転生して地位、名誉、権力、金、力そして女。 この世の全てを手に入れた主人公は脂肪を手放すためにドラゴンすらも討伐してしまう。

僧侶A

文字の大きさ
25 / 27

25話

しおりを挟む
 部屋の中心に辿り着くと、玉座に座る魔王がこちらに問いかけてきた。

「はい。ですがあなたを倒しに来ました」

 それに対し答えたのは俺ではなくリシュリュー。

「ほほう。その蛮勇だけは認めてやろう。だが、我々に勝つことは不可能だ」

 魔王はニヤッと笑い、真っ黒なオーラを放つ。何それカッコいい。

「多分普通に倒せるよね?」

「はい。私達にはエリック様が付いていますし」

「師匠!」

 しかしそんな演出を見たにも関わらず呑気な師匠とマリア。だから相手魔王だよ!!??

「たかが人間風情で随分と魔王様を舐められているようで」

「こりゃあ惨たらしい死を与えてやらないとなあ!?」

 ほらそんなことするから。魔王の隣に居る四天王っぽい二人がキレちゃったよ。

 なんなら他の方々も若干キレているし。全員本気で潰しにくるやつじゃん……

「もうさあ……」

 相手の戦闘力が分からない時にやるべきじゃないよほんと……

「では行くぞ」

「「「「「はい!!!」」」」」

 魔王の合図と、それに呼応した部下の返事によって戦闘が始まった。

 先程キレていた四天王2人と魔王が俺たちに向かって突っ込んでくる。

 そして後ろに居る魔族たちは魔法で3人の補助をしたり、直接攻撃をしたりしている。

 それぞれ使っている魔法は違うものの、統制の取れた動きだった。

 魔王と四天王と幹部なんだから統制の取れた連携はしないでくれ。夢が壊れるでしょうが。

「エリック様は3人をお願いします」

「私たちは他を攻撃するね!」

「分かった!」

 他は3人に任せ、俺は突っ込んでくる魔王達の対処をすることに。

「ただのデブに俺らの攻撃が止められんのか?」

「どうせ時間稼ぎです。このデブはさっさと倒して3人の対処に向かいましょう」

「そうだな」

 その光景を見ていた3人は俺が一番の雑魚だと思っているらしい。

 確かにその気持ちは分かる。

 リシュリューは立ち振る舞いが強そうだし、マリアはここまでやってくる美人の高貴な人物だから強そう。そして師匠は二人に比べたら見劣りするものの、抜群のプロポーションがあるから弱くは見えない。

 しかし俺はどうだろうか。軽装のデブである。

 軽装なら痩せているか、筋肉ムキムキでなければならない。

 デブなら重装備を身に纏い、鉄壁の防御力が無ければならない。

 だから弱いと思われても仕方ない。その気持ちはよく分かる。

 けど、

「人にデブって言うのは失礼だよ!!!!!!」

 仲良くない相手にデブと言うのは人としてありえない。

「ぐはあっ!!!!」

 怒りを込めたパンチを腹に食らった荒っぽい口調の魔族は吹き飛ばされて魔王城の壁を突き破った後、そのまま地面に落ちていった。

「お前も!!!!」

 頭脳派っぽいイケメンの魔族の方には顔面パンチを入れて、地面に叩きつけた。顔が大変な事になっているけど自業自得である。

「なっ!?」

 まさか部下が二人とも一撃で倒されると思っていなかった魔王は警戒して距離を取った。

「あんたも日頃から注意しなさい!!!!」

 しかし俺がみすみす逃がすわけも無く、追っかけて股間を殴り飛ばした。

 アッパーカットのような殴り方をしたので、魔王は上に吹き飛び、地面に落下した。

 魔王は股間の位置に手を置いたまま動かなくなった。

 死んだのか気絶したのか悶絶しているのか分からないけれど、もう戦闘には参加できないはず。

 魔王は男だから可哀そうだけど、将来子供とか生まれたら大変だからね。必要な犠牲でした。

「こっちは大丈夫そうだし、残りも倒さないと」

 そのまま俺はまだ戦っている三人に加勢し、一人一人腹をぶん殴って倒していった。


「これで世界が平和になりましたね」

 この場に居た魔族が全員戦闘不能になったことを確認した後、マリアがそう言った。

「だね」

 魔族の上層部は全て倒してしまった為、俺たちの暮らしている国が攻め込まれる可能性はなくなった。

 とはいってもこの大陸に生きる魔族を全て討伐したわけではないため、今後似たような存在が生まれる可能性はある。

 でもそこに関しては俺たちじゃなくて国王とかそこら辺の人たちが交渉とかで平和的に解決してくれると思う。多分良い人たちだし。

「これ以上ここに居る必要もありませんし、魔王達を倒した証拠だけ頂いて帰りますか」

「そうしよっか。だけどどうすれば良いの?」

「両方の角を折ってください。そうすれば魔族は戦闘力を完全に失いますので」

「オッケー。マリア、師匠、ちょっと待っててね」

「はい」

 それから俺はリシュリューと共に角を一つ一つ折って回収した。

「じゃあ帰ろう。マリア、」

 目的も果たしたことだし、後は俺たちの住んでいる大陸に戻るだけ。

「ちょっと待って」

 マリアに転移魔法を使ってもらおうと頼もうとしたタイミングで師匠が待ったをかけた。

「どうしたの師匠?」

 もうやることは無いんだし早く帰った方が良くない?

「エリック、どうだった?」

「どうだったって言われても。世界平和を成し遂げて嬉しかったってくらいだけど」

 それ以外にどうもこうもないでしょ。

「うん、目的を完全に忘れているよね。良い運動にはなったかな?」

 あっ。そういえばここに来た目的って魔王討伐だけど魔王討伐じゃなかった。ダイエットだよ目的って。

 デブと言われて腹がたったせいで忘れちゃってたよ。魔王恐るべし。

 で結果としては、

「正直微妙かなあ」

 そこそこ全力で殴っていたけど、大した負担じゃないというか。

 常人で言えば1㎞離れた目的地まで徒歩で向かったくらいの疲労度だよね。

 つまりほとんど疲れてない。

「そっかあ……無理だったかあ……」

 それを聞いた師匠は残念そうに頷いた。

「ってことはもしかして……」

「流石に打つ手なしかな。どうあがいても痩せられる未来が見えないよ、ごめん」

 そう語る師匠はとても申し訳なさそうな顔をしていた。俺の願いを叶えられなかったことを思い詰めているのだろう。

「そんなに思い詰めなくても大丈夫だよ。ここまでやってダイエットが成功しない俺の体がおかしなだけだから。寧ろここまで頑張ってくれた師匠にお礼がしたいくらいだよ」

 だから俺はダイエット出来なくて悲しい気持ちを抑えて、師匠を励ますことに。

「エリック、ありがとう」

「こちらこそ、師匠」

「どうやら解決したようですね。重い空気になるようならエリック様は太っている方が魅力的だって言おうかと思っていたんですが、必要無かったようですね」

 と言ったのはマリア。

「マリアさん。それは口に出さない方が良かったと思う」

 その言い方は痩せている方が魅力的だけど気遣って言おうとしていましたって宣言だよ。

「あら?何か問題でもありましたか?」

 俺が指摘するとマリアは何が何だか分からないという表情で首をかしげた。

「マリア様。その言い方だと内心でデブを否定していると言っているようなものです」

 そんなマリアに対しリシュリューが耳打ちで伝えていた。普通にこっちまで聞こえる大きさの声だったけど。

「ああ、そういうことでしたか。別に私は太っていようが痩せていようが関係ありません。好きな相手が好きなんですよエリック様。愛していますよ」

 リシュリューの言葉を聞いて納得した後、さも当然だと言わんばかりの表情で俺の耳元にやってきて、愛の言葉を囁いてきた。

「ありがとう、マリア」

 本当によく出来た女性だよマリアは。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

鑑定持ちの荷物番。英雄たちの「弱点」をこっそり塞いでいたら、彼女たちが俺から離れなくなった

仙道
ファンタジー
異世界の冒険者パーティで荷物番を務める俺は、名前もないようなMOBとして生きている。だが、俺には他者には扱えない「鑑定」スキルがあった。俺は自分の平穏な雇用を守るため、雇い主である女性冒険者たちの装備の致命的な欠陥や、本人すら気づかない体調の異変を「鑑定」で見抜き、誰にもバレずに密かに対処し続けていた。英雄になるつもりも、感謝されるつもりもない。あくまで業務の一環だ。しかし、致命的な危機を未然に回避され続けた彼女たちは、俺の完璧な管理なしでは生きていけないほどに依存し始めていた。剣聖、魔術師、聖女、ギルド職員。気付けば俺は、最強の美女たちに囲まれて逃げ場を失っていた。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

悪役顔のモブに転生しました。特に影響が無いようなので好きに生きます

竹桜
ファンタジー
 ある部屋の中で男が画面に向かいながら、ゲームをしていた。  そのゲームは主人公の勇者が魔王を倒し、ヒロインと結ばれるというものだ。  そして、ヒロインは4人いる。  ヒロイン達は聖女、剣士、武闘家、魔法使いだ。  エンドのルートしては六種類ある。  バットエンドを抜かすと、ハッピーエンドが五種類あり、ハッピーエンドの四種類、ヒロインの中の誰か1人と結ばれる。  残りのハッピーエンドはハーレムエンドである。  大好きなゲームの十回目のエンディングを迎えた主人公はお腹が空いたので、ご飯を食べようと思い、台所に行こうとして、足を滑らせ、頭を強く打ってしまった。  そして、主人公は不幸にも死んでしまった。    次に、主人公が目覚めると大好きなゲームの中に転生していた。  だが、主人公はゲームの中で名前しか出てこない悪役顔のモブに転生してしまった。  主人公は大好きなゲームの中に転生したことを心の底から喜んだ。  そして、折角転生したから、この世界を好きに生きようと考えた。  

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

序盤でざまぁされる人望ゼロの無能リーダーに転生したので隠れチート主人公を追放せず可愛がったら、なぜか俺の方が英雄扱いされるようになっていた

砂礫レキ
ファンタジー
35歳独身社会人の灰村タクミ。 彼は実家の母から学生時代夢中で書いていた小説をゴミとして燃やしたと電話で告げられる。 そして落ち込んでいる所を通り魔に襲われ死亡した。 死の間際思い出したタクミの夢、それは「自分の書いた物語の主人公になる」ことだった。 その願いが叶ったのか目覚めたタクミは見覚えのあるファンタジー世界の中にいた。 しかし望んでいた主人公「クロノ・ナイトレイ」の姿ではなく、 主人公を追放し序盤で惨めに死ぬ冒険者パーティーの無能リーダー「アルヴァ・グレイブラッド」として。 自尊心が地の底まで落ちているタクミがチート主人公であるクロノに嫉妬する筈もなく、 寧ろ無能と見下されているクロノの実力を周囲に伝え先輩冒険者として支え始める。 結果、アルヴァを粗野で無能なリーダーだと見下していたパーティーメンバーや、 自警団、街の住民たちの視線が変わり始めて……? 更新は昼頃になります。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。

克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。

処理中です...