召喚術師はじめました

鈴野あや(鈴野葉桜)

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第二章

二十五話

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「ラヴィックの実力だが、俺たちの想像より遥かによかった」

「そりゃどうも」

「ま、お嬢基準で考えてたからな。トトーの召喚術師なら、そりゃ前衛になるよな」

 アルブスの言い方に多少むっとするが、続くアーテルの言葉にそれもそうかと考え直す。

 ベルやエリオットたちとは交流があったものの、一緒に討伐等の依頼に出かけたことは一度もない。互いの召喚獣がどんな魔法を得意としているかは把握しているが、実際にどんなふうにして戦っているのかを実は知らなかったりする。

 知らないままでも別段困ることはないが、今後クライシスを相手にするならば知っていた方が動きやすくなるだろう。剣を交わらせたことによる一つの収穫だ。

「だから今日の鍛錬は、魔法ありきの実践でどうだ? クライシスやロゼリアと戦闘になるなら、これがメインになるだろう」

 アーテルの提案は最もなので、素直に頷く。

 ベルから、クライシスは魔法を使うと聞いている。それも、龍脈を使用しての魔法をだ。無限に龍脈の力を引き出せるとしたら、その力にラヴィックたちは対抗していかなければならない。どんな魔法を得意としているのか、正直不明なことばかりだ。それでもやらないよりは断然ましだろう。

「トトーの代わりにはならないが、今回の鍛錬中は俺がラヴィックのサポートに回ろう」

 その挙手してくれたのは、アルブスだった。アルブスの得意とする魔法は風。目に見えない身体への攻撃手段を持つ。

「おう、よろしく頼むな。これ、作戦会議とかもしていいのか?」

 連携をとる以上、どんな動きをするのか、こちらがどう動きたいのかを明確に伝えておく必要がある。今回初めてペアを組むのだから尚更だ。

「もちろんだ。久しぶりだな、アルブスと戦うのは。本気で行くぜ」

「ああ、そうだな。だが、負けはしない。先に言っておくが、ラヴィックがいたから負けた、とかいうのは無しだぞ」

「誰がそんな言い訳するか」

 アーテルとアルブスは双子の兄妹だ。髪の色彩や使う魔法こそ違うが、口調や顔の造形はそっくりだ。しかしベルの前では頼れる恋人といった存在なのに、ベルがいないとこうも子どもな会話もするのか、と微笑ましくなる。

「んじゃ、作戦練りますか」

「おー、俺は軽く準備運動でもしておくわ」

 ラヴィックはすでに体が重く感じているというのに、アーテルにとってあれは準備運動にすらならないらしい。改めて実力の差を痛感する。腕を伸ばしたりしているアーテルの姿を見ていると、アルブスに肩を叩かれた。

「俺たちは召喚獣。ラヴィックは召喚術師だ。こればかりは仕方がない」

 どうやら考えていることはお見通しのようだ。

「確かに召喚獣の方が戦闘には向いている。俺らは召喚術師とはいえ、元は人間で、ほぼ不老不死とはいえど構造は人間と変わりない。けど、だからって強くなることを諦めたくはない」

 傲慢なことかもしれない。それでも、この手で守れる者すべてを守りたい。その気持ちだけは決して曲げることができなかった。そんなラヴィックの肩をもう一度アルブスが叩いた。先程よりも強く叩き、ラヴィックに犬歯を見せながら笑いかける。

「好きだせ、そういうの。俺は協力するぞ」

「アルブス……。ああ、よろしく頼む!!」

「よし、そうと決まれば作戦会議だ!」

 互いに得意なこと、不得意なことを話し合い、アーテルの対策を練る。思ったよりも作戦を練ることは順調に進んだ。わくわくとした高揚感が、疲れた体を癒すかのように体中に広がっていく。

「いけるか?」

 アルブスの問いに、ラヴィックは頷いた。

「おうよ!」

 納得のいく作戦が決まり、アーテルへ視線を投げかける。

「お、もういいのか?」

「大丈夫だ」

「んじゃ、やりますか。このコインが地面についた瞬間、試合開始だ」

 アーテルがポケットから取り出したのは、何の変哲もない、買い物をするときに使う貨幣だった。

「オッケー」

 貨幣がアーテルの爪に当たって、キンと音を立てながら空中へ飛んでいく。そして勢いがなくなり、落下が始まった。落下する時間を見計らって、体を動かす準備を始める。

 地面はコンクリートやレンガではなく、草が生えている土だ。普段鍛錬に使っているからなのか、そこらの地面よりは固いが、それでもコンクリートなどよりは柔らかい。

 草のクッションに受け止められるようにして、コインが土の上へと落ちた。

 瞬間、アーテルとアルブスの魔法がほぼ同時と言っても過言ではないほど早く発動される。それに負けじとラヴィックも足を踏みだした。
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