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第8話
銀色の首輪
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首筋の鈍い痛みが、昨日の記憶を鮮明に蘇らせる。
オフィスの洗面所。白石旭は鏡の前で、ワイシャツの襟を少しだけ広げた。
そこには、赤黒く変色した鬱血痕が、毒々しい花のように咲いていた。
昨日の昼、第3会議室の机の上で、黒川につけられたものだ。
「……こんなの、見られたら終わりだ…」
旭はため息をつき、絆創膏の上からさらにコンシーラーを塗って、丁寧に隠した。
同期の松田と話していただけで、あの豹変ぶり。
黒川重蔵という男の独占欲は、旭の想像を遥かに超えていた。けれど、恐怖と同じくらい、胸の奥が熱くなるのを感じていた。
あの「鬼の黒川」を、そこまで狂わせているのが自分だという事実。
それは、承認欲求に飢えていた旭にとって、何よりの麻薬だった。
「白石、ちょっといいか?」
不意に背後から声をかけられ、旭は心臓が止まるかと思った。
鏡越しに、黒川と目が合う。
いつものポーカーフェイス。だが、その視線は鋭く旭の首筋――絆創膏の貼られた場所を捉え、満足げに細められた。
「……今夜、空けておけ。渡したいものがある。」
「え……?」
「拒否権はない。いいな?」
黒川はそれだけ告げると、濡れた手をハンカチで拭いながら悠然と去っていった。
その背中の大きさ。スーツ越しでも分かる筋肉の厚み。
旭は、鏡の中の自分が、恋する乙女のように上気しているのを認めざるを得なかった。
***
連れて行かれたのは、夜景の見えるホテルの最上階にあるフレンチレストランだった。
煌めく街の灯り。行き交う洗練されたウェイターたち。
明らかに場違いな自分に縮こまる旭をよそに、黒川は堂々とワインリストを眺めている。
「どうした、旭。食わないのか?」
「いえ、その……こんな高級な場所、緊張して味が……。」
「慣れろ。これからは、こういう場所にも頻繁に来ることになる。」
黒川はフォアグラを1口で平らげると、ナプキンで口元を拭い、スーツの内ポケットから小さな包みを取り出した。
ベルベットの深紅の小箱。
「……開けてみろ。」
旭は震える手で箱を受け取った。
パカ、と蓋を開ける。
そこに収められていたのは、シンプルだが重厚な輝きを放つ、プラチナのリングだった。
中央には、小さなダイヤモンドが埋め込まれている。
「部、長……これ……」
「俺とお揃いだ。」
黒川が自身の左手を掲げて見せた。
そこにあるのは、既婚者の証である結婚指輪――ではない。
小指だ。
黒川の太い小指に、旭のものと同じデザインのピンキーリングが嵌められていた。
「結婚指輪は外せない。……だが、これなら怪しまれずに着けられる。」
黒川の言葉に、旭の胸がズキンと痛んだ。
そうだ。この人は既婚者なのだ。左手薬指には、奥さんとの誓いのリングが鎮座している。
自分に与えられたのは、あくまで「2番目」のリング。
けれど、黒川は席を立ち、旭の隣に来ると、その大きな手で旭の左手を取った。
「お前は薬指に着けろ。」
「えっ……でも、会社でこんなの着けてたら……」
「会社ではチェーンに通して首から下げておけ。……だが、俺といる時だけは指に嵌めろ。」
黒川は強引に、旭の薬指にリングを押し込んだ。
ひやりとした金属の感触。
サイズは驚くほどぴったりだった。いつの間に測ったのだろうか。
指輪が根元まで収まると、黒川はその指を持ち上げ、甲にうやうやしく口づけを落とした。
「これで、悪い虫も寄り付かないだろう。」
「……虫除け、ですか?」
「ああ。お前は俺のものだという首輪だ。」
首輪。
その言葉に、旭の背筋がゾクゾクと震えた。
屈辱的なはずなのに、与えられた指輪の重みが、愛されている証のように感じてしまう。
黒川の瞳が、情欲で揺らめいた。
「……部屋を取ってある。その指輪の着け心地を、確かめに行こうか?」
***
ホテルのスイートルーム。
ドアが閉まった瞬間、黒川は旭を壁に押し付け、野獣のように唇を奪った。
「んんっ……! じゅう、ぞう、さん……っ!」
レストランでの紳士的な振る舞いは消え失せ、そこには飢えたオスがいた。
服を脱ぎ捨て、ベッドになだれ込む。
黒川の100キロ近い巨体が旭の上にのしかかる。重い。熱い。
黒川は旭の左手を掴むと、指輪の嵌まった薬指を口に含み、ねぶり回した。
「あっ、ぁ……! そこ、汚い、です……!」
「美しい指だ。……俺が贈った指輪がよく似合う…」
黒川の舌が指の股を舐め、指輪の感触を確かめるように吸い付く。
その執着心。
黒川自身の楔はすでに硬く膨れ上がり、旭の太ももにぐりぐりと押し付けられていた。
事前の愛撫もそこそこに、黒川は旭の脚をM字に開かせ、一気に奥まで貫いた。
「ぎ、ぁあああっ!!」
「……ッ、締め付けがいい。やはり、お前の中は最高だ。」
黒川が旭の左手と、自身の左手を絡ませる。いわゆる「恋人繋ぎ」だ。
そこで、残酷な音が響いた。
カチ、カチ。
黒川の薬指にある「結婚指輪」と、旭の薬指にある「愛人の指輪」。2つの金属がぶつかり合い、硬質な音を立てる。
その音が、旭に現実を突きつけると同時に、背徳的な興奮を極限まで高めた。
「見てみろ、旭。……俺たちの指輪が、キスしてるぞ?」
「いやっ、やぁ……っ! そんな、こと……言わないで……っ!」
「泣くな。……愛している。誰よりも、お前を愛しているんだ。」
黒川が激しく腰を打ち付ける。
岩のような腹が旭の身体を打ち据え、内臓がひっくり返るような快感が突き上げる。
指輪同士が擦れる感触。
黒川の奥さんへの誓いと、自分への独占欲が、皮肉にも交じり合っている。
「じゅうぞう、さん……! おくさんに、かえらないで……っ! 僕だけの、ものに……っ!」
「ああ……! 帰らない。今夜はずっと、お前の中にいる……!」
旭の懇願に、黒川はさらに激しく応えた。
互いの指が白くなるほど強く握りしめ合う。
絶頂の瞬間、黒川は旭の名前を叫びながら、その最奥に熱い種を注ぎ込んだ。
旭もまた、目の前が真っ白になりながら、黒川の分厚い背中に爪を立て、自ら堕ちていった。
***
事後。
黒川の腕枕の中で、旭は自分の左手をぼんやりと見つめていた。
プラチナの輝きは美しい。
けれど、それは決して祝福されたものではない。
黒川は深い寝息を立てている。その左手には、変わらず結婚指輪が嵌まっている。
(……僕は、飼われているだけなんだろうか)
ふと湧き上がる不安。
だが、黒川の太い腕が、寝ていてもなお旭を逃がさないように抱きしめ直した瞬間、旭の迷いは消えた。
この重みこそが、真実だ。
旭はそっと黒川の胸板に頬を寄せ、与えられた「首輪」を愛おしむように撫でた。
たとえ2番目でもいい。この強くて孤独な男を支えられるのは、自分しかいないのだから。
窓の外では、冷たい雨が降り始めていた。
それは、これから2人に訪れる波乱を予感させるような雨音だった。
オフィスの洗面所。白石旭は鏡の前で、ワイシャツの襟を少しだけ広げた。
そこには、赤黒く変色した鬱血痕が、毒々しい花のように咲いていた。
昨日の昼、第3会議室の机の上で、黒川につけられたものだ。
「……こんなの、見られたら終わりだ…」
旭はため息をつき、絆創膏の上からさらにコンシーラーを塗って、丁寧に隠した。
同期の松田と話していただけで、あの豹変ぶり。
黒川重蔵という男の独占欲は、旭の想像を遥かに超えていた。けれど、恐怖と同じくらい、胸の奥が熱くなるのを感じていた。
あの「鬼の黒川」を、そこまで狂わせているのが自分だという事実。
それは、承認欲求に飢えていた旭にとって、何よりの麻薬だった。
「白石、ちょっといいか?」
不意に背後から声をかけられ、旭は心臓が止まるかと思った。
鏡越しに、黒川と目が合う。
いつものポーカーフェイス。だが、その視線は鋭く旭の首筋――絆創膏の貼られた場所を捉え、満足げに細められた。
「……今夜、空けておけ。渡したいものがある。」
「え……?」
「拒否権はない。いいな?」
黒川はそれだけ告げると、濡れた手をハンカチで拭いながら悠然と去っていった。
その背中の大きさ。スーツ越しでも分かる筋肉の厚み。
旭は、鏡の中の自分が、恋する乙女のように上気しているのを認めざるを得なかった。
***
連れて行かれたのは、夜景の見えるホテルの最上階にあるフレンチレストランだった。
煌めく街の灯り。行き交う洗練されたウェイターたち。
明らかに場違いな自分に縮こまる旭をよそに、黒川は堂々とワインリストを眺めている。
「どうした、旭。食わないのか?」
「いえ、その……こんな高級な場所、緊張して味が……。」
「慣れろ。これからは、こういう場所にも頻繁に来ることになる。」
黒川はフォアグラを1口で平らげると、ナプキンで口元を拭い、スーツの内ポケットから小さな包みを取り出した。
ベルベットの深紅の小箱。
「……開けてみろ。」
旭は震える手で箱を受け取った。
パカ、と蓋を開ける。
そこに収められていたのは、シンプルだが重厚な輝きを放つ、プラチナのリングだった。
中央には、小さなダイヤモンドが埋め込まれている。
「部、長……これ……」
「俺とお揃いだ。」
黒川が自身の左手を掲げて見せた。
そこにあるのは、既婚者の証である結婚指輪――ではない。
小指だ。
黒川の太い小指に、旭のものと同じデザインのピンキーリングが嵌められていた。
「結婚指輪は外せない。……だが、これなら怪しまれずに着けられる。」
黒川の言葉に、旭の胸がズキンと痛んだ。
そうだ。この人は既婚者なのだ。左手薬指には、奥さんとの誓いのリングが鎮座している。
自分に与えられたのは、あくまで「2番目」のリング。
けれど、黒川は席を立ち、旭の隣に来ると、その大きな手で旭の左手を取った。
「お前は薬指に着けろ。」
「えっ……でも、会社でこんなの着けてたら……」
「会社ではチェーンに通して首から下げておけ。……だが、俺といる時だけは指に嵌めろ。」
黒川は強引に、旭の薬指にリングを押し込んだ。
ひやりとした金属の感触。
サイズは驚くほどぴったりだった。いつの間に測ったのだろうか。
指輪が根元まで収まると、黒川はその指を持ち上げ、甲にうやうやしく口づけを落とした。
「これで、悪い虫も寄り付かないだろう。」
「……虫除け、ですか?」
「ああ。お前は俺のものだという首輪だ。」
首輪。
その言葉に、旭の背筋がゾクゾクと震えた。
屈辱的なはずなのに、与えられた指輪の重みが、愛されている証のように感じてしまう。
黒川の瞳が、情欲で揺らめいた。
「……部屋を取ってある。その指輪の着け心地を、確かめに行こうか?」
***
ホテルのスイートルーム。
ドアが閉まった瞬間、黒川は旭を壁に押し付け、野獣のように唇を奪った。
「んんっ……! じゅう、ぞう、さん……っ!」
レストランでの紳士的な振る舞いは消え失せ、そこには飢えたオスがいた。
服を脱ぎ捨て、ベッドになだれ込む。
黒川の100キロ近い巨体が旭の上にのしかかる。重い。熱い。
黒川は旭の左手を掴むと、指輪の嵌まった薬指を口に含み、ねぶり回した。
「あっ、ぁ……! そこ、汚い、です……!」
「美しい指だ。……俺が贈った指輪がよく似合う…」
黒川の舌が指の股を舐め、指輪の感触を確かめるように吸い付く。
その執着心。
黒川自身の楔はすでに硬く膨れ上がり、旭の太ももにぐりぐりと押し付けられていた。
事前の愛撫もそこそこに、黒川は旭の脚をM字に開かせ、一気に奥まで貫いた。
「ぎ、ぁあああっ!!」
「……ッ、締め付けがいい。やはり、お前の中は最高だ。」
黒川が旭の左手と、自身の左手を絡ませる。いわゆる「恋人繋ぎ」だ。
そこで、残酷な音が響いた。
カチ、カチ。
黒川の薬指にある「結婚指輪」と、旭の薬指にある「愛人の指輪」。2つの金属がぶつかり合い、硬質な音を立てる。
その音が、旭に現実を突きつけると同時に、背徳的な興奮を極限まで高めた。
「見てみろ、旭。……俺たちの指輪が、キスしてるぞ?」
「いやっ、やぁ……っ! そんな、こと……言わないで……っ!」
「泣くな。……愛している。誰よりも、お前を愛しているんだ。」
黒川が激しく腰を打ち付ける。
岩のような腹が旭の身体を打ち据え、内臓がひっくり返るような快感が突き上げる。
指輪同士が擦れる感触。
黒川の奥さんへの誓いと、自分への独占欲が、皮肉にも交じり合っている。
「じゅうぞう、さん……! おくさんに、かえらないで……っ! 僕だけの、ものに……っ!」
「ああ……! 帰らない。今夜はずっと、お前の中にいる……!」
旭の懇願に、黒川はさらに激しく応えた。
互いの指が白くなるほど強く握りしめ合う。
絶頂の瞬間、黒川は旭の名前を叫びながら、その最奥に熱い種を注ぎ込んだ。
旭もまた、目の前が真っ白になりながら、黒川の分厚い背中に爪を立て、自ら堕ちていった。
***
事後。
黒川の腕枕の中で、旭は自分の左手をぼんやりと見つめていた。
プラチナの輝きは美しい。
けれど、それは決して祝福されたものではない。
黒川は深い寝息を立てている。その左手には、変わらず結婚指輪が嵌まっている。
(……僕は、飼われているだけなんだろうか)
ふと湧き上がる不安。
だが、黒川の太い腕が、寝ていてもなお旭を逃がさないように抱きしめ直した瞬間、旭の迷いは消えた。
この重みこそが、真実だ。
旭はそっと黒川の胸板に頬を寄せ、与えられた「首輪」を愛おしむように撫でた。
たとえ2番目でもいい。この強くて孤独な男を支えられるのは、自分しかいないのだから。
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