見た目幼女は精神年齢20歳

またたび

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37話

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「カナ、皿洗いが一息ついたらお使いをお願いしたい!」

「はい!わかりました」


それは料理長からのお使いだった

渡されたメモに書いてあるリストを確認すればそこには今日の食事の材料一人前


料理長の話によると…


「いつもは客人がいつ来てもいいように一人分は予備で用意しているんだが、まさかの客人が二人も来てしまってな…

一人分足りないからその分買いに行ってくれ!」


とのこと

まあお金も貰ったし、量だってインベントリにしまえば重いものを持たずに歩けるから問題ないだろう


それにしても客人か…城に客人なんてどんだけ偉い人なのか気になるな

まあ新人の皿洗い係である私が知る必要なんてないんだろうな

それに市場に着いたのだからさっさと買い出しを終わらせて厨房に戻ろう





ドンッ!





「わっ…ごめんなさい!

怪我しませんでした……か……!」


いきなり知らない人とぶつかって即座に謝るのは日本人の性というもの

だけどこの時以上にそんな魂に染み込んだ体質を恨んだことは無い


「おい気をつけろよ……ってお前は…!」


なんでお前が首都アルバここにいるんだよ

そのくすんだ緑色の長髪はまだ記憶に残ってる


「あっ…あの時のワカメ頭!」

「あ?

今なんて言った?」


しまったと思い慌てて口を塞いでももう遅い
 
こいつ「ワカメ頭」というワードに敏感なのか顔に血管が浮き出る程怒ってる…怖っ!?


「仮面の男もそうだがお前も大概だな…

よし、剣をぬけ」


怒りを超えて真顔になった状態で腰に装備する剣を引き抜こうとするワカメ頭…


今思ったんだけどこいつの名前ってなんだよ


「ストップ!ストップ!

私があなたの事をワカメ頭って呼んだのはあなたの名前がわからなかったから!

そんなにワカメ頭という呼び名が嫌ならワカメ頭以外の自分の名前を教えてよ!」

「だからそのあだ名をやめろ!

何度も何度もワカメ頭って呼びやがって…」


さらに苛立ちが積もった彼は私を殴ろうとする拳を握りしめて腕をプルプルと震わせていた

これ以上はワカメ頭なんて言えないな



「……ナザンカだ

俺は教えたんだ、だからお前も名乗れ」


突然始まった自己紹介に戸惑って偽名を作ることも忘れた私は慌ててしまった。


「わっ…私はカニャです!」


しかも「加奈」という2文字だけなのに盛大に噛むという

なんだよカニャって…


「カニャ…?

あぁカーニャか

お前焦り過ぎだ、俺はそこまで怖くない」
 

ほらなんかよく分からない気の使い方をして名前を盛大に間違えてるよ

それに盗賊やっておいて何が怖くないだよ!

嘘だ!って叫ぶぞコノヤロウ


……いや止めておこう


トラブルには巻き込まれたくないし、自分で起こしたくないしね


「では私はこの辺で失礼します

これでも今は仕事中なので」


くるりと方向転換をして渡されたメモに書いてある材料の売ってある店に向かった。

相変わらず賑わっているようで…だけどヘンリー王国に比べれば移動しやすい


「おじ様、これとこれとこれをくださいな」

「あいよっ!

お嬢ちゃん可愛いからおまけしてやるよ!」


あら嬉しいこと

じゃがいもと人参とりんごを買ったらおまけして貰っちゃったわ

おじ様にしっかりとお礼を言ってりんごを受け取ると、買ったものをマントの下にしまった

マントの下からならインベントリにしまいやすいからね


「ありがとうございます!」


それにしてもいいりんごをおまけして貰っちゃったな

この世界のりんごはそのまま食べても美味しいけど甘みがそこまでない

だからこういうのはジャムにしたりタルトにするのが美味しいんだよね


「ほう…アプレの実か

程よい甘みと酸味が丁度良くて美味いんだよな」




……なんで当たり前のようにいるんだよこいつは





「なっなんであんたが私の隣にいるの!?」


隣でりんごを見つめているワカメ頭……ではなくナザンカ


「今お前が俺の呼び名を間違えたような気がするのは俺の気の所為だよな?」

「ダイジョウブキノセイダヨー

…じゃなくてなんで私の隣にいるのよ?

さっき別れたばかりだと思うのだけど…。」


何となく手に持ってるりんごを一つあげると嬉しそうに受け取ってかじってるナザンカ

確かこいつって首都アルバじゃなくて東部のグラモフォンにいたよね?


「俺はしばらくこの国にいるんだよ

ここには剣の手入れを頼みに来たんだ」


そう言われて私は彼の腰に装備された剣をこっそり鑑定してみることにした。


そしたらまあその剣がとんでもない代物だったよ…


結果だけ言うならめちゃくちゃつおい剣

しかも意思をもちかけているなんてナザンカは気づいているのだろうか?

それほどまでに彼がその剣を大切に扱っていたのだろうな


「とても良い剣だね」

「これは…大事な人から貰った剣だからな

壊したくないし壊されたくもない」


その時の彼の表情はとても優しくてそれでいて悲しげだった

思い出したくない記憶でも思い出させてしまったのか…だったら悪いことをしてしまったな


「私もこのダガーを大切に扱ってる…

壊したくないし壊されたくないからその手入れをする場所を教えてくれない?」

「ああいいぞ

前にお前の剣と交えた時に思ったが、とても良いダガーだった」


やったね褒めてくれた

私は嬉しくてニッコリと笑うともう一個りんごをあげることにした。

そういえば明後日が丁度休みの日だったな


「明後日会えないかな?」

「では明後日に剣の手入れをしに行こう」


決まりだな

そしたらその日に会おう…そんな約束をして私はナザンカと別れた

盗賊団のリーダーだけど意外と良い奴なのかもしれない

次に会う時はりんごを使ったおやつでも作ってあげますかね…。






「(あっ…名前を訂正するの忘れてた!)」
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