召喚術師はじめました

鈴野あや(鈴野葉桜)

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第二章

四十三話

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「邪魔するぜー」

「お邪魔します」

「邪魔するぞ」

「お邪魔するわ」

 昼食を作り終えた頃にラヴィックたちが家を尋ねてきた。ラヴィック、トトー、エリオット、コーディリアの順に玄関から声が聞こえてきた。どうやらラヴィックたちはロセウスの読み通り街にいたようだ。エリオットたちも今日は王都に行かなかったようで、一緒に尋ねてきたようだ。

 念のために多く昼食を作っておいて正解だったようだ。

 キッチンからひょっこりと顔を出せば、そこには目をきらきらと輝かせた召喚術師と召喚獣がいた。

「召喚術師と召喚獣のタッグで戦闘訓練をすると聞いたからには、王都ではなくこちらに来るべきだろうと判断してな」

「今まではラヴィックたちとしか、戦闘訓練をしてこなかったものね」 

「なるほど。来てくれて助かったよ。私たちはこうしたタッグの訓練をしたことがなかったからさ。それに私が寝ていた分、ブランクもあるし。戦える相手が多いだけ助かるからね」

 なるべく多くの戦闘訓練を積んだ方が、今後のためにもなる。だからエリオットたちもこうして来てくれたことは多いに賛成だった。

「んじゃ、早速やるか?」

 ラヴィックは指の関節をぽきぽきと鳴らしており、すでにやる気十分なようだ。トトーはそんなラヴィックにやれやれと首を振りながらも、その瞳は闘志に燃えているように見えた。性格は違えど、何十年、何百年と一緒に生活をしていれば、それなりに思考も似通ってくるのだろう。そんな二人に隠れて苦笑をしながら頷く。

 昼食がすぐに出せるよう、食器の準備なども先に済ませて庭へと赴いた。

 今日の天気は曇りだったようで、過ごしやすい天候だった。これならば戦闘訓練もしやすいだろう。

「さて、ではでは始めるとしましょうか」

 最初は審判を設けた戦闘訓練の予定だったが、本来召喚獣は召喚術師一人につき一匹だったことを思い出す。誰も気にしていないようだったから忘れていたが、今回は公平な戦闘訓練だ。だったら人数も合わせた方がいいだろうということになり、ベル対エリオット、ラヴィックという形になった。

 お互いに強いのだろう、という認識はあっても、どれほど強いのかまでは把握していない。たとえ実力が互角だったとしても、ベルの場合は人数のごり押しで勝敗が決してしまう恐れもあるからだ。

 軽いストレッチをして、全員の準備が整ったところで、召喚獣たちが一斉に半獣化をした。――つまりケモ耳、尻尾だけがある状態だ。

(忘れてた……!)

 獣化時よりも、半獣化時の方が戦闘力が向上することをすっかりベルは忘れていた。

(……これは、かなりの眼福!!)

 戦闘訓練が続く限り、ずっとこの状態ということになる。眼福すぎて、戦闘訓練に集中できるかどうかが怪しい。そんなベルの心境を見抜いたのか、ロセウスが一つの提案を耳打ちしてきた。

「ベル。もしこの戦闘訓練で勝利を収められたら、私たちの耳や尻尾を思う存分触らせてあげる。その間私たちがベルの体におちょっかいを出さないことも約束しよう。耳の付け根部分を触っても、ね」

 それはベルにとって、かなり素敵なご褒美だった。

「俺たちもそれで構わないぜ」

「まあ、触り終わったあとに、俺たちもお嬢の体を堪能させてもらうけどな」

 五感が鋭くなっているせいで、近くにいたアーテルとアルブスには、ロセウスとの会話が全て筒抜けだったようだ。

 ケモ耳を堪能し終えたあとが若干怖くもあるが、敢えて今は聞かなかったことにしておこうと決めた。そして付け根部分はなるべく触らないでおこうと決心も固めておく。

「本気でいきます」

 勝利しないとご褒美がもらえないのであれば、ここはいつも以上に頑張らないといけない。ベルは一度瞼を閉じて、深呼吸をした。

(勝てばケモ耳、勝てばケモ耳……)

 心の中は欲が大半を占めていた。しかしそんなことは些細なことだ。今は眼福よりも、ご褒美が優先なのだから。そのためには眼福であるケモ耳に打ち勝たなければならないのだ。

「よしっ!!」

 ベルは両頬を叩いて、気合いを入れ直した。そんなベルをみて全員が苦笑していたことを、瞼を閉じていたベルが知ることはなかった。
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