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8章
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「そういえば、田丸と佐久間の家族ってどうなりましたっけ?」
「二人共慰謝料地獄よ。もうネットに家が特定されてるからしばらく近所歩けないでしょうね。特に田丸のとこは息子の過去の事も露見されてるから。グループホーム追い出されたみたいよ」
田丸の息子は以前からグループホームで他の利用者に暴力やいたずらをしていた。
「この間、田丸の息子が駅で暴れて逮捕されたそうですね」
みみずくはスマホでローカルニュースのサイトを開いた。
そこには、二十代の男性が女子高生に性的にちょっかいをかけて暴行したというものである。
「親子揃って警察のお世話になってるんか……」
すいせんは苦笑いしながらたいやきの頭の部分を食べる。
グループホーム側としては、こんな危ない人がいると他の利用者が怯えてしまうし、施設の評判にも関わってくる。今回の件で追い出すのに丁度良かったのだろう。
今まで追い出せなかったのは、グループホームの経営に佐久間家が絡んでいて、佐久間倫子の庇護下にいる田丸俊治がいるからだ。その息子が利用しているのだ。言うなれば利用者の家族が藤ノ宮にいるからだ。下手な扱いをすると佐久間倫子や田丸俊治から何されるか分からないからだろう。
「家特定されてるし、家族にも影響出てるからねー」
動画サイトには佐久間家と田丸家の自宅や家族の職場、田丸の息子が住んでいるグループホームなどを突撃した様子がアップされている。
嫌がらせの手紙や文章がポストに投函されているそうな。
しばらくネット上の憂さ晴らしの道具にされるだろう。なかなか避けられないことである。
仮に今後の人生、更生や気持ちを入れ替えて生きようとしても、叩く人は叩く。
一度やらかした人及びその家族が自分より下にいてもらわないと都合が悪いから、見下せないから、叩くのを正当化できないから。
そもそも犯罪や不倫をしないのは当たり前の話だ。それができなかった人を、更生という名でもてはやすのはどうかと思う。
真面目なのが当たり前だからこそ、やらかした人が更生する話が美談として称賛されるのかもしれない。
すずらんは口元に拳を押し付けながら大屋の話を聞いていた。
「なんかすずらんさんめっちゃメシウマって顔してますねー」
「そう?」
実際そうだ。
「もしかして田丸の息子の件でですか? 妹さんのことで、ちゃっかり復讐できたから」
みみずくの質問にすずらんは否定しなかった。
「あら、知ってたの?」
「はい。大屋さんから聞きました。ねぇ」
「そうよ」
みみずくとすいせんは知っていたようだ。大屋からあらましを聞いたのだろう。
神原千夏の件で田丸俊治が高村汐里を突き落とした同級生の父親だとは知らなかった。
当時、田丸家が非常識な家族としか認識がなく、まさか教職についてるとは思ってなかった。というより、よく先生できたなというのがすずらんの感想である。
「ほんとメシウマよ! だってちゃっかり復讐できたもの。父親の悪事が露見してついでに、息子の過去の行いも世間バレしてさー! 妹を突き落としたって過去がバレてさー! からの警察のお世話になってるんでしょ! これからどうするんだろーねー。あひゃひゃひゃ」
笑うすずらんの目に涙が溢れて出てた。
「すずらんさんの気持ちはわかりますが、落ち着いてください。すずらんさんらしくないですよー」
「確かにこの仕事は間接的に相手を追い詰めるのが醍醐味ですからね……」
いつも冷静沈着で感情を出さないようにしてきた。いや、押し殺してきたが近いかもしれない。
何考えてるかわからないと言われるのはよくあることだった。それは妹のことがあってだ。昔はもっと感情をだしていた。
神原千夏の件はただのきっかけにすぎない。
「そうだ、妹さんってどんなんですか? 写真見せてくださいよー」
いかにも品定めする気まんまんのみみずくにすいせんは「今度見せるから」といつもの淡々とした口調になる。
「さぁ、明日からも頑張ってもらうわよー。ねっ、すずらん」
「いや……しばらく休みが欲しいです。せめて明日は……」
ここのところ頑張りすぎたんだ。しばらく休みたい。
目も肩も腰も痛い。いきつけのマッサージ屋さんに行ってリフレッシュしたい。
それに……。
「えーっ、次の案件もあるのにー。みんなちょっと働きすぎたね。明日は休み!」
大屋からの休み発言で三人はホッと胸をなでおろす。
案件が終わったら容赦なく次をやらされるので、結構しんどい。基本的にモニターとにらめっこする仕事なので、目や肩を酷使する。
「しっかり休んで次に望むこと!」
「はい!」
威勢のいい返事がよろずやななつ星の仕事部屋に響いた。
「二人共慰謝料地獄よ。もうネットに家が特定されてるからしばらく近所歩けないでしょうね。特に田丸のとこは息子の過去の事も露見されてるから。グループホーム追い出されたみたいよ」
田丸の息子は以前からグループホームで他の利用者に暴力やいたずらをしていた。
「この間、田丸の息子が駅で暴れて逮捕されたそうですね」
みみずくはスマホでローカルニュースのサイトを開いた。
そこには、二十代の男性が女子高生に性的にちょっかいをかけて暴行したというものである。
「親子揃って警察のお世話になってるんか……」
すいせんは苦笑いしながらたいやきの頭の部分を食べる。
グループホーム側としては、こんな危ない人がいると他の利用者が怯えてしまうし、施設の評判にも関わってくる。今回の件で追い出すのに丁度良かったのだろう。
今まで追い出せなかったのは、グループホームの経営に佐久間家が絡んでいて、佐久間倫子の庇護下にいる田丸俊治がいるからだ。その息子が利用しているのだ。言うなれば利用者の家族が藤ノ宮にいるからだ。下手な扱いをすると佐久間倫子や田丸俊治から何されるか分からないからだろう。
「家特定されてるし、家族にも影響出てるからねー」
動画サイトには佐久間家と田丸家の自宅や家族の職場、田丸の息子が住んでいるグループホームなどを突撃した様子がアップされている。
嫌がらせの手紙や文章がポストに投函されているそうな。
しばらくネット上の憂さ晴らしの道具にされるだろう。なかなか避けられないことである。
仮に今後の人生、更生や気持ちを入れ替えて生きようとしても、叩く人は叩く。
一度やらかした人及びその家族が自分より下にいてもらわないと都合が悪いから、見下せないから、叩くのを正当化できないから。
そもそも犯罪や不倫をしないのは当たり前の話だ。それができなかった人を、更生という名でもてはやすのはどうかと思う。
真面目なのが当たり前だからこそ、やらかした人が更生する話が美談として称賛されるのかもしれない。
すずらんは口元に拳を押し付けながら大屋の話を聞いていた。
「なんかすずらんさんめっちゃメシウマって顔してますねー」
「そう?」
実際そうだ。
「もしかして田丸の息子の件でですか? 妹さんのことで、ちゃっかり復讐できたから」
みみずくの質問にすずらんは否定しなかった。
「あら、知ってたの?」
「はい。大屋さんから聞きました。ねぇ」
「そうよ」
みみずくとすいせんは知っていたようだ。大屋からあらましを聞いたのだろう。
神原千夏の件で田丸俊治が高村汐里を突き落とした同級生の父親だとは知らなかった。
当時、田丸家が非常識な家族としか認識がなく、まさか教職についてるとは思ってなかった。というより、よく先生できたなというのがすずらんの感想である。
「ほんとメシウマよ! だってちゃっかり復讐できたもの。父親の悪事が露見してついでに、息子の過去の行いも世間バレしてさー! 妹を突き落としたって過去がバレてさー! からの警察のお世話になってるんでしょ! これからどうするんだろーねー。あひゃひゃひゃ」
笑うすずらんの目に涙が溢れて出てた。
「すずらんさんの気持ちはわかりますが、落ち着いてください。すずらんさんらしくないですよー」
「確かにこの仕事は間接的に相手を追い詰めるのが醍醐味ですからね……」
いつも冷静沈着で感情を出さないようにしてきた。いや、押し殺してきたが近いかもしれない。
何考えてるかわからないと言われるのはよくあることだった。それは妹のことがあってだ。昔はもっと感情をだしていた。
神原千夏の件はただのきっかけにすぎない。
「そうだ、妹さんってどんなんですか? 写真見せてくださいよー」
いかにも品定めする気まんまんのみみずくにすいせんは「今度見せるから」といつもの淡々とした口調になる。
「さぁ、明日からも頑張ってもらうわよー。ねっ、すずらん」
「いや……しばらく休みが欲しいです。せめて明日は……」
ここのところ頑張りすぎたんだ。しばらく休みたい。
目も肩も腰も痛い。いきつけのマッサージ屋さんに行ってリフレッシュしたい。
それに……。
「えーっ、次の案件もあるのにー。みんなちょっと働きすぎたね。明日は休み!」
大屋からの休み発言で三人はホッと胸をなでおろす。
案件が終わったら容赦なく次をやらされるので、結構しんどい。基本的にモニターとにらめっこする仕事なので、目や肩を酷使する。
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