既婚上司の甘い罠

新入社員の白石 旭(27)にとって、営業部長の黒川 重蔵(52)は憧れであり、恐怖の対象でもあった。

身長180センチ超、スーツの上からでも分かる分厚い胸板と、小太りながらも岩のように逞しい体躯。社内で「鬼」と恐れられる黒川だったが、なぜか旭にだけは、その厳めしい顔を緩め、特別扱いをしてくる。

「旭、今日は俺に付き合え。……妻の待つ家には帰りたくない」

残業後の食事、タクシーでの密室、そして週末の呼び出し。

冷めきった夫婦仲への孤独を埋めるように、黒川は旭を甘やかし、高価な食事と大人の余裕で囲い込んでいく。
恋愛経験が浅く、男性への免疫もない旭は、父親ほど年の離れた黒川が放つ圧倒的な「オスの質量」と、自分だけに向けられる歪んだ独占欲に抗えない。

左薬指の指輪が目に入るたび、いけないことだと分かっていても――。
その太い腕に抱き締められると、旭は思考を溶かされ、自ら堕ちていってしまう。

「教えてやる。仕事よりも、もっと気持ちいいことを…」

寂しがり屋な猛獣上司と、愛を知らない餌食の部下。
出口のない、背徳のオフィス・ラブストーリー。
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