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3章
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事の発端は数年前に遡る。
琉実菜が高校生の時祖父母が亡くなった。
物心ついた時から祖父母の家にいた琉実菜としては計り知れない悲しさだった。
両親は小学校の時にどこかへ消えた。その時に瀬里香もいなくなった。
残ったのは祖父母だけだった。
祖父母が亡くなっても親族で引き取り手が誰もいなかった。
親族は「家族が身勝手なことをしてきた罰だ」とか「琉実菜は疫病神だ」と陰で言っており、天涯孤独を望んでいた。
祖父母の葬儀が終了後し、三日ほど一人で家事と学校生活を両立させようとなんとかしていた。でも、高校生の琉実菜にとっては難しかった。
「君を迎えにきたよ」
家にいきなり見知らぬ男性がやってきた。
背が高く深い顔に、優しい声。
「君のお姉ちゃんの夫だ」
あれは高校二年生の寒い二月のことだった。
瀬里香と一緒にやってきた男性は占部浩平と名乗った。
そのまま姉夫婦に連れられここから学校に通うように言われた。
大学までは金だしてやると。
やっと平穏な生活が来るかと思ったらそうでもなかった。
「これは人間が食べるものなのかな?」
「掃除雑じゃない。やり直し」
優しかったのは初日だけだ。
来て早々こき使われるようになった。
家事全て琉実菜が行う。掃除、洗濯、料理。
出来が悪いと姉夫婦から罵声が飛んできた。
特に瀬里香からの嫌がらせが酷かった。
浩平が瑠実菜にちょっかいかけてきた後、瀬里香から「あんたの親も浮気女だから、その血が流れているのね」と靴を投げてきたり、私物を勝手に捨てられたりした。
浩平は主に瑠実菜に対し、性的な嫌がらせをすることが多かった。
いやらしい体だとか、露出の激しい服を着て学校にいけとか。
登校時間に間に合うために、朝の四時から起きていた。
学校に行っても心が休まらなかった。
同級生の男子からは性的な嫌がらせ、女子からは媚び売ってるとか、ぶりっ子してるとか、何もしてないのに理不尽な嫌がらせを受けていた。
成績が良かったが「体を使って先生をたぶらかしてる」と事実無根の噂を流されていた。
実際そんなことしていない。スタイルが良かった為の災難だった。
琉実菜にとって逃げ道は昼休みに学校にある図書館だった。
家に帰っても学校の教室にいても性的な嫌がらせや理不尽な思いをするだけだから。
大学か就職か決める際に「女子大」に通うように姉夫婦から言われた。
共学で男子から性的なからかいを受けるぐらいなら、女子大に行った方がいいと考えてたのもあり、受け入れた。
相変わらず、こき使われる生活が続き、一人暮らししたくてもできなかった。
姉夫婦が怖いから。
琉実菜が二十歳になった時、姉夫婦がセリバーテル――独身向けアプリをつくった。
しかし、実際は独身ではなく既婚者が紛れ込んでいたり、プロフィールや写真を偽造したものなど、トラブルが日常茶飯事だった。
通報してもなにもしないので、運営がガバガバとか、ネーミング詐欺とネットで揶揄されていた。
セリバーテルの女性スタッフをつかって「ゆあ」と名乗らせ、相手と関係を持たせ、男性スタッフが「不倫した」とか「こいつは未成年だぞ」と美人局をしていた。これは姉夫婦主導で。
瀬川はその美人局の被害者の一人だ。
瀬里香が「ゆあ」と名乗り、瀬川と関係を持ち、いい所で浩平が「不倫したな!」と出ててきて、慰謝料請求した。
瀬川はあっさり払ってくれた。他にも同じような手口の被害者は沢山いるが、ほとんど直ぐに払っていた。
琉実菜は密かにその様子を見ていて、巻き込まれたくないと思っていた。しかし、最近――浩平から言われた。
「こいつを美人局させる。お前のその体で落とすんだ」
断りたかった。こんなこと巻き込まないでほしい。
人の恋心を悪用して、お金を巻き上げる姉夫婦のやり方に。
「瑠実菜は二十二歳だけど、未成年でも通用する。そこを利用すればいいんだ。未成年と関係もったことで男性は警察に捕まりたくないし、バレたくないだろう。社会的信用がなくなるから、あっさり払ってくれるよ」
「失敗したら追い出すから」
浩平と瀬里香は子どものおつかいを頼むような感覚で、瑠実菜に美人局させる。
ベビーフェイスに色気のある体。それが嫌だった。
自分のコンプレックスを使ってお金儲けしよつとするこの人は、どこまで人の心がないのだろうと思った。
「嫌とはいわせない。もうここしか居場所がないんだから」
大学に進学したのはいいけど、結局姉夫婦の家事やセリバーテルの雑用にかりだされていて、キャンパスライフなんて程遠かった。単位はなんとか取れて卒業できたものの、自分が行きたい学部でもなかった。
高校時代のように図書館や講義中が一番の居場所だった。
琉実菜は「はい」とか細い声で返事した。
琉実菜が高校生の時祖父母が亡くなった。
物心ついた時から祖父母の家にいた琉実菜としては計り知れない悲しさだった。
両親は小学校の時にどこかへ消えた。その時に瀬里香もいなくなった。
残ったのは祖父母だけだった。
祖父母が亡くなっても親族で引き取り手が誰もいなかった。
親族は「家族が身勝手なことをしてきた罰だ」とか「琉実菜は疫病神だ」と陰で言っており、天涯孤独を望んでいた。
祖父母の葬儀が終了後し、三日ほど一人で家事と学校生活を両立させようとなんとかしていた。でも、高校生の琉実菜にとっては難しかった。
「君を迎えにきたよ」
家にいきなり見知らぬ男性がやってきた。
背が高く深い顔に、優しい声。
「君のお姉ちゃんの夫だ」
あれは高校二年生の寒い二月のことだった。
瀬里香と一緒にやってきた男性は占部浩平と名乗った。
そのまま姉夫婦に連れられここから学校に通うように言われた。
大学までは金だしてやると。
やっと平穏な生活が来るかと思ったらそうでもなかった。
「これは人間が食べるものなのかな?」
「掃除雑じゃない。やり直し」
優しかったのは初日だけだ。
来て早々こき使われるようになった。
家事全て琉実菜が行う。掃除、洗濯、料理。
出来が悪いと姉夫婦から罵声が飛んできた。
特に瀬里香からの嫌がらせが酷かった。
浩平が瑠実菜にちょっかいかけてきた後、瀬里香から「あんたの親も浮気女だから、その血が流れているのね」と靴を投げてきたり、私物を勝手に捨てられたりした。
浩平は主に瑠実菜に対し、性的な嫌がらせをすることが多かった。
いやらしい体だとか、露出の激しい服を着て学校にいけとか。
登校時間に間に合うために、朝の四時から起きていた。
学校に行っても心が休まらなかった。
同級生の男子からは性的な嫌がらせ、女子からは媚び売ってるとか、ぶりっ子してるとか、何もしてないのに理不尽な嫌がらせを受けていた。
成績が良かったが「体を使って先生をたぶらかしてる」と事実無根の噂を流されていた。
実際そんなことしていない。スタイルが良かった為の災難だった。
琉実菜にとって逃げ道は昼休みに学校にある図書館だった。
家に帰っても学校の教室にいても性的な嫌がらせや理不尽な思いをするだけだから。
大学か就職か決める際に「女子大」に通うように姉夫婦から言われた。
共学で男子から性的なからかいを受けるぐらいなら、女子大に行った方がいいと考えてたのもあり、受け入れた。
相変わらず、こき使われる生活が続き、一人暮らししたくてもできなかった。
姉夫婦が怖いから。
琉実菜が二十歳になった時、姉夫婦がセリバーテル――独身向けアプリをつくった。
しかし、実際は独身ではなく既婚者が紛れ込んでいたり、プロフィールや写真を偽造したものなど、トラブルが日常茶飯事だった。
通報してもなにもしないので、運営がガバガバとか、ネーミング詐欺とネットで揶揄されていた。
セリバーテルの女性スタッフをつかって「ゆあ」と名乗らせ、相手と関係を持たせ、男性スタッフが「不倫した」とか「こいつは未成年だぞ」と美人局をしていた。これは姉夫婦主導で。
瀬川はその美人局の被害者の一人だ。
瀬里香が「ゆあ」と名乗り、瀬川と関係を持ち、いい所で浩平が「不倫したな!」と出ててきて、慰謝料請求した。
瀬川はあっさり払ってくれた。他にも同じような手口の被害者は沢山いるが、ほとんど直ぐに払っていた。
琉実菜は密かにその様子を見ていて、巻き込まれたくないと思っていた。しかし、最近――浩平から言われた。
「こいつを美人局させる。お前のその体で落とすんだ」
断りたかった。こんなこと巻き込まないでほしい。
人の恋心を悪用して、お金を巻き上げる姉夫婦のやり方に。
「瑠実菜は二十二歳だけど、未成年でも通用する。そこを利用すればいいんだ。未成年と関係もったことで男性は警察に捕まりたくないし、バレたくないだろう。社会的信用がなくなるから、あっさり払ってくれるよ」
「失敗したら追い出すから」
浩平と瀬里香は子どものおつかいを頼むような感覚で、瑠実菜に美人局させる。
ベビーフェイスに色気のある体。それが嫌だった。
自分のコンプレックスを使ってお金儲けしよつとするこの人は、どこまで人の心がないのだろうと思った。
「嫌とはいわせない。もうここしか居場所がないんだから」
大学に進学したのはいいけど、結局姉夫婦の家事やセリバーテルの雑用にかりだされていて、キャンパスライフなんて程遠かった。単位はなんとか取れて卒業できたものの、自分が行きたい学部でもなかった。
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琉実菜は「はい」とか細い声で返事した。
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