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7章 中年は色々頑張ってみる
第59話 現代世界に戻ってしまったって話
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リリスにより意識を吹っ飛ばされた私はおもむろに目を開けた。
---次は~○○駅~○○駅~終点です。---
かなり久しぶりに聞こえてくる日本語。
不思議なもので思えている。やはり子供のころから使っている言葉って特別なのかな。
辺りを見回すと電車の中。昔は見慣れていたスーツ姿の私が窓ガラスには写っている。
<ん??んん??ここは?現代?ん?>
スーツのポケットを触ってみる。昔使っていたスマホだ。
膝の上には懐かしい革のカバンが置いてある。
<ん?夢落ち的なやつ?ここは転送される前?>
転送の影響なのか思考がハッキリしない。
窓ガラスに映る自分をマジマジと見つめて、
以前異世界転送された時に電車に乗っていたことを思い出す。
スマホのボタンを押してみる。
日付と時間が表示されているが、まさしくかなり昔、転送されたときのままの状況だ。
<裸?じゃないな。ん?戻ってきた?>
電車の窓の外には煌々と街の明かりが見える。マンションやビルも見える。
<帰ってきた?ん?現代に戻ったのか?>
窓の車窓をただぼーっと見つめながら、何となく体の力が抜けた。
<サーシャは?ユーリナ、ミューリ、シュレームは?ブランディング領はどうなる?>
目覚めてから5分くらいだろうか、ぼーっとしていた頭が冴えていく。
とりあえず、電車に乗って夢を見た。異世界の夢だ。
ビルなんかは一切ないのに、魔法があり、魔物との戦いがあり、ダンジョンがある。
そこにはユリママがいて、自分の美貌と若さのために異世界に私を召喚?したらしく、
私は彼女の目論見通り、成長し、伯爵になり、そして吸収された。
「ふぅ~~~」
大きくため息を吐く。
あまりにもリアルな夢だった。
魔物たちと対峙しているときは死の恐怖さえ感じた。
図書館に籠っていろいろな本を読んだ。
どれも魔法や魔法陣、異世界の歴史や雑貨などの本だった。
ユーリナの太ももはすごく柔らかく。
ミューリの尻尾はもふもふだった。
シュレームは耳に息をかけるとすごくくすぐったがりだった。
サーシャは脇の下、横腹より少し上くらいが弱かった。
あっちの世界にいた時間は5年ほど、異空間の中を合わせれば80年以上。
もはや向こうの世界が私の死に場所だと思ってた。
でも帰ってきた。
電車が走る小気味よい音と、窓から見える蛍光灯の明かり。
手に握られたスマホには、特に着信履歴もなければメッセージも届いていない。
<これが現実か~~。>
とりあえず、今置かれている状況を把握しようと、ポケットを触り、
カバンの中身を見て、自分が会社員で、現代を生きる中年オヤジであることを再認識する。
上着の右ポケットには見慣れた家の鍵。
そんな現代アイテムを見ながら、なんだかソワソワした違和感が背中を走る。
左手の甲に小さな傷がある。砂が入ってしまっているのか少し茶色い。
これは、リースにパワーレベリングしてもらった時に付いた傷で、
あの時は特に回復魔法とかじゃなく自然回復させられたことも思い出す。
スーツの内ポケットに財布があった。
中身はポイントカードや銀行のカード、チェーン店の割引券と少しのお金。
さっき飲んだ時の金額が書かれた小さな紙。
昼ご飯を買ったときにもらったレシートが入っていた。
<ん???>
ソワソワした違和感が大きくなっていく。
何だろう、すごく大事なものをなくしてしまったような喪失感。
気が付いた。左手の甲の傷。
私は現代社会では普通に会社員。
ケガをすること自体もあまりないし、手のひらはこんなに硬くない。
筋肉量もほとんど脂肪に変わってぽっちゃりさんだったお腹は何故か今はそれほど出ていない。
体が覚えている。あれは紛れもなく現実だった。
夢なんかじゃない、そこに暮らす人々がいて、
そこで一生懸命に過ごす人々がいた。
<あれは夢なんかじゃない!!!!>
電車が駅のホームに到着する。
最終電車の到着したホームにはほとんど人がいない。
蛍光灯の周りには小さな虫が飛んでいる。
私は全速力で改札へ向かう。
駅の改札の場所は、数十年前の記憶のはずなのに覚えている。
階段を駆け上げるけどあまり息切れしない。
私は改札に無意識のうちに定期券をかざし駅の外に出た。
駅の前には1台のタクシーが止まっている。
急いでそのタクシーのドアに近づくと、すーっとドアが開いた。
『どちらまで?』
「〇×町の飲み屋街まで。」
『お客さん結構金額かかるけど大丈夫?』
私は財布の中身を見た。ちょっと心もとない。
「カード使える?」
『今、カードの機械壊れちゃってるのよ~。』
「ちょっと待ってて!」
私は駅前にあるコンビニまで猛ダッシュした。
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