転生して地位、名誉、権力、金、力そして女。 この世の全てを手に入れた主人公は脂肪を手放すためにドラゴンすらも討伐してしまう。

僧侶A

文字の大きさ
26 / 27

26話

しおりを挟む
 それからマリアの転移魔法で宿に戻ってきた俺たちは、魔王を討伐したことを報告するためにギルドに向かった。

「これをお願いします」

 俺は代表者として受付に角が大量に入った袋を渡した。

「えっと、これは?」

 受付嬢は角の正体が何か分からないらしく、不思議そうな表情で角を見ていた。

「魔族の角です」

「え!?!?一度、確認させていただきますね」

 俺の言葉に目を見開いた後、袋を持って慌てた様子で奥の部屋に走っていった。

 それから数分後、

「お待たせしました。お話したい事がありますので一度奥の部屋に来ていただけますか?」

 手ぶらで戻ってきた受付嬢は、俺たちにそう聞いてきた。

「はい。良いよね、皆」

「「はい」」「勿論」

「それは良かったです。では案内いたします」

 俺たちは受付嬢の案内によって奥の部屋へと連れていかれた。



「初めまして。ギルドマスターのマスギルです」

 高級そうな花瓶や絵が飾られている、いかにも応接室、みたいな部屋で待ち受けていたのはスーツを身に纏った筋骨隆々の大男。

 筋肉と脂肪という差はあるが、体重という点においては大差ないように見える。同じマシマシなら筋肉の方が良かったなあ。

「初めまして。リックです」

「アンジェです」

「リザです」

「リシュリューです」

「本日はよろしくお願いします。よろしければ椅子におかけください」

「「「「はい」」」」

 俺たちはそれぞれ、目の前にあった大きめの椅子に座った。

 多分この椅子たち、巨漢の俺が居るってことで慌てて取り替えたんだろうなあ。

 別に安い椅子では無いんだけど、この部屋の他のものに比べると若干格落ち感があるし。

 多分本来の椅子だと座れなさそうだったんだろうね。

 だからといって俺の椅子だけを特別仕様にせず、皆の椅子も変えることでそれを気取られないようにする気遣い、感謝します。

「お話は聞いておりました。突然この街に現れてソードドラゴンとフェンリルをあっさりと討伐してしまった冒険者の方がいらっしゃると。しかしまさか魔族まで倒されてしまうとは思っても見ませんでした。しかもこの数を」

「はい」

 魔王を倒してしまった都合上、たまたまですとか運が良かったですとかの謙遜は流石に無理があるので、とりあえずはいとだけ答えた。

「こちらとしてはその偉業に対し、今すぐにでも報酬をお渡ししたい気持ちなのですが、このギルドだけでは流石にそれに見合う金額を用意することは出来ません。周囲のギルドから資金をかき集めてこなければならないため、最低でも数日はかかってしまいます」

「別に構いません」

「それは良かったです。用意が出来ましたら後日連絡いたします」

「分かりました」

「これが一つ目の要件でして、もう一つは、これほどの数の魔族が一体どこに潜んでいたのかをお伺いしたいのです」

 ん?潜む?ああ、そういうことか。

「この魔族たちは私たちの住む大陸に居たものではありません」

 マスギルさんの意図に気付き、答えようとする前にマリアが先に答えてくれていた。

「となると?」

「魔王城に直接向かって倒してきたものです。ちなみに藍色の角が魔王のものですよ」

「え!?!?!?セナさん、大至急テーさんかカンさんを連れてきてください!!」

「はい!!」

 どうやら倒した魔族が魔王だとは思っていなかったらしく、マスギルさんは慌てた様子でセナさんという受付嬢に指示をしていた。

「はい、この方々が言う通り、この角は紛れも無く現魔王のものです。そして、角の中には魔王軍幹部や、四天王のものまで含まれていました」

「ありがとう、テーさん。では仕事に戻ってください、と言いたいところなのですが、この場に居てくれますか?」

「分かりました」

「ちょっと待っててください」

 マスギルさんは慌てた様子で部屋を出て、椅子を何故か二つ取って戻ってきてからテーさんとセナさんに渡していた。

「ありがとうございます」

 しかも何故か椅子を受け取った側のテーさんとセナさんにカルマンさんがお礼を言っていた。二人は意味が分からないらしく、首をかしげている。そりゃそうだ。

 これ、単に一人じゃ心細くなってきたから一緒に居て欲しかっただけだな。あのマッチョでも心細いという感情はあるんだね。

「失礼いたしました。お話に戻りましょう」

 先程の意味不明なやり取りがさも当然の出来事だったかのように自然に振る舞うカルマンさん。

 まだ両隣の二人は困惑したままですよ。せめて説明してあげてください。

「はい」

 2人に助け船を出してあげたい気持ちは山々なのだが、それをするとカルマンさんが可哀そうな気がしたのでやめておくことにした。

「一般魔族までは冒険者ギルドで対応が可能なのですが、今回討伐されたのが魔王ですので、私どもではなく国の管轄となります。ですので、そのままお繋ぎしてもよろしいでしょうか」

 そりゃそうじゃん。魔王討伐は国を挙げての目標なんだから。完全に忘れていたよ。

「でしたら、私達4人ではなく、リザ様とリシュリュー様が2人で魔王を倒したという事にしてくれないでしょうか?」

「「え??」」

 突然マリアがそんな提案をしたので、思わず師匠と一緒に声を上げてしまった。

『リック様、今回の魔王討伐の報酬をこれまでのお礼ということにしましょう。私達が国からお礼を頂いても使えずに持て余すだけですから。それに私達は偽名ですから説明が面倒ですしね。それで良いでしょうか、リザ様、リシュリュー様?』

 意図が分からず困惑していた俺たちに、マリアは小声で説明してくれた。

『私はお二人の案に従うのみですので』

『そうしておこっか』

 マリアが言いたいことは分かった。確かにそれの方が良さそうだ。

 でも、国からの報酬を丸々横流しするだけってお礼としてどうなんだろうか。

 後で別にお礼は用意しておかないとね。

『えっと、良いんですか?私ってそんなに活躍してなかったですし、ダイエットの手伝いのお礼としては大きすぎます』

 と思ったら師匠は乗り気じゃないみたい。

『いえいえ。ちゃんと活躍していましたよ。リック様以外で一番魔族にとどめを刺していたのはリザ様だったじゃないですか、それに』

 とそこまで言った後は師匠にだけ聞こえるように耳打ちしていた。

 ってか師匠ってそんなに魔族を倒していたんだ。強すぎない!?二人と違って元々ただの町娘だし何なら魔王城が初戦闘だよね?

 なんてことを考えていると、師匠がマリアの頭を軽く叩いた。顔が真っ赤だ。

『分かりましたよ。貰いますよ。ありがとうございます』

 そして師匠が報酬を貰うことに同意していた。何を言ったのマリアさん。

 訝しむ視線でマリアを見ると、ニコっと微笑んできた。誤魔化さないで説明してください。

 聞きたい事は色々とあるが、一応意見としては纏まったのでカルマンさん達の方を向き直すと、そっちはそっちで何か話し合っていた。

 何を言っているのかは聞き取れないが、カルマンさんが動揺しまくっていることだけは見て取れる。頑張れカルマンさん。

 それから1分後、

「分かりました。国の方にはリザ様とリシュリュー様が二人で魔王を討伐するに至ったと伝えておきます」

 マリアのお願いに同意してくれるらしい。

「「「「ありがとうございます」」」」

「では、後日連絡をさせていただきたいので連絡先を教えていただけますか?」

 それから俺たちは二人の連絡先を伝え、領地に帰った。

 連絡先を伝えると5回位聞き返されたが、それはまた別のお話。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

鑑定持ちの荷物番。英雄たちの「弱点」をこっそり塞いでいたら、彼女たちが俺から離れなくなった

仙道
ファンタジー
異世界の冒険者パーティで荷物番を務める俺は、名前もないようなMOBとして生きている。だが、俺には他者には扱えない「鑑定」スキルがあった。俺は自分の平穏な雇用を守るため、雇い主である女性冒険者たちの装備の致命的な欠陥や、本人すら気づかない体調の異変を「鑑定」で見抜き、誰にもバレずに密かに対処し続けていた。英雄になるつもりも、感謝されるつもりもない。あくまで業務の一環だ。しかし、致命的な危機を未然に回避され続けた彼女たちは、俺の完璧な管理なしでは生きていけないほどに依存し始めていた。剣聖、魔術師、聖女、ギルド職員。気付けば俺は、最強の美女たちに囲まれて逃げ場を失っていた。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

悪役顔のモブに転生しました。特に影響が無いようなので好きに生きます

竹桜
ファンタジー
 ある部屋の中で男が画面に向かいながら、ゲームをしていた。  そのゲームは主人公の勇者が魔王を倒し、ヒロインと結ばれるというものだ。  そして、ヒロインは4人いる。  ヒロイン達は聖女、剣士、武闘家、魔法使いだ。  エンドのルートしては六種類ある。  バットエンドを抜かすと、ハッピーエンドが五種類あり、ハッピーエンドの四種類、ヒロインの中の誰か1人と結ばれる。  残りのハッピーエンドはハーレムエンドである。  大好きなゲームの十回目のエンディングを迎えた主人公はお腹が空いたので、ご飯を食べようと思い、台所に行こうとして、足を滑らせ、頭を強く打ってしまった。  そして、主人公は不幸にも死んでしまった。    次に、主人公が目覚めると大好きなゲームの中に転生していた。  だが、主人公はゲームの中で名前しか出てこない悪役顔のモブに転生してしまった。  主人公は大好きなゲームの中に転生したことを心の底から喜んだ。  そして、折角転生したから、この世界を好きに生きようと考えた。  

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。

克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

処理中です...