現実だと思っていたら、異世界だった件

ながれ

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第1章 初めての町(タカギ)

第5話 現実がどんな感じか知ってみた件

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ヘッドセットをかけられた俺はフっと別の空間に入ったような感じで
歴史の回想のような物語が勝手にスタートした。


今よりはるか昔、この星では人類が隆盛を極めていた。
人口が60億人とも70億人とも言われ、
文明が発達し、文化が形成されていた。

そんな人類にある日突然終わりがやってきた。
宇宙から幾筋の炎の尾を引き、クエインが落下してきたのだ。

空から降り注いだクエインにより、地上にはいくつかのクレーターができた。
時を同じくして、降り注いだクレインに対抗すべく、
地底からサルバ達が現れた。

クレインが襲来したことで地球の環境は激変し、
当時の9割以上の人類は死に絶えていくのであった。

残った数億の人類はサルバと共にクレインに立ち向かった。
当時の人類にはスキルというものが備わり、
空を駆けるもの、雷を放つものなど様々な攻撃でクレインに対抗した。

人類&サルバ軍は数十年にもわたって、クレイン討伐に奮闘した。
しかし、最後のサルバ戦士、アインシュウェートの死亡により、
長きに渡るクレインとの争いは一旦は終焉を迎えることになった。
人類の敗北という結末で・・・


争いも終盤になりクレインの生態も徐々に明らかになっていった。
クレインは別名『星喰い』。
宇宙に存在していた知的生命体の一つで、その触手からエネルギーを吸収し
肥大化していく種族である。

つまりクレインはこの地球にエネルギーを求めてやってきたのである。
斬撃や炎、冷凍など様々な攻撃でクレインを傷つけることはできるが
直ぐに回復してしまう。

そこで人類たちはクレインのエネルギー供給源を絶つことを目標とする。
当初、クレインは地殻に張り付き、この地球の熱エネルギーを自身のエネルギー源としていた。
その膨大なエネルギーはクレインを『倒せない敵』とするには十分であった。

原子爆弾や中性子爆弾、殲滅極大魔法やウィルスなどありとあらゆる攻撃手段
を実行しクレインを破損させたりはできたが、地球のエネルギーを吸収したクレインは
本当に何事もなかったかのように修復を果たすのであった。

争いの中盤からクレインはその生態を一変させる。
地球からのエネルギー吸収を辞め、生き物からの精神エネルギーを糧とするように変化した。
長い間クレインにエネルギーを吸い続けられた地球は既にその地殻運動をほとんどなしておらず、
太陽からのエネルギーによってかろうじて気温が保たれていた。

人類はそれでも絶滅しなかった。

スキルを起源とする魔法により、空気を循環し、温度を保ち、
他の生物を狩猟し捕食し、何とか生きながらえた。

その頃、クレインにとって、シカやクジラなどの生物よりも精神エネルギーが膨大な人類は、
その触手に接続され、精神エネルギーを死ぬまで吸収し続けられる食料となった。
争いの最中、一部のサルバや人類はそのクレインにつかまり、栄養源として組み込まれた。

僅かではあるが、人類やサルバがクレインの呪縛を解き、解放される事態が発生するようになる。
クレインの呪縛から解き放たれた者たちを『リカント』と呼ぶようになった。

クレインにつながれたまま数世代を経た人類の中には、より強力なスキルを有する者が現れた。

初代ウィンストン王国の皇帝ウィンストン=マイヤードもそんなリカントの一人であった。
彼は逃げ延びていた人類と共に、クレインにとらわれていたサルバや人類の救出に成功する。
そして、エネルギー供給源を絶たれたクレインの討伐を果たす。

しかし、それはほんのスタートに過ぎなかった。

初代ウィンストン王とその仲間たちは、地球各地を巡るうちにクレインが1体ではなかったことに気づく。
2体目のクレインを討伐し、人類およびサルバの民は数千人規模となった。
あまりの大人数になった事と、初代ウィンストン王が既に高齢だったこともあり、
その地に根付き、人類最初の砦、ウィンストン王国が建国される。

初代ウィンストン王以外の者で優秀なスキルを有する者もいたが、
まだまだクレインを新たに討伐するに至っていない。
初代ウィンストン王が老衰により無くなってからはクレインの討伐報告を上がっていない。

王国歴300年を過ぎた頃、事態は更に悪化していった。
当時の王国斥候部隊より人類にとって不幸ともいえる知らせがもたらされた。

それはクレイン分裂の報告であった。

初代ウィンストン王の尽力により、人類とサルバの連合軍は2体のクレインを討伐できた。
しかし、その時初めてクレインが分裂によって増殖することが確認されたのであった。

それを知った当時の国王ウィンストン4世により、
人類は、どれだけいるか分からないクレイン討伐よりも隠れ潜み存続することを選んだ。

『いずれはクレインがこの地球のエネルギーを食い尽くし、
 この星を離れるのではないか?』

その淡い希望を旨に、当時共存していたサルバは再度地底に潜り力を蓄え。
人類はウィンストン王国を別の場所に移し、できる限り定住はせず、
移動しながらも細々と種の存続をすることを目指した。

初代ウィンストン王以外にクレインに対抗するスキルを有したものは
まだ現れておらず、人類はとにかく逃げることしかできなかったのである。

それからさらに400年が過ぎ、現ウィンストン王国はヒマラヤ山の中腹に位置したまま
一部の人類は王国から離れ、要塞都市を建設し、また一部の人類は移動都市として定住しない
生き方を貫いている。

各移動都市は月に1度城塞都市を訪れ、年に1度王国に向かう。

移動都市は斥候の役目を兼ねており、
『どの地域にどれくらいの大きさのクレインがいるのか?』
『どの地域にどのような魔物がいるのか?』
『どの地域にどういった資源があるのか?』
などを、各地を巡りながら調査しているのである。

今では全世界に移動都市70。城塞都市15を維持するまでになり、
全世界人口は3万人を少し超えたくらいまでに回復しつつある。

現在、全世界で確認されているクレインの数は16体。
それぞれが数百人から数千人程度のレカントを保持している。

小一時間歴史映像の勉強をさせられてから、
ヘッドセットを外されてようやく自分が今、タカギという移動都市にいることに気づく。

『ほっほっほ。今見せたのが現実世界の歴史じゃ。
 少しは頭に入ったじゃろうて。』

シズネ先生は相変わらずお茶を啜りながら悠長に話しかけてくる。

『まぁまずはお主の適性診断と、スキル診断じゃな。』

「適性診断とスキル診断?」

俺は長い映画を見せられて少しぼーっとした感覚の中で、
自分に秘められた能力があるなんていまだに信じられない様子で
執務室の床に座っていた。
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