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19話
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「ヘルド騎士団を見に行かない?」
僕は昨日の出来事を経て気になったので、ジョニー君を誘ってみることに。
「面白そうだし行ってみるか」
意外と乗り気だったのでそのまま向かう事が決定した。
「それではどうぞ」
騎士団本部に入るのだから色々手続きを踏むものだと思っていたが、簡単な書類に記入するだけで終わりという何とも簡単なものだった。
「こんなんで大丈夫なのか?まだウチの商会の方がセキュリティは固いぞ」
「それに関しては問題ないよ。僕達は強いから」
「誰!?」
そんなことを話していると、背後から話しかけられた。
「驚かせてごめん。僕はヘルド騎士団所属三級騎士、アラン・J・ベント。君達の案内をしようと思って話しかけたんだ」
話しかけてきたのは何と騎士の方だった。
「良いんですか?」
仕事中にそういうことをしていても良いのだろうか?
「大丈夫だよ。見学に来た方々を案内するのもヘルド騎士団では仕事のうちだから」
「そうなのか。流石市民に寄り添うことに定評のある騎士団だ」
「ありがとう。じゃあ行こうか」
僕達はベントさんの案内によって本部を巡ることになった。
「ここは訓練場だね。木剣を使って日々訓練をしているんだ」
訓練場と呼ばれた広場では、50人程の騎士が訓練に取り組んでいた。
「凄く士気が高いな」
ジョニー君の言った通り、全員が手を抜かず全力だった。
「僕達は全員市民を守るという強い思いがあるからね。手を抜くことは出来ないよ」
「騎士ってすごいですね」
僕も自分の領民を大切に思っているけど、ここまで出来るだろうか。
「次の所に行く?」
「そうだな」
「お願いします」
「じゃあ付いてきて」
「ここは指令室。騎士団が円滑に活動できるための作戦立案等を行っているんだ。ここにいるのは基本的に第一級騎士の方々だよ」
中では、第一級騎士の方々が何かを話し合っていた。地図が広がっているので戦争の防衛に関してだろうか。
そんな騎士たちの年齢は非常に若く、35歳位の方が多かった。
「第一級騎士なのに皆さんお若いんですね」
騎士は他の職業に比べて平均年齢が低いことは知っているが、それでも若すぎる。普通の騎士団だと第一級騎士は40代後半であることが殆どだ。
「この騎士団は出来たばっかりですから。でも実力は十分ですよ。騎士団長が直々にスカウトした方々ですから」
「随分と信頼しているんだな」
「はい。騎士団長はあのカマエル様ですので」
カマエル。聞いたことがある。まだ25歳なのに圧倒的な剣術の腕前を持ち、国内最強の騎士と名高い女性だ。いずれ騎士団長になると言われていたが、まさか騎士団を設立していたとは。
そんな騎士が直々に選んだ方々となれば、確かに信頼に足る騎士なのだろう。
「邪魔しても悪いし、次に行こうぜ」
「分かりました」
「次は騎士団長のお部屋です。では入りましょうか」
「え!?」
まさかヘルド騎士団のトップに会うことになるとは。
「驚かれても仕方ありません。しかし騎士団長に見学者は最後にここへ連れてこいと言われておりまして」
そう話すベントさんはいたずらが成功した子供のような笑顔だった。
「あらかじめ言われなかったことに対して文句は言いたいが、いい機会だ、会ってみようぜ」
「そうだね」
小さな騎士団とはいえ、騎士団長に会える機会はそうそうない。貴重な経験だと思い部屋に入った。
「お連れしました。見学者のペトロ・ダンヴルさんとジョニー・アグネスさんです」
「ご苦労。元の仕事に戻ってくれ」
「はい」
ベントさんは騎士団長の指示に従い、持ち場へ戻っていった。
「それでは、よく我が騎士団まで来てくれた。私はヘルド騎士団団長のカマエル・エレノア・マーシャルだ」
「よろしくお願いします」
「よろしく」
目の前にいる女性が国内最強の騎士。深紅の髪に翡翠色の目。顔は非常に整っており、モデルと見間違うほどだ。しかしその肉体は女性とは思えないほどに引き締まっており、総評として苛烈な女性という印象を受ける。
この騎士団を作った方だから良い方だとは思うが、少し委縮してしまう。
「どうだ、私の騎士団は?」
「素晴らしいと思います」
率直な感想だった。こんな騎士団は歴史上どこを探しても見つからないと思う。
「そうだろうそうだろう。私がスカウトし導いた者共だからな」
カマエルさんは豪快に笑う。自分の騎士団に強い自信を持っているようだ。
「どうしてこの騎士団を作ったんだ?」
ジョニー君はそんなカマエルさんに委縮すること無くいつも通りの口調で質問した。
「当然正義と市民の為だ」
「なら警察でも良かったのではないか?」
国内で活動して市民を守る活動は警察の領分だ。
「警察は警察で素晴らしい組織ではあるが、あそこは法を取り締まることが主だからな。国直属の組織である以上、自由度に制限があるからな」
「なるほど、確かに火葬なんかは警察じゃ難しいしな」
どうやら昨日のことをルーシーさんから聞いていたらしい。
「そういうことだ!分かってくれたか?」
「そうだな。素晴らしい試みだよ」
ジョニー君もヘルド騎士団の事を認めたようだ。
「私の元に来たってことは見る場所は全て回ったってことだが、これからどうする?」
「訓練場にもう一度行かせてほしい」
「分かった」
僕たちはカマエルさんと共に訓練所へ向かった。
「「お疲れ様です!」」
訓練所に再び辿り着くと、訓練していた騎士たちが一旦動きを止めてカマエルさんに敬礼した。
「めちゃくちゃ慕われてるな」
「そうだね」
敬礼をする騎士達は、階級が高いからではなく心の底から尊敬しているように思えた。
「ああ、ご苦労。今日は最初に伝えていた通り訓練に参加する予定では無かったのだが、この二人が訓練を見たいと言って来たのでな。アレン、剣を持ってきてくれ」
「はい!」
ケレンと呼ばれた金髪の男はダッシュで剣を取りに向かった。
「そういえば聞いていなかったが、どうして再び訓練を見たいと思ったんだ?」
カマエルさんは、僕たちに尋ねてきた。
「自分の身は自分の手で守れるようになっておきたくてな」
ジョニー君はそう言った。多分堕天使の強さを知ったからだろう。
「なるほど。それは君もか?」
「はい」
僕も強くなれるのならなっておきたい。
「なら折角だ。訓練に参加してみるか?」
「え、良いんですか?」
「勿論。市民が強くなって自分の身を守れるようになるのはこちらとしても願ったりかなったりだ」
というわけで騎士団の訓練に混ざることになった。
「まずは素振り500回だ。はじめ!」
カマエルさんが号令をかけ、各々のペースで木剣を振り始める。
「少々脇が上がっている。そう、その位だ」
カマエルさんはそれを見て回り、一人一人にアドバイスをしていた。
そして後ろの方で素振りをしていた僕たちの所までカマエルさんがやってきた。
「ペトロ、君はそこまで悪い振りでは無いが軌道に若干のブレがある。これは多分持ち方のせいだろうな」
「はい」
カマエルさんは俺の後ろに回り、背後から僕の手を持った。
「こんな感じで握ってみろ」
僕はカマエルさんに握られた通りに木剣を握る。
「そうだ。それで振ってみろ」
言われるがままに剣を上段から切り下す。
「動かしやすいです」
先程と違い、より剣に力が入る気がした。そのため剣の重みに負けることなく、綺麗に振り下ろすことが出来た。
「問題はジョニーだな。全体的に指摘点がある」
その後、数十分の間ジョニー君に対し徹底的な指導が続いた。
そして一番遅かったジョニー君が終わった所で一旦休憩となった。
「はあ、はあ、しんどい」
素振りから解放されたジョニー君は尋常ではない位に疲れ果てており、完全に息が上がっていた。
「お疲れ様」
「どうして、お前は、大丈夫なんだ」
「田舎住みで体力はそこそこあるからね」
「これならもう少し運動しておくべきだった……」
ジョニー君はこの差のせいか、今までの人生を後悔していた。
「都会じゃ運動する必要はあまりないもんね」
運動を出来る場自体がそもそもこの街にはそこまで多くない。商人として生まれてからこの街にいるジョニー君に体力が無いのも仕方の無いことと言える。
「次は走り込みだ。行くぞ!」
そして数分後、カマエルさんによりランニングの開始が告げられた。
それと同時にジョニー君の顔は絶望に染まっていた。
「今日のノルマは10周だ、行くぞ!」
僕たちは最後尾に着くカマエルさんに尻をひっぱたかれながら走り続けた。
とは言っても差は歴然で、僕が10周する間に3周くらい差が付いた。
正直な所もう諦めてしまいそうな位には疲れ果てているけれど、ジョニー君は走ることを止めなかった。
そして結構時間はかかったが、ジョニー君は無事完走した。
「君たちはここまでだ。流石に剣を持ったばかりの初心者に実践型の訓練は危険だからな」
というわけで、僕たちの訓練は終了した。
その後はいつの間にか騎士の方が用意していた椅子に座り、見学することになった。
「やっぱり本物は凄いね」
「そうだな」
あれだけの練習の後にも関わらず、一切の疲れの跡を見せずに木剣を軽々と振り回している。
なんなら素振りの時の僕たちの振りよりも素早い。
その中でもダントツなのはカマエルさん。
剣速もそうだが、移動速度もそれ以上に凄まじい。騎士が振った剣を受け止めることなくステップだけで完全に避けてのけるのだ。そしてカマエルさんの攻撃はガードすら許さない。
最終的には4人同時に相手をしていたが、一切苦戦することなく全員を打ちのめしていた。
「もしかしたらルーシーさんよりも強いかも」
あの人もあの人で化け物じみた強さを誇っているが、この人には敵わなさそうだ。
「どうやって避けているんですか?」
練習の合間にこちらの方へ来てくれたので聞いてみた。
「アレは普通に見てから避けているな。腕の動きに注目すればどの軌道で来るかは結構見て取れる」
「目が良いんですね」
簡単に言ってのけるが、かなりの動体視力が無ければ不可能な芸当だ。
「そうだな。両親には感謝だな」
その後、カマエルさんは練習に戻り騎士たちの指導をしていた。
それからしばらく経った後、練習は終了した。
「今日はありがとうございました」
「良い経験だった」
「そうか、なら良かった。また来るのであれば我々は歓迎する。またな」
僕たちはカマエルさんにお礼を言って、騎士団本部を後にした。
久々の運動に疲れた僕は、家でご飯を食べて風呂に入った後、何をするでもなく真っ先に就寝した。
そして翌日。大学で目にしたのは、筋肉痛に苦しむジョニー君だった。
僕は昨日の出来事を経て気になったので、ジョニー君を誘ってみることに。
「面白そうだし行ってみるか」
意外と乗り気だったのでそのまま向かう事が決定した。
「それではどうぞ」
騎士団本部に入るのだから色々手続きを踏むものだと思っていたが、簡単な書類に記入するだけで終わりという何とも簡単なものだった。
「こんなんで大丈夫なのか?まだウチの商会の方がセキュリティは固いぞ」
「それに関しては問題ないよ。僕達は強いから」
「誰!?」
そんなことを話していると、背後から話しかけられた。
「驚かせてごめん。僕はヘルド騎士団所属三級騎士、アラン・J・ベント。君達の案内をしようと思って話しかけたんだ」
話しかけてきたのは何と騎士の方だった。
「良いんですか?」
仕事中にそういうことをしていても良いのだろうか?
「大丈夫だよ。見学に来た方々を案内するのもヘルド騎士団では仕事のうちだから」
「そうなのか。流石市民に寄り添うことに定評のある騎士団だ」
「ありがとう。じゃあ行こうか」
僕達はベントさんの案内によって本部を巡ることになった。
「ここは訓練場だね。木剣を使って日々訓練をしているんだ」
訓練場と呼ばれた広場では、50人程の騎士が訓練に取り組んでいた。
「凄く士気が高いな」
ジョニー君の言った通り、全員が手を抜かず全力だった。
「僕達は全員市民を守るという強い思いがあるからね。手を抜くことは出来ないよ」
「騎士ってすごいですね」
僕も自分の領民を大切に思っているけど、ここまで出来るだろうか。
「次の所に行く?」
「そうだな」
「お願いします」
「じゃあ付いてきて」
「ここは指令室。騎士団が円滑に活動できるための作戦立案等を行っているんだ。ここにいるのは基本的に第一級騎士の方々だよ」
中では、第一級騎士の方々が何かを話し合っていた。地図が広がっているので戦争の防衛に関してだろうか。
そんな騎士たちの年齢は非常に若く、35歳位の方が多かった。
「第一級騎士なのに皆さんお若いんですね」
騎士は他の職業に比べて平均年齢が低いことは知っているが、それでも若すぎる。普通の騎士団だと第一級騎士は40代後半であることが殆どだ。
「この騎士団は出来たばっかりですから。でも実力は十分ですよ。騎士団長が直々にスカウトした方々ですから」
「随分と信頼しているんだな」
「はい。騎士団長はあのカマエル様ですので」
カマエル。聞いたことがある。まだ25歳なのに圧倒的な剣術の腕前を持ち、国内最強の騎士と名高い女性だ。いずれ騎士団長になると言われていたが、まさか騎士団を設立していたとは。
そんな騎士が直々に選んだ方々となれば、確かに信頼に足る騎士なのだろう。
「邪魔しても悪いし、次に行こうぜ」
「分かりました」
「次は騎士団長のお部屋です。では入りましょうか」
「え!?」
まさかヘルド騎士団のトップに会うことになるとは。
「驚かれても仕方ありません。しかし騎士団長に見学者は最後にここへ連れてこいと言われておりまして」
そう話すベントさんはいたずらが成功した子供のような笑顔だった。
「あらかじめ言われなかったことに対して文句は言いたいが、いい機会だ、会ってみようぜ」
「そうだね」
小さな騎士団とはいえ、騎士団長に会える機会はそうそうない。貴重な経験だと思い部屋に入った。
「お連れしました。見学者のペトロ・ダンヴルさんとジョニー・アグネスさんです」
「ご苦労。元の仕事に戻ってくれ」
「はい」
ベントさんは騎士団長の指示に従い、持ち場へ戻っていった。
「それでは、よく我が騎士団まで来てくれた。私はヘルド騎士団団長のカマエル・エレノア・マーシャルだ」
「よろしくお願いします」
「よろしく」
目の前にいる女性が国内最強の騎士。深紅の髪に翡翠色の目。顔は非常に整っており、モデルと見間違うほどだ。しかしその肉体は女性とは思えないほどに引き締まっており、総評として苛烈な女性という印象を受ける。
この騎士団を作った方だから良い方だとは思うが、少し委縮してしまう。
「どうだ、私の騎士団は?」
「素晴らしいと思います」
率直な感想だった。こんな騎士団は歴史上どこを探しても見つからないと思う。
「そうだろうそうだろう。私がスカウトし導いた者共だからな」
カマエルさんは豪快に笑う。自分の騎士団に強い自信を持っているようだ。
「どうしてこの騎士団を作ったんだ?」
ジョニー君はそんなカマエルさんに委縮すること無くいつも通りの口調で質問した。
「当然正義と市民の為だ」
「なら警察でも良かったのではないか?」
国内で活動して市民を守る活動は警察の領分だ。
「警察は警察で素晴らしい組織ではあるが、あそこは法を取り締まることが主だからな。国直属の組織である以上、自由度に制限があるからな」
「なるほど、確かに火葬なんかは警察じゃ難しいしな」
どうやら昨日のことをルーシーさんから聞いていたらしい。
「そういうことだ!分かってくれたか?」
「そうだな。素晴らしい試みだよ」
ジョニー君もヘルド騎士団の事を認めたようだ。
「私の元に来たってことは見る場所は全て回ったってことだが、これからどうする?」
「訓練場にもう一度行かせてほしい」
「分かった」
僕たちはカマエルさんと共に訓練所へ向かった。
「「お疲れ様です!」」
訓練所に再び辿り着くと、訓練していた騎士たちが一旦動きを止めてカマエルさんに敬礼した。
「めちゃくちゃ慕われてるな」
「そうだね」
敬礼をする騎士達は、階級が高いからではなく心の底から尊敬しているように思えた。
「ああ、ご苦労。今日は最初に伝えていた通り訓練に参加する予定では無かったのだが、この二人が訓練を見たいと言って来たのでな。アレン、剣を持ってきてくれ」
「はい!」
ケレンと呼ばれた金髪の男はダッシュで剣を取りに向かった。
「そういえば聞いていなかったが、どうして再び訓練を見たいと思ったんだ?」
カマエルさんは、僕たちに尋ねてきた。
「自分の身は自分の手で守れるようになっておきたくてな」
ジョニー君はそう言った。多分堕天使の強さを知ったからだろう。
「なるほど。それは君もか?」
「はい」
僕も強くなれるのならなっておきたい。
「なら折角だ。訓練に参加してみるか?」
「え、良いんですか?」
「勿論。市民が強くなって自分の身を守れるようになるのはこちらとしても願ったりかなったりだ」
というわけで騎士団の訓練に混ざることになった。
「まずは素振り500回だ。はじめ!」
カマエルさんが号令をかけ、各々のペースで木剣を振り始める。
「少々脇が上がっている。そう、その位だ」
カマエルさんはそれを見て回り、一人一人にアドバイスをしていた。
そして後ろの方で素振りをしていた僕たちの所までカマエルさんがやってきた。
「ペトロ、君はそこまで悪い振りでは無いが軌道に若干のブレがある。これは多分持ち方のせいだろうな」
「はい」
カマエルさんは俺の後ろに回り、背後から僕の手を持った。
「こんな感じで握ってみろ」
僕はカマエルさんに握られた通りに木剣を握る。
「そうだ。それで振ってみろ」
言われるがままに剣を上段から切り下す。
「動かしやすいです」
先程と違い、より剣に力が入る気がした。そのため剣の重みに負けることなく、綺麗に振り下ろすことが出来た。
「問題はジョニーだな。全体的に指摘点がある」
その後、数十分の間ジョニー君に対し徹底的な指導が続いた。
そして一番遅かったジョニー君が終わった所で一旦休憩となった。
「はあ、はあ、しんどい」
素振りから解放されたジョニー君は尋常ではない位に疲れ果てており、完全に息が上がっていた。
「お疲れ様」
「どうして、お前は、大丈夫なんだ」
「田舎住みで体力はそこそこあるからね」
「これならもう少し運動しておくべきだった……」
ジョニー君はこの差のせいか、今までの人生を後悔していた。
「都会じゃ運動する必要はあまりないもんね」
運動を出来る場自体がそもそもこの街にはそこまで多くない。商人として生まれてからこの街にいるジョニー君に体力が無いのも仕方の無いことと言える。
「次は走り込みだ。行くぞ!」
そして数分後、カマエルさんによりランニングの開始が告げられた。
それと同時にジョニー君の顔は絶望に染まっていた。
「今日のノルマは10周だ、行くぞ!」
僕たちは最後尾に着くカマエルさんに尻をひっぱたかれながら走り続けた。
とは言っても差は歴然で、僕が10周する間に3周くらい差が付いた。
正直な所もう諦めてしまいそうな位には疲れ果てているけれど、ジョニー君は走ることを止めなかった。
そして結構時間はかかったが、ジョニー君は無事完走した。
「君たちはここまでだ。流石に剣を持ったばかりの初心者に実践型の訓練は危険だからな」
というわけで、僕たちの訓練は終了した。
その後はいつの間にか騎士の方が用意していた椅子に座り、見学することになった。
「やっぱり本物は凄いね」
「そうだな」
あれだけの練習の後にも関わらず、一切の疲れの跡を見せずに木剣を軽々と振り回している。
なんなら素振りの時の僕たちの振りよりも素早い。
その中でもダントツなのはカマエルさん。
剣速もそうだが、移動速度もそれ以上に凄まじい。騎士が振った剣を受け止めることなくステップだけで完全に避けてのけるのだ。そしてカマエルさんの攻撃はガードすら許さない。
最終的には4人同時に相手をしていたが、一切苦戦することなく全員を打ちのめしていた。
「もしかしたらルーシーさんよりも強いかも」
あの人もあの人で化け物じみた強さを誇っているが、この人には敵わなさそうだ。
「どうやって避けているんですか?」
練習の合間にこちらの方へ来てくれたので聞いてみた。
「アレは普通に見てから避けているな。腕の動きに注目すればどの軌道で来るかは結構見て取れる」
「目が良いんですね」
簡単に言ってのけるが、かなりの動体視力が無ければ不可能な芸当だ。
「そうだな。両親には感謝だな」
その後、カマエルさんは練習に戻り騎士たちの指導をしていた。
それからしばらく経った後、練習は終了した。
「今日はありがとうございました」
「良い経験だった」
「そうか、なら良かった。また来るのであれば我々は歓迎する。またな」
僕たちはカマエルさんにお礼を言って、騎士団本部を後にした。
久々の運動に疲れた僕は、家でご飯を食べて風呂に入った後、何をするでもなく真っ先に就寝した。
そして翌日。大学で目にしたのは、筋肉痛に苦しむジョニー君だった。
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