召喚術師はじめました

鈴野あや(鈴野葉桜)

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第二章

二十二話

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 昼ごはんを食べ終え、三人の姿に目を奪われながらも満喫していると、新たな事実を発見することができた。どうやら萌えの対象でしか考えていなかった獣の耳と尻尾を生やした姿は、獣化時と同じように聴覚などの五感が鋭くなるらしい。

 人間の姿の時も、身体能力こそ同じではあるが、五感は人間より鋭いものの獣化時よりどうしても劣ってしまう。けれど劣る分を補うかのように、その分魔法の威力の威力が上がる。魔力は召喚獣になった時点で、召喚術師を通して龍脈が無限に得ることができる。そのため人間の姿を保つ召喚獣の方が多かった。アーテルやアルブス、ロセウスもそんな理由もあって人間の姿を保っているのだ。

 一見、萌え対象でしかない姿だが、思わぬ収穫があった。三人の戦力強化という素晴らしいカードを手に入れた。

 幸せをほくほく顔で満喫していると、玄関の扉をノックする音が聞こえた。

「ラヴィックたちだね」

 早速ケモ耳効果が発動した。足音と匂いだけで誰が来たのか分かるらしい。リビングで大きな声を出せば玄関まで声が通る。だからベルは入っていいよ、と声を張り上げた。

 ラヴィック、エリオット、コーディリア、トトーが順に部屋の中へ入ってくる。そして誰もがアーテルたち三人の姿を見て、目を丸くしていた。

「なんだ、その珍妙な格好は」

 呆れたような物言いで、ラヴィックが一番近くにいたロセウスの獣の耳と尻尾を指さす。

「こら、人を指ささないの」

 いつもの流れ通りトトーに怒られ、仕方なく指を下げる。それでも目だけはしっかりと向けられていた。

(そっか、オタク文化がこっちにはないから、珍妙な姿に見えるのか)

 ラヴィックの反応に思わず納得してしまう。初めて見る姿だからこそ、余計にそう見えてしまうのだろう。

「これはベルの趣味なの?」

 次いで声を上げたのは、コーディリアだ。

「うん、趣味」

 ごまかす、という手も一瞬脳裏をよぎったが、その手はすぐに却下した。どうせここから長い付き合いになるのだ。隠し事をしたところで、いつかはばれる。それにこんなことで変な目を向ける人柄でもないことは、ベル自身がよく知っていた。

 恥ずかしがらず堂々と口にすれば、コーディリアからは、そう、と短い返事が返ってきただけだった。その声色に侮蔑的な色は見受けられなかった。むしろパートナーであり恋人でもあるエリオットにケモ耳と尻尾が生えた姿でも想像したのか、頬がほんのりの染まり、口元が少しだけ緩んでいた。

(思わぬところに仲間がいた……!!)

 それを見逃すベルではなく、仲間がいたことに内心ガッツポーズをする。

「最初は趣味でお願いしてやってもらってたんだけどね、予想もしてなかった効果が生まれたの」

「予想もしていなかった効果? それはなんだ?」

 一番早くに食いついたのはエリオットだった。王族の地位を捨ててまで召喚術師となったのだ。だからこそ、誰よりもその効果に興味があるのだろう。

「口で説明してもいいけど、まずはトトーとコーディリアには体験してもらった方がいいかも。その方が特に実感しやすいと思うから」

「わかった。コーディリア、出来そうか?」

「トトー、お前も出来るか?」

 コーディリアとトトーの召喚術師であるエリオットとラヴィックが、それぞれパートナーである二人に尋ねる。

「ええ、おそらく」

「とりあえずやってみるよ」

 二人とも長年召喚獣をやっているだけあって、すぐにそれをやってのけた。

 コーディリアにはライオンの耳と尻尾が、そしてトトーには兎の耳と尻尾が生えた。どちらの姿も可愛くて、思わず抱きしめたい衝動に駆られる。しかしここは我慢だ。コーディリアは同性だからまだしも、人間の姿のトトーを抱きしめた時の自身の召喚獣たちの反応が恐ろしい。現にベルが動かないよう、いつの間にか両手をアーテルとアルブスに繋がれていた。

「これは……」

「……こんな効果があるなんて、知らなかったよ」

 コーディリアとトトーは効果を実感してくれたようだ。けれど召喚術師であるエリオットとラヴィックには何が変わったのかさっぱり分からないはずだ。そこでロセウスが説明を請け負ってくれた。

「二人は今体感しているから、その身でこの素晴らしさを実感していることだろうね。実はこの耳や尻尾を生やしていることで、獣の姿の時と全く同じくらい五感が鋭くなっているんだよ。この姿でいれば、戦力が格段に上がるというわけだ」

「なるほどな。そんな効果があるとは……。コーディリア、その姿も似合っているぞ」

 効果に驚きつつも、しっかりとコーディリアの姿を褒めていた。やはり好きな人のケモ耳は可愛いだろう、正義だろうと、内心うんうんと頷く。これで二人目の仲間ゲットだ。

「お前はさらに可愛くなったな、男なのに」

「でしょ? さすが僕」

「……きもい。見た目よりずっと年寄りのくせに」

「ラヴィが言わせたんでしょ!! それに年寄りなのはラヴィも一緒でしょ?」

「あーはいはい、そうですね。だったらエリオットとコーディ」

「それ言ったら、殺すわよ?」

 コーディリアは笑顔で手の平に光の玉を作っていた。当たればやばい魔法。それだけは見ただけでわかる。焦ったラヴィックはその場で土下座して見せた。

「すみませんでした……!!」

「わかればよろしい」

 女性に年齢の話は禁句。それはどこの世界でも共通のようだった。
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