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第2話
黒い追跡者
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タイヤがアスファルトを削る悲鳴が、静まり返った地下駐車場に反響した。
厳がハンドルを鋭く切り、加速するセダンの衝撃で俺の体はドアに叩きつけられる。
「湊、ハッキングは!」
「……今やってる! 敵のSUV、衝突防止システムを強制起動させる……今ッ!」
俺が画面の実行キーを叩いた瞬間、出口を塞いでいたSUVの1台が、何も無い空間に反応して急ブレーキをかけた。タイヤが白煙を上げ、車体が激しく揺れる。そのわずかな隙間に、厳は迷いなくセダンを滑り込ませた。
ガリガリッ! と火花を散らしながら、俺たちは地上へと飛び出した。
「ふぅ……。でも厳、まだ終わってない。後ろ、ついてきてる!」
ミラー越しに見えるのは、2台の黒いSUV。ライトを消したまま、執拗に俺たちの背後を狙っている。
厳は無言でアクセルを踏み抜いた。セダンが猛然と加速し、俺たちは首都高の入り口へと滑り込む。
「羽田へ向かえ」
助手席に放り出していた俺のスマホが、突如として霧島の声を再生した。
『霧島……!? どこで見てるの!』
『監視カメラの映像を拝借してるのさ。羽田の貨物ターミナル、第3ゲートに「荷物」を預けてある。偽造パスポートと、お前たちの新しい名前だ。……掃除屋の連中、増援を呼んでるぞ。六本木ジャンクションで仕掛けてくるはずだ。』
通信が切れる。
厳はニヤリと不敵な笑みを浮かべた。
「あの野郎、相変わらずいい趣味してやがる。……湊、六本木のカメラと信号、弄れるか?」
「やってみる。……厳、左の車線に寄って!」
俺は指を走らせ、首都高の交通管制システムへ潜り込む。
深夜のジャンクション。敵のSUVが左右から俺たちを挟み込もうと距離を詰めてくる。助手席の窓が開き、再び銃口が覗いた。
「させるかよ……!」
俺はジャンクション直前の電光掲示板をハッキングし、全画面を「緊急停止・進入禁止」の赤色に染め上げた。同時に、後続車を遮断するための遮断機を強制的に降ろす。
「今だよ、厳! 分岐を右!」
厳がハンドルを右に叩きつける。セダンはガードレールギリギリを掠めながら分岐へと飛び込んだ。
反応が遅れた1台のSUVが、降りてきた遮断機に激突し、火花を散らしながらスピンする。
「あと1台……!」
残った1台は、執拗だった。
セダンのリアガラスが銃弾で砕け散る。
「湊、ハンドルを握れ!」
「えっ!? 無理だよ!」
「いいから握れ! 直進だ、離すなよ!」
厳がハンドルから手を離し、サンルーフから身を乗り出した。
激しい風の音。
俺は必死にハンドルを固定する。時速160キロの世界。視界が恐怖で歪む。
厳は腰を据え、2丁の拳銃をSUVのフロントガラスに向けて固定した。
揺れる車体、深夜の高速。
厳の瞳は、まるで時間が止まったかのように静止していた。
タン、タン、タンッ!
3連射。
1発目がガラスを割り、2発目が運転手の肩を、そして3発目がタイヤを捉えた。
SUVが派手にリバウンドし、中央分離帯に激突して火柱を上げる。
厳が車内に戻り、再びハンドルを奪い取った。
俺はシートに沈み込み、荒い息を吐く。
「……死ぬかと思った……」
「安心しろ。お前を死なせたら、地獄まで追いかけてくる奴がここにいるからな。」
厳が俺の頭を乱暴に撫でる。その手の温かさが、先ほどまでの死の恐怖を少しずつ溶かしていった。
前方に羽田の明かりが見えてくる。
日本という国が、俺たちを追い出そうとしている。
あるいは、俺たちがこの国を捨てるのか。
「湊、パスポートの名前、何にするか決めたか?」
「え……まだだよ。厳は何がいい?」
「なんでもいいさ。……お前と俺が、隣に並べる名前ならな(笑)」
セダンは夜の滑走路を見下ろす貨物ゲートへと、滑り込んでいった。
厳がハンドルを鋭く切り、加速するセダンの衝撃で俺の体はドアに叩きつけられる。
「湊、ハッキングは!」
「……今やってる! 敵のSUV、衝突防止システムを強制起動させる……今ッ!」
俺が画面の実行キーを叩いた瞬間、出口を塞いでいたSUVの1台が、何も無い空間に反応して急ブレーキをかけた。タイヤが白煙を上げ、車体が激しく揺れる。そのわずかな隙間に、厳は迷いなくセダンを滑り込ませた。
ガリガリッ! と火花を散らしながら、俺たちは地上へと飛び出した。
「ふぅ……。でも厳、まだ終わってない。後ろ、ついてきてる!」
ミラー越しに見えるのは、2台の黒いSUV。ライトを消したまま、執拗に俺たちの背後を狙っている。
厳は無言でアクセルを踏み抜いた。セダンが猛然と加速し、俺たちは首都高の入り口へと滑り込む。
「羽田へ向かえ」
助手席に放り出していた俺のスマホが、突如として霧島の声を再生した。
『霧島……!? どこで見てるの!』
『監視カメラの映像を拝借してるのさ。羽田の貨物ターミナル、第3ゲートに「荷物」を預けてある。偽造パスポートと、お前たちの新しい名前だ。……掃除屋の連中、増援を呼んでるぞ。六本木ジャンクションで仕掛けてくるはずだ。』
通信が切れる。
厳はニヤリと不敵な笑みを浮かべた。
「あの野郎、相変わらずいい趣味してやがる。……湊、六本木のカメラと信号、弄れるか?」
「やってみる。……厳、左の車線に寄って!」
俺は指を走らせ、首都高の交通管制システムへ潜り込む。
深夜のジャンクション。敵のSUVが左右から俺たちを挟み込もうと距離を詰めてくる。助手席の窓が開き、再び銃口が覗いた。
「させるかよ……!」
俺はジャンクション直前の電光掲示板をハッキングし、全画面を「緊急停止・進入禁止」の赤色に染め上げた。同時に、後続車を遮断するための遮断機を強制的に降ろす。
「今だよ、厳! 分岐を右!」
厳がハンドルを右に叩きつける。セダンはガードレールギリギリを掠めながら分岐へと飛び込んだ。
反応が遅れた1台のSUVが、降りてきた遮断機に激突し、火花を散らしながらスピンする。
「あと1台……!」
残った1台は、執拗だった。
セダンのリアガラスが銃弾で砕け散る。
「湊、ハンドルを握れ!」
「えっ!? 無理だよ!」
「いいから握れ! 直進だ、離すなよ!」
厳がハンドルから手を離し、サンルーフから身を乗り出した。
激しい風の音。
俺は必死にハンドルを固定する。時速160キロの世界。視界が恐怖で歪む。
厳は腰を据え、2丁の拳銃をSUVのフロントガラスに向けて固定した。
揺れる車体、深夜の高速。
厳の瞳は、まるで時間が止まったかのように静止していた。
タン、タン、タンッ!
3連射。
1発目がガラスを割り、2発目が運転手の肩を、そして3発目がタイヤを捉えた。
SUVが派手にリバウンドし、中央分離帯に激突して火柱を上げる。
厳が車内に戻り、再びハンドルを奪い取った。
俺はシートに沈み込み、荒い息を吐く。
「……死ぬかと思った……」
「安心しろ。お前を死なせたら、地獄まで追いかけてくる奴がここにいるからな。」
厳が俺の頭を乱暴に撫でる。その手の温かさが、先ほどまでの死の恐怖を少しずつ溶かしていった。
前方に羽田の明かりが見えてくる。
日本という国が、俺たちを追い出そうとしている。
あるいは、俺たちがこの国を捨てるのか。
「湊、パスポートの名前、何にするか決めたか?」
「え……まだだよ。厳は何がいい?」
「なんでもいいさ。……お前と俺が、隣に並べる名前ならな(笑)」
セダンは夜の滑走路を見下ろす貨物ゲートへと、滑り込んでいった。
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