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第二章
二十六話
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「……ル、……きて、ベル」
「んん?」
「起きたかい? 結構ぐっすりと寝れていたようだね」
「そりゃ、僕が癒しの歌を歌ったんだからね、当然だよ!」
体には薄手のブランケットがかけられていた。
ベルが肩を借りていたのは、ロセウスだったから、トトーが気を効かせてかけてくれたのだろう。
「セス、肩は痛くない? 重かったでしょ? トトーも歌とブランケットをありがとう」
「むしろ軽いくらいだったよ。だから肩は痛くないから気にしないでおくれ。それよりもベルがしっかり休めたようでよかった」
「どういたしまして。ベルは僕の友達だからね。友達として当然のことをしたまでだよ」
ロセウスとトトーの言葉を聞いて、ベルは本当にいい人たちに囲まれているなあと改めて実感をした。誰かのために自身が何かをする、というのは簡単そうで実は難しかったりする。どうしても優先順位で自身が一番になってしまうからだ。それが自然とできてしまう周囲の人たちをみて、ベルも見習わなければならないなと思った。
リビングの窓から外を見れば、空が赤らんでいた。ちょうど夕方に差し掛かったところなのだろう。
「ごめんね、もう少し休ませてあげたかったんだけど、そろそろ夕食の時間だからね」
「セスが謝ることじゃないよ。そうだ。せっかくだし、一緒に作ろうか。アーテたちも暗くなる頃には鍛錬が終わるだろうし、エリオットたちも帰ってくる頃合いだよね」
ベルのために皆がこうして動いてくれている、だからベルもなにか皆にしてあげたかった。
「なら、今日は外でバーベキューでもするかい? 材料はたくさんあるし、外なら広くスペースが使えるからね」
「あ、それいいかも!」
四人で暮らしているので、食事をとるスペースに全員が入るとどうしても狭くなってしまう。その点、外ならば充分なスペースを確保することができる。ロセウスの結界も張ってあるので、家の中と同じくらい安全だ。
「なら、僕も手伝うよ!」
「ありがとう! じゃあトトーには、切った野菜とかを外に運んでもらうかな。あと、外で鍛錬している三人に机とかの準備をお願いしてきて」
「はーい」
召喚術師と召喚獣の人数をあわせると、全員で八人。家の外に小さな物置があって、ゲーム時代に購入したバーベキューのグリルなどのセットをしまってあるが、さすがにイスや机が足りない。しかし幸いなことに近くに手頃な木がいくつかある。器用に魔法が使えるアーテルとアルブスのことだ。こうやってトトーにお願いをしておけば、適当に作ってくれるだろう。
外へ向かうトトーの背中を見送ったあと、すでにキッチンで様々な材料を冷蔵庫から出しているロセウスの隣に立つ。
「これ、全部切っていっていいやつ?」
「そうだよ。お願いできるかい?」
「もちろん。あ、じゃがいももあるなら、バター焼きとかしたい」
魔法で動く冷蔵庫やコンロはあっても、この世界にアルミホイールや、サランラップは残念なことに存在していない。そこまで科学が発展してないからだ。その代わりに魔法の技術を駆使した水にも火にも強い、料理用の丈夫な布が開発されているようで、じゃがいものバター焼きにはそれを代用する。
「それはいい考えだ。なら私はアクアパッツァを作ろうかな。手頃なサイズの魚もあることだし」
ロセウスが手に持っている魚を、ベルに見せてきた。何度か食べたことのある魚だが、普通に焼いて食べるよりも、外でアクアパッツァにして食べた方が何倍も美味しいに決まっている。味を想像するだけで涎が出てきてしまいそうだ。
普通なら、ベルの方がおしゃれな料理を披露するところだろうが、あいにくそんな腕前を持ち合わせていない。これから少しずつロセウスたちに習ったり、本で勉強していくしかないだろう。
簡易的ではあるもの、タレに漬けこんだ肉や、串に刺した野菜、そしてじゃがいものバター焼きなどを大きなトレーの乗せて外へ運んでいく。
すでに外は暗くなりはじめていたが、ちょうど帰ってきていたコーディリアの魔法のおかげで幻想的な明るさがそこにあった。直径一センチほどの、雪のような光が幾つも辺りを漂っている。さすが光魔法を得意としているだけあって、息をするかのように魔法を使っていた。
「コーディリア、おかえり。エリオットも」
「ただいま、ベル」
「今帰った。報告したいこともあったが、ラヴィに事情を聞いて先にこちらを手伝うことにした」
「おかげで早く準備が終わったぜ」
「そうなの? 手伝ってくれてありがとうね」
「いや、大したことはない」
コーディリアとエリオットの二人と少しだけ話したあと、木で出来た机にトレーを置く。すでにバーベキューグリルは準備万端なようで、あとは食材を焼くだけのようだ。
外で食事をする時用の簡易的な机と、その隣に粗削りではあるが、短時間にしては上出来な部類に入る机がバーベキューグリルを挟んで並んでいた。椅子も四つしかなかったので、ちょうどいい高さに切った丸太が四つプラスされて置かれている。
「こんな感じでよかったか?」
「上出来!」
ベルの隣に立つように、アーテルが近くに寄って来る。そんなアーテルに親指を立てた。
「なら、よかった。ロセウスはもうすぐか?」
「うん。あとちょっとで準備できるって言ってたよ」
「んじゃ、そろそろ焼き始めるか。ロセウスが来る頃にはいい感じに焼きあがってるだろ」
「それもそうだね」
「お嬢は、座ってな。俺たちが焼くから」
「え、でも」
「そうそう、アルブスの言う通り。ここは俺たちがやるから」
「アーテルとアルブスがこう言ってるんだし、甘えましょう?」
アルブスとコーディリアに援護射撃をされてしまっては、甘えるという選択肢しかなくなってくる。コーディリアに腕を引っ張られるようにして、近くにあった丸太の椅子に苦笑しながら座った。
「んん?」
「起きたかい? 結構ぐっすりと寝れていたようだね」
「そりゃ、僕が癒しの歌を歌ったんだからね、当然だよ!」
体には薄手のブランケットがかけられていた。
ベルが肩を借りていたのは、ロセウスだったから、トトーが気を効かせてかけてくれたのだろう。
「セス、肩は痛くない? 重かったでしょ? トトーも歌とブランケットをありがとう」
「むしろ軽いくらいだったよ。だから肩は痛くないから気にしないでおくれ。それよりもベルがしっかり休めたようでよかった」
「どういたしまして。ベルは僕の友達だからね。友達として当然のことをしたまでだよ」
ロセウスとトトーの言葉を聞いて、ベルは本当にいい人たちに囲まれているなあと改めて実感をした。誰かのために自身が何かをする、というのは簡単そうで実は難しかったりする。どうしても優先順位で自身が一番になってしまうからだ。それが自然とできてしまう周囲の人たちをみて、ベルも見習わなければならないなと思った。
リビングの窓から外を見れば、空が赤らんでいた。ちょうど夕方に差し掛かったところなのだろう。
「ごめんね、もう少し休ませてあげたかったんだけど、そろそろ夕食の時間だからね」
「セスが謝ることじゃないよ。そうだ。せっかくだし、一緒に作ろうか。アーテたちも暗くなる頃には鍛錬が終わるだろうし、エリオットたちも帰ってくる頃合いだよね」
ベルのために皆がこうして動いてくれている、だからベルもなにか皆にしてあげたかった。
「なら、今日は外でバーベキューでもするかい? 材料はたくさんあるし、外なら広くスペースが使えるからね」
「あ、それいいかも!」
四人で暮らしているので、食事をとるスペースに全員が入るとどうしても狭くなってしまう。その点、外ならば充分なスペースを確保することができる。ロセウスの結界も張ってあるので、家の中と同じくらい安全だ。
「なら、僕も手伝うよ!」
「ありがとう! じゃあトトーには、切った野菜とかを外に運んでもらうかな。あと、外で鍛錬している三人に机とかの準備をお願いしてきて」
「はーい」
召喚術師と召喚獣の人数をあわせると、全員で八人。家の外に小さな物置があって、ゲーム時代に購入したバーベキューのグリルなどのセットをしまってあるが、さすがにイスや机が足りない。しかし幸いなことに近くに手頃な木がいくつかある。器用に魔法が使えるアーテルとアルブスのことだ。こうやってトトーにお願いをしておけば、適当に作ってくれるだろう。
外へ向かうトトーの背中を見送ったあと、すでにキッチンで様々な材料を冷蔵庫から出しているロセウスの隣に立つ。
「これ、全部切っていっていいやつ?」
「そうだよ。お願いできるかい?」
「もちろん。あ、じゃがいももあるなら、バター焼きとかしたい」
魔法で動く冷蔵庫やコンロはあっても、この世界にアルミホイールや、サランラップは残念なことに存在していない。そこまで科学が発展してないからだ。その代わりに魔法の技術を駆使した水にも火にも強い、料理用の丈夫な布が開発されているようで、じゃがいものバター焼きにはそれを代用する。
「それはいい考えだ。なら私はアクアパッツァを作ろうかな。手頃なサイズの魚もあることだし」
ロセウスが手に持っている魚を、ベルに見せてきた。何度か食べたことのある魚だが、普通に焼いて食べるよりも、外でアクアパッツァにして食べた方が何倍も美味しいに決まっている。味を想像するだけで涎が出てきてしまいそうだ。
普通なら、ベルの方がおしゃれな料理を披露するところだろうが、あいにくそんな腕前を持ち合わせていない。これから少しずつロセウスたちに習ったり、本で勉強していくしかないだろう。
簡易的ではあるもの、タレに漬けこんだ肉や、串に刺した野菜、そしてじゃがいものバター焼きなどを大きなトレーの乗せて外へ運んでいく。
すでに外は暗くなりはじめていたが、ちょうど帰ってきていたコーディリアの魔法のおかげで幻想的な明るさがそこにあった。直径一センチほどの、雪のような光が幾つも辺りを漂っている。さすが光魔法を得意としているだけあって、息をするかのように魔法を使っていた。
「コーディリア、おかえり。エリオットも」
「ただいま、ベル」
「今帰った。報告したいこともあったが、ラヴィに事情を聞いて先にこちらを手伝うことにした」
「おかげで早く準備が終わったぜ」
「そうなの? 手伝ってくれてありがとうね」
「いや、大したことはない」
コーディリアとエリオットの二人と少しだけ話したあと、木で出来た机にトレーを置く。すでにバーベキューグリルは準備万端なようで、あとは食材を焼くだけのようだ。
外で食事をする時用の簡易的な机と、その隣に粗削りではあるが、短時間にしては上出来な部類に入る机がバーベキューグリルを挟んで並んでいた。椅子も四つしかなかったので、ちょうどいい高さに切った丸太が四つプラスされて置かれている。
「こんな感じでよかったか?」
「上出来!」
ベルの隣に立つように、アーテルが近くに寄って来る。そんなアーテルに親指を立てた。
「なら、よかった。ロセウスはもうすぐか?」
「うん。あとちょっとで準備できるって言ってたよ」
「んじゃ、そろそろ焼き始めるか。ロセウスが来る頃にはいい感じに焼きあがってるだろ」
「それもそうだね」
「お嬢は、座ってな。俺たちが焼くから」
「え、でも」
「そうそう、アルブスの言う通り。ここは俺たちがやるから」
「アーテルとアルブスがこう言ってるんだし、甘えましょう?」
アルブスとコーディリアに援護射撃をされてしまっては、甘えるという選択肢しかなくなってくる。コーディリアに腕を引っ張られるようにして、近くにあった丸太の椅子に苦笑しながら座った。
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