将来出会うかもしれないお姉さんの為に人生を捧げてきた俺は、遂にお姉さんに出会うことが出来た。しかし数があまりにも多すぎた。

僧侶A

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8話

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「これで授業を終わりだ。風見、号令」

「気を付け、礼!」

「ありがとうございました……」

 余りにも気の抜けた礼の後、バタバタと倒れ伏す音が聞こえてくる。

「雑魚が」

 倒れていたのは俺を捕らえるべく頑張っていた男共。

 最初の試合で向かって来た男子よりも体力がある奴は誰一人としておらず、ただ適当に躱し続けるだけで全員戦闘不能へと陥っていた。

 最後らへんは試合中にも関わらず全員で襲ってきたが、連携も取れていない集団に捕まるわけもなかった。

 結果としてこんな惨状が生まれていた。

「楽しかったわ~」

 そんな滅茶苦茶な体育を終えて楽しそうに笑っていたのはオカマの武田。

 最後の全員がコートに集まっていた際、汗をかいている男の密度が高かったことが相当嬉しかったらしい。

「シャワー浴びてくるわ、すまん」

 逆に嫌そうな顔をして部室棟にあるシャワー室に走っていったのはバスケ部の櫻井。

 汗をかいた男との接触がとにかく嫌だったらしい。

「起きるんだお前ら!授業があるんだぞ!」

 ちなみにハンドボール部の吉田は倒れている男子を叩き起こしていた。


 そんな感じでクラスメイトの体力が完全に失われてしまった為、以後はクラスメイトからの襲撃などは発生せず無事に放課後を迎えることが出来た。

「じゃあ俺は水泳部の助っ人に行ってくるわ!」

 放課後、晴翔は早々に荷物を纏めて部活の助っ人に行こうとしていた。

「毎度思うんだが、水泳部の助っ人って何するんだ……?」

 野球とかサッカーみたいな団体競技なら良く聞く話だ。そしてテニスとか卓球のような1対1の対戦型競技だった場合も何とか理解できる。

 だが、水泳や陸上のようなただひたすら自己の記録を高めるだけの競技に試合の日以外で助っ人の意味はあるのだろうか。

「そりゃあ一緒に泳ぐだけだが?」

「メドレーですら無いのかよ」

「流石に部員でもない奴がメドレーに出るのはおかしいだろ」

「どういう倫理観だよ」

 水泳部のレーンを使って練習している時点で変わんねえだろ。そもそも助っ人なんだからさ。

「それが部活ってもんなんだよ。じゃあな!」

「おう、行ってら」

 晴翔は走って教室を去っていった。

「あいつの基準ってよく分からないんだよな」

 同級生の涼香の事はババア認定している癖に同じく同級生の水泳部のマネージャーは妹のように可愛がっているんだよな。

 いくら身長が低くて幼い印象を受けるとしても涼香と同い年だし何なら4月生まれだから厳密には晴翔より年上だから姉である。

 まあ高校一年生だから周囲に年下が存在しなくて飢えているせいでああなったんだろうけど。可哀そうな男だ。

「帰るか」

 急ぐほどの用事は無いのでゆっくりしていた俺も準備が終わったので荷物を持って教室から出て行こうとすると、

「渚、帰ろっか」

 涼香に声を掛けられた。これにより、ただの帰宅が姉との帰宅イベントという素晴らしい形態に進化を始めていた。

「帰るって?」

「渚が一人で帰るのが心配だからね。お姉ちゃんと一緒に帰ろっか」

 そう言って涼香は腕を組んできた。色々当たっていて最高ですね。そこまで生地が感じられないので柔らかさだけではなく体温が感じられるのもまた素晴らしい。

 じゃなくて、

「バド部はどうしたの?」

 この人、今から部活である。

「勿論あるに決まってるけど。それがどうかしたの?」

 悪びれもせずにサボり宣言をしないでくれ。

「どうかしたのじゃなくて。じゃあ帰っちゃまずいでしょ」

「でも心配じゃん」

「女子高生が男子高校生の帰宅を心配しないでください。普通逆だよね」

「たっ、確かに……」

 確かにじゃないよ。姉としては素晴らしいんだけどさ。バドミントンのプロを目指しているのなら自分の将来を大事にしてください。

「で、何が欲しいの?」

 いくら涼香が過保護な姉だったとしても普段はこんなことはしない。

 なら何故なのか。涼香の欲しいものが今日発売されたからである。

 多分。



「さっすが渚。私の弟なだけあるね」

 俺の予想は当たっていたらしく、満面の笑みで俺の頭を撫でてきた。

 ありがとうございます、その手で人生が救われました。

「まあ露骨だったからね」

「ってことでこれ。お願いします!」

 涼香が渡してきたのはメモが書かれたルーズリーフと5千円札。

「分かった。中身は……」

 姉の頼みは絶対なので二つ返事でオッケーし、メモを開く。

 まあそうだよな。

 中に書かれていたのは漫画の単行本ではなく、メロン〇ックスとかに売ってある同人誌である。

 お互い未成年のため全年齢対象の健全な本しかリストアップされていないが、弟だと思っている相手に買わせるものかと言えば間違いなくNOである。

 その理由は同人誌だからという差別的な理由ではなく、10冊中7冊がおねショタものだからである。

 姉弟モノじゃないだけマシだが、それでもラインが存在する。

「良いかな?」

「良いよ」

 まあそんな文句を言う権利は弟に存在しないんだけどな。

「じゃあ明日取りに来るね!」

 そう言って涼香は部活に向かっていった。

「行ってらっしゃい」

 涼香を見送った後、俺は一人下校することに。

 姉と帰宅してみたかったな。

 もしツッコんでいなければそんなイベントが実現したかもしれないと後悔しつつ、下駄箱に向かう。

「ん!?!?!?」

 下駄箱からローファーを取り出し、履き替えようとスリッパを脱ごうとしたタイミングで何者かが背後から目を塞ぎ、腕をロープで縛ってきた。
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