見た目幼女は精神年齢20歳

またたび

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70話

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真彩さんの冒険者登録はあっさり終わってしまった。

しかしあの受付嬢さん…真彩さんの異常なステータスを見てないのか?

顔色ひとつ変えることなく発行したカードを彼女に渡してたよね?


「ねぇツキカゲ

あの受付嬢さんは何者なの?」

「おそらくあのステータスは彼女には見えてないらしい

国や地域によってはステータスがお互いに見える場合もあるしそうじゃない場合もあるからな…」


なるほど、つまりあの受付嬢さんは真彩さんのステータスを見てないということか

ちなみに私達は見ているし、なんなら前から知ってた。

流石は同じ異世界から来た人間だ…ステータスが異常でした

なんだよMP四万って…そしてどうやら彼女にはとあるスキルがあるらしい

今回はそれに関連したクエストを受けるとしますかね











「はい、というわけで今から薬草採取をしマース」


ドンドンパフパフと口で言いながら盛り上がるのは私だけか…辛いな

私のパーカーを未だに羽織る彼女をじっとみながらクエスト内容を説明した。


「内容はポーションの材料となる薬草を採取してくださいってやつだね

今から採取する薬草の画像を見せるからわからないことがあったら遠慮せずに聞いて」

「はっ…はい!」


肩に力の入った彼女を見て呆れたツキカゲは真彩さんの頭を撫でてリラックスしろと言っていた。

うわぁ…流石イケメンは何をやっても似合うわね

なんて思いながらもスキル電子世界インターネットで画像検索をして薬草一覧を見せると彼女はすぐに覚えたと言って何も操作は教えてないのにウインドウを閉じた。

うん…やっぱり彼女は機械類の操作覚えてるやつだわ


「じゃあ早速始めようか!

あっそうだ…ツキカゲには別のクエストをお願いするね」


早速、薬草採取を始める真彩さんを見ながら私は懐から一枚の紙をツキカゲに見せた。

クエストの内容はこの森にいるレッドボアの討伐

一頭では無く三頭…三匹の子豚なんてそんな可愛らしいものでは無い

とても危険なので普通の人間だったら十人以上の編成で受けるようなクエストだが、ツキカゲは世界に六体しかいない伝説のドラゴンの一体である。


「三頭なんて朝飯前だな…ということで討伐はしてやるから明日の朝ごはんはレッドボアを使った料理にしろ」

「ハイハイ…相変わらずの食欲お化けで私はある意味安心したよ」


苦笑いをしながらその紙をツキカゲに渡すと彼はあっという間に森の奥に飛んで行ってしまった。

近くでそれを見ていた真彩さんは不安そうな顔をしていたけど、私はしゃがんで目線を合わせて大丈夫だよと言った。


「さてと…薬草採取ならこの姿じゃなくてもいいよね」


クエストを受ける私は基本的に大人の姿ではなく子どもの姿でやることがある

なぜなら疲れるから

本来の子どもの姿を偽るために大人の姿に化けているので魔力を消費する

今は真彩さんしかいないし、今後のためにも彼女には私の正体を明かしておく必要がある。


「えっ…?

あの…加奈さん?」

「そう…これが私の本当の姿

何が原因かはわからないけどこの世界に召喚された時にはもう既にこの姿だったのよね…

見た目は幼女、中身は20歳の成人女性という矛盾を無くすために普段はスキルの力で大人の姿になっていたのよ」


ケラケラと笑いながら説明をすると、彼女の目には涙が溢れていた

一体どうして…だけど彼女の説明ですぐに理解出来たんだ。


「辛い思いをしていたんですね…私なんかよりもずっと辛い…!」


おいおい何を言っているのだ

どう考えたって沢山努力をしたのに報われなかった真彩さんの方がよっぽど辛い思いをしたはずだろう

……いや、この言い方は良くないな

結局私は最低なヤツだったというわけか


「私は何も覚えていない…辛いことを忘れてしまったせいであなたの辛い気持ちが分からないのです」


なるほど…辛い思いがどのようなものか思い出せないからこんなことを言っているのか

前にツキカゲから聞いた真彩さんの過去を私は全部覚えてる

彼女はロシア人の父と日本人の母親との間に生まれたハーフで生まれつきの茶色の髪の毛と瞳があったからこそ、あの場で悪魔族扱いされなかったし聖女として大事に扱われた。

だけどこの世界に来る前はだいぶ苦労をしたようで…

父を失い女手一つで育てられた彼女は高校卒業後すぐに就職したそうだ。

そんな苦労の中にも幸せがあったこと…それどころかそれを生み出す苦労すら彼女は忘れてしまった


「…私は全部覚えてるよ

真彩さんが教えてくれたから私は覚えることが出来たの


あなたが名前を教えてくれたから!

あなたが私に過去を教えてくれたから!


あなたが全部忘れたとしても私が全部覚えてるから…そんな顔しないでよ」


優しく手を握って顔を上げれば、潤む茶色の瞳と私の黒い瞳があった。

そよ風が濡れた頬を撫でて乾かすように、葉が重なり合っては離れる音が何重にも奏でられて彼女の心を落ち着かせる

私がいるから大丈夫


「加奈さん…ありがとうございます

私の名前を覚えていてくれて

私の言葉を覚えていてくれて…

ありがとうございます…っ!」


せっかく乾いた頬をまた濡らして小さな私の体を抱き寄せてきた彼女に何も言わずにただ腕を回して背中をさすった。

もしあなたがこの世界に来る前の記憶を取り戻せなかったとしても、空っぽになってしまったあなたと私達でたくさんの思い出で満たそう






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