召喚術師はじめました

鈴野あや(鈴野葉桜)

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第二章

四十五話

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 幾数もの光の矢が降ってくるにも関わらず、怖さは全くと言っていいほど感じなかった。それはベルがロセウスたちのことを心から信じているからなのだろう。そしてベルの言葉を信じて従ってくれるロセウスたちも然りだ。召喚獣と召喚術師。この関係は信頼関係無しでは成り立たない。

 信頼してくれているロセウスたちのために役立つためにも、にもまずは情報を集めることが優先事項となる。

 エリオットとラヴィックの相手をしているロセウスとアーテルは、かなり余裕そうに見える。対してエリオットとラヴィックは辛そうな表情をしていた。

「まあそうでしょうね」

 エリオットとラヴィックの本職は、剣士ではなく召喚術師だ。剣の鍛錬を積んで多少覚えがあるとしても、ロセウスとアーテルは戦闘系の召喚獣。運動神経は人間を遥かに上回っており、強力な魔法も駆使することができる。しかも魔法の源である魔力は龍脈のおかげで無尽蔵ときた。ベルだったら敵に回したくない相手だ。

 現にロセウスは攻撃を避けながら炎を操り、温度を上昇させることで二人の体力をじりじりと奪っており、アーテルに至っては手の平サイズの水球を幾つも作って、二人が剣を振ろうとする度に水球で目つぶしをしたり、肘や足に当てて剣の気道をずらしたりしていた。完璧に余裕な証拠だ。

「いや、うん……まあ本気で魔法で攻撃したら怪我じゃすまなくなるから、セスとアーテの行動も分からなくもないけど。、あれやられたら、逆に腹立つよね」

 ベルの想像通り、ラヴィックが口を大きく開けて何か文句を言っている姿が見受けられた。

「セス、アーテ一人で大丈夫みたいだから、トトーの方に向かってくれる? ずっと歌っているから、何かしてきそうで……っ、一歩遅かった!!」

 ロセウスにトトーの口を封じてもらおうとした瞬間、結界がパリンと割れる音が聞えた。

「残念。僕の攻撃は精神へが主だけど、魔法へも可能なんだよね。ま、難点は時間がとてもかかるってことなんだけど。ラヴィとエリオットが囮になってくれて助かったよ」

 元より、エリオットとラヴィックはロセウスとアーテルに勝つつもりはなかったようだ。しかしそんなことなんてどうでもいい。

 ベルは慌てた表情をにっこりと笑顔へ変えた。

「……なんて言うと思った? 元より計算済みだよ。ね、セス」

「ああ、もちろん」

「結界の一つは壊れたけど、私たちにかけられてる結界はまだもう一つある。それをさっきと同じような結界にすれば……ね?」

 ベルの体には戦闘開始直後ロセウスによって、物理と魔法を防ぐ強力な結界がかけられている。しかしそれはベルだけではない。ベルにかけられている程ではないにせよ、ロセウス本人やアーテル、アルブスにも攻撃の邪魔をしない程度の結界がかけられていた。結界がすでにかけられているのなら、それに効果を追加することはロセウスにとって訳がないのだ。

 トトーが何か仕掛けてくるとは、歌っている時点で察していた。だから敢えて何をするのか分かるまで待っていたのだ。ロセウスが結界に効果を追加する前にと、慌てて歌うがもう遅い。トトーの声はすでにロセウスの結界によって塞がれてしまった。

(ま、セスは一から結界を張るも、効果を追加するのも同じくらいの速さできるんだけど、これは言わない方がいいよね)

 せっかくロセウスの結界を壊したのに、それが瞬時に治ると知ればトトーの心に傷を作ってしまう気がした。おそらくロセウスが一から結界を作る姿を、トトーたちは見たことがない。今回結界を張った時だって、コーディリアの光の魔法で見えていなかったはずだ。だからこそベルが注文して張った結界が、瞬時に張られるとは誰も思わなかったのだろう。

 大きく口を開けるトトーの元へロセウスと二人歩いて行く。途中エリオットとラヴィックの横を通ったが、アーテルのおかげで攻撃されることは一度もなかった。

 アルブスとコーディリアの空中戦は、召喚獣同士とあって苛烈を極めており、地上の至るところにクレーターができていたが、ベルがトトーを抱きあげた時点で、互いの攻撃が鳴りやんだ。

「私たちの勝ちだね!」

 まるで勝利の旗のように、トトーの体を空へと掲げた。
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