蒼誓(そうせい)の騎士は転生者を離さない ― 異世界転生BL/騎士×転生者 ―

遊羽(ゆう)

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第36話

祝福と、狙われる誓約

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祝宴は、王城の大広間で開かれた。

高い天井から吊るされた無数の灯り。
磨かれた床に映る光。
豪奢な衣装をまとった貴族たち。

その中心に――

「誓約者だ。」

「北境を救った……」

「本当に人間なのか?」

囁き声が、あちこちから聞こえる。

レオは、わずかに息を吐いた。

「……慣れませんね。」

「慣れる必要はない。」

隣で、カイルが低く答える。

彼は正装の騎士服に身を包んでいた。
戦場の鎧とは違うが、その威圧感は変わらない。

「お前は、お前でいればいい。」

その言葉に、刻印が穏やかに光る。

レオは、簡素だが正式な衣装を与えられていた。
誓約者としての“公的な立場”。

それは。

もう、隠れる存在ではないという証明だった。

「騎士団長。」

貴族の1人が、近づいてくる。

年配の男。

「お見事でした。北境結界の安定は、
王国100年の悲願。」

「……職務です。」

カイルは、簡潔に答える。

男の視線が、レオへ向く。

「そして、誓約者殿。あなたこそが、鍵だった。」

レオは、静かに答えた。

「誓約は、2人のものです」

男は、一瞬だけ微笑んだ。

「……興味深い。」

そう言って、去っていく。

「……品定めされてるみたいです。」

レオが、小さく言う。

「事実だ。」

カイルは、隠さない。

「誓約は、力だ。欲する者は多い。」

その言葉に、胸の奥がわずかに冷える。

祝宴は続く。

音楽。
笑い声。
祝福。

だが。

刻印が、微かにざわめいた。

(……何かいる)

敵意ではない。

だが。

明確な“意志”。

レオは、無意識に視線を巡らせた。

そして。

目が合った。

広間の奥。

1人の男。

若い。
黒い礼装。
貴族の印章を持っている。

だが、その目。

――異様に静かだ。

まるで。

何かを、測っている。

「……カイル。」

小さく呼ぶ。

「気づいたか。」

即答だった。

「3時の方向。」

「ええ。」

男は、ゆっくりと近づいてきた。

迷いなく。

そして。

目の前で止まる。

「初めまして。」

穏やかな声。

「誓約者レオ。騎士団長カイル。」

一礼する。

「私は、アルヴェイン・ルシェル。王国魔術院、第1研究官です。」

カイルの空気が、わずかに変わる。

警戒。

「……研究官が、祝宴に何の用だ?」

アルヴェインは、微笑んだ。

「興味です。」

視線が、レオへ向く。

「誓約に。」

刻印が、強く反応する。

拒絶。

本能的な警告。

「安心してください。」

アルヴェインは、穏やかに言う。

「奪うつもりはありません。ただ…」

1歩、近づく。

「理解したい。その構造を。」

「断る。」

カイルが、即答する。

「誓約は、研究対象ではない。」

アルヴェインは、わずかに首を傾げた。

「ですが…既に、境界と結びついている。それは、“世界の構造の一部”になったということです。」

レオの胸が、ざわつく。

「だからこそ。」

アルヴェインは続ける。

「理解する必要がある。誓約が、何なのか。」

その視線は。

純粋だった。

欲望ではない。

狂気でもない。

――探究心。

それが、最も危険だった。

「誓約は…」

レオは、静かに言った。

「構造じゃありません。関係です。」

アルヴェインは、微笑んだ。

「興味深い答えです。ますます、知りたくなった。」

その瞬間。

カイルの手が、レオの手を強く握る。

刻印が、即座に共鳴する。

拒絶。

明確な境界。

アルヴェインは、それを見た。

そして。

初めて。

本当に興味深そうに、笑った。

「……なるほど。これは…」

小さく呟く。

「予想以上だ。」

一礼する。

「今夜は、これで失礼します。」

去っていく。

だが。

その視線は、最後までレオから離れなかった。

沈黙。

「……危険ですね…」

レオが言う。

「ああ。」

カイルは、迷いなく答える。

「最も危険な種類だ。理解しようとする者は、止まらない。」

刻印が、静かに脈打つ。

祝宴は、続いている。

祝福の光の中で。

新たな脅威が、確かに生まれていた。

誓約は、守られた。

だが今度は。

――“解き明かされようとしている”。

そして、それは。

2人の関係そのものに、触れようとしていた。
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