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第17話 月明かりの下で
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存分に王子に抱きしめられて、テオは、そのまま意識を失うように眠りに落ちた。
目を覚ましたのは、何がキッカケだったのだろうか?
テオにも分からない。
昨夜は眠っていないという王子は、今夜はぐっすりと眠り込んでいる。
テオを閉じこめるように巻かれた王子の腕を、そっと解く。
月明かりに輝く王子の肌が、ツヤリと煌めく。
その胸板にテオは、唇をひとつ落とす。
眠っているはずの王子の顔が、嬉しげに笑ったような気がする。
王子に掛布を纏わせると、テオは布一枚を羽織って、テラスへと出た。
今夜は、風がそよりとも吹いていない。
どこからともなく、薔薇の香りが漂ってくる。
大きく伸びをすると、全身に血が巡っていくのが分かる。
(あぁ、この満足感はなんだろう? 全てを手に入れたみたいな気分……)
テオの後ろの窪みは、まだ心地よくジンジンと疼いている。
まるで、王子が中にいるかのようにも感じる。
(もうヴィルが欲しくなってる……。私は、どうなっちゃったんだろう?)
これからのことを考えると、心の中は、幸せと不安がごちゃ混ぜになる。
けれど、今は、ただ、ヴィルの腕の中に抱かれていたい。
何度だって貫かれて、ヴィルのものだという印をつけて欲しい。
自分から外に出てきたというのに、急に人肌恋しくなってしまう。
(『朝が来なければいいのに』なんて、自分が思う日がくるとは……)
物語の中の恋人たちの気持ちを、実感を持って知る日がきたのが不思議だった。
(ふふっ! 逃げ出そうとしてたなんて、嘘みたい)
少し前までの自分を思い返して、テオは、つい笑みがこぼれる。
さぁ、王子の腕の中に戻ろう。
そう思って、最後に空を見上げる。
満天の星空に、上弦の月が見える。
部屋に入ろうと、窓についた取っ手に手を掛ける。
モヤリ。
唐突に、頭の中に違和感を覚える。
違和感の正体を確かめるべく、テオは振り返る。
(なんだ? 何かが気に掛かったような……)
モヤモヤした違和感を打ち消そうと、あたりを見回す。
綺麗に整えられた庭、暗闇に沈む王宮の建物、微かに聞こえる噴水の音……。
どれもいつも通りに思える。
(気のせい……だったかな?)
それでも、テオの頭の違和感は消えない。
(何が引っ掛かっているんだろう……?)
その時、テオの背中が熱いもので覆われる。
ぎゅっと強く抱きしめる腕と薔薇の香り。
テオの首筋にサラサラと落ちる髪の感触。
「ヴィル……? どうしたのですか?」
「先生……、いや、テオ。またいなくなってしまったかと思ったよ」
「まさか! あなたを残して、消えたりしません」
「うん……。うん。分かっている。でも……」
「すみません。私のせいですよね? でも、以前は怖くて……」
「何が?」
「あなたとこういう関係になってしまうのが、です」
「なぜ?」
「それは……。あなたに溺れることが、分かっていたからです」
「私は、テオに溺れて欲しいが?」
「溺れてしまったら、私は貪欲だと思うのです。
あなたを何度だって、求めてしまう」
「構わない。むしろ、そうなら嬉しい」
「本気、ですか?」
「無論、本気だよ」
「さっき、ヴィルと抱き合ったばかりだというのに……。
私の中は、もうあなたを求めて疼いているのです」
「本当かい?」
返事をしようとしたテオの唇は、王子のそれに易々とふさがれてしまう。
テオの口内が、望んでいたものに満たされ、悦びに震える。
テオの体を覆っていた布が、ハラリと落ちる。
外だというのに、全く寒さを感じない。
唇を離さないまま、王子の指がテオの窪みを探る。
今も柔らかいそれは、簡単に王子の指を飲み込んでいく。
王子に窪みを翻弄されると、テオ自身が立ち上がる。
煌々と光る月明かりで、テオ自身の影がテラスにくっきりと浮かび上がる。
「……本当だ。テオの中が、私を捕らえて離してくれないよ」
「すみません、ヴィル。……お恥ずかしい。でも、嬉しいのです……」
テラスの手すりに掴まったテオの後ろから、王子が入り込む。
やはりそれも、テオの体はすんなりと受け入れてしまう。
「……あっ。……ンァ! んん! ……あふぅ。……んっ」
甘すぎるテオの声が、我慢出来ずに漏れ出す。
「かわいいよ、テオ。何度だって、繋がりたい」
「本当、ですか……? ……ンァ、ンン。あぁ!」
「当然だよ、ずっとこうしたかったんだからね……」
「あぁ! はず、かしい。外で、こんな……」
「大丈夫。誰からも見えないさ」
深夜であっても夜廻りの衛兵はいる。
誰にも見られないとは言い切れないはずだ。
けれど、王子の確信に満ちた返答に、テオはただ頷く。
(人払いでもされているのかな……?)
(そういえば、さっきの違和感ってなんだっけ……?)
テオの頭には、いくつかの疑問が浮かぶ。
だがそれも、王子の肌が打ちつけられる心地よさと。
ふたりが繋がっている奥のほうの快感に支配されて、すぐに頭から消える。
テオの感覚を占めているのは、王子が加える前後同時の刺激。
(あぁ、もう何も考えられ……ない)
とろけるような感覚を残して、テオの意識は途切れる。
ぐったりしたテオの中に王子は、最後のひと突きを加えて果てた。
優しくテオの髪を撫で、それから布でくるんだテオの体を抱き上げる。
寝台にテオを横たえると、首の下に腕を通す。
腕も脚もテオに絡ませて、王子の中に閉じ込めるように抱きすくめる。
「さて、どこから話せばいいのかな?」
ひとり呟いた王子の声は、もちろんテオには届いてはいなかった。
目を覚ましたのは、何がキッカケだったのだろうか?
テオにも分からない。
昨夜は眠っていないという王子は、今夜はぐっすりと眠り込んでいる。
テオを閉じこめるように巻かれた王子の腕を、そっと解く。
月明かりに輝く王子の肌が、ツヤリと煌めく。
その胸板にテオは、唇をひとつ落とす。
眠っているはずの王子の顔が、嬉しげに笑ったような気がする。
王子に掛布を纏わせると、テオは布一枚を羽織って、テラスへと出た。
今夜は、風がそよりとも吹いていない。
どこからともなく、薔薇の香りが漂ってくる。
大きく伸びをすると、全身に血が巡っていくのが分かる。
(あぁ、この満足感はなんだろう? 全てを手に入れたみたいな気分……)
テオの後ろの窪みは、まだ心地よくジンジンと疼いている。
まるで、王子が中にいるかのようにも感じる。
(もうヴィルが欲しくなってる……。私は、どうなっちゃったんだろう?)
これからのことを考えると、心の中は、幸せと不安がごちゃ混ぜになる。
けれど、今は、ただ、ヴィルの腕の中に抱かれていたい。
何度だって貫かれて、ヴィルのものだという印をつけて欲しい。
自分から外に出てきたというのに、急に人肌恋しくなってしまう。
(『朝が来なければいいのに』なんて、自分が思う日がくるとは……)
物語の中の恋人たちの気持ちを、実感を持って知る日がきたのが不思議だった。
(ふふっ! 逃げ出そうとしてたなんて、嘘みたい)
少し前までの自分を思い返して、テオは、つい笑みがこぼれる。
さぁ、王子の腕の中に戻ろう。
そう思って、最後に空を見上げる。
満天の星空に、上弦の月が見える。
部屋に入ろうと、窓についた取っ手に手を掛ける。
モヤリ。
唐突に、頭の中に違和感を覚える。
違和感の正体を確かめるべく、テオは振り返る。
(なんだ? 何かが気に掛かったような……)
モヤモヤした違和感を打ち消そうと、あたりを見回す。
綺麗に整えられた庭、暗闇に沈む王宮の建物、微かに聞こえる噴水の音……。
どれもいつも通りに思える。
(気のせい……だったかな?)
それでも、テオの頭の違和感は消えない。
(何が引っ掛かっているんだろう……?)
その時、テオの背中が熱いもので覆われる。
ぎゅっと強く抱きしめる腕と薔薇の香り。
テオの首筋にサラサラと落ちる髪の感触。
「ヴィル……? どうしたのですか?」
「先生……、いや、テオ。またいなくなってしまったかと思ったよ」
「まさか! あなたを残して、消えたりしません」
「うん……。うん。分かっている。でも……」
「すみません。私のせいですよね? でも、以前は怖くて……」
「何が?」
「あなたとこういう関係になってしまうのが、です」
「なぜ?」
「それは……。あなたに溺れることが、分かっていたからです」
「私は、テオに溺れて欲しいが?」
「溺れてしまったら、私は貪欲だと思うのです。
あなたを何度だって、求めてしまう」
「構わない。むしろ、そうなら嬉しい」
「本気、ですか?」
「無論、本気だよ」
「さっき、ヴィルと抱き合ったばかりだというのに……。
私の中は、もうあなたを求めて疼いているのです」
「本当かい?」
返事をしようとしたテオの唇は、王子のそれに易々とふさがれてしまう。
テオの口内が、望んでいたものに満たされ、悦びに震える。
テオの体を覆っていた布が、ハラリと落ちる。
外だというのに、全く寒さを感じない。
唇を離さないまま、王子の指がテオの窪みを探る。
今も柔らかいそれは、簡単に王子の指を飲み込んでいく。
王子に窪みを翻弄されると、テオ自身が立ち上がる。
煌々と光る月明かりで、テオ自身の影がテラスにくっきりと浮かび上がる。
「……本当だ。テオの中が、私を捕らえて離してくれないよ」
「すみません、ヴィル。……お恥ずかしい。でも、嬉しいのです……」
テラスの手すりに掴まったテオの後ろから、王子が入り込む。
やはりそれも、テオの体はすんなりと受け入れてしまう。
「……あっ。……ンァ! んん! ……あふぅ。……んっ」
甘すぎるテオの声が、我慢出来ずに漏れ出す。
「かわいいよ、テオ。何度だって、繋がりたい」
「本当、ですか……? ……ンァ、ンン。あぁ!」
「当然だよ、ずっとこうしたかったんだからね……」
「あぁ! はず、かしい。外で、こんな……」
「大丈夫。誰からも見えないさ」
深夜であっても夜廻りの衛兵はいる。
誰にも見られないとは言い切れないはずだ。
けれど、王子の確信に満ちた返答に、テオはただ頷く。
(人払いでもされているのかな……?)
(そういえば、さっきの違和感ってなんだっけ……?)
テオの頭には、いくつかの疑問が浮かぶ。
だがそれも、王子の肌が打ちつけられる心地よさと。
ふたりが繋がっている奥のほうの快感に支配されて、すぐに頭から消える。
テオの感覚を占めているのは、王子が加える前後同時の刺激。
(あぁ、もう何も考えられ……ない)
とろけるような感覚を残して、テオの意識は途切れる。
ぐったりしたテオの中に王子は、最後のひと突きを加えて果てた。
優しくテオの髪を撫で、それから布でくるんだテオの体を抱き上げる。
寝台にテオを横たえると、首の下に腕を通す。
腕も脚もテオに絡ませて、王子の中に閉じ込めるように抱きすくめる。
「さて、どこから話せばいいのかな?」
ひとり呟いた王子の声は、もちろんテオには届いてはいなかった。
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