」
拘束具に、手をかける。
「触るな!」
一瞬、鋭い声。
「それは、魔力抑制具だ。下手に外せば…」
「大丈夫です。」
今度は、迷いなく言えた。
「誓約は、あなたを縛るためにあるんじゃない。」
刻印が、静かに光る。
拘束具に、ひびが入った。
「……っ」
カイルが、息を詰める。
「レオ……!」
「信じてください。」
一瞬の躊躇。
それから――
カイルは、ゆっくりと頷いた。
「……任せる。」
その瞬間。
拘束具が、砕けた。
金属音が、地下に響く。
だが、警報は鳴らない。
抑制結界が、すでに“拒否”されている。
カイルが、自由になる。
次の瞬間、強く、抱き寄せられた。
「……馬鹿。」
低い声。
「だが……」
額が、触れる。
「誇りだ。」
レオは、思わず息を吐いた。
「……迎えに来るって、言いましたから。」
刻印が、完全に同調する。
それは、誓約が対等になった証だった。
だが、同時に――
遠くで、鐘の音が鳴り始める。
(……見つかった)
カイルが、即座に状況を把握する。
「包囲される。逃げ道は――」
「あります。」
レオは、迷いなく言った。
「誓約が、知ってます。」
蒼い瞳が、驚きに揺れる。
「……本当に、強くなったな。」
「あなたの誓約相手ですから。」
そう答えると、カイルは、短く笑った。
「なら、行くぞ。世界を、敵に回す準備はいいか?」
レオは、頷いた。
「最初から、そのつもりです。」
2人は、並んで歩き出す。
地下から、地上へ。
拘束から、自由へ。
誓約は、鎖ではなかった。
進むための道だった。
そして今、
その道は――
世界の中心へと、続いている。
それでも、レオは迷わなかった。
足が、勝手に向かう。
(……こっちだ)
理由は説明できない。
だが、胸の刻印が、確かに“下へ”と脈打っている。
「……本当に、行く気か?」
背後で、低い声がした。
振り返ると、そこにいたのは王城警備の副官――カイルの部下であり、数少ない理解者でもある人物だった。
「止めに来たなら、遅いです。」
レオは、静かに言った。
「……王命違反になる。」
「分かってます。」
「下手をすれば、お前も拘束される。」
「それでも…」
胸に手を当てる。
刻印は、はっきりと応えていた。
「行かない選択肢は、ありません。」
副官は、しばらく黙っていたが、やがて、短く息を吐いた。
「……騎士団長は」
「お前を、絶対に1人で戦わせるなと言っていた。」
レオは、少しだけ笑った。
「大丈夫です。1人じゃありませんから。」
副官は、それ以上何も言わなかった。
代わりに、通路脇の壁を押す。
石が、音もなく動いた。
「……行け。戻り道は、ない。」
「はい。」
一礼して、闇へ踏み込む。
地下は、冷たく、静かだった。
灯りは最小限。
魔術抑制の結界が、空気を重くしている。
(……ここまで、徹底してるのか)
王城が本気で、カイルを“封じる”つもりなのが分かる。
だが。
(……それでも)
歩みを進めるごとに、
胸の奥が、熱を帯びていく。
(……生きてる)
誓約が、確かに息をしている。
扉の前で、足が止まった。
重い鉄扉。
地下拘束区画、最深部。
守衛はいない。
――いや。
「……」
気配はある。
だが、眠らされている。
(……もう、始まってる)
誰かが、動いている。
聖庁か、王権側か。
時間は、ない。
レオは、ゆっくりと息を吸った。
「……誓約。」
小さく、名を呼ぶ。
今まで、守られてきた。
引き寄せられ、包まれてきた。
だが今は。
「……俺が、行く。」
言葉と同時に、刻印が、はっきりと光った。
魔術ではない。
詠唱でもない。
選択だ。
“誓約の力を使う”と、自分で決めた。
扉に、手を当てる。
一瞬、抵抗が走る。
抑制結界が、侵入を拒む。
だが――
「拒否します。」
低く、はっきりと言った。
「この誓約は、国家より深い。」
「神より、近い。」
空気が、震えた。
結界が、解けた。
(……嘘でしょ)
自分でも、驚いた。
だが、考える暇はない。
扉を開ける。
そこにいた。
拘束具をつけたまま、壁に背を預けるカイル。
蒼い瞳が、こちらを捉えた瞬間、はっきりと見開かれる。
「……レオ…」
声が、掠れていた。
「来るなと言った。」
「聞きました。」
レオは、歩み寄る。
「だから、来ました。」
数歩の距離が、やけに長い。
「……無茶だ……」
「政治も、軍も、神殿も。全部、敵に回る。」
「はい。」
頷く。
「でも…」
目を逸らさない。
「あなたを、ここに置いていく方が、無理です。」
刻印が、共鳴した。
今までで、最も穏やかで、
最も強い反応。
「……誓約は…」
カイルが、低く言う。
「守るものだ。」
「いいえ。」
レオは、首を振った。
「歩くものです。一緒に…」
拘束具に、手をかける。
「触るな!」
一瞬、鋭い声。
「それは、魔力抑制具だ。下手に外せば…」
「大丈夫です。」
今度は、迷いなく言えた。
「誓約は、あなたを縛るためにあるんじゃない。」
刻印が、静かに光る。
拘束具に、ひびが入った。
「……っ」
カイルが、息を詰める。
「レオ……!」
「信じてください。」
一瞬の躊躇。
それから――
カイルは、ゆっくりと頷いた。
「……任せる。」
その瞬間。
拘束具が、砕けた。
金属音が、地下に響く。
だが、警報は鳴らない。
抑制結界が、すでに“拒否”されている。
カイルが、自由になる。
次の瞬間、強く、抱き寄せられた。
「……馬鹿。」
低い声。
「だが……」
額が、触れる。
「誇りだ。」
レオは、思わず息を吐いた。
「……迎えに来るって、言いましたから。」
刻印が、完全に同調する。
それは、誓約が対等になった証だった。
だが、同時に――
遠くで、鐘の音が鳴り始める。
(……見つかった)
カイルが、即座に状況を把握する。
「包囲される。逃げ道は――」
「あります。」
レオは、迷いなく言った。
「誓約が、知ってます。」
蒼い瞳が、驚きに揺れる。
「……本当に、強くなったな。」
「あなたの誓約相手ですから。」
そう答えると、カイルは、短く笑った。
「なら、行くぞ。世界を、敵に回す準備はいいか?」
レオは、頷いた。
「最初から、そのつもりです。」
2人は、並んで歩き出す。
地下から、地上へ。
拘束から、自由へ。
誓約は、鎖ではなかった。
進むための道だった。
そして今、
その道は――
世界の中心へと、続いている。
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