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第5話
雨の逃走劇
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梅さんを後部座席に乗せ、俺たちの車は豪雨の首都高を疾走していた。
意識のない梅さんは、厳が手配した「闇医者」の元へ運ぶことになっている。そこなら、本家の目も届かないはずだ。
「……追手は?」
「今のところは見えないね。この雨だし、撒けたかも。」
俺はサイドミラーを確認しながら言った。心臓のドラミングがまだ収まらない。さっき撃った右手が、熱を持ったように痺れている。
「油断するな。本家が雇う殺し屋は、鼻が利く。」
厳がハンドルを握りながら鋭い視線を巡らせる。
その言葉が終わるか終わらないかの時だった。
パァッ!!
突然、バックミラーが強烈なハイビームで白く染まった。
背後から猛スピードで迫る一台のSUV。
「来たか……!」
厳が舌打ちをし、アクセルを踏み込む。車体がグンと加速し、Gが俺の体をシートに押し付ける。
だが、後ろの車はピタリと張り付いて離れない。それどころか、助手席の窓から男が身を乗り出し、何やら黒い筒のようなものを構えているのが見えた。
サブマシンガンだ。
「伏せろッ!!」
厳の怒号と同時に、リアガラスが粉々に砕け散った。
バラバラバラッ!
乾いた連射音が響き、車内にガラスの破片が降り注ぐ。
「うわっ……!」
「湊、梅さんは無事か!?」
「うん、シートの陰に隠れてるから大丈夫! でも、このままじゃ……!」
防弾仕様のボディに銃弾が当たる鈍い音が連続する。タイヤを狙われているんだ。バーストしたら、この速度じゃ横転する。
「湊。……もう一度、やれるか?」
厳が前を見据えたまま、低い声で問う。
「奴らのタイヤを撃て。近づかせるな!」
「……!」
また、撃つのか。
一瞬、さっきの感触が蘇って指が竦んだ。でも、後ろで眠る梅さんと、隣でハンドルを握る厳の命がかかっている。
迷っている暇なんてない。
「……やるよ。厳、車を安定させて!」
俺は窓を開け、身を乗り出した。
激しい雨と風が顔を叩く。視界は最悪だ。
後ろのSUVは執拗に追いすがってくる。銃口がこちらを向いているのが見えた。
(当てるんじゃない。……守るんだ!)
俺は両手でチャカを構え、呼吸を止めた。
狙うのは相手の右前輪。
厳が絶妙なハンドルさばきで、射線を通してくれる。
今だ。
タン! タン!
2発、引き金を引いた。
1発目はアスファルトに火花を散らしたが、2発目が吸い込まれるようにタイヤを捉えた。
バシュッ!と白煙が上がり、SUVが大きくバランスを崩す。
「よしッ!」
SUVはスピンしながらガードレールに激突し、火花を散らして視界の後方へと消えていった。
「……やった、ね……」
俺はシートに滑り込み、荒い息を吐いた。
雨音だけが戻ってくる。
「上出来だ、湊。プロ顔負けの腕だぞ?」
「……褒められても、あんまり嬉しくないかな(笑)」
俺は震える手で窓を閉めた。
厳の横顔が、少しだけ優しく緩むのが見えた。
その後、俺たちは追手を完全に振り切り、郊外にある診療所の裏口に滑り込んだ。
梅さんを無事に医者に預け、再び車に戻った時には、空が白み始めていた。
長い、長い夜だった。
意識のない梅さんは、厳が手配した「闇医者」の元へ運ぶことになっている。そこなら、本家の目も届かないはずだ。
「……追手は?」
「今のところは見えないね。この雨だし、撒けたかも。」
俺はサイドミラーを確認しながら言った。心臓のドラミングがまだ収まらない。さっき撃った右手が、熱を持ったように痺れている。
「油断するな。本家が雇う殺し屋は、鼻が利く。」
厳がハンドルを握りながら鋭い視線を巡らせる。
その言葉が終わるか終わらないかの時だった。
パァッ!!
突然、バックミラーが強烈なハイビームで白く染まった。
背後から猛スピードで迫る一台のSUV。
「来たか……!」
厳が舌打ちをし、アクセルを踏み込む。車体がグンと加速し、Gが俺の体をシートに押し付ける。
だが、後ろの車はピタリと張り付いて離れない。それどころか、助手席の窓から男が身を乗り出し、何やら黒い筒のようなものを構えているのが見えた。
サブマシンガンだ。
「伏せろッ!!」
厳の怒号と同時に、リアガラスが粉々に砕け散った。
バラバラバラッ!
乾いた連射音が響き、車内にガラスの破片が降り注ぐ。
「うわっ……!」
「湊、梅さんは無事か!?」
「うん、シートの陰に隠れてるから大丈夫! でも、このままじゃ……!」
防弾仕様のボディに銃弾が当たる鈍い音が連続する。タイヤを狙われているんだ。バーストしたら、この速度じゃ横転する。
「湊。……もう一度、やれるか?」
厳が前を見据えたまま、低い声で問う。
「奴らのタイヤを撃て。近づかせるな!」
「……!」
また、撃つのか。
一瞬、さっきの感触が蘇って指が竦んだ。でも、後ろで眠る梅さんと、隣でハンドルを握る厳の命がかかっている。
迷っている暇なんてない。
「……やるよ。厳、車を安定させて!」
俺は窓を開け、身を乗り出した。
激しい雨と風が顔を叩く。視界は最悪だ。
後ろのSUVは執拗に追いすがってくる。銃口がこちらを向いているのが見えた。
(当てるんじゃない。……守るんだ!)
俺は両手でチャカを構え、呼吸を止めた。
狙うのは相手の右前輪。
厳が絶妙なハンドルさばきで、射線を通してくれる。
今だ。
タン! タン!
2発、引き金を引いた。
1発目はアスファルトに火花を散らしたが、2発目が吸い込まれるようにタイヤを捉えた。
バシュッ!と白煙が上がり、SUVが大きくバランスを崩す。
「よしッ!」
SUVはスピンしながらガードレールに激突し、火花を散らして視界の後方へと消えていった。
「……やった、ね……」
俺はシートに滑り込み、荒い息を吐いた。
雨音だけが戻ってくる。
「上出来だ、湊。プロ顔負けの腕だぞ?」
「……褒められても、あんまり嬉しくないかな(笑)」
俺は震える手で窓を閉めた。
厳の横顔が、少しだけ優しく緩むのが見えた。
その後、俺たちは追手を完全に振り切り、郊外にある診療所の裏口に滑り込んだ。
梅さんを無事に医者に預け、再び車に戻った時には、空が白み始めていた。
長い、長い夜だった。
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