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第4話(後編)「彼女が遠ざかっていく」(王子視点)
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翌朝、僕は庭園でエリーゼを待っていた。
昨夜、手紙を送った。
「逃げないでくれ」と。
少し強引だったかもしれない。
でも、このまま彼女が遠ざかっていくのを、黙って見ているわけにはいかなかった。
足音が聞こえる。
振り返ると――
エリーゼが立っていた。
薄い黄色のドレス。
シンプルな髪型。
そして――どこか怯えたような表情。
「殿下……」
「来てくれたんだな」
僕は彼女に近づく。
彼女は一歩、後ずさった。
その反応に、胸が痛む。
「エリーゼ」
「はい……」
「僕から、逃げようとしているのか?」
彼女の目が見開かれる。
「そんな……」
「なら、なぜこんなに距離を取る」
僕は彼女の肩を掴んだ。
「なぜ、蒼色のドレスを着ない」
「それは……」
「なぜ、髪を飾らない」
「殿下……」
「なぜ、君は――君らしさを、消そうとしている」
声が、震えていた。
自分でも驚くほど、感情が溢れ出る。
彼女は俯いたまま、何も答えない。
「エリーゼ。僕に、本当のことを言ってくれ」
僕は彼女の顎に手を添え、顔を上げさせた。
そこには――涙が溜まっていた。
「……っ」
「殿下、ごめんなさい……」
彼女の声が、震える。
「私、殿下に……ご迷惑をおかけしたくなくて……」
「迷惑?」
「はい……私、我儘ばかり言って……周囲からも、殿下の婚約者としてふさわしくないって……」
「誰が言った」
僕の声が、低くなる。
「誰が、君にそんなことを」
「誰も……直接は……」
彼女は首を振った。
「でも、私は知っているんです。皆が私のこと、どう思っているか……」
「エリーゼ――」
「だから、変わらなくちゃいけないって……殿下にふさわしい、良い婚約者に……」
彼女の涙が、一筋頬を伝う。
僕は――もう我慢できなかった。
彼女を、強く抱きしめた。
「っ!? 殿下……!」
「いいか、エリーゼ。よく聞け」
僕は彼女の背中に腕を回す。
「僕にふさわしい婚約者は、君だけだ」
「でも……」
「君が我儘を言うたびに、僕は嬉しい」
「え……」
「君が僕のために時間をかけるたびに、僕は幸せだ」
彼女の体が、震える。
「君が僕の色を選んでくれるたびに、僕の心は満たされる」
「殿下……」
「だから――頼むから、変わらないでくれ」
僕は彼女をさらに強く抱きしめた。
「君が君でいてくれないと、僕は――」
言葉が詰まる。
僕は、彼女がいないと生きていけない。
彼女の笑顔がないと、この世界に意味がない。
それほどまでに――僕は、彼女を愛している。
「殿下……」
彼女が僕の服を掴む。
「私……怖いんです」
「何が怖い」
「殿下が、いつか私に疲れてしまうのが……」
彼女の声が、震える。
「殿下は優しいから、今は何も言わない。でも、いつか……周囲の声に、殿下も耐えられなくなって……」
「エリーゼ」
僕は彼女を少し離し、その顔を見つめた。
「僕は、疲れない」
「でも――」
「君が何を言おうと、何をしようと、僕は君を愛し続け
る」
彼女の目が、見開かれる。
「それが、僕の――唯一の、真実だ」
「殿下……」
「だから、もう怖がらないでくれ」
僕は彼女の頬に手を添える。
「僕は、君のものだ。そして君は、僕のものだ」
「……っ」
彼女の涙が、溢れ出す。
「ごめんなさい……ごめんなさい……」
「謝らなくていい」
僕は彼女の涙を拭った。
「ただ、約束してくれ」
「約束……?」
「もう二度と、僕から逃げないと」
彼女は少し迷ってから――
「……はい」
小さく頷いた。
その瞬間、僕の胸に温かいものが広がった。
ああ、よかった。
彼女は、まだ僕のそばにいてくれる。
その夜、僕は執務室でクラウスと話していた。
「殿下、よかったですね」
「ああ」
僕は窓の外を見る。
エリーゼは、今頃屋敷で休んでいるだろうか。
「でも、まだ完全ではないな」
「と、おっしゃいますと?」
「彼女は、まだ何か隠している」
僕は振り返る。
「彼女が何を恐れているのか。何を読んで、何を知ったのか」
「……確かに」
「それを知らない限り、また同じことが起こる」
クラウスが頷く。
「では、どうなさいますか?」
「まずは、彼女の信頼を取り戻す」
僕は決意を込めて言った。
「そして――彼女に、全てを話してもらう」
「分かりました」
クラウスが部屋を出て行く。
一人になった僕は、デスクの引き出しを開けた。
そこには、一枚の絵が入っていた。
幼い頃のエリーゼ。
七歳の彼女が、僕の膝の上で眠っている絵。
あの日――僕は決めた。
彼女を、一生守ると。
彼女の我儘を、一生受け止めると。
彼女を、一生愛し続けると。
その決意は、今も変わらない。
「エリーゼ……」
呟いて、絵を胸に抱く。
「君が何を恐れていても、僕は君を離さない」
窓の外、月が静かに輝いていた。
彼女のもとへ続く、道を照らすように。
昨夜、手紙を送った。
「逃げないでくれ」と。
少し強引だったかもしれない。
でも、このまま彼女が遠ざかっていくのを、黙って見ているわけにはいかなかった。
足音が聞こえる。
振り返ると――
エリーゼが立っていた。
薄い黄色のドレス。
シンプルな髪型。
そして――どこか怯えたような表情。
「殿下……」
「来てくれたんだな」
僕は彼女に近づく。
彼女は一歩、後ずさった。
その反応に、胸が痛む。
「エリーゼ」
「はい……」
「僕から、逃げようとしているのか?」
彼女の目が見開かれる。
「そんな……」
「なら、なぜこんなに距離を取る」
僕は彼女の肩を掴んだ。
「なぜ、蒼色のドレスを着ない」
「それは……」
「なぜ、髪を飾らない」
「殿下……」
「なぜ、君は――君らしさを、消そうとしている」
声が、震えていた。
自分でも驚くほど、感情が溢れ出る。
彼女は俯いたまま、何も答えない。
「エリーゼ。僕に、本当のことを言ってくれ」
僕は彼女の顎に手を添え、顔を上げさせた。
そこには――涙が溜まっていた。
「……っ」
「殿下、ごめんなさい……」
彼女の声が、震える。
「私、殿下に……ご迷惑をおかけしたくなくて……」
「迷惑?」
「はい……私、我儘ばかり言って……周囲からも、殿下の婚約者としてふさわしくないって……」
「誰が言った」
僕の声が、低くなる。
「誰が、君にそんなことを」
「誰も……直接は……」
彼女は首を振った。
「でも、私は知っているんです。皆が私のこと、どう思っているか……」
「エリーゼ――」
「だから、変わらなくちゃいけないって……殿下にふさわしい、良い婚約者に……」
彼女の涙が、一筋頬を伝う。
僕は――もう我慢できなかった。
彼女を、強く抱きしめた。
「っ!? 殿下……!」
「いいか、エリーゼ。よく聞け」
僕は彼女の背中に腕を回す。
「僕にふさわしい婚約者は、君だけだ」
「でも……」
「君が我儘を言うたびに、僕は嬉しい」
「え……」
「君が僕のために時間をかけるたびに、僕は幸せだ」
彼女の体が、震える。
「君が僕の色を選んでくれるたびに、僕の心は満たされる」
「殿下……」
「だから――頼むから、変わらないでくれ」
僕は彼女をさらに強く抱きしめた。
「君が君でいてくれないと、僕は――」
言葉が詰まる。
僕は、彼女がいないと生きていけない。
彼女の笑顔がないと、この世界に意味がない。
それほどまでに――僕は、彼女を愛している。
「殿下……」
彼女が僕の服を掴む。
「私……怖いんです」
「何が怖い」
「殿下が、いつか私に疲れてしまうのが……」
彼女の声が、震える。
「殿下は優しいから、今は何も言わない。でも、いつか……周囲の声に、殿下も耐えられなくなって……」
「エリーゼ」
僕は彼女を少し離し、その顔を見つめた。
「僕は、疲れない」
「でも――」
「君が何を言おうと、何をしようと、僕は君を愛し続け
る」
彼女の目が、見開かれる。
「それが、僕の――唯一の、真実だ」
「殿下……」
「だから、もう怖がらないでくれ」
僕は彼女の頬に手を添える。
「僕は、君のものだ。そして君は、僕のものだ」
「……っ」
彼女の涙が、溢れ出す。
「ごめんなさい……ごめんなさい……」
「謝らなくていい」
僕は彼女の涙を拭った。
「ただ、約束してくれ」
「約束……?」
「もう二度と、僕から逃げないと」
彼女は少し迷ってから――
「……はい」
小さく頷いた。
その瞬間、僕の胸に温かいものが広がった。
ああ、よかった。
彼女は、まだ僕のそばにいてくれる。
その夜、僕は執務室でクラウスと話していた。
「殿下、よかったですね」
「ああ」
僕は窓の外を見る。
エリーゼは、今頃屋敷で休んでいるだろうか。
「でも、まだ完全ではないな」
「と、おっしゃいますと?」
「彼女は、まだ何か隠している」
僕は振り返る。
「彼女が何を恐れているのか。何を読んで、何を知ったのか」
「……確かに」
「それを知らない限り、また同じことが起こる」
クラウスが頷く。
「では、どうなさいますか?」
「まずは、彼女の信頼を取り戻す」
僕は決意を込めて言った。
「そして――彼女に、全てを話してもらう」
「分かりました」
クラウスが部屋を出て行く。
一人になった僕は、デスクの引き出しを開けた。
そこには、一枚の絵が入っていた。
幼い頃のエリーゼ。
七歳の彼女が、僕の膝の上で眠っている絵。
あの日――僕は決めた。
彼女を、一生守ると。
彼女の我儘を、一生受け止めると。
彼女を、一生愛し続けると。
その決意は、今も変わらない。
「エリーゼ……」
呟いて、絵を胸に抱く。
「君が何を恐れていても、僕は君を離さない」
窓の外、月が静かに輝いていた。
彼女のもとへ続く、道を照らすように。
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