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木は実によって知られる
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夕飯の後は、神牧に連れられ琥珀と翡翠は、お風呂に入った。
髪乾かすのは、曽田に手伝ってもらった。
琥珀と翡翠は「パパにやってもらってるみたい!」と喜んでいた。
寝る前には、夏休みの宿題のチェック。
国語と算数の宿題は、早めに終わらせようということで、神牧中心に手伝って貰った。
曽田はほぼ巻き込まれるような形で、子ども達がサボらないか監視、集中力が途切れそうなときは遊び相手になっていた。
「おじちゃん達さ! また明日遊んで! 今度こそゲーム負けないから!」
「おじさんじゃね! "おにいさん"だ! 俺たちまだ20代だ!」
曽田が言い返すと琥珀と翡翠は「だっておじさんだもん」と笑う。
「確かに俺たちはあの2人からするとおじさんだ。先生ぐらいじゃね?」
まじかと落胆する曽田。
いや、待て、お前達のパパとママは俺たちよりちょっと上だからもっとおばさんになるよねって言いたくなったけどやめよ。
ネットで情報が流れた時、思わずマジかよと思った。
ぶっちゃけ、同い年かちょっと上ぐらいだと思ってた。
あのガキ達も将来イケメンや可愛い感じになるんだろう。
けっ、神様は残酷だ。
俺は見た目怖い両親の血を完全に引き継いでる。
大柄でにらみ付けるような目つき、茶髪のスポーツ刈りでいつもグラサンかけてる父と鬼子母神のような母。
子供の頃から、同級生からやーさんのお家とか舎弟いそうとか散々言われてきた。
中途半端に家がでかいこと、父が土木関係の仕事をやっているから、余計それで拍車をかけた。
ちなみに父がグラサンをかけてるのは、目の病気のためだ。
母はそこの事務員兼家がない人の寝食の世話――いわゆる寮母さん的なことしていた。
家は昔っからある所で、名前を言えばあの家の子ねとか、お父さんにお世話になってるよと言われる。
両親はいつも言っていた。
世の中全て第一印象で決められる。
俺たち家族が見た目で怖がられて誤解されるのは、どうしても避けられないことだ。
だからな、人との付き合いを大切にしなさい。
誤解を招くような言動や行動をするな。
お前に対する評価が出るのは、ピンチの時だ。
日頃の行いと言動で全てここぞの時に出るから。
もし、家族を侮辱するようなことを言われたら、出るとこでる。
それでも俺を問題児扱いにする人はいた。
特に教師達。
何かトラブル起きれば、全て俺が犯人と言わんばかりに、責めてきた。
それを利用してえん罪ふっかけられたこともある。
――見た目が悪いから誤解されるんですよ。将来警察のお世話になる素質あると思いますので、しっかり愛情もって接してください。
中学校の時三者面談で担任に言われた言葉。
当時それを聞いた母が、他の保護者に愚痴ったことで、あっという間に広まり、緊急保護者会沙汰になった。
『こんな見た目のよくない子が問題を起こさないはずがない』
『そんなに疑われたくないなら、整形すればいい』
担任の迷言がポンポン出てきて、謝罪の言葉は一つもなかった。
保護者達もドン引きしたり、怒りの声があった。
ずっと前から発言で問題になってるのに、いい加減処分しないのかと。
元々昔から評判悪いことで有名で、代々先輩方から嫌われていた。
見た目で贔屓する系で、決めつけるタイプだから。
結局途中で異動になり、消えてせいせいした。
今目の前にいるガキ達は、こんなこと言われないんだろうなと思うと羨ましい。嫉妬したくなる。
「午前中はゲームの前に宿題だ。自由研究な。よし、工作にしよう。ホームセンターで買ってこよう」
「はーい。おやすみなさーい」
子供達は21時に就寝した。今日1日疲れたから。
神牧は子供達が寝たのを確認して、曽田と一緒にソファーでくつろぎはじめた。
「……ずっと思ってたけど、お前オカンみたいだな」
琥珀と翡翠とのやり取りを見た曽田の感想だ。
「なんかつい、弟と妹思い出したからよ。あんな年頃があったんだよー。いつも近所で遊んでた。通報されたことあるけど」
近所の小さい子と弟妹と一緒に遊んでいた時期があった。
それで何回か通報されたことある。
少年が小学生と遊んでいるからヤバそうという理由で。
「それ、お前の見た目こえーからだろ?」
「お前に言われたくない。兄妹が近所の子と一緒に遊んでるから、それで俺は見てるだけ。そんなんで通報されるってたまったもんじゃない。分かってて言ってるやつが一番酷かったな」
その人は常習的に俺を不審者扱いしていた。
警察も数回となれば、さすがに事情を知っているから、逆に通報した方が要注意人物扱いされていた。
通報した人は『中学生が小学生と遊んでるなんて、友達いないか、ヤバい人に決まってる』と。
お前に言われたくないと思った。あんたんとこのガキ、うちの弟妹や他の子にちょっかいかけて問題起こしまくりじゃんと。
学校で嫌われてるの知ってるぞと。
「近所の子も親が忙しいから遊び相手になってたんだ。弟妹と年近いからさ。でさ、これで放置してなにか起きましたなーんてあったら、それはそれで面倒じゃん。真っ先に俺が疑われるし。どっち転んでも、不審者なんだよ。今なんか、お父さんが娘と公園で遊んでても通報されるぞ」
「それ、うちの兄貴がそうだった。ママ友に通報されたってさ。兄嫁から『日頃から子ども達に関わってないから通報されるのよ』って言われてめっちゃ落ち込んでた」
曽田の兄の落ち込みようは半端じゃなかった。
子供達と楽しそうに遊んでいたので、余計だった。
兄の嫁が「あんたが悪いんでしょ」と追い打ちかけたので、さらに拍車をかけた。
「やばっ。ひでーな。夫がそういうのになっても守らないんかよ。そう考えると、明日外出て自由研究はむずいか……」
外は暑いだろうし、ホームセンターに連れて行ったら、子供達の居場所がバレてしまう。
さーちゃんの指示が出るまで、隠しておかないといけないから。
「じゃ、曽田がホームセンターに行ってくれ。これいいんじゃないか」
神牧はホームセンターのアプリを開き、これどうだと見せる。
「お、おう……これ大丈夫なんか?」
曽田はきまり悪そうな顔で呟いた。
木工パーツを組み立てて、輪ゴム使ってピストルごっこ出来るものだ。
かっこいいと思うし、子供達は喜ぶだろう。
俺も欲しい、こういうの。楽しそう。
ただ学校の工作として出す時に、いろいろ揉めそうな気がする。銃刀法なんたらで騒がれる可能性ある。
「最悪、人に向けてやんないって約束させればいいんだから。お前も手伝え。こういうの得意だろ? 俺も工作好きだからさ」
神牧の声が弾む。
弟妹や近所の子達と遊ぶために色々作ったのを思い出す。
「というか、この案件、こんなんでいいのか?」
誘拐しろなんていうから、てっきり見張って脅したりするもんだと思ってた。
稲本家にお金もってこいって言ったものの、全然来る気配なし。
脅して、このガキ達を縛り付けて閉じ込めたりするのかとおもいきや、解放してるし。怪我とか殺すような真似するなって、さーちゃんから指示きてるし。
完全に親戚の子の遊び相手と生活管理してるだけ。
この脅迫も誘拐もなんか怪しいってそろそろ疑われるだろ。
さーちゃんが来るまでこの茶番は終わらない。
遊んでるだけでお金もらえるって考えれば……楽じゃね?
「そろそろ寝ようぜ。明日7時起きな。じゃないと、叩き起こすから」
「ほんとお前口うるさいオカンみたいだな」
「昔のあだ名はがちでオカンだったから。さっさと寝る! 寝る子は育つんだよ!」
「うるせーな」
「お前は反抗期の中学生か。つべこべ言わず寝る」
問答無用で就寝の準備をさせられた曽田は、はいはいと言いながらなんだかんだ従っていた。
髪乾かすのは、曽田に手伝ってもらった。
琥珀と翡翠は「パパにやってもらってるみたい!」と喜んでいた。
寝る前には、夏休みの宿題のチェック。
国語と算数の宿題は、早めに終わらせようということで、神牧中心に手伝って貰った。
曽田はほぼ巻き込まれるような形で、子ども達がサボらないか監視、集中力が途切れそうなときは遊び相手になっていた。
「おじちゃん達さ! また明日遊んで! 今度こそゲーム負けないから!」
「おじさんじゃね! "おにいさん"だ! 俺たちまだ20代だ!」
曽田が言い返すと琥珀と翡翠は「だっておじさんだもん」と笑う。
「確かに俺たちはあの2人からするとおじさんだ。先生ぐらいじゃね?」
まじかと落胆する曽田。
いや、待て、お前達のパパとママは俺たちよりちょっと上だからもっとおばさんになるよねって言いたくなったけどやめよ。
ネットで情報が流れた時、思わずマジかよと思った。
ぶっちゃけ、同い年かちょっと上ぐらいだと思ってた。
あのガキ達も将来イケメンや可愛い感じになるんだろう。
けっ、神様は残酷だ。
俺は見た目怖い両親の血を完全に引き継いでる。
大柄でにらみ付けるような目つき、茶髪のスポーツ刈りでいつもグラサンかけてる父と鬼子母神のような母。
子供の頃から、同級生からやーさんのお家とか舎弟いそうとか散々言われてきた。
中途半端に家がでかいこと、父が土木関係の仕事をやっているから、余計それで拍車をかけた。
ちなみに父がグラサンをかけてるのは、目の病気のためだ。
母はそこの事務員兼家がない人の寝食の世話――いわゆる寮母さん的なことしていた。
家は昔っからある所で、名前を言えばあの家の子ねとか、お父さんにお世話になってるよと言われる。
両親はいつも言っていた。
世の中全て第一印象で決められる。
俺たち家族が見た目で怖がられて誤解されるのは、どうしても避けられないことだ。
だからな、人との付き合いを大切にしなさい。
誤解を招くような言動や行動をするな。
お前に対する評価が出るのは、ピンチの時だ。
日頃の行いと言動で全てここぞの時に出るから。
もし、家族を侮辱するようなことを言われたら、出るとこでる。
それでも俺を問題児扱いにする人はいた。
特に教師達。
何かトラブル起きれば、全て俺が犯人と言わんばかりに、責めてきた。
それを利用してえん罪ふっかけられたこともある。
――見た目が悪いから誤解されるんですよ。将来警察のお世話になる素質あると思いますので、しっかり愛情もって接してください。
中学校の時三者面談で担任に言われた言葉。
当時それを聞いた母が、他の保護者に愚痴ったことで、あっという間に広まり、緊急保護者会沙汰になった。
『こんな見た目のよくない子が問題を起こさないはずがない』
『そんなに疑われたくないなら、整形すればいい』
担任の迷言がポンポン出てきて、謝罪の言葉は一つもなかった。
保護者達もドン引きしたり、怒りの声があった。
ずっと前から発言で問題になってるのに、いい加減処分しないのかと。
元々昔から評判悪いことで有名で、代々先輩方から嫌われていた。
見た目で贔屓する系で、決めつけるタイプだから。
結局途中で異動になり、消えてせいせいした。
今目の前にいるガキ達は、こんなこと言われないんだろうなと思うと羨ましい。嫉妬したくなる。
「午前中はゲームの前に宿題だ。自由研究な。よし、工作にしよう。ホームセンターで買ってこよう」
「はーい。おやすみなさーい」
子供達は21時に就寝した。今日1日疲れたから。
神牧は子供達が寝たのを確認して、曽田と一緒にソファーでくつろぎはじめた。
「……ずっと思ってたけど、お前オカンみたいだな」
琥珀と翡翠とのやり取りを見た曽田の感想だ。
「なんかつい、弟と妹思い出したからよ。あんな年頃があったんだよー。いつも近所で遊んでた。通報されたことあるけど」
近所の小さい子と弟妹と一緒に遊んでいた時期があった。
それで何回か通報されたことある。
少年が小学生と遊んでいるからヤバそうという理由で。
「それ、お前の見た目こえーからだろ?」
「お前に言われたくない。兄妹が近所の子と一緒に遊んでるから、それで俺は見てるだけ。そんなんで通報されるってたまったもんじゃない。分かってて言ってるやつが一番酷かったな」
その人は常習的に俺を不審者扱いしていた。
警察も数回となれば、さすがに事情を知っているから、逆に通報した方が要注意人物扱いされていた。
通報した人は『中学生が小学生と遊んでるなんて、友達いないか、ヤバい人に決まってる』と。
お前に言われたくないと思った。あんたんとこのガキ、うちの弟妹や他の子にちょっかいかけて問題起こしまくりじゃんと。
学校で嫌われてるの知ってるぞと。
「近所の子も親が忙しいから遊び相手になってたんだ。弟妹と年近いからさ。でさ、これで放置してなにか起きましたなーんてあったら、それはそれで面倒じゃん。真っ先に俺が疑われるし。どっち転んでも、不審者なんだよ。今なんか、お父さんが娘と公園で遊んでても通報されるぞ」
「それ、うちの兄貴がそうだった。ママ友に通報されたってさ。兄嫁から『日頃から子ども達に関わってないから通報されるのよ』って言われてめっちゃ落ち込んでた」
曽田の兄の落ち込みようは半端じゃなかった。
子供達と楽しそうに遊んでいたので、余計だった。
兄の嫁が「あんたが悪いんでしょ」と追い打ちかけたので、さらに拍車をかけた。
「やばっ。ひでーな。夫がそういうのになっても守らないんかよ。そう考えると、明日外出て自由研究はむずいか……」
外は暑いだろうし、ホームセンターに連れて行ったら、子供達の居場所がバレてしまう。
さーちゃんの指示が出るまで、隠しておかないといけないから。
「じゃ、曽田がホームセンターに行ってくれ。これいいんじゃないか」
神牧はホームセンターのアプリを開き、これどうだと見せる。
「お、おう……これ大丈夫なんか?」
曽田はきまり悪そうな顔で呟いた。
木工パーツを組み立てて、輪ゴム使ってピストルごっこ出来るものだ。
かっこいいと思うし、子供達は喜ぶだろう。
俺も欲しい、こういうの。楽しそう。
ただ学校の工作として出す時に、いろいろ揉めそうな気がする。銃刀法なんたらで騒がれる可能性ある。
「最悪、人に向けてやんないって約束させればいいんだから。お前も手伝え。こういうの得意だろ? 俺も工作好きだからさ」
神牧の声が弾む。
弟妹や近所の子達と遊ぶために色々作ったのを思い出す。
「というか、この案件、こんなんでいいのか?」
誘拐しろなんていうから、てっきり見張って脅したりするもんだと思ってた。
稲本家にお金もってこいって言ったものの、全然来る気配なし。
脅して、このガキ達を縛り付けて閉じ込めたりするのかとおもいきや、解放してるし。怪我とか殺すような真似するなって、さーちゃんから指示きてるし。
完全に親戚の子の遊び相手と生活管理してるだけ。
この脅迫も誘拐もなんか怪しいってそろそろ疑われるだろ。
さーちゃんが来るまでこの茶番は終わらない。
遊んでるだけでお金もらえるって考えれば……楽じゃね?
「そろそろ寝ようぜ。明日7時起きな。じゃないと、叩き起こすから」
「ほんとお前口うるさいオカンみたいだな」
「昔のあだ名はがちでオカンだったから。さっさと寝る! 寝る子は育つんだよ!」
「うるせーな」
「お前は反抗期の中学生か。つべこべ言わず寝る」
問答無用で就寝の準備をさせられた曽田は、はいはいと言いながらなんだかんだ従っていた。
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