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第35話
帰還、そして祝福の名の下に
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王都の城門が見えたとき、レオは無意識に足を止めていた。
「……どうした?」
隣を歩くカイルが、静かに問う。
「いえ……」
答えながら、目を細める。
石造りの高い城壁。
旗が、風に揺れている。
つい数週間前。
ここを、逃げるように去った。
追われる立場で。
誓約を守るために。
そして今は――
「……帰ってきたんですね?」
カイルは、短く頷いた。
「帰還だ。」
逃亡ではなく。
帰還。
その言葉が、胸に静かに落ちる。
城門の前には、既に騎士団が整列していた。
儀礼用の鎧。
整えられた隊列。
先遣隊の隊長が、1歩前へ出る。
「騎士団長カイル・ヴァルグリム。」
声が、はっきりと響く。
「北境結界安定任務、成功を確認。帰還を、歓迎する。」
その瞬間。
騎士たちが、一斉に剣を掲げた。
敬礼。
レオは、息を呑む。
(……歓迎、されてる)
敵ではない。
追われる存在でもない。
――迎えられている。
「誓約者レオ。」
隊長が、こちらを見る。
「あなたの功績も、同様に認められている。」
レオは、思わずカイルを見る。
カイルは、静かに頷いた。
「受け取れ。」
その一言に、背筋が伸びる。
「……はい。」
小さく答える。
城門をくぐる。
王都の空気が、肌に触れる。
そして。
ざわめき。
街の人々が、こちらを見ている。
「あれが……」
「誓約者」
「北境を守った……」
声は、恐怖ではない。
畏れと。
――敬意。
レオは、無意識にカイルの隣へ少し寄った。
その動きに、カイルの手が、自然に触れる。
一瞬。
指先が、絡む。
刻印が、穏やかに光る。
(……大丈夫)
王城へ入る。
赤い絨毯。
高い天井。
以前と同じ景色。
だが、意味は違う。
謁見の間。
王が、玉座に座っている。
「騎士団長カイル・ヴァルグリム。」
「誓約者レオ。」
王の声は、以前より柔らかかった。
「北境結界の安定を確認した。国家を代表し、感謝する。」
「光栄です」
カイルが、簡潔に答える。
レオも、それに倣って頭を下げる。
王は、しばらく2人を見つめていた。
「誓約は…」
静かに言う。
「境界と結びついたと報告を受けている。」
レオは、正直に答えた。
「はい。一部が、共鳴しています。」
王は、ゆっくりと頷いた。
「つまり…貴殿らは、境界の守護者となった。」
その言葉は。
重かった。
守護者。
国家の。
世界の。
だが。
カイルは、はっきりと答えた。
「誓約は、国家に属してはいません。守護は、結果です。」
王は、わずかに笑った。
「分かっている。だからこそ、頼む。守り続けてほしい。」
命令ではない。
願いだった。
レオは、胸の刻印に触れた。
静かに、温かい。
「……選び続けます。」
それが、答えだった。
謁見が終わる。
謁見の間を出た瞬間。
張り詰めていた空気が、緩む。
「……疲れました。」
レオが、小さく言う。
「当然だ。」
カイルが答える。
廊下は、静かだった。
人はいない。
その静寂の中で。
不意に。
カイルが、レオの腕を引いた。
「……カイル?」
壁際へ。
誰にも見えない位置。
そして。
抱き寄せられる。
強く。
「……無事でよかった。」
低い声。
今まで、聞いたことのない響き。
安堵。
レオの心臓が、大きく跳ねる。
「……ずっと、一緒でしたよ?」
「それでもだ。」
額が、触れる。
刻印が、強く共鳴する。
「失う可能性は、常にあった。」
その言葉に。
初めて。
この人が、どれほど恐れていたのかを知る。
「……失いません。」
レオは、静かに言った。
「誓約ですから。」
カイルの指が、頬をなぞる。
「……ああ」
その距離で。
しばらく、動けなかった。
世界は、変わった。
誓約は、認められた。
守護者となった。
だが。
この距離だけは。
何も変わらない。
それが。
何よりも確かなことだった。
王都の空は、澄んでいた。
だが。
その祝福の裏で。
誓約を巡る新たな思惑が、静かに動き始めていることを――
まだ、2人は知らない。
「……どうした?」
隣を歩くカイルが、静かに問う。
「いえ……」
答えながら、目を細める。
石造りの高い城壁。
旗が、風に揺れている。
つい数週間前。
ここを、逃げるように去った。
追われる立場で。
誓約を守るために。
そして今は――
「……帰ってきたんですね?」
カイルは、短く頷いた。
「帰還だ。」
逃亡ではなく。
帰還。
その言葉が、胸に静かに落ちる。
城門の前には、既に騎士団が整列していた。
儀礼用の鎧。
整えられた隊列。
先遣隊の隊長が、1歩前へ出る。
「騎士団長カイル・ヴァルグリム。」
声が、はっきりと響く。
「北境結界安定任務、成功を確認。帰還を、歓迎する。」
その瞬間。
騎士たちが、一斉に剣を掲げた。
敬礼。
レオは、息を呑む。
(……歓迎、されてる)
敵ではない。
追われる存在でもない。
――迎えられている。
「誓約者レオ。」
隊長が、こちらを見る。
「あなたの功績も、同様に認められている。」
レオは、思わずカイルを見る。
カイルは、静かに頷いた。
「受け取れ。」
その一言に、背筋が伸びる。
「……はい。」
小さく答える。
城門をくぐる。
王都の空気が、肌に触れる。
そして。
ざわめき。
街の人々が、こちらを見ている。
「あれが……」
「誓約者」
「北境を守った……」
声は、恐怖ではない。
畏れと。
――敬意。
レオは、無意識にカイルの隣へ少し寄った。
その動きに、カイルの手が、自然に触れる。
一瞬。
指先が、絡む。
刻印が、穏やかに光る。
(……大丈夫)
王城へ入る。
赤い絨毯。
高い天井。
以前と同じ景色。
だが、意味は違う。
謁見の間。
王が、玉座に座っている。
「騎士団長カイル・ヴァルグリム。」
「誓約者レオ。」
王の声は、以前より柔らかかった。
「北境結界の安定を確認した。国家を代表し、感謝する。」
「光栄です」
カイルが、簡潔に答える。
レオも、それに倣って頭を下げる。
王は、しばらく2人を見つめていた。
「誓約は…」
静かに言う。
「境界と結びついたと報告を受けている。」
レオは、正直に答えた。
「はい。一部が、共鳴しています。」
王は、ゆっくりと頷いた。
「つまり…貴殿らは、境界の守護者となった。」
その言葉は。
重かった。
守護者。
国家の。
世界の。
だが。
カイルは、はっきりと答えた。
「誓約は、国家に属してはいません。守護は、結果です。」
王は、わずかに笑った。
「分かっている。だからこそ、頼む。守り続けてほしい。」
命令ではない。
願いだった。
レオは、胸の刻印に触れた。
静かに、温かい。
「……選び続けます。」
それが、答えだった。
謁見が終わる。
謁見の間を出た瞬間。
張り詰めていた空気が、緩む。
「……疲れました。」
レオが、小さく言う。
「当然だ。」
カイルが答える。
廊下は、静かだった。
人はいない。
その静寂の中で。
不意に。
カイルが、レオの腕を引いた。
「……カイル?」
壁際へ。
誰にも見えない位置。
そして。
抱き寄せられる。
強く。
「……無事でよかった。」
低い声。
今まで、聞いたことのない響き。
安堵。
レオの心臓が、大きく跳ねる。
「……ずっと、一緒でしたよ?」
「それでもだ。」
額が、触れる。
刻印が、強く共鳴する。
「失う可能性は、常にあった。」
その言葉に。
初めて。
この人が、どれほど恐れていたのかを知る。
「……失いません。」
レオは、静かに言った。
「誓約ですから。」
カイルの指が、頬をなぞる。
「……ああ」
その距離で。
しばらく、動けなかった。
世界は、変わった。
誓約は、認められた。
守護者となった。
だが。
この距離だけは。
何も変わらない。
それが。
何よりも確かなことだった。
王都の空は、澄んでいた。
だが。
その祝福の裏で。
誓約を巡る新たな思惑が、静かに動き始めていることを――
まだ、2人は知らない。
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