8 / 41
8話
しおりを挟む
「これで授業を終わりだ。風見、号令」
「気を付け、礼!」
「ありがとうございました……」
余りにも気の抜けた礼の後、バタバタと倒れ伏す音が聞こえてくる。
「雑魚が」
倒れていたのは俺を捕らえるべく頑張っていた男共。
最初の試合で向かって来た男子よりも体力がある奴は誰一人としておらず、ただ適当に躱し続けるだけで全員戦闘不能へと陥っていた。
最後らへんは試合中にも関わらず全員で襲ってきたが、連携も取れていない集団に捕まるわけもなかった。
結果としてこんな惨状が生まれていた。
「楽しかったわ~」
そんな滅茶苦茶な体育を終えて楽しそうに笑っていたのはオカマの武田。
最後の全員がコートに集まっていた際、汗をかいている男の密度が高かったことが相当嬉しかったらしい。
「シャワー浴びてくるわ、すまん」
逆に嫌そうな顔をして部室棟にあるシャワー室に走っていったのはバスケ部の櫻井。
汗をかいた男との接触がとにかく嫌だったらしい。
「起きるんだお前ら!授業があるんだぞ!」
ちなみにハンドボール部の吉田は倒れている男子を叩き起こしていた。
そんな感じでクラスメイトの体力が完全に失われてしまった為、以後はクラスメイトからの襲撃などは発生せず無事に放課後を迎えることが出来た。
「じゃあ俺は水泳部の助っ人に行ってくるわ!」
放課後、晴翔は早々に荷物を纏めて部活の助っ人に行こうとしていた。
「毎度思うんだが、水泳部の助っ人って何するんだ……?」
野球とかサッカーみたいな団体競技なら良く聞く話だ。そしてテニスとか卓球のような1対1の対戦型競技だった場合も何とか理解できる。
だが、水泳や陸上のようなただひたすら自己の記録を高めるだけの競技に試合の日以外で助っ人の意味はあるのだろうか。
「そりゃあ一緒に泳ぐだけだが?」
「メドレーですら無いのかよ」
「流石に部員でもない奴がメドレーに出るのはおかしいだろ」
「どういう倫理観だよ」
水泳部のレーンを使って練習している時点で変わんねえだろ。そもそも助っ人なんだからさ。
「それが部活ってもんなんだよ。じゃあな!」
「おう、行ってら」
晴翔は走って教室を去っていった。
「あいつの基準ってよく分からないんだよな」
同級生の涼香の事はババア認定している癖に同じく同級生の水泳部のマネージャーは妹のように可愛がっているんだよな。
いくら身長が低くて幼い印象を受けるとしても涼香と同い年だし何なら4月生まれだから厳密には晴翔より年上だから姉である。
まあ高校一年生だから周囲に年下が存在しなくて飢えているせいでああなったんだろうけど。可哀そうな男だ。
「帰るか」
急ぐほどの用事は無いのでゆっくりしていた俺も準備が終わったので荷物を持って教室から出て行こうとすると、
「渚、帰ろっか」
涼香に声を掛けられた。これにより、ただの帰宅が姉との帰宅イベントという素晴らしい形態に進化を始めていた。
「帰るって?」
「渚が一人で帰るのが心配だからね。お姉ちゃんと一緒に帰ろっか」
そう言って涼香は腕を組んできた。色々当たっていて最高ですね。そこまで生地が感じられないので柔らかさだけではなく体温が感じられるのもまた素晴らしい。
じゃなくて、
「バド部はどうしたの?」
この人、今から部活である。
「勿論あるに決まってるけど。それがどうかしたの?」
悪びれもせずにサボり宣言をしないでくれ。
「どうかしたのじゃなくて。じゃあ帰っちゃまずいでしょ」
「でも心配じゃん」
「女子高生が男子高校生の帰宅を心配しないでください。普通逆だよね」
「たっ、確かに……」
確かにじゃないよ。姉としては素晴らしいんだけどさ。バドミントンのプロを目指しているのなら自分の将来を大事にしてください。
「で、何が欲しいの?」
いくら涼香が過保護な姉だったとしても普段はこんなことはしない。
なら何故なのか。涼香の欲しいものが今日発売されたからである。
多分。
「さっすが渚。私の弟なだけあるね」
俺の予想は当たっていたらしく、満面の笑みで俺の頭を撫でてきた。
ありがとうございます、その手で人生が救われました。
「まあ露骨だったからね」
「ってことでこれ。お願いします!」
涼香が渡してきたのはメモが書かれたルーズリーフと5千円札。
「分かった。中身は……」
姉の頼みは絶対なので二つ返事でオッケーし、メモを開く。
まあそうだよな。
中に書かれていたのは漫画の単行本ではなく、メロン〇ックスとかに売ってある同人誌である。
お互い未成年のため全年齢対象の健全な本しかリストアップされていないが、弟だと思っている相手に買わせるものかと言えば間違いなくNOである。
その理由は同人誌だからという差別的な理由ではなく、10冊中7冊がおねショタものだからである。
姉弟モノじゃないだけマシだが、それでもラインが存在する。
「良いかな?」
「良いよ」
まあそんな文句を言う権利は弟に存在しないんだけどな。
「じゃあ明日取りに来るね!」
そう言って涼香は部活に向かっていった。
「行ってらっしゃい」
涼香を見送った後、俺は一人下校することに。
姉と帰宅してみたかったな。
もしツッコんでいなければそんなイベントが実現したかもしれないと後悔しつつ、下駄箱に向かう。
「ん!?!?!?」
下駄箱からローファーを取り出し、履き替えようとスリッパを脱ごうとしたタイミングで何者かが背後から目を塞ぎ、腕をロープで縛ってきた。
「気を付け、礼!」
「ありがとうございました……」
余りにも気の抜けた礼の後、バタバタと倒れ伏す音が聞こえてくる。
「雑魚が」
倒れていたのは俺を捕らえるべく頑張っていた男共。
最初の試合で向かって来た男子よりも体力がある奴は誰一人としておらず、ただ適当に躱し続けるだけで全員戦闘不能へと陥っていた。
最後らへんは試合中にも関わらず全員で襲ってきたが、連携も取れていない集団に捕まるわけもなかった。
結果としてこんな惨状が生まれていた。
「楽しかったわ~」
そんな滅茶苦茶な体育を終えて楽しそうに笑っていたのはオカマの武田。
最後の全員がコートに集まっていた際、汗をかいている男の密度が高かったことが相当嬉しかったらしい。
「シャワー浴びてくるわ、すまん」
逆に嫌そうな顔をして部室棟にあるシャワー室に走っていったのはバスケ部の櫻井。
汗をかいた男との接触がとにかく嫌だったらしい。
「起きるんだお前ら!授業があるんだぞ!」
ちなみにハンドボール部の吉田は倒れている男子を叩き起こしていた。
そんな感じでクラスメイトの体力が完全に失われてしまった為、以後はクラスメイトからの襲撃などは発生せず無事に放課後を迎えることが出来た。
「じゃあ俺は水泳部の助っ人に行ってくるわ!」
放課後、晴翔は早々に荷物を纏めて部活の助っ人に行こうとしていた。
「毎度思うんだが、水泳部の助っ人って何するんだ……?」
野球とかサッカーみたいな団体競技なら良く聞く話だ。そしてテニスとか卓球のような1対1の対戦型競技だった場合も何とか理解できる。
だが、水泳や陸上のようなただひたすら自己の記録を高めるだけの競技に試合の日以外で助っ人の意味はあるのだろうか。
「そりゃあ一緒に泳ぐだけだが?」
「メドレーですら無いのかよ」
「流石に部員でもない奴がメドレーに出るのはおかしいだろ」
「どういう倫理観だよ」
水泳部のレーンを使って練習している時点で変わんねえだろ。そもそも助っ人なんだからさ。
「それが部活ってもんなんだよ。じゃあな!」
「おう、行ってら」
晴翔は走って教室を去っていった。
「あいつの基準ってよく分からないんだよな」
同級生の涼香の事はババア認定している癖に同じく同級生の水泳部のマネージャーは妹のように可愛がっているんだよな。
いくら身長が低くて幼い印象を受けるとしても涼香と同い年だし何なら4月生まれだから厳密には晴翔より年上だから姉である。
まあ高校一年生だから周囲に年下が存在しなくて飢えているせいでああなったんだろうけど。可哀そうな男だ。
「帰るか」
急ぐほどの用事は無いのでゆっくりしていた俺も準備が終わったので荷物を持って教室から出て行こうとすると、
「渚、帰ろっか」
涼香に声を掛けられた。これにより、ただの帰宅が姉との帰宅イベントという素晴らしい形態に進化を始めていた。
「帰るって?」
「渚が一人で帰るのが心配だからね。お姉ちゃんと一緒に帰ろっか」
そう言って涼香は腕を組んできた。色々当たっていて最高ですね。そこまで生地が感じられないので柔らかさだけではなく体温が感じられるのもまた素晴らしい。
じゃなくて、
「バド部はどうしたの?」
この人、今から部活である。
「勿論あるに決まってるけど。それがどうかしたの?」
悪びれもせずにサボり宣言をしないでくれ。
「どうかしたのじゃなくて。じゃあ帰っちゃまずいでしょ」
「でも心配じゃん」
「女子高生が男子高校生の帰宅を心配しないでください。普通逆だよね」
「たっ、確かに……」
確かにじゃないよ。姉としては素晴らしいんだけどさ。バドミントンのプロを目指しているのなら自分の将来を大事にしてください。
「で、何が欲しいの?」
いくら涼香が過保護な姉だったとしても普段はこんなことはしない。
なら何故なのか。涼香の欲しいものが今日発売されたからである。
多分。
「さっすが渚。私の弟なだけあるね」
俺の予想は当たっていたらしく、満面の笑みで俺の頭を撫でてきた。
ありがとうございます、その手で人生が救われました。
「まあ露骨だったからね」
「ってことでこれ。お願いします!」
涼香が渡してきたのはメモが書かれたルーズリーフと5千円札。
「分かった。中身は……」
姉の頼みは絶対なので二つ返事でオッケーし、メモを開く。
まあそうだよな。
中に書かれていたのは漫画の単行本ではなく、メロン〇ックスとかに売ってある同人誌である。
お互い未成年のため全年齢対象の健全な本しかリストアップされていないが、弟だと思っている相手に買わせるものかと言えば間違いなくNOである。
その理由は同人誌だからという差別的な理由ではなく、10冊中7冊がおねショタものだからである。
姉弟モノじゃないだけマシだが、それでもラインが存在する。
「良いかな?」
「良いよ」
まあそんな文句を言う権利は弟に存在しないんだけどな。
「じゃあ明日取りに来るね!」
そう言って涼香は部活に向かっていった。
「行ってらっしゃい」
涼香を見送った後、俺は一人下校することに。
姉と帰宅してみたかったな。
もしツッコんでいなければそんなイベントが実現したかもしれないと後悔しつつ、下駄箱に向かう。
「ん!?!?!?」
下駄箱からローファーを取り出し、履き替えようとスリッパを脱ごうとしたタイミングで何者かが背後から目を塞ぎ、腕をロープで縛ってきた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪
naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。
「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」
まっ、いいかっ!
持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――
子供にしかモテない私が異世界転移したら、子連れイケメンに囲まれて逆ハーレム始まりました
もちもちのごはん
恋愛
地味で恋愛経験ゼロの29歳OL・春野こはるは、なぜか子供にだけ異常に懐かれる特異体質。ある日突然異世界に転移した彼女は、育児に手を焼くイケメンシングルファザーたちと出会う。泣き虫姫や暴れん坊、野生児たちに「おねえしゃん大好き!!」とモテモテなこはるに、彼らのパパたちも次第に惹かれはじめて……!? 逆ハーレム? ざまぁ? そんなの知らない!私はただ、子供たちと平和に暮らしたいだけなのに――!
【完結】結婚式の隣の席
山田森湖
恋愛
親友の結婚式、隣の席に座ったのは——かつて同じ人を想っていた男性だった。
ふとした共感から始まった、ふたりの一夜とその先の関係。
「幸せになってやろう」
過去の想いを超えて、新たな恋に踏み出すラブストーリー。
短編【シークレットベビー】契約結婚の初夜の後でいきなり離縁されたのでお腹の子はひとりで立派に育てます 〜銀の仮面の侯爵と秘密の愛し子〜
美咲アリス
恋愛
レティシアは義母と妹からのいじめから逃げるために契約結婚をする。結婚相手は醜い傷跡を銀の仮面で隠した侯爵のクラウスだ。「どんなに恐ろしいお方かしら⋯⋯」震えながら初夜をむかえるがクラウスは想像以上に甘い初体験を与えてくれた。「私たち、うまくやっていけるかもしれないわ」小さな希望を持つレティシア。だけどなぜかいきなり離縁をされてしまって⋯⋯?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる