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第7話
大人の叱責、嫉妬の深淵
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その日、オフィスの空気は穏やかだった。
昼休み。白石旭は、同期入社の男性社員・松田と社員食堂でランチをとり、その流れで自席に戻ってからも談笑していた。
「まじで? あの映画もう見たの?」
「見た見た。超面白かったよ、今度一緒に行く?」
「いいな、行こうぜ!」
他愛のない会話。同年代の気安さ。
松田は大学時代からの友人で、旭にとっては心を許せる数少ない相手だ。自然と表情が緩み、無防備な笑顔がこぼれる。
――その瞬間だった。
背筋に、氷柱を突き立てられたような寒気が走った。
「……随分と楽しそうだな。」
低く、地を這うような声。
旭と松田が弾かれたように振り返ると、そこには書類の束を手にした黒川重蔵が立っていた。
表情はいつものポーカーフェイスだ。だが、その瞳の奥は、光が届かない深海のように暗く、濁っていた。
「あ、お疲れ様です部長!」
松田が慌てて頭を下げる。黒川はそれを無視し、旭だけをじっと見据えた。
「白石。例の案件について話がある。……第3会議室へ来い。」
「は、はい! 今すぐ……」
「資料はいらん。……身体だけ来ればいい。」
黒川は踵を返すと、のっしのっしと大股で歩き出した。その背中から立ち昇る怒気の凄まじさに、旭は生唾を飲み込んだ。
***
第3会議室は、フロアの隅にある窓のない小さな部屋だ。
旭が入ると同時に、黒川が背後手で鍵をかけた。
カチャリ、という金属音が、法廷の開廷を告げる小槌のように響く。
「ぶ、部長? あの、案件の話というのは……」
「座れ。」
黒川が顎で長机を指した。椅子ではない。机の上だ。
旭が戸惑いながらも従い、机の縁に腰をかけると、黒川は逃げ道を塞ぐように旭の両膝の間に割り込み、その巨体で押し迫った。
近い。
黒川の体温が異常に高い。
そして、漂ってくるムスクの香りが、今日はやけに攻撃的だった。
「さっきの男とは、随分と親しげだったな?」
「えっ? ああ、松田のことですか? 彼は同期で、学生時代からの……」
「俺には見せない顔で、笑っていた…」
黒川の太い指が、旭の顎を強引に掴み上げる。
ギリ、と力が込められ、旭は痛みに顔を歪めた。
「ち、違います……あれはただの雑談で……」
「若い男の方がいいか? ……俺のような、家庭に縛られた薄汚い中年よりも、未来のある若者の方が…」
それは、黒川が初めて見せた「弱さ」であり、強烈なコンプレックスの裏返しだった。
だが、その感情はすぐに歪んだ攻撃性へと変換された。
「……教育が必要だな。お前が誰のモノか、身体に教え直してやる。」
黒川が旭のネクタイを乱暴に緩め、ワイシャツのボタンを引き千切る勢いで開いた。
「あっ、ちょっ……部長、ここは会社……!」
「黙れ。」
黒川の分厚い唇が、旭の唇を塞ぎ、抗議の声を飲み込んだ。
甘さなど微塵もない、懲罰のようなキス。
舌が口内を荒らし回り、旭の舌を吸い上げ、噛みつく。鉄の味が広がった。
「んんーっ!!」
旭が黒川の胸を叩いて抵抗するが、岩のような胸板はびくともしない。
むしろ、黒川の興奮を煽るだけだった。
「そうだ、もっと暴れろ。……その方が燃える…」
黒川の手が、旭のベルトを外し、ズボンの中に侵入する。
ざらついた指先が、下着越しに旭の核心を鷲掴みにした。
「ひっ……!」
「硬くなっているじゃないか。……あんな若造と話しただけで発情したのか?」
「ちが、います……! これは、部長が……っ!」
「嘘をつくな!」
黒川が下着の中に手を滑り込ませ、容赦なく扱く。
強すぎる刺激。
だが、恐怖と同時に、旭の脳髄は快楽で痺れていた。
この絶対的な支配者である黒川が、たかが同期の男に嫉妬し、余裕をなくしている。その事実が、旭の歪んだ自尊心を満たしたのだ。
(この人は、僕のことが好きでたまらないんだ……)
「旭、お前の匂いを上書きしてやる。」
黒川は旭を机の上に完全に押し倒すと、ズボンを引きずり下ろした。
会議室の硬い机の上。蛍光灯の白い光が無慈悲に旭の恥態を照らし出す。
黒川自身の楔を取り出し、準備もそこそこに旭の中へとねじ込んだ。
「あ、ぎぃ……っ!!」
「きついな……だが、これくらいで丁度いい。」
潤滑がない乾いた交わり。痛みが走るが、それ以上に黒川の質量が旭の内部を埋め尽くす充足感が勝る。
黒川は旭の脚を高く担ぎ上げ、獣のように腰を打ち付けた。
机がガタガタと音を立てて揺れる。
壁1枚隔てた廊下を、誰かが通る足音が聞こえた。
そのスリルが、黒川をさらに加速させる。
「声を出せ、旭。……俺の名前を呼べ!」
「く、ろかわ、さん……っ! 重蔵、さん……っ! 愛して、ます……!」
「いい子だ……お前は俺だけのものだ。死ぬまで離さん。」
黒川は旭の首筋に歯を立て、あざになるほど強く吸い付いた。
まるで首輪を嵌めるように。
果てた後、黒川は旭の上に覆いかぶさったまま、荒い息を吐いた。
その重みと熱、そしてシャツに染み込んだ汗の匂い。
旭は放心状態で天井を見つめながら、黒川の背中に腕を回し、優しく撫でた。
「……もう、他の人には笑いかけません。」
旭が囁くと、黒川は顔を上げ、満足げに、しかしどこか縋るような目で旭を見つめた。
「ああ。……約束だぞ。」
その表情は、傲慢な上司のものではなく、愛に飢えたただの男のものだった。
旭は、自分がこの男の孤独を埋める唯一の存在になれたことに、暗い優越感を覚えていた。
2人の依存関係は、この「叱責」を経て、より深く、抜け出せない泥沼へと沈んでいった。
昼休み。白石旭は、同期入社の男性社員・松田と社員食堂でランチをとり、その流れで自席に戻ってからも談笑していた。
「まじで? あの映画もう見たの?」
「見た見た。超面白かったよ、今度一緒に行く?」
「いいな、行こうぜ!」
他愛のない会話。同年代の気安さ。
松田は大学時代からの友人で、旭にとっては心を許せる数少ない相手だ。自然と表情が緩み、無防備な笑顔がこぼれる。
――その瞬間だった。
背筋に、氷柱を突き立てられたような寒気が走った。
「……随分と楽しそうだな。」
低く、地を這うような声。
旭と松田が弾かれたように振り返ると、そこには書類の束を手にした黒川重蔵が立っていた。
表情はいつものポーカーフェイスだ。だが、その瞳の奥は、光が届かない深海のように暗く、濁っていた。
「あ、お疲れ様です部長!」
松田が慌てて頭を下げる。黒川はそれを無視し、旭だけをじっと見据えた。
「白石。例の案件について話がある。……第3会議室へ来い。」
「は、はい! 今すぐ……」
「資料はいらん。……身体だけ来ればいい。」
黒川は踵を返すと、のっしのっしと大股で歩き出した。その背中から立ち昇る怒気の凄まじさに、旭は生唾を飲み込んだ。
***
第3会議室は、フロアの隅にある窓のない小さな部屋だ。
旭が入ると同時に、黒川が背後手で鍵をかけた。
カチャリ、という金属音が、法廷の開廷を告げる小槌のように響く。
「ぶ、部長? あの、案件の話というのは……」
「座れ。」
黒川が顎で長机を指した。椅子ではない。机の上だ。
旭が戸惑いながらも従い、机の縁に腰をかけると、黒川は逃げ道を塞ぐように旭の両膝の間に割り込み、その巨体で押し迫った。
近い。
黒川の体温が異常に高い。
そして、漂ってくるムスクの香りが、今日はやけに攻撃的だった。
「さっきの男とは、随分と親しげだったな?」
「えっ? ああ、松田のことですか? 彼は同期で、学生時代からの……」
「俺には見せない顔で、笑っていた…」
黒川の太い指が、旭の顎を強引に掴み上げる。
ギリ、と力が込められ、旭は痛みに顔を歪めた。
「ち、違います……あれはただの雑談で……」
「若い男の方がいいか? ……俺のような、家庭に縛られた薄汚い中年よりも、未来のある若者の方が…」
それは、黒川が初めて見せた「弱さ」であり、強烈なコンプレックスの裏返しだった。
だが、その感情はすぐに歪んだ攻撃性へと変換された。
「……教育が必要だな。お前が誰のモノか、身体に教え直してやる。」
黒川が旭のネクタイを乱暴に緩め、ワイシャツのボタンを引き千切る勢いで開いた。
「あっ、ちょっ……部長、ここは会社……!」
「黙れ。」
黒川の分厚い唇が、旭の唇を塞ぎ、抗議の声を飲み込んだ。
甘さなど微塵もない、懲罰のようなキス。
舌が口内を荒らし回り、旭の舌を吸い上げ、噛みつく。鉄の味が広がった。
「んんーっ!!」
旭が黒川の胸を叩いて抵抗するが、岩のような胸板はびくともしない。
むしろ、黒川の興奮を煽るだけだった。
「そうだ、もっと暴れろ。……その方が燃える…」
黒川の手が、旭のベルトを外し、ズボンの中に侵入する。
ざらついた指先が、下着越しに旭の核心を鷲掴みにした。
「ひっ……!」
「硬くなっているじゃないか。……あんな若造と話しただけで発情したのか?」
「ちが、います……! これは、部長が……っ!」
「嘘をつくな!」
黒川が下着の中に手を滑り込ませ、容赦なく扱く。
強すぎる刺激。
だが、恐怖と同時に、旭の脳髄は快楽で痺れていた。
この絶対的な支配者である黒川が、たかが同期の男に嫉妬し、余裕をなくしている。その事実が、旭の歪んだ自尊心を満たしたのだ。
(この人は、僕のことが好きでたまらないんだ……)
「旭、お前の匂いを上書きしてやる。」
黒川は旭を机の上に完全に押し倒すと、ズボンを引きずり下ろした。
会議室の硬い机の上。蛍光灯の白い光が無慈悲に旭の恥態を照らし出す。
黒川自身の楔を取り出し、準備もそこそこに旭の中へとねじ込んだ。
「あ、ぎぃ……っ!!」
「きついな……だが、これくらいで丁度いい。」
潤滑がない乾いた交わり。痛みが走るが、それ以上に黒川の質量が旭の内部を埋め尽くす充足感が勝る。
黒川は旭の脚を高く担ぎ上げ、獣のように腰を打ち付けた。
机がガタガタと音を立てて揺れる。
壁1枚隔てた廊下を、誰かが通る足音が聞こえた。
そのスリルが、黒川をさらに加速させる。
「声を出せ、旭。……俺の名前を呼べ!」
「く、ろかわ、さん……っ! 重蔵、さん……っ! 愛して、ます……!」
「いい子だ……お前は俺だけのものだ。死ぬまで離さん。」
黒川は旭の首筋に歯を立て、あざになるほど強く吸い付いた。
まるで首輪を嵌めるように。
果てた後、黒川は旭の上に覆いかぶさったまま、荒い息を吐いた。
その重みと熱、そしてシャツに染み込んだ汗の匂い。
旭は放心状態で天井を見つめながら、黒川の背中に腕を回し、優しく撫でた。
「……もう、他の人には笑いかけません。」
旭が囁くと、黒川は顔を上げ、満足げに、しかしどこか縋るような目で旭を見つめた。
「ああ。……約束だぞ。」
その表情は、傲慢な上司のものではなく、愛に飢えたただの男のものだった。
旭は、自分がこの男の孤独を埋める唯一の存在になれたことに、暗い優越感を覚えていた。
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