20 / 130
20話
しおりを挟む
最高ランク常連なだけあって抵抗は激しかったが、数の暴力には勝てなかったらしい。
目黒秋討伐完了後、残存チームは適当に自滅してこの試合を終了した。
チャット欄は当然目黒秋を煽る文が並ぶ。
「秋ちゃんの断末魔が面白かったらしいよ」
その間コメントを読んでいたらしいアスカがそう言った。
「どんな感じだったんだ?」
「『やめろー!死にたくない!俺はこのカスタムのマスターだぞ!逆らうのか!』とか悪役全開だったみたい」
「かなりノリノリだな」
もしかして主催じゃなくて参加者として出たかったんじゃないか?
「あ、最後だ」
そんなことを話していると、敗北者の目黒秋が最後のカスタムを始めるべくチーム分けを始めていた。
「ぐすっ、ヤイバちゃん、ながめちゃん、これで最後なんだね……もう一緒に遊ぶことは出来ないけど、私の事を忘れないでね……」
「アスカちゃん……私も楽しかったよ。今度会う事があったらまたVALPEXやろうね。ヤイバ君も……」
「うん、絶対だよ。あ、そうだ。ヤイバちゃん、今度、私のお家に来てよ。お泊り会しよう」
「何今生の別れみたいな会話してんだ。いつでも会えるだろうが」
「え、毎日お泊り会してくれるの!?私は大歓迎だよ!今日お家に来てよ!」
あまりにも突拍子が無い話だから聞き間違いかと思ってスルーしていたら現実だったらしい。馬鹿だろこいつ。
「ふざけんな、駄目に決まっているだろ。通話ならって話だよ」
「でもボイス収録の時は会ってくれたよね?」
「あれとこれとでは話が別だ。配信部屋と家は全く違う」
「え、ヤイバ君の配信部屋ってアパートの一角じゃなかったっけ?ベッドもあるって言ってたし家じゃないの……?」
「ここは家じゃねえ!ただのオフィスだ!誰が何と言おうと!」
こんなことで炎上してたまるかボケ!!
「え……じゃああの時の『一緒に寝よう。他に誰も居ないから大丈夫。』って言葉は嘘だったの?」
「それはボイスのセリフだろうが!」
「あ、チームが決まったみたい。そろそろボイチャ行くね。じゃあまた!」
「おい、この状況を放置して逃げるな馬鹿!」
「じゃあね、ヤイバ君」
「お前もだ!!おい!!」
こいつら好き勝手してから逃げやがって……
「はあ……。まあいい、それよりも俺のチームに入ろう」
俺は目黒秋に割り振られたサーバーに入った。
「よろしく、九重ヤイバだ」
「一番の後輩なのに重役出勤だなあ、九重ヤイバァ」
「まあまあ、この子にも考えがあるんだよ。ヤイバ君、こんにちは!」
なるほど、そういうことか。さっきの茶番は俺が誰とチームを割り振られたのかに意識を割かないようにするためだったんだな。
俺が組んだのはVtuber業界の中でもトップクラスの圧の持ち主だ。
早速喧嘩腰で話しかけてきたのは山田紅葉。アメサンジ所属のヤンキー系Vtuber。
彼女の圧は純粋な恐怖から。話し方やパワー等、様々な所から見え隠れする威圧感で自然と圧を掛け逆らえないように追い詰めていく。
そんな彼女を宥めたのがクロ。Vtuber業界最古参の重鎮だ。
彼女の圧は最古参の大先輩という立場と、場の空気の制圧力の高さから。基本的に命令はせず、お願いという形を毎回とっているのだが、自然とするのが当然という流れに持って行くことに異常に長けている。そのため、実質的な強制となり泣かされたVは数知れず。
「ああ、それはすまない。チーム分けが済んでいることに気付くのが遅れた」
だが俺はその圧に屈すことなく、いつも通りの俺を貫かなければならない。
俺は斎藤一真ではなく、九重ヤイバなのだから。
「ふーん……」
納得いってないみたいな雰囲気を出すのはやめてもらえませんかね。
「とりあえず、全員揃った事だし自己紹介しない?」
「そうっすね。じゃあ私から行きますね。こんこーよー!どうもアメサンジ所属Vtuber山田紅葉です。じゃあ次はクロさん」
「うん。こんにちは、霊能少女クロです。どうやら今回は最後の方が本当に面白い挨拶をしてくれるらしいので挨拶は短めにしますね」
ふざっけんな!その言葉が一番面白いものを潰すんだよ!
苦しんでいる様を見たいんだろうが、どうあがこうが空気が地獄になるんだからな……
「どうも、九重ヤイバだ。面白い挨拶か、そうだな……」
俺は悩んでいるフリをしてボイスチェンジャーを起動した。
「『私はカスタム、本番で九重ヤイバ様に10キルもされてしまった弱者です。ですので代わりに私が面白いことをさせていただきます』」
と山田紅葉の声で言った。
「そうか。なら任せたぞ」
俺はあくまで山田紅葉が言った体を装って丸投げした。
配信当初身バレ対策も兼ねてボイスチェンジャーを掛けた上での配信を検討していた際に偶然生まれた調整を残しておいて助かった。
「は!?私そんなこと言ってないんだけど!?」
「でもどう見ても山田の声じゃないか」
念のためコメント欄も見てみたが、中々の完成度だったらしく何人か引っ掛かっていた。
「クロさん、今のは私じゃないって分かりますよね?」
山田は縋るようにクロに尋ねていたがただ笑っているだけだ。どうやらこっちの方が面白いと思って見守ることに決めたらしい。
「ヤイバァ、手前何をしやがった?」
「何のことだ?俺は普通に挨拶をしようと思っていただけだが」
「絶対ボイスチェンジャーかなんかで用意しただろ?」
「確かにそんな物もあったかもしれんが証拠は残ってないだろ?」
「リスナー!お前らなら私の声じゃないって分かるよなあ?おい!お前ら!」
どうやらリスナーは俺側に乗っかった方が面白いと思ったらしい。
「ファンも皆本人だと思っているんだから本物じゃないか。言い逃れせずにさっさとやるんだよ」
「そうだよ、紅葉ちゃん。自分で言ったことには責任持たなきゃ!」
「え、あ、あ、試合が始まるから集中しないと!」
ちっ。やり返す事が出来たと思ったんだが上手く逃げられてしまったな。まあ山田に優位性をとれただけ勝ちとするか。
キャラは全員被っていなかったのであっさりと決まり、ジャンプ前となった。
「とりあえず今回はジャンプマスター任せたぞ。山田」
「分かったよ。後で覚えてろよ!」
山田は最強のヤンキーから負け惜しみを言うそこら辺の雑魚チンピラに格落ちしまっていた。
目黒秋討伐完了後、残存チームは適当に自滅してこの試合を終了した。
チャット欄は当然目黒秋を煽る文が並ぶ。
「秋ちゃんの断末魔が面白かったらしいよ」
その間コメントを読んでいたらしいアスカがそう言った。
「どんな感じだったんだ?」
「『やめろー!死にたくない!俺はこのカスタムのマスターだぞ!逆らうのか!』とか悪役全開だったみたい」
「かなりノリノリだな」
もしかして主催じゃなくて参加者として出たかったんじゃないか?
「あ、最後だ」
そんなことを話していると、敗北者の目黒秋が最後のカスタムを始めるべくチーム分けを始めていた。
「ぐすっ、ヤイバちゃん、ながめちゃん、これで最後なんだね……もう一緒に遊ぶことは出来ないけど、私の事を忘れないでね……」
「アスカちゃん……私も楽しかったよ。今度会う事があったらまたVALPEXやろうね。ヤイバ君も……」
「うん、絶対だよ。あ、そうだ。ヤイバちゃん、今度、私のお家に来てよ。お泊り会しよう」
「何今生の別れみたいな会話してんだ。いつでも会えるだろうが」
「え、毎日お泊り会してくれるの!?私は大歓迎だよ!今日お家に来てよ!」
あまりにも突拍子が無い話だから聞き間違いかと思ってスルーしていたら現実だったらしい。馬鹿だろこいつ。
「ふざけんな、駄目に決まっているだろ。通話ならって話だよ」
「でもボイス収録の時は会ってくれたよね?」
「あれとこれとでは話が別だ。配信部屋と家は全く違う」
「え、ヤイバ君の配信部屋ってアパートの一角じゃなかったっけ?ベッドもあるって言ってたし家じゃないの……?」
「ここは家じゃねえ!ただのオフィスだ!誰が何と言おうと!」
こんなことで炎上してたまるかボケ!!
「え……じゃああの時の『一緒に寝よう。他に誰も居ないから大丈夫。』って言葉は嘘だったの?」
「それはボイスのセリフだろうが!」
「あ、チームが決まったみたい。そろそろボイチャ行くね。じゃあまた!」
「おい、この状況を放置して逃げるな馬鹿!」
「じゃあね、ヤイバ君」
「お前もだ!!おい!!」
こいつら好き勝手してから逃げやがって……
「はあ……。まあいい、それよりも俺のチームに入ろう」
俺は目黒秋に割り振られたサーバーに入った。
「よろしく、九重ヤイバだ」
「一番の後輩なのに重役出勤だなあ、九重ヤイバァ」
「まあまあ、この子にも考えがあるんだよ。ヤイバ君、こんにちは!」
なるほど、そういうことか。さっきの茶番は俺が誰とチームを割り振られたのかに意識を割かないようにするためだったんだな。
俺が組んだのはVtuber業界の中でもトップクラスの圧の持ち主だ。
早速喧嘩腰で話しかけてきたのは山田紅葉。アメサンジ所属のヤンキー系Vtuber。
彼女の圧は純粋な恐怖から。話し方やパワー等、様々な所から見え隠れする威圧感で自然と圧を掛け逆らえないように追い詰めていく。
そんな彼女を宥めたのがクロ。Vtuber業界最古参の重鎮だ。
彼女の圧は最古参の大先輩という立場と、場の空気の制圧力の高さから。基本的に命令はせず、お願いという形を毎回とっているのだが、自然とするのが当然という流れに持って行くことに異常に長けている。そのため、実質的な強制となり泣かされたVは数知れず。
「ああ、それはすまない。チーム分けが済んでいることに気付くのが遅れた」
だが俺はその圧に屈すことなく、いつも通りの俺を貫かなければならない。
俺は斎藤一真ではなく、九重ヤイバなのだから。
「ふーん……」
納得いってないみたいな雰囲気を出すのはやめてもらえませんかね。
「とりあえず、全員揃った事だし自己紹介しない?」
「そうっすね。じゃあ私から行きますね。こんこーよー!どうもアメサンジ所属Vtuber山田紅葉です。じゃあ次はクロさん」
「うん。こんにちは、霊能少女クロです。どうやら今回は最後の方が本当に面白い挨拶をしてくれるらしいので挨拶は短めにしますね」
ふざっけんな!その言葉が一番面白いものを潰すんだよ!
苦しんでいる様を見たいんだろうが、どうあがこうが空気が地獄になるんだからな……
「どうも、九重ヤイバだ。面白い挨拶か、そうだな……」
俺は悩んでいるフリをしてボイスチェンジャーを起動した。
「『私はカスタム、本番で九重ヤイバ様に10キルもされてしまった弱者です。ですので代わりに私が面白いことをさせていただきます』」
と山田紅葉の声で言った。
「そうか。なら任せたぞ」
俺はあくまで山田紅葉が言った体を装って丸投げした。
配信当初身バレ対策も兼ねてボイスチェンジャーを掛けた上での配信を検討していた際に偶然生まれた調整を残しておいて助かった。
「は!?私そんなこと言ってないんだけど!?」
「でもどう見ても山田の声じゃないか」
念のためコメント欄も見てみたが、中々の完成度だったらしく何人か引っ掛かっていた。
「クロさん、今のは私じゃないって分かりますよね?」
山田は縋るようにクロに尋ねていたがただ笑っているだけだ。どうやらこっちの方が面白いと思って見守ることに決めたらしい。
「ヤイバァ、手前何をしやがった?」
「何のことだ?俺は普通に挨拶をしようと思っていただけだが」
「絶対ボイスチェンジャーかなんかで用意しただろ?」
「確かにそんな物もあったかもしれんが証拠は残ってないだろ?」
「リスナー!お前らなら私の声じゃないって分かるよなあ?おい!お前ら!」
どうやらリスナーは俺側に乗っかった方が面白いと思ったらしい。
「ファンも皆本人だと思っているんだから本物じゃないか。言い逃れせずにさっさとやるんだよ」
「そうだよ、紅葉ちゃん。自分で言ったことには責任持たなきゃ!」
「え、あ、あ、試合が始まるから集中しないと!」
ちっ。やり返す事が出来たと思ったんだが上手く逃げられてしまったな。まあ山田に優位性をとれただけ勝ちとするか。
キャラは全員被っていなかったのであっさりと決まり、ジャンプ前となった。
「とりあえず今回はジャンプマスター任せたぞ。山田」
「分かったよ。後で覚えてろよ!」
山田は最強のヤンキーから負け惜しみを言うそこら辺の雑魚チンピラに格落ちしまっていた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
イケボすぎる兄が、『義妹の中の人』をやったらバズった件について
のびすけ。
恋愛
春から一人暮らしを始めた大学一年生、天城コウは――ただの一般人だった。
だが、再会した義妹・ひよりのひと言で、そんな日常は吹き飛ぶ。
「お兄ちゃんにしか頼めないの、私の“中の人”になって!」
ひよりはフォロワー20万人超えの人気Vtuber《ひよこまる♪》。
だが突然の喉の不調で、配信ができなくなったらしい。
その代役に選ばれたのが、イケボだけが取り柄のコウ――つまり俺!?
仕方なく始めた“妹の中の人”としての活動だったが、
「え、ひよこまるの声、なんか色っぽくない!?」
「中の人、彼氏か?」
視聴者の反応は想定外。まさかのバズり現象が発生!?
しかも、ひよりはそのまま「兄妹ユニット結成♡」を言い出して――
同居、配信、秘密の関係……って、これほぼ恋人同棲じゃん!?
「お兄ちゃんの声、独り占めしたいのに……他の女と絡まないでよっ!」
代役から始まる、妹と秘密の“中の人”Vライフ×甘々ハーレムラブコメ、ここに開幕!
友達の妹が、入浴してる。
つきのはい
恋愛
「交換してみない?」
冴えない高校生の藤堂夏弥は、親友のオシャレでモテまくり同級生、鈴川洋平にバカげた話を持ちかけられる。
それは、お互い現在同居中の妹達、藤堂秋乃と鈴川美咲を交換して生活しようというものだった。
鈴川美咲は、美男子の洋平に勝るとも劣らない美少女なのだけれど、男子に嫌悪感を示し、夏弥とも形式的な会話しかしなかった。
冴えない男子と冷めがちな女子の距離感が、二人暮らしのなかで徐々に変わっていく。
そんなラブコメディです。
クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について
沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。
かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。
しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。
現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。
その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。
「今日から私、あなたのメイドになります!」
なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!?
謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける!
カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!
美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。
たかなしポン太
青春
僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。
助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。
でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。
「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」
「ちょっと、確認しなくていいですから!」
「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」
「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」
天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。
異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー!
※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。
※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる