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第24話
伝説は、その夜に生まれた
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王城は、沈黙していた。
いや、正確には――
沈黙せざるを得なかった。
礼拝堂の崩壊報告が上がったのは、脱出からわずか数分後。
だが、その内容は誰1人として即座に理解できるものではなかった。
「崩壊ではありません。」
震える声で、現場を見た近衛騎士が報告する。
「破壊は、確認されていない。」
「では何が起きた?」
「……“通路”が、現れました。」
会議室に、ざわめきが走る。
「通路?」
「意味が分からん。」
騎士は、唾を飲み込み、続けた。
「光でできた……道です。」
「誓約者二名が、その上を歩き……そのまま、消えました…」
沈黙。
誰も、否定できなかった。
なぜなら――
礼拝堂に居合わせた者全員が、同じ光景を目撃している。
聖庁の高位司祭が、青ざめた顔で口を開いた。
「……完全顕現…」
「神代に記された、誓約が“現象”となった記録と一致します。」
「だが、あれは神と神の――」
「違います。」
別の司祭が、掠れた声で遮る。
「今回、顕現した誓約は……人と人のものです。」
その言葉が、重く落ちた。
王権側の重臣が、机を叩く。
「そんなものが、許されていいはずがない!」
「国家秩序を、根底から揺るがす!」
だが、その声は弱かった。
なぜなら。
「……誰も、止められなかったのだな?」
王の問いに、誰も答えられなかったからだ。
剣も。
魔術も。
王命すらも。
すべて、拒まれた。
「騎士団長カイル・ヴァルグリムは?」
「拘束を破り、脱出。」
「誓約相手レオは?」
「……主導的役割を果たしたと見られます。」
その名が出た瞬間、空気が変わる。
転生者。
異界の魂。
そして――
「誓約の“要”」
「……処罰は?」
誰かが、恐る恐る尋ねた。
王は、しばらく黙っていた。
そして、低く言う。
「できると思うか?」
答えは、沈黙だった。
その夜。
王都では、別の場所で、別の会話が交わされていた。
「見たか?」
「ああ……空に、紋が浮かんだ。」
「神か?」
「いや……人だ。」
噂は、瞬く間に広がる。
・誓約者が、神殿を拒んだ
・王命を跳ね返した
・光の道を渡り、夜へ消えた
事実と誇張が混じり合い、
だが1つだけ、共通している。
**“2人だった”**ということ。
「逃げたんじゃない。」
「選んだんだ。」
そう語る者も、現れ始めていた。
聖庁では、緊急会合が開かれていた。
「……失敗だ。」
エリオが、静かに言う。
「代替誓約も、分断も、拘束も…すべて、逆効果だった。」
「誓約は、“守られるべきもの”から“信じられるもの”へ変わった。」
誰かが、呻く。
「……民が、見てしまった。」
「奇跡として。」
エリオは、目を閉じる。
「伝説は、管理できない。」
「だが――」
ゆっくりと、目を開く。
「追うことは、できる。ただし、方法を変える必要がある。」
その声は、静かだったが、確実だった。
一方、王城の1室。
副官は、1人、窓辺に立っていた。
空は、もう何事もなかったように静かだ。
「……行ったな。」
誰にともなく、呟く。
騎士団長は、王城を捨てた。
だが、誓いを捨てたわけではない。
むしろ――
貫いた。
「……あんたらしい。」
副官は、小さく笑った。
「生き延びろよ…伝説になるくらい、しぶとくな…」
その頃。
城を離れた2人は、まだ遠くへは行っていなかった。
夜明け前の丘。
王都を見下ろす場所。
「……大事になってますね。」
レオが、遠くの灯りを見ながら言う。
「ああ…」
カイルは、静かに答える。
「もう、個人ではいられない。」
「伝説扱いですか?」
「悪くない。」
そう言って、隣を見る。
「お前がいるならな。」
レオは、苦笑した。
「……逃げたつもり、ないんですけど…」
「逃げていない。」
即答。
「選んだだけだ。」
刻印が、穏やかに光る。
それは、誓約がまだ生きている証。
「これから、どうします?」
レオが尋ねる。
「追われますよ?」
「だろうな。」
だが、カイルは迷わない。
「だからこそ…」
1歩、踏み出す。
「世界を見に行く。この誓約が、どこまで通じるか。」
レオは、しばらく黙っていたが、やがて、頷いた。
「一緒なら…伝説でも、構いません。」
カイルは、わずかに笑った。
「なら…物語の続きを、生きよう。」
夜明けが、近づく。
王城では、2人の名が議論され。
王都では、噂が語られ。
聖庁では、新たな策が練られる。
だが当人たちは、まだ何も知らない。
ただ、並んで歩き始めただけだ。
その1歩が、やがて世界に刻まれることを。
誓約者の伝説は、ここから始まる。
いや、正確には――
沈黙せざるを得なかった。
礼拝堂の崩壊報告が上がったのは、脱出からわずか数分後。
だが、その内容は誰1人として即座に理解できるものではなかった。
「崩壊ではありません。」
震える声で、現場を見た近衛騎士が報告する。
「破壊は、確認されていない。」
「では何が起きた?」
「……“通路”が、現れました。」
会議室に、ざわめきが走る。
「通路?」
「意味が分からん。」
騎士は、唾を飲み込み、続けた。
「光でできた……道です。」
「誓約者二名が、その上を歩き……そのまま、消えました…」
沈黙。
誰も、否定できなかった。
なぜなら――
礼拝堂に居合わせた者全員が、同じ光景を目撃している。
聖庁の高位司祭が、青ざめた顔で口を開いた。
「……完全顕現…」
「神代に記された、誓約が“現象”となった記録と一致します。」
「だが、あれは神と神の――」
「違います。」
別の司祭が、掠れた声で遮る。
「今回、顕現した誓約は……人と人のものです。」
その言葉が、重く落ちた。
王権側の重臣が、机を叩く。
「そんなものが、許されていいはずがない!」
「国家秩序を、根底から揺るがす!」
だが、その声は弱かった。
なぜなら。
「……誰も、止められなかったのだな?」
王の問いに、誰も答えられなかったからだ。
剣も。
魔術も。
王命すらも。
すべて、拒まれた。
「騎士団長カイル・ヴァルグリムは?」
「拘束を破り、脱出。」
「誓約相手レオは?」
「……主導的役割を果たしたと見られます。」
その名が出た瞬間、空気が変わる。
転生者。
異界の魂。
そして――
「誓約の“要”」
「……処罰は?」
誰かが、恐る恐る尋ねた。
王は、しばらく黙っていた。
そして、低く言う。
「できると思うか?」
答えは、沈黙だった。
その夜。
王都では、別の場所で、別の会話が交わされていた。
「見たか?」
「ああ……空に、紋が浮かんだ。」
「神か?」
「いや……人だ。」
噂は、瞬く間に広がる。
・誓約者が、神殿を拒んだ
・王命を跳ね返した
・光の道を渡り、夜へ消えた
事実と誇張が混じり合い、
だが1つだけ、共通している。
**“2人だった”**ということ。
「逃げたんじゃない。」
「選んだんだ。」
そう語る者も、現れ始めていた。
聖庁では、緊急会合が開かれていた。
「……失敗だ。」
エリオが、静かに言う。
「代替誓約も、分断も、拘束も…すべて、逆効果だった。」
「誓約は、“守られるべきもの”から“信じられるもの”へ変わった。」
誰かが、呻く。
「……民が、見てしまった。」
「奇跡として。」
エリオは、目を閉じる。
「伝説は、管理できない。」
「だが――」
ゆっくりと、目を開く。
「追うことは、できる。ただし、方法を変える必要がある。」
その声は、静かだったが、確実だった。
一方、王城の1室。
副官は、1人、窓辺に立っていた。
空は、もう何事もなかったように静かだ。
「……行ったな。」
誰にともなく、呟く。
騎士団長は、王城を捨てた。
だが、誓いを捨てたわけではない。
むしろ――
貫いた。
「……あんたらしい。」
副官は、小さく笑った。
「生き延びろよ…伝説になるくらい、しぶとくな…」
その頃。
城を離れた2人は、まだ遠くへは行っていなかった。
夜明け前の丘。
王都を見下ろす場所。
「……大事になってますね。」
レオが、遠くの灯りを見ながら言う。
「ああ…」
カイルは、静かに答える。
「もう、個人ではいられない。」
「伝説扱いですか?」
「悪くない。」
そう言って、隣を見る。
「お前がいるならな。」
レオは、苦笑した。
「……逃げたつもり、ないんですけど…」
「逃げていない。」
即答。
「選んだだけだ。」
刻印が、穏やかに光る。
それは、誓約がまだ生きている証。
「これから、どうします?」
レオが尋ねる。
「追われますよ?」
「だろうな。」
だが、カイルは迷わない。
「だからこそ…」
1歩、踏み出す。
「世界を見に行く。この誓約が、どこまで通じるか。」
レオは、しばらく黙っていたが、やがて、頷いた。
「一緒なら…伝説でも、構いません。」
カイルは、わずかに笑った。
「なら…物語の続きを、生きよう。」
夜明けが、近づく。
王城では、2人の名が議論され。
王都では、噂が語られ。
聖庁では、新たな策が練られる。
だが当人たちは、まだ何も知らない。
ただ、並んで歩き始めただけだ。
その1歩が、やがて世界に刻まれることを。
誓約者の伝説は、ここから始まる。
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