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8章 中年は平和を望んでみる
第87話 変な人ってどこにでもいるよねって話
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誤字訂正、ご意見ご感想などもお待ちしております。
作者の励みになります。
これからもご愛顧のほどよろしくお願いいたします。
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桜花メンバーの状況報告をした翌日。
ニテを送って神殿前まで来た。
魔道学校の件はあれから特に進展していないので、何とも言えないが、
とりあえず商業ギルドに魔道トイレを500台納品する事を約束しているので、
それを持っていこうと商業ギルドに向かっていた。
ルマン伯は以前の手紙でお願いしていた通り、魔道ライターと魔道水筒をキジュに送ってくれたそうだ。
私が上げた魔道トイレや魔道バスもかなり気に入ってくれたようで、『普及すれば衛生環境が良くなる!』とノリノリのようだ。
キジュ宛の手紙には魔道カーペットのことも書いてあったため、キジュから『これマジ?』的な反応をされたのがちょっと居心地悪かった。
ルマン領はどちらかというと辺境地にある。そこで日帰りもしくは1泊2日で王都を往復できるというのは、非常に興味深いらしい。
<まぁ私の場合転移魔法で一瞬で行けちゃうけど。>
『なるべく目立たないようにしたい。』とは思いながらも、
結局魔道トイレの量産に関しては、転送魔法陣や水の魔法陣はニテさんに、それ以外の部品や組み立て作業をフェダの鍛冶ギルドにお願いし、
闇魔法が使える人がいれば量産できる体制を整えた。
ウカンデさんの魔道インクさえあれば正直闇魔法なしでもできるのかもしれないが、そこまでの改良はしなかった。
ドラゴンの報酬でかなり潤ったうちの家計ではあるが、
探索前に使った金貨200枚とちょっとなどの出費分は一応魔素に戻して霧散させておいた。
今後はできる限り硬貨製造は行わないようにしたいという考えである。
前回はこの能力で、お金がほぼ無尽蔵になり、あれよあれよという間に巻き込まれた。
お金を使いすぎても正直いいことはないので、ニテと一緒に慎ましやかな生活がおくれればそれで十分であった。
チェスターの町を商業ギルドに向け歩いていると一人の老人に声をかけられた。
「あのーちょっとすまんがのーそこの兄さんや。」
見た感じはウカンデ神殿長と同じくらいの容姿をした老人。
しかし一つ問題がある。
私はほとんどクセで初対面の人には鑑定眼を使用してしまう。
その為、声をかけられた瞬間にこの老人にも鑑定眼を行ってしまった。
しかし、名前以外のステータスが全く見えなかったのである。
普通の人はレベルを見れば大体の年齢が分かるのだが、このじぃさんはレベルすらも見えなかったのである。
「はっはい。私ですか?なんでしょう?」
「そうじゃそうじゃ、お主じゃ。少しお時間をいただけないかの~。」
「はぁ。なんでしょうか?」
「まぁここではなんじゃし、ちょっとそこの食事処にでも入ろうか。」
じぃさんは私の前を歩きすぐ目の前の食事処の入り口で、私に向かって手招きをしている。
そもそもステータスが見えないので、最悪今の自分より強い人間の可能性がある。
そうであれば一瞬にしてこんな小さな町は消し飛ぶ。恐る恐るその老人の後をついて食事処に入る。
老人は適当にすわり、私が座ったとたんに、認識阻害と防音と思わしき障壁を展開した。
私は一瞬の障壁の展開に緊張し、席を立った。
「まぁまぁ、ちょいとお話をしたいだけじゃ、戦う意思はない。座ってはなそうじゃないか。」
そういってじぃさんはどこから取り出したのかお茶の入った湯飲みのようなものを2つテーブルの上に置いた。
認識阻害の効果なのか、店員は全くこちらに気が付いていない。店に入ったときから、何らかのスキルを使っていたのだろうか。
どちらにしても、今の私でも戦うにはかなり分が悪い感じである。
一つため息を吐いて、老人の向かい側の席に座る。
「よいよい。話が進められて助かるぞ。まぁまずは自己紹介からじゃな。儂はリーデンス。儂を知る者は『リー爺』と呼んでおる。
お主はシュウイチ・サカイというんじゃな。転生者か?」
この爺さんも私に鑑定眼を使ったのか、名前は既にバレているという事はレベルなども見られている。
というよりこの世界で私のフルネームを知っている人にあまりいい思い出がない。
その上質問内容が『転生者か?』だ。疑いを通り越して確信的に怪しい。
「転生者?何のことでしょうか?」
「まぁまぁ初対面じゃし警戒するのは無理ない。ちょいと儂の話をしようかの。
まぁ儂もお主と同じこことは違う世界から来た者じゃ。というより、儂がこの世界を作った。」
「はい!??」
なんか変な爺さんである。正直、お知り合いになりたくはない部類の人である。
しかしそこからの爺さんの話はなかなか興味深いものだった。
この爺さんは元々は私と同じ世界。私が『現世』と呼んでいる世界の人だった。
時代的には紀元前と思われる。アマゾン辺り。いわゆるマヤ文明とかあのあたりの人であるようだ。
その当時の文明はそこそこ進んでいたらしいが、私が知っている文明とは全く違っていた。
彼は『魔法』を研究していたそうだが、ある時魔法陣を開発する。今のこちらで言うところの『聖痕』である。
彼は自分の体に聖痕を刻み、しばらくして『魔法』による『事象の具現化』に成功する。
火を出したり水を出したりする方法が分かったのはこの頃らしい。
それからさらにいろいろと練習している中で、彼は空間魔法にも行きついた。まさに天才である。
しかし彼は私がしなかったミスというか、やらかしをしてしまったのである。
空間魔法で作った空間に自分が入ったまま、入り口を閉じてしまった。
結果的に彼は一人きりで自分の作った空間に閉じ込められてしまったようである。
何度か、空間を繋げようと努力したらしいが、別の空間ができるだけで、元の世界には戻れなかったそうだ。
彼は生きていくために土魔法や風魔法、聖魔法までも編み出していく。
それと共に生活空間を確保するため空間を拡張していったそうだ。
彼は長い時間の中で私にはできない魔法を編み出すことになる。
『有機物の錬成』である。
私は鉱物などの無機物は土魔法の応用で作り出すことができる。
しかし、有機物はその構造が非常に複雑であるという認識が邪魔をしているのか、有機物の錬成はやっていない。
彼は彼が作り出した土から、植物が生まれたことに着目し、無意識に魔力から有機物を生成していたことに気づく。
それから、彼は永遠ともいえる命を得る。
つまり、肉体の老化はいわゆる『細胞の死』なのではあるが、彼は細胞が作れる。
彼は老いた体の部位を自分で作り直したり、聖魔法の源である生命エネルギーのようなものを利用して細胞そもそもを回復したりすることで
『老いることのない体』を手に入れる。
ちなみに今の見た目は、『自分が気に入っているから。』という理由で今の老人の格好をしているらしい。
彼が魔法の練習をするたびに空間の魔素濃度が上がっていき、いずれ爺さん以外の生物や魔物が生まれ始める。
それに合わせて『転生者』という迷い人が現世からやってくるようになる。こちらの世界で肉体を持ち、生活を行い始める。
人間とコボルトが交配してドワーフが生まれ、人間と精霊が交配してエルフが生まれた。
他にも竜人族やオーク族など魔素から自然発生しないものは基本的に昆虫か人間との交配種らしい。
そうして今私がいる世界が作られた。爺さんが言うには今のこの世界の広さはかなり広くなっているらしい。
ちなみに天井も数千キロ上まで広げているらしい。たぶんこの爺さんはバカだと思う。
だって天井を高くした理由が、『雲が見たかったから』らしい。
ちなみにこちらの世界での太陽は『夕日が見たいから』という理由で作った超特大の光球が上空で動いているらしい。
要は『天動説』的なつくりになっているらしい。
「まぁこの世界の成り立ちはこんなもんじゃ。なんか質問あるかの?」
かなり長いこと爺さんの話を聞いていたが、はっきり言ってボケた爺さんなのかな?くらいにしか感じていなかった。
「はぁ。」
「お主まだ状況が理解できていないようじゃな。まぁ無理もなかろう。おぬし飛べるか?」
「えっ?はっはい。まぁ」
爺さんはおもむろに立ち上がって店を出る。私も慌てて店を出た。
「一緒に上に行けば分かる。寸前までは儂が転移してやろう。」
そういって爺さんが私の肩に手を置くと一気に数千キロ上空に転移しやがった。
いきなり地面が無くなる感覚にびっくりして慌てて風魔法で浮かぶ。
私が飛んでいるのを確認すると爺さんは上を指さし、上がっていく。
私も上がっていく。やがて異空間の天井にたどり着く。本当に天井があった。
現世でゆうところの宇宙空間なのだろうが、かなり上空にあることは間違いない。
この天井を目の当たりにして、爺さんが言っていることはあながちウソではないことを理解した。
爺さんは私の肩に手を置くとまた転移した。そこは草原だった。
爺さんが前方に行くと体に違和感を感じた。転移魔法陣である。
横の壁は到達すると対角線的に反対側へ自動で転移させられるらしい。
という事は地面を沢山掘ればいつか空間の床に到達するのであろう。
ここまで見せられるとさすがにこの爺さんはボケてるわけじゃないと認識する。
私の考えがまとまったのが分かったのか、私の肩に手を置き、先ほどまでいたチェスターの町に転移してくれた。
もう辺りは昼である。とりあえず昼ご飯を食べてながら話しましょう。という事になった。
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