死せる勇者、魔界で生きる 〜蘇った俺はただ静かに暮らしたい〜

夢乃アイム

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第二章:魔界式スローライフ

第八話:死者の生

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 戦いが終わり、静寂が戻った。

 ヴァルゼオはエルミナの手によって撤退し、辺りには焦げた草木の匂いと、残留する魔力の余韻だけが漂っていた。
 セリオは剣を収め、深く息を吐く。アンデッドである彼に疲労はないが、それでも精神的な重みを感じずにはいられなかった。

「……次こそ、お前を殺す、か」

 ヴァルゼオの最後の言葉が脳裏をよぎる。

 ——五度目の復活。

 セリオは自らの存在の異質さを改めて実感した。普通なら一度死ねばそれで終わる。しかし、彼はリゼリアによって蘇り続けている。

 自分は本当に"生きている"のか——?

 そんな思考に沈んでいた時、不意に気配を感じた。

「……来るのが遅いな」

 苦笑しながら呟いた瞬間、風と共にリゼリアが現れた。
 白い髪をなびかせ、鮮やかな紅の瞳で真っ直ぐにこちらを見つめている。

「セリオ!」

 駆け寄ってくる彼女の姿を見て、セリオは肩をすくめた。

「……奴ならもう撤退したぞ」

 彼の前に膝をついたリゼリアは、素早く傷の具合を確かめる。致命傷ではないと判断して、わずかに肩の力を抜いたのが分かった。

「リゼリア、館の周りに住み着いた魔族だが……」
「セリオ。その話は後にしなさい」

 珍しく強い口調だった。  

「彼らから聞いたわ。お前はヴァルゼオと戦ったのでしょう?」
「まぁな」
「お前は何度もあいつに殺されているのよ。一人で戦うなんて、無謀すぎるわ」

 リゼリアの細い指がセリオの腕を掴む。その力は思いのほか強かった。

「……お前が生きていて……良かった……」

 ふっと目を伏せた彼女の頬には、微かに熱が帯びているように見えた。

「……心配、したのよ……」

 その言葉に、セリオは息を詰まらせる。
 リゼリアは、いつも冷静だ。どんな状況でも動じることなく、余裕すら見せる。だが、今は違った。

「……悪かったな」

 不器用にそう返すと、リゼリアは顔を上げ、ふっと微笑んだ。

「なら、私の言うことを聞きなさい。今すぐ館に戻って、私の治療を受けること。いいわね?」
「……命令するのか」
「当然よ。私がお前を蘇らせたのだから……」

 くすっと笑う彼女の表情は、どこか嬉しそうだった。
 セリオは小さくため息をつくと、リゼリアの肩を借りることにした。
 その瞬間、小さく息を呑む気配があったが、リゼリアは何も言わずに彼を支える。

 ──ただの主従関係を装っているはずのリゼリアの手は、妙に温かかった。
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