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第1章 王都脱出
(11)吸血鬼を治す薬
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3日後。
睡眠を削り、王子を走らせて、ようやく。
主従はオランジェ=ラントの城壁を目にしていた。
グレーがかった石の城壁。
周りには、ブドウ農園が広がる。
いくつか、大きなオリーブの畑もあるようだ。
城壁の大きな扉は、鮮やかなオレンジ色に塗られている。
中心には、オランジェの紋章が大きく描かれていた。
「ようやく着いたか」
「ええ。ありがとうございます」
「礼など要らない。間に合えばいいが」
「はい。参りましょう」
「なにか、当てはあるのか?」
「以前、王都で錬金術の店で働いていた友人がいます」
「そうか。友人か……」
「なにか?」
「いや、なんでもない。急ごう」
ふたりは、門番に止められることを恐れた。
しかし、特になにも聞かれはしない。
暗殺者の影響はないのか、それとも……?
さっそく、ティムの友人の店へと向かう。
「よお! どうした? 王子様付きのおまえが、こんなところまで」
「久しぶりだな、ヤン。店は、順調か?」
「まぁ、やれてるよ」
「そうか、良かった」
「で、何かあったのか? そっちは、友人か?」
「あ、ああ。ルイだ」
「えらくキレイな人を連れてるな。ああ! そういうことか」
「ルイだ。よろしく。そういうこととは?」
「あ? ああ。恋人だろう? さっきから、大事にしてる」
「ふふ。その通りだ」
「ルイ⁉︎」
「なにか、間違っているか?」
「いえ、あ、いや。あの……」
「照れるなよ、ティム。おまえに、そういう人ができて良かった」
「は? なんでだ?」
「おまえときたら、口を開けば『王子、王子』って。
そんなんじゃ、自分の幸せが見つかんねぇだろうと思ってたからさ」
「ちょ、ちょっと、黙れ。ヤン」
「ははは。ルイ、妬くなよ? こいつは、仕事第一だが、いい男だ」
「うん。知ってる」
「そりゃあ、良かった。ルイもいいやつだなぁ」
ひとしきり、からかい混じりの雑談を終えると本題に入る。
「それで? 何があった?」
「吸血鬼に襲われた。3日前だ」
「なにっ? 本物か?」
「間違いない。殺して、灰も取ったからな」
「3日前と言ったな。ギリギリかも知れないぞ」
「うん。とりあえず、薬を頼めるか? 金はある」
「金なんて、あとだ。これを飲め」
すぐに、ヤンが小瓶に入った薬を差し出した。
ティムは、それを飲み干して、分厚い本を開く。
「ダメだ。治っていない」
「ということは、間に合わなかったんだろう」
「え? ダメだったのか? ティム」
「すまない、ルイ。症状には個人差があるから……」
「うん。3日というのは、目安にすぎないからな」
「ティム! どうするんだ⁉︎」
「落ち着いて、ルイ。方法は、あるはず」
「そうだな。まずは、オレの相方に聞くとしよう」
「ああ、頼む」
ヤンが店の二階を貸してくれた。
ふたりは、3日ぶりに室内で休むことができた。
「ティム、わたしにウソをついていただろう?」
「申し訳ありません。心配をさせたくなくて」
「これからは、正直に話せ。すべてだ」
「はい」
「もうずっと、辛かったのだろう?」
「いえ。あの」
「目が赤くは、なっていないようだが?」
「今はまだ、吸血鬼ではないのです。
3日が過ぎてから眠り、目覚めると吸血鬼になっているとか」
「なにっ? それでは、今夜にも?」
「はい……。ですから、ルイは安全なところに避難を……」
「断る!」
「しかし……」
「おまえの側以外に安全な場所などない」
「ルイ……」
「それに、言っていたではないか。カッツェンは、感染しないと」
「ええ、ですが……」
ティムにそれ以上は言わせまいと、王子が唇を合わせる。
ティムは、王子のあちらこちらを噛みたい欲求に駆られる。
「離れてください。ルイは、あまりにおいしそうに見える」
「ふふ。ならば、食べればいい。おまえに殺されるなら本望だ」
その言葉に、ブルリと震えるティム。
それから、ゆっくりと王子に向かい合う。
スルリと王子の肌から衣服を落とす。
ピンクがかった艶めく肌に、噛みつく。
仔犬が甘噛みをするように、けれども、じっくりと。
決して、噛み切ってしまわないように細心の注意を払って。
「あっ! んっ……。くっ。あぁ! ……ふっ、はぁ……」
噛まれるたびに、王子が悩ましげな声をあげる。
その声にあおられて、ますます噛むのをやめられない。
唇をもう一度、合わせる。
熟成したワインのような味が、口に広がる。
快感をこらえるために、王子が自分の唇を噛んだ血の味。
(もっと飲みたい。飲み干してしまいたい)
自分の欲求に気づき、バッと王子を自分から引きはがす。
「……ティム?」
「これ以上は、マズい気がします。
あなたは、今のわたしにとっては最上級のワインと同じ」
「ふふふ。それは、ほめ言葉だろう?」
「もちろん、そうですが……」
「おまえに殺されるなら、本望だと言っただろう?」
「ルイ!」
王子のすべてを包むように、抱きしめる。
王子もそれに応えて、抱きしめ返してくる。
心の奥底から愛しさがあふれ出す。
この人を自分だけのものにしたい。
誰にも渡したくない。
誰の目にもふれさせたくない。
……すべてを食べてしまいたい。
(マズい! 最後は必ず、そこに行き着いてしまう)
(吸血鬼のせいか? それとも、オレ自身の欲求なのか?)
「ルイ、すぐにヤンが戻ります。一旦、下に行きましょう」
「……? うん」
王子が怪訝な顔をしているが、無理やり話を変える。
王子の衣服を整えて、下に行く準備をする。
「ああ、ルイに服を用意しなければいけませんね」
「なぜだ? 金もあまり無いのに」
「これは、ありあわせのわたしの服なので」
「ふふ。それがいい。ティムにずっと抱きしめられているようだ」
「ルイ。あまり嬉しいことを言わないでください。本気にしますよ?」
「本気だから、仕方ない」
「ははっ! 嬉しいです。それと、さっきは失礼しました」
「なんのことだ?」
「恋人などと、おそれおおい」
「違うというなら、もうわたしにさわるな。できるか?」
「……できません」
「実はわたしも、友人と聞いて少し妬いた。
ティムには、わたし以外にも大事な人がいるんだと」
「それは、違います。あなた以上に大事な人などいない」
どうしようもなくて、もう一度、王子を抱きしめる。
離れる方法が分からない。
ちょうどその時、下で店の扉が開く音がした。
***
ようやくオランジェに着いた!
いや~! 長かった!
ゲームの中では、時間が早く進むから3日なんてすぐに過ぎる。
だけど、リアルに3日の旅は大変だ。
歩いて旅してた昔の人、まぢですげぇ。
オランジェに着いたら、まずどうしよう?
そう悩みつつ、ティムの記憶を探る。
あれ? この街に住んでる友だち、いるじゃん!
しかも、錬金術の店をやってる。
ついてる!
影ギルドに感謝だな。
いや、待てよ?
影ギルドのためにオランジェに向かったから、吸血鬼に襲われたわけで。
いやいや、暗殺者の情報を知りたくて影ギルドに接触したのはオレ……?
ま、どっちでもいっか。
しかし、間に合ってんのか?
とっくに吸血衝動が出てる気がするんだが?
錬金術師のヤンは、王都の大きな店で働いていた。
飲み屋で知り合った、飲み友だち。
兵や軍と関係ない友だちは、気が楽だったようだ。
休みの前の日は、大抵、酒場でバカ話をしていたらしい。
だが、恋人のためにオランジェへ引っ越したとか。
ともかく、ヤンはすぐに薬をくれた。
オレは、飲み干してから分厚い本を開く。
【ステイタス異常 血の病い】
変わってねぇ! まぢか!
3日って、雑な情報だなとは思ったんだよな~。
これは、あれじゃん。
攻略サイトに書いてあった、おすすめしないクエスト発動。
ひぇ~!
ゲームで避けていたのに、リアルでそのクエに挑むことになるとは!
吸血鬼を治す方法はあるから、いいんだけど。
問題は、王子!
ずっとうまそうな匂いを出してる。
噛みつきたい。
あの首を食べたら、どんな味がするんだろう?
やっばいオレ。
落ち着け、落ち着け。
このままだと王子を殺してしまいそうだ。
「ふふ。ならば、食べればいい。おまえに殺されるなら本望だ」
ガマンし続けるオレに、王子が甘い言葉をかけてくる!
いや、まぢで!
ヤバいから!
とか言いつつ。
王子の肌には抗えない。なんで、この人はずっと誘ってくんの?
そんなにティムが好きか? 好きなんだよな?
ツキン。
オレの胸に針が刺さったような、小さな痛み。
なんだ? 気のせいか?
*****
「ふたりとも降りてきてくれ」
階下でヤンの声がする。
ティムは王子の衣服を改めて整え、手を引く。
「お! きたな。少しは休めたか? それとも? ふふ」
「バカを言うな。休ませてもらった。助かる」
「そいつは良かった。こいつは、オレの相方。トマスだ」
「魔術師ギルドのトマスだ。よろしく」
「ティムだ。こっちは、ルイ」
「ルイ……? どこかで会ったような?」
「ルイだ。よろしく。誰か似た人がいるんだろう」
「そうか? まあ、いい。それで、血の病いだって?」
「うん。治療薬は効かなかった」
「ヤンから話は聞いた。ギルドには、門外不出の魔導書があってな。
幸い、オレはそれを読める立場にある。だから、治療法は分かる」
「何か問題が?」
「まず素材を集めるのがむずかしい。
それに、調合するのには達人レベルの錬金能力が要る」
「トマスじゃダメなのか? ヤンは?」
「達人レベルは、ギルドマイスターだけだ」
「ということは?」
「マイスターが納得しないと作れないかも知れない」
「分かった。とりあえず、素材を集めよう。何が必要だ?」
「吸血鬼の灰、ベラドンナ、吸血ヒルの肝、ニンニク、聖水。
すべて三つずつ、必要だ」
「吸血鬼の灰がむずかしいな。どこにいるのか分からない」
「いや、実はそれはむずかしくないんだ」
「なぜだ? 居場所が分かるのか?」
「最近、オランジェ周辺で吸血鬼の被害らしきものが連続してな。
戦士ギルドの精鋭が、秘密裡に調査を進めていた」
「ああ。伝説が実在すると知れれば、混乱が起こるだろうからな」
「その通り。それで、ある砦跡にたどり着いたんだが」
「思ったより、多かったか?」
「そう。やつらは、片手で男ひとりを振り回せる。
さらに、厄介なのが透明化されることだ」
「うん。見えない敵は警戒のしようがない」
「そういうことだ。それで今のところ、棚上げ状態らしい」
「その砦跡の場所を教えてくれ」
「行くのか?」
「それ以外に方法はない。むしろ、吸血鬼になったことが幸いしそうだ」
その日の夜は、ヤンの店の二階の客間に泊めてもらった。
仕事から戻ったトマスとヤン、ティムと王子は楽しい時間を過ごした。
その日の深夜。
目覚める直前に、浮上する意識の中でティムは夢を見た。
透けるような白い一枚の寝巻きに身を包んだ王子。
裸足のまま、ふわりふわりと城の庭園を駆けていく。
ティムのほうを振り返り、手招きをする。
追いかけるが、スルリとティムの手をかわして逃げる。
何度も何度も捕まえようとしては、逃げられる。
ようやく捕まえて抱きしめる。
なぜか、その体は冷たく、重い。
ハッとして自分から引きはがす。
首からおびただしく血を流し、王子は絶命していた。
「うわぁぁぁぁ! 王子!」
自分の声で目が覚める。
あわてて横を見ると、ティムの腕の中に王子の姿がある。
「……ん? ティム……?」
ティムの声で目覚めた王子は、まだ半分夢の中。
目をこする仕草が愛しくて、何より夢が現実にはなっていなくて。
ティムは、王子をかき抱く。
「ん? ……ふふふ。どうした?」
優しく笑う王子を見ると、腹の奥から愛しさが込み上げる。
王子をくるりとうつ伏せにすると、その背中すべてに唇をつける。
「ティム、くすぐったい」
背中はすぐに唇の跡で埋め尽くされる。
「噛んで。優しく」
そう誘われて、抗えるはずもなく。
優しく優しく噛んでいく。恍惚感がティムの頭をしびれさせる。
うしろから抱きしめて、すべてを奪いたくなる。
王子の鳴き声が、ティムをさらにあおる。
王子を離せない。
気がつくと、王子はぐったりとベッドに横たわっている。
夢を思い出して、あせる。
が、その頬には赤みがあり、体はあたたかい。
ティムは、その体を優しく上掛けでおおう。
服を着たティムは、そっと部屋を出る。
自分の足音がしない。
これも能力のひとつか、と思う。
月明かりが差し込む窓ガラスに自分が映る。
くもったガラスでも、その目が赤く光るのが分かる。
ヤンの店の裏口から、音もなく外に出る。
そのまま、ティムは廃屋へと向かった。
***
ヤンに呼ばれて下に降りる。
魔術師ギルドのトマス。ヤンの恋人だ。
トマスは優秀な魔術師。
若くして、ギルド本部勤めを命じられた。
ヤンは、王都の店をやめて恋人についてきたってわけ。
吸血鬼治療の方法の説明を受ける。
うわ! やっぱり。
素材集めが、結構めんどくさい。
攻略サイトの情報は、正しかったなぁ。
(でも逆に?)
(吸血鬼状態なら、意外にいけんじゃね?)
透明化、隠密、攻撃力アップ。
このあたりをうまく使っていけば、いける気がする。
明日には教えてもらった砦跡に向かってみよう。
その途中で、採取はできるだろ。
ギルドマイスターの件は、一旦保留。
どこまで話せばいいのか、まだ分からないからな。
まだ完全ではないにしろ。
自分が吸血鬼になっていくのが分かる。
王子がやたらとかわいく見える。
それに、噛みたい気持ちが抑えられない。
そんなオレに、王子はガマンさせてくれない。
おっかない夢を見て飛び起きる。
王子を殺してしまう夢。
これが吸血鬼になるという意味か?
あまりにリアルな夢を見て、飛び起きる。
ぎゅいっと王子を抱きしめてしまう。
生きてることを確かめたくて。
噛むのをガマンして、キスするオレに王子が言う。
「噛んで。優しく」
(そんなことを言われた日には、いくしかないだろ?)
(まぢで、この王子。けしからん♡)
王子が寝たのを確かめると、オレは廃屋に向かう。
もうひとつの目的。
『影ギルド』に接触するために。
睡眠を削り、王子を走らせて、ようやく。
主従はオランジェ=ラントの城壁を目にしていた。
グレーがかった石の城壁。
周りには、ブドウ農園が広がる。
いくつか、大きなオリーブの畑もあるようだ。
城壁の大きな扉は、鮮やかなオレンジ色に塗られている。
中心には、オランジェの紋章が大きく描かれていた。
「ようやく着いたか」
「ええ。ありがとうございます」
「礼など要らない。間に合えばいいが」
「はい。参りましょう」
「なにか、当てはあるのか?」
「以前、王都で錬金術の店で働いていた友人がいます」
「そうか。友人か……」
「なにか?」
「いや、なんでもない。急ごう」
ふたりは、門番に止められることを恐れた。
しかし、特になにも聞かれはしない。
暗殺者の影響はないのか、それとも……?
さっそく、ティムの友人の店へと向かう。
「よお! どうした? 王子様付きのおまえが、こんなところまで」
「久しぶりだな、ヤン。店は、順調か?」
「まぁ、やれてるよ」
「そうか、良かった」
「で、何かあったのか? そっちは、友人か?」
「あ、ああ。ルイだ」
「えらくキレイな人を連れてるな。ああ! そういうことか」
「ルイだ。よろしく。そういうこととは?」
「あ? ああ。恋人だろう? さっきから、大事にしてる」
「ふふ。その通りだ」
「ルイ⁉︎」
「なにか、間違っているか?」
「いえ、あ、いや。あの……」
「照れるなよ、ティム。おまえに、そういう人ができて良かった」
「は? なんでだ?」
「おまえときたら、口を開けば『王子、王子』って。
そんなんじゃ、自分の幸せが見つかんねぇだろうと思ってたからさ」
「ちょ、ちょっと、黙れ。ヤン」
「ははは。ルイ、妬くなよ? こいつは、仕事第一だが、いい男だ」
「うん。知ってる」
「そりゃあ、良かった。ルイもいいやつだなぁ」
ひとしきり、からかい混じりの雑談を終えると本題に入る。
「それで? 何があった?」
「吸血鬼に襲われた。3日前だ」
「なにっ? 本物か?」
「間違いない。殺して、灰も取ったからな」
「3日前と言ったな。ギリギリかも知れないぞ」
「うん。とりあえず、薬を頼めるか? 金はある」
「金なんて、あとだ。これを飲め」
すぐに、ヤンが小瓶に入った薬を差し出した。
ティムは、それを飲み干して、分厚い本を開く。
「ダメだ。治っていない」
「ということは、間に合わなかったんだろう」
「え? ダメだったのか? ティム」
「すまない、ルイ。症状には個人差があるから……」
「うん。3日というのは、目安にすぎないからな」
「ティム! どうするんだ⁉︎」
「落ち着いて、ルイ。方法は、あるはず」
「そうだな。まずは、オレの相方に聞くとしよう」
「ああ、頼む」
ヤンが店の二階を貸してくれた。
ふたりは、3日ぶりに室内で休むことができた。
「ティム、わたしにウソをついていただろう?」
「申し訳ありません。心配をさせたくなくて」
「これからは、正直に話せ。すべてだ」
「はい」
「もうずっと、辛かったのだろう?」
「いえ。あの」
「目が赤くは、なっていないようだが?」
「今はまだ、吸血鬼ではないのです。
3日が過ぎてから眠り、目覚めると吸血鬼になっているとか」
「なにっ? それでは、今夜にも?」
「はい……。ですから、ルイは安全なところに避難を……」
「断る!」
「しかし……」
「おまえの側以外に安全な場所などない」
「ルイ……」
「それに、言っていたではないか。カッツェンは、感染しないと」
「ええ、ですが……」
ティムにそれ以上は言わせまいと、王子が唇を合わせる。
ティムは、王子のあちらこちらを噛みたい欲求に駆られる。
「離れてください。ルイは、あまりにおいしそうに見える」
「ふふ。ならば、食べればいい。おまえに殺されるなら本望だ」
その言葉に、ブルリと震えるティム。
それから、ゆっくりと王子に向かい合う。
スルリと王子の肌から衣服を落とす。
ピンクがかった艶めく肌に、噛みつく。
仔犬が甘噛みをするように、けれども、じっくりと。
決して、噛み切ってしまわないように細心の注意を払って。
「あっ! んっ……。くっ。あぁ! ……ふっ、はぁ……」
噛まれるたびに、王子が悩ましげな声をあげる。
その声にあおられて、ますます噛むのをやめられない。
唇をもう一度、合わせる。
熟成したワインのような味が、口に広がる。
快感をこらえるために、王子が自分の唇を噛んだ血の味。
(もっと飲みたい。飲み干してしまいたい)
自分の欲求に気づき、バッと王子を自分から引きはがす。
「……ティム?」
「これ以上は、マズい気がします。
あなたは、今のわたしにとっては最上級のワインと同じ」
「ふふふ。それは、ほめ言葉だろう?」
「もちろん、そうですが……」
「おまえに殺されるなら、本望だと言っただろう?」
「ルイ!」
王子のすべてを包むように、抱きしめる。
王子もそれに応えて、抱きしめ返してくる。
心の奥底から愛しさがあふれ出す。
この人を自分だけのものにしたい。
誰にも渡したくない。
誰の目にもふれさせたくない。
……すべてを食べてしまいたい。
(マズい! 最後は必ず、そこに行き着いてしまう)
(吸血鬼のせいか? それとも、オレ自身の欲求なのか?)
「ルイ、すぐにヤンが戻ります。一旦、下に行きましょう」
「……? うん」
王子が怪訝な顔をしているが、無理やり話を変える。
王子の衣服を整えて、下に行く準備をする。
「ああ、ルイに服を用意しなければいけませんね」
「なぜだ? 金もあまり無いのに」
「これは、ありあわせのわたしの服なので」
「ふふ。それがいい。ティムにずっと抱きしめられているようだ」
「ルイ。あまり嬉しいことを言わないでください。本気にしますよ?」
「本気だから、仕方ない」
「ははっ! 嬉しいです。それと、さっきは失礼しました」
「なんのことだ?」
「恋人などと、おそれおおい」
「違うというなら、もうわたしにさわるな。できるか?」
「……できません」
「実はわたしも、友人と聞いて少し妬いた。
ティムには、わたし以外にも大事な人がいるんだと」
「それは、違います。あなた以上に大事な人などいない」
どうしようもなくて、もう一度、王子を抱きしめる。
離れる方法が分からない。
ちょうどその時、下で店の扉が開く音がした。
***
ようやくオランジェに着いた!
いや~! 長かった!
ゲームの中では、時間が早く進むから3日なんてすぐに過ぎる。
だけど、リアルに3日の旅は大変だ。
歩いて旅してた昔の人、まぢですげぇ。
オランジェに着いたら、まずどうしよう?
そう悩みつつ、ティムの記憶を探る。
あれ? この街に住んでる友だち、いるじゃん!
しかも、錬金術の店をやってる。
ついてる!
影ギルドに感謝だな。
いや、待てよ?
影ギルドのためにオランジェに向かったから、吸血鬼に襲われたわけで。
いやいや、暗殺者の情報を知りたくて影ギルドに接触したのはオレ……?
ま、どっちでもいっか。
しかし、間に合ってんのか?
とっくに吸血衝動が出てる気がするんだが?
錬金術師のヤンは、王都の大きな店で働いていた。
飲み屋で知り合った、飲み友だち。
兵や軍と関係ない友だちは、気が楽だったようだ。
休みの前の日は、大抵、酒場でバカ話をしていたらしい。
だが、恋人のためにオランジェへ引っ越したとか。
ともかく、ヤンはすぐに薬をくれた。
オレは、飲み干してから分厚い本を開く。
【ステイタス異常 血の病い】
変わってねぇ! まぢか!
3日って、雑な情報だなとは思ったんだよな~。
これは、あれじゃん。
攻略サイトに書いてあった、おすすめしないクエスト発動。
ひぇ~!
ゲームで避けていたのに、リアルでそのクエに挑むことになるとは!
吸血鬼を治す方法はあるから、いいんだけど。
問題は、王子!
ずっとうまそうな匂いを出してる。
噛みつきたい。
あの首を食べたら、どんな味がするんだろう?
やっばいオレ。
落ち着け、落ち着け。
このままだと王子を殺してしまいそうだ。
「ふふ。ならば、食べればいい。おまえに殺されるなら本望だ」
ガマンし続けるオレに、王子が甘い言葉をかけてくる!
いや、まぢで!
ヤバいから!
とか言いつつ。
王子の肌には抗えない。なんで、この人はずっと誘ってくんの?
そんなにティムが好きか? 好きなんだよな?
ツキン。
オレの胸に針が刺さったような、小さな痛み。
なんだ? 気のせいか?
*****
「ふたりとも降りてきてくれ」
階下でヤンの声がする。
ティムは王子の衣服を改めて整え、手を引く。
「お! きたな。少しは休めたか? それとも? ふふ」
「バカを言うな。休ませてもらった。助かる」
「そいつは良かった。こいつは、オレの相方。トマスだ」
「魔術師ギルドのトマスだ。よろしく」
「ティムだ。こっちは、ルイ」
「ルイ……? どこかで会ったような?」
「ルイだ。よろしく。誰か似た人がいるんだろう」
「そうか? まあ、いい。それで、血の病いだって?」
「うん。治療薬は効かなかった」
「ヤンから話は聞いた。ギルドには、門外不出の魔導書があってな。
幸い、オレはそれを読める立場にある。だから、治療法は分かる」
「何か問題が?」
「まず素材を集めるのがむずかしい。
それに、調合するのには達人レベルの錬金能力が要る」
「トマスじゃダメなのか? ヤンは?」
「達人レベルは、ギルドマイスターだけだ」
「ということは?」
「マイスターが納得しないと作れないかも知れない」
「分かった。とりあえず、素材を集めよう。何が必要だ?」
「吸血鬼の灰、ベラドンナ、吸血ヒルの肝、ニンニク、聖水。
すべて三つずつ、必要だ」
「吸血鬼の灰がむずかしいな。どこにいるのか分からない」
「いや、実はそれはむずかしくないんだ」
「なぜだ? 居場所が分かるのか?」
「最近、オランジェ周辺で吸血鬼の被害らしきものが連続してな。
戦士ギルドの精鋭が、秘密裡に調査を進めていた」
「ああ。伝説が実在すると知れれば、混乱が起こるだろうからな」
「その通り。それで、ある砦跡にたどり着いたんだが」
「思ったより、多かったか?」
「そう。やつらは、片手で男ひとりを振り回せる。
さらに、厄介なのが透明化されることだ」
「うん。見えない敵は警戒のしようがない」
「そういうことだ。それで今のところ、棚上げ状態らしい」
「その砦跡の場所を教えてくれ」
「行くのか?」
「それ以外に方法はない。むしろ、吸血鬼になったことが幸いしそうだ」
その日の夜は、ヤンの店の二階の客間に泊めてもらった。
仕事から戻ったトマスとヤン、ティムと王子は楽しい時間を過ごした。
その日の深夜。
目覚める直前に、浮上する意識の中でティムは夢を見た。
透けるような白い一枚の寝巻きに身を包んだ王子。
裸足のまま、ふわりふわりと城の庭園を駆けていく。
ティムのほうを振り返り、手招きをする。
追いかけるが、スルリとティムの手をかわして逃げる。
何度も何度も捕まえようとしては、逃げられる。
ようやく捕まえて抱きしめる。
なぜか、その体は冷たく、重い。
ハッとして自分から引きはがす。
首からおびただしく血を流し、王子は絶命していた。
「うわぁぁぁぁ! 王子!」
自分の声で目が覚める。
あわてて横を見ると、ティムの腕の中に王子の姿がある。
「……ん? ティム……?」
ティムの声で目覚めた王子は、まだ半分夢の中。
目をこする仕草が愛しくて、何より夢が現実にはなっていなくて。
ティムは、王子をかき抱く。
「ん? ……ふふふ。どうした?」
優しく笑う王子を見ると、腹の奥から愛しさが込み上げる。
王子をくるりとうつ伏せにすると、その背中すべてに唇をつける。
「ティム、くすぐったい」
背中はすぐに唇の跡で埋め尽くされる。
「噛んで。優しく」
そう誘われて、抗えるはずもなく。
優しく優しく噛んでいく。恍惚感がティムの頭をしびれさせる。
うしろから抱きしめて、すべてを奪いたくなる。
王子の鳴き声が、ティムをさらにあおる。
王子を離せない。
気がつくと、王子はぐったりとベッドに横たわっている。
夢を思い出して、あせる。
が、その頬には赤みがあり、体はあたたかい。
ティムは、その体を優しく上掛けでおおう。
服を着たティムは、そっと部屋を出る。
自分の足音がしない。
これも能力のひとつか、と思う。
月明かりが差し込む窓ガラスに自分が映る。
くもったガラスでも、その目が赤く光るのが分かる。
ヤンの店の裏口から、音もなく外に出る。
そのまま、ティムは廃屋へと向かった。
***
ヤンに呼ばれて下に降りる。
魔術師ギルドのトマス。ヤンの恋人だ。
トマスは優秀な魔術師。
若くして、ギルド本部勤めを命じられた。
ヤンは、王都の店をやめて恋人についてきたってわけ。
吸血鬼治療の方法の説明を受ける。
うわ! やっぱり。
素材集めが、結構めんどくさい。
攻略サイトの情報は、正しかったなぁ。
(でも逆に?)
(吸血鬼状態なら、意外にいけんじゃね?)
透明化、隠密、攻撃力アップ。
このあたりをうまく使っていけば、いける気がする。
明日には教えてもらった砦跡に向かってみよう。
その途中で、採取はできるだろ。
ギルドマイスターの件は、一旦保留。
どこまで話せばいいのか、まだ分からないからな。
まだ完全ではないにしろ。
自分が吸血鬼になっていくのが分かる。
王子がやたらとかわいく見える。
それに、噛みたい気持ちが抑えられない。
そんなオレに、王子はガマンさせてくれない。
おっかない夢を見て飛び起きる。
王子を殺してしまう夢。
これが吸血鬼になるという意味か?
あまりにリアルな夢を見て、飛び起きる。
ぎゅいっと王子を抱きしめてしまう。
生きてることを確かめたくて。
噛むのをガマンして、キスするオレに王子が言う。
「噛んで。優しく」
(そんなことを言われた日には、いくしかないだろ?)
(まぢで、この王子。けしからん♡)
王子が寝たのを確かめると、オレは廃屋に向かう。
もうひとつの目的。
『影ギルド』に接触するために。
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