蒼誓(そうせい)の騎士は転生者を離さない ― 異世界転生BL/騎士×転生者 ―

遊羽(ゆう)

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第30話

王の前で、選ぶ

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王城に戻るのは、奇妙な感覚だった。

逃げ出した場所。
追われた場所。
そして今は――呼ばれた場所。

「……皮肉ですね。」

レオが、城門を見上げながら言う。

「敵として出て、客として戻る。」

「客ではない。」

カイルは低く答える。

「対等だ。」

その言葉に、刻印が小さく反応した。




2人は、武装を制限された状態で議場へ通された。
だが拘束はない。

それだけで、扱いが変わったことが分かる。

扉が開く。

高い天井。
重厚な石柱。
玉座に座る王。

周囲には、重臣と聖庁代表。

静寂。

「騎士団長カイル・ヴァルグリム。」

王の声は、落ち着いていた。

「そして誓約者レオ。来訪に感謝する。」

「呼ばれましたから。」

カイルは、淡々と答える。

王は、わずかに目を細めた。

「率直に言おう。貴殿らの誓約は、国家の枠を超えた。排除は不可能。ならば、協調する。」

議場にざわめき。

王は続ける。

「北境の魔族領との境界結界。100年維持されているが、近年、劣化が著しい。魔術団では修復不能。だが、貴殿らの誓約顕現は、空間干渉を可能とした。」

視線が、2人へ向く。

「協力を求めたい。」

沈黙。

レオは、ゆっくりと息を吸った。

「……条件は?」

王が、わずかに口角を上げる。

「交渉の姿勢は歓迎する。第1に、誓約を正式に国家登録する。合法承認だ。第2に国家非常時には、協力義務を負う。第3に誓約の詳細を、
一定範囲で開示する。」

そこまで聞いて、
カイルの目が僅かに鋭くなる。

「詳細、とは?」

「同調率、発動条件、限界値。」

レオの胸が、ひやりとした。

(……研究対象)

王は、はっきりと言う。

「管理しなければ、国家は守れぬ。だが…貴殿らを再び拘束するつもりはない。対等に扱う。」

言葉は、誠実に聞こえる。

だが。

(……誓約を、“力”として扱ってる)

レオは、静かに口を開いた。

「陛下。」

視線が集まる。

「質問しても?」

「許す。」

「もし俺たちが協力しなかった場合…」

王は、迷わず答えた。

「追跡は再開する。ただし、排除はしない。対話を続ける。」

それは、脅しではない。

“現実”だ。

カイルが、レオを見る。

無言の問い。

レオは、小さく頷いた。

1歩、前に出る。

「……俺たちの誓約は…」

議場に、静かに響く。

「国家の所有物ではありません。管理対象でもない。」

重臣の1人が、不満げに動く。

だが王は、黙って聞いている。

「協力はできます。」

レオは続ける。

「北境の件も、必要なら行きます。でも…」

刻印が、穏やかに光る。

「誓約の“詳細”は、開示しません。これは、俺たちが選び続ける関係です。測定や数値化は、できない。」

静寂。

王は、しばらく考え込んだ。

やがて。

「……理由を述べよ。」

「もし、数値で定義されれば…」

レオは、迷わず答える。

「それは、“条件付きの関係”になります。誓約は…」

カイルが、低く続ける。

「条件ではない。選択だ。」

王の目が、ゆっくりと細められる。

「……ならば…国家にとっての担保は何だ?」

レオは、ほんの少し笑った。

「俺たちが、ここに来たことです。逃げ続ける選択もできた。でも…来た。それが、担保です。」

議場に、静かな緊張が走る。

王は、玉座に深く座り直した。

長い沈黙。

やがて。

「……面白い。」

低く、言う。

「誓約は、国家の上に立たぬ。だが、従属もしない。対等を望むか?」

カイルは、即答した。

「はい。」

王は、わずかに笑った。

「よろしい。条件を修正する。誓約の詳細開示は求めぬ。ただし、国家危機時には協力すること。これを契約とする。」

聖庁代表が、何か言いかける。

だが王は、手で制した。

「伝説を敵に回すより…共に立つ方が賢明だ。」

その一言で、決まった。

レオは、胸の奥が静かに温かくなるのを感じた。

(……敵じゃなくなった)

カイルが、横で低く言う。

「受けるか?」

レオは、頷いた。

「受けます。」

王は、静かに立ち上がった。

「ならば、今日より…。誓約者カイル・ヴァルグリム、誓約者レオ、貴殿らを、国家協力者として認める。」

宣言が、議場に響く。

その瞬間。

刻印が、穏やかに光った。

派手な奇跡ではない。

だが確かに――

誓約が、“世界と並んだ”。

王城を出る。

空は、静かだ。

「……どう思います?」

レオが、横を見る。

カイルは、少しだけ笑った。

「利用されるかもしれん。だが、選んだのは、俺たちだ。」

レオも、笑った。

「はい。」

敵か、奇跡か。

その問いは、もう古い。

これからは。

世界と並んで歩く誓約だ。

そして、その最初の試練が――
北境で待っている。
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