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第16話 王子に溺れて
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カチャカチャと食器どうしが立てる音に、意識が戻り始める。
薄っすらと開いたまぶたに、眩しい日差しが痛い。
「んっ……? 今、何時なんだろう……」
呟いたテオの言葉に、クリアな声が返される。
「そろそろお昼ですね。お腹が空いたでしょう?」
聞き慣れた声に驚いて、テオはガバッと起き上がる。
「レイさんっ! あの、これは……」
「テオ様。どうか、お体をお隠しください。私が王子に叱られます」
そう言われて、ハッと下を向いて自分の体を見る。
一糸纏わぬ姿のテオが、そこにはいた。
腹にも胸にも、花びらのように赤い跡が散っている。
(これは、昨夜の……)
その花びらが王子の唇の跡だと思い当たって、テオは慌てて掛布を纏う。
急に恥ずかしさを感じると、顔が熱く火照り出す。
「テオ様、おめでとうございます。で、よろしいんですよね?」
「は、はい! ありがとうございます。レイさんのおかげです」
「私は何も……」
「いえ、昨夜、背中を押していただいたおかげで……。
ヴィル様とそういうことになれましたので……」
「ふふ。それは、ようございました。お幸せそうで何よりです」
「はい……。なんだか恥ずかしいです」
「いえいえ。私も執事として、喜ばしい限りです」
「あ、あの。……ヴィル様は……?」
「王子は、喜びのあまり、眠らずに公務に向かわれましたよ」
「えっ? 大丈夫なのですか?」
「はい。元々、短時間の睡眠で十分な休息を取れる体質ですから」
「そう、でしたか」
「はい。今朝はテオ様の寝顔をずっと見ていらしたとか。
とても幸せそうでした」
「え、あ、そうだったのですね。私は、すっかりと眠り込んでしまって」
「王子の腕の中は、快適でしたか?」
「はい、それはもう!」
勢いよく言ってしまってから、また恥ずかしくなる。
「ふふふ。かわいいかたですね。王子は、そろそろ昼食にお戻りです。
ぜひご一緒に。今日は格別に美味しく感じましょう」
「はい! では、私も支度をして参ります」
そそくさと浴室へ向かうテオ。
その後ろ姿を、レイは微笑んで見送る。
直後に、弾むような足音と共にガチャリと部屋の扉が開く。
「これは、王子。公務はお済みでしょうか?」
「レイ! 今日は、書類仕事だけだったから、簡単なものだ。
それよりテオは、どうしてる?」
「はい。今は、浴室に。王子は、お席にどうぞ」
「うん。浴室に行ってはマズいかな?」
「王子のためにご自分を綺麗になさる時間を差し上げてください」
「そ、そうか。そうだな。私もずいぶんと浮かれているようだ」
昼食の支度が整うのと同じくして、テオが浴室から戻ってくる。
王子の顔を見つけると、パァーッと顔が明るく輝く。
「王子様!」
「テオ! よく眠れたかい?」
「は、はい! すみません、今朝は、お見送りもせずに」
「そんなことはいいさ。それより、昨夜のようにヴィルと呼んでくれ」
「あっ、はい。ヴィル……。私もこの部屋にいていいのでしょうか?」
「もちろんだよ。なぜ?」
「レイさんはともかく。ほかの使用人のかたたちの手前……」
「ん? どういうことだい?」
「あの……。私は、秘密の……日陰の身ではないのですか?」
王子は、テオの言葉に、寸の間、キョトンとした顔をする。
それから、立ち上がるとテオに近づいて、唇を重ねた。
「あの……? 王子様?」
「ヴィルだよ、テオ。
あぁ、そういえば、テオはヴィーと呼んでくれていたっけ」
「え? は? 王子様がなぜ、ヴィーのことを……?」
「まだ分からないようだね。
それは、今夜にでも、じっくりと語って聞かせよう」
「はぁ……」
「さぁ、今は昼にしよう。お腹が空いただろう?
昨夜は、たくさん動いたからね」
そう言って、イタズラっぽく片目をつぶる王子。
その仕草に、テオはドキドキしてしまって、コクンと頷くだけだった。
*****
その夜。
いつもは深夜に叩かれるテオの部屋の扉が、夕食後、数時間で叩かれる。
トトトン! トトトン!
いつもよりも軽く、弾むような音。
その音を待ちわびていたテオは、すぐに扉へと駆け寄る。
「テオ! あぁ、今夜も綺麗だ」
「ヴィル……。お待ちしておりました」
「ふふ。今夜は、困った顔をしないんだね。嬉しいよ」
「あれは……。嬉しい気持ちがあふれてしまうのを、抑えていたのです」
テオの言葉に、王子は少し驚いて。
それから、やはり輝くような笑顔になって、テオを抱きしめる。
「あぁ。なんて長い日々だったんだろう。
けれど、今は、私の腕の中にテオがいる。それだけで十分だ」
(長い? まだ出会って少しだと思うけど……?)
テオの頭に浮かんだ疑問は、王子の重ねられた唇に吸い込まれていく。
(そうだ……。ヴィルがいるだけで、抱きしめられるだけで十分……)
薄い布一枚で作られたテオの寝巻きは、王子の手でスルリと落とされる。
テオの口内を溶かすだけ溶かした王子の舌は、首筋へと向かう。
「……んっ! ……あぁ、ハァハァ、ンァ!」
優しくも淫靡になぞられる首筋への刺激に、テオの声は抑えられない。
その声は、王子の官能を刺激して、大胆な動きへと誘う。
胸の紅く熟れた突起をなぶられながら、テオ自身にも王子の手は伸びる。
ゆるゆると上下されるうちに、胸への刺激と相まって、テオは高まる。
「……ぁぁぁあ、ヴィル! 許して……」
「ふふふ。かわいいテオは、何を言っているのかな?」
「んんっ! ……ヴィル、愛して……います。……んくぅ、あ、いやっ!」
「かわいい。私が全部食べ終えるまで、離さないよ」
「んん。は、はい。……ふぅ、はぁっ! うれ、しい……」
王子の指が後ろの窪みに伸びていく。
テオのそこは、昨夜からずっと、王子を求めてジンジンと疼いている。
「あぁ、テオ。まるで私を求めているようだよ」
「……んふぅ。……その、通りです。……もうあなた無しでは、いられない」
「嬉しいことを言ってくれる。テオは、いつだってそうだった」
王子の思うままにほぐされた窪みは、ヒクついて王子を待つ。
じわじわと王子が進むと、テオの口から出る喘ぎ声が一段と大きくなる。
「あぁ! ……んんっ。……ぜんぶ、貫いて……。んあぁ!」
王子と繋がるとテオの視界は極端に狭まり、目の奥がチカチカと煌めく。
テオの五感は、ただ王子を感じるためだけに使われる。
全身を駆け巡る快感に、身も心もゆだねる。
ゆっくりと意識を手放していくのが、心地いい。
次にテオが意識を取り戻したのは、まだ夜明けは遠い深夜。
王子の腕の中に閉じ込められるように、抱きしめられている。
月明かりが、ふたりを明るく照らしている時だった。
薄っすらと開いたまぶたに、眩しい日差しが痛い。
「んっ……? 今、何時なんだろう……」
呟いたテオの言葉に、クリアな声が返される。
「そろそろお昼ですね。お腹が空いたでしょう?」
聞き慣れた声に驚いて、テオはガバッと起き上がる。
「レイさんっ! あの、これは……」
「テオ様。どうか、お体をお隠しください。私が王子に叱られます」
そう言われて、ハッと下を向いて自分の体を見る。
一糸纏わぬ姿のテオが、そこにはいた。
腹にも胸にも、花びらのように赤い跡が散っている。
(これは、昨夜の……)
その花びらが王子の唇の跡だと思い当たって、テオは慌てて掛布を纏う。
急に恥ずかしさを感じると、顔が熱く火照り出す。
「テオ様、おめでとうございます。で、よろしいんですよね?」
「は、はい! ありがとうございます。レイさんのおかげです」
「私は何も……」
「いえ、昨夜、背中を押していただいたおかげで……。
ヴィル様とそういうことになれましたので……」
「ふふ。それは、ようございました。お幸せそうで何よりです」
「はい……。なんだか恥ずかしいです」
「いえいえ。私も執事として、喜ばしい限りです」
「あ、あの。……ヴィル様は……?」
「王子は、喜びのあまり、眠らずに公務に向かわれましたよ」
「えっ? 大丈夫なのですか?」
「はい。元々、短時間の睡眠で十分な休息を取れる体質ですから」
「そう、でしたか」
「はい。今朝はテオ様の寝顔をずっと見ていらしたとか。
とても幸せそうでした」
「え、あ、そうだったのですね。私は、すっかりと眠り込んでしまって」
「王子の腕の中は、快適でしたか?」
「はい、それはもう!」
勢いよく言ってしまってから、また恥ずかしくなる。
「ふふふ。かわいいかたですね。王子は、そろそろ昼食にお戻りです。
ぜひご一緒に。今日は格別に美味しく感じましょう」
「はい! では、私も支度をして参ります」
そそくさと浴室へ向かうテオ。
その後ろ姿を、レイは微笑んで見送る。
直後に、弾むような足音と共にガチャリと部屋の扉が開く。
「これは、王子。公務はお済みでしょうか?」
「レイ! 今日は、書類仕事だけだったから、簡単なものだ。
それよりテオは、どうしてる?」
「はい。今は、浴室に。王子は、お席にどうぞ」
「うん。浴室に行ってはマズいかな?」
「王子のためにご自分を綺麗になさる時間を差し上げてください」
「そ、そうか。そうだな。私もずいぶんと浮かれているようだ」
昼食の支度が整うのと同じくして、テオが浴室から戻ってくる。
王子の顔を見つけると、パァーッと顔が明るく輝く。
「王子様!」
「テオ! よく眠れたかい?」
「は、はい! すみません、今朝は、お見送りもせずに」
「そんなことはいいさ。それより、昨夜のようにヴィルと呼んでくれ」
「あっ、はい。ヴィル……。私もこの部屋にいていいのでしょうか?」
「もちろんだよ。なぜ?」
「レイさんはともかく。ほかの使用人のかたたちの手前……」
「ん? どういうことだい?」
「あの……。私は、秘密の……日陰の身ではないのですか?」
王子は、テオの言葉に、寸の間、キョトンとした顔をする。
それから、立ち上がるとテオに近づいて、唇を重ねた。
「あの……? 王子様?」
「ヴィルだよ、テオ。
あぁ、そういえば、テオはヴィーと呼んでくれていたっけ」
「え? は? 王子様がなぜ、ヴィーのことを……?」
「まだ分からないようだね。
それは、今夜にでも、じっくりと語って聞かせよう」
「はぁ……」
「さぁ、今は昼にしよう。お腹が空いただろう?
昨夜は、たくさん動いたからね」
そう言って、イタズラっぽく片目をつぶる王子。
その仕草に、テオはドキドキしてしまって、コクンと頷くだけだった。
*****
その夜。
いつもは深夜に叩かれるテオの部屋の扉が、夕食後、数時間で叩かれる。
トトトン! トトトン!
いつもよりも軽く、弾むような音。
その音を待ちわびていたテオは、すぐに扉へと駆け寄る。
「テオ! あぁ、今夜も綺麗だ」
「ヴィル……。お待ちしておりました」
「ふふ。今夜は、困った顔をしないんだね。嬉しいよ」
「あれは……。嬉しい気持ちがあふれてしまうのを、抑えていたのです」
テオの言葉に、王子は少し驚いて。
それから、やはり輝くような笑顔になって、テオを抱きしめる。
「あぁ。なんて長い日々だったんだろう。
けれど、今は、私の腕の中にテオがいる。それだけで十分だ」
(長い? まだ出会って少しだと思うけど……?)
テオの頭に浮かんだ疑問は、王子の重ねられた唇に吸い込まれていく。
(そうだ……。ヴィルがいるだけで、抱きしめられるだけで十分……)
薄い布一枚で作られたテオの寝巻きは、王子の手でスルリと落とされる。
テオの口内を溶かすだけ溶かした王子の舌は、首筋へと向かう。
「……んっ! ……あぁ、ハァハァ、ンァ!」
優しくも淫靡になぞられる首筋への刺激に、テオの声は抑えられない。
その声は、王子の官能を刺激して、大胆な動きへと誘う。
胸の紅く熟れた突起をなぶられながら、テオ自身にも王子の手は伸びる。
ゆるゆると上下されるうちに、胸への刺激と相まって、テオは高まる。
「……ぁぁぁあ、ヴィル! 許して……」
「ふふふ。かわいいテオは、何を言っているのかな?」
「んんっ! ……ヴィル、愛して……います。……んくぅ、あ、いやっ!」
「かわいい。私が全部食べ終えるまで、離さないよ」
「んん。は、はい。……ふぅ、はぁっ! うれ、しい……」
王子の指が後ろの窪みに伸びていく。
テオのそこは、昨夜からずっと、王子を求めてジンジンと疼いている。
「あぁ、テオ。まるで私を求めているようだよ」
「……んふぅ。……その、通りです。……もうあなた無しでは、いられない」
「嬉しいことを言ってくれる。テオは、いつだってそうだった」
王子の思うままにほぐされた窪みは、ヒクついて王子を待つ。
じわじわと王子が進むと、テオの口から出る喘ぎ声が一段と大きくなる。
「あぁ! ……んんっ。……ぜんぶ、貫いて……。んあぁ!」
王子と繋がるとテオの視界は極端に狭まり、目の奥がチカチカと煌めく。
テオの五感は、ただ王子を感じるためだけに使われる。
全身を駆け巡る快感に、身も心もゆだねる。
ゆっくりと意識を手放していくのが、心地いい。
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