死せる勇者、魔界で生きる 〜蘇った俺はただ静かに暮らしたい〜

夢乃アイム

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第一章:再び目覚めた勇者

第二十五話:中庭の門

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 館の中庭に、淡く輝く魔法陣が浮かび上がる。リゼリアが静かに呪文を唱え、手をかざすと、魔力が奔流となって空間を歪ませていった。

「……ふふ、いい感じね」

 彼女は満足げに微笑みながら、徐々に形を成していく門を見つめる。

 セリオは腕を組み、その様子を眺めながら呆れたように言った。

「館に転移門を作るって言うから、てっきり外のどこかに繋げるのかと思っていたが……お前の研究所か」
「ええ、そのほうが便利でしょう? 私がわざわざ魔界のあちこちを歩き回る手間が省けるし、お前も困ったときにすぐ呼べるわ」

 リゼリアは指を鳴らし、魔法陣の光を安定させた。門は黒曜石のような縁取りを持ち、中央にはゆらめく紫色の魔力の膜が広がっている。

「転移門があることで困るのは、俺のほうだな……」

 セリオはため息をつきながら、門を一瞥する。

 これでリゼリアが好きな時に館へやってくることができる。彼女にとっては便利かもしれないが、セリオにとっては休まる時間が減りそうだった。

「まあ、そういうことだから、これからはもっと頻繁にここに来るわね」
「……やっぱりそうなるか」
「そうなるのよ」

 セリオが頭を抱えるのを見て、リゼリアはくすくすと笑った。しかし、その笑みは次第に穏やかなものへと変わっていく。

「ねえ、セリオ……少し真面目な話をしてもいいかしら?」
「……急にどうした?」
「実は……お前に話しておかないといけないことがあるの」

 リゼリアは一歩近づき、真剣な眼差しでセリオを見上げた。その表情には、いつものからかい混じりの雰囲気はない。

「……何の話だ?」
「お前には、息子がいるのよ」

 セリオの思考が一瞬止まる。

「……は?」
「カイ。お前と私の間に生まれた子よ」

 リゼリアの静かな声が、中庭を舞った。

 セリオはただ、その言葉を理解しようとするかのように、じっとリゼリアを見つめていた——。
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