124 / 136
第二章
六十二話
しおりを挟む
ずっとこの近辺で戦っていたのだろう。クライシスとヴィータを中心として、木々や草花が無残な状態となっていた。
(ヴィー!!)
傷を所々負っているものの、しっかりと地面に足をつけて危なげなく立っているヴィータの姿を見つけ、思わず声をかけてしまいそうになる。その衝動を必死に抑えて、近くの繁みに身を隠した。二人とも互いしか視界に入っていないのだろう。まだベルたちがこの場にいることに気づいていない。
(これはまたとないチャンス)
ベルは視線でロセウスに指示を出した。視線のみで理解をしたロセウスは頷くと、ヴィータがまとっている結界魔法へ干渉をした。ヴィータは異界の湖の番人。様々な魔法を駆使できるが、その中でも幻惑魔法と結界魔法が抜きんでている。そんな結界魔法に干渉されれば、誰が干渉してきたのか一発で見抜くことができるだろう。これはヴィータにのみベルたちが応援に駆けつけたことを教えることが出来る最善の方法だった。
「……!!」
ヴィータはベルの思惑通り、すぐにロセウスの魔法に気づいた。一瞬クライシスが行ったことかと、クライシスに疑いの視線を向けるが、すぐにそうではないことに気づく。ならば誰が行ったのかと魔力の色を辿り、ロセウスに辿り着いたようだ。ひょっこりと繁みから顔を出すベルの姿が視界に入るなり、クライシスが気づかないように小さく指を動かす。
何を行ったのか分からずロセウスに視線を向ければ、小声で教えてくれた。
「私の結界魔法に干渉して、ベルにかけている結界を強化したようだ」
(つまり、セスの結界魔法に干渉することによって私たちがいることに気づいたよって合図してくれたわけね)
一番わかりやすくて、クライシスにベルたちの存在がバレにくい方法ではあるが、ただでさえヴィータは強敵であるクライシスと一対一でずっと戦っているのだ。わざわざベルのために結界を強化してくれなくてもいいのに、と思ってしまう。そんな思いが顔に出ていたのだろう。アーテルとアルブス、それぞれに肩を軽く叩かれた。
「番人はお嬢が大切だからな。それくらい分かってやれ」
「ま、俺が番人の立場でもそうするしな」
「……わかった」
確かにベルがヴィータの立場だとしたら、迷いもなくそうするだろう。ベルは好意をありがたく受け取ることにした。
(さて、ここからが本番)
キュロットのポケットの中に入っている二つのもののうち一つを取り出す。それは直径五センチほどの光る小さな玉だった。
この世界には、スマートフォンのような便利な連絡手段はない。
けれどこうして三手に別れて行動している以上、どうにかして連絡を取って連携プレーを行う必要がある。
そこで考えついたのがこれだった。まずロセウスに結界魔法で三つの玉を作ってもらい、アーテルに水魔法、そしてコーディリアに光魔法、トトーには歌魔法でそれぞれ魔法を入れてもらった。なので玉の中には光る水が幻想的に渦を巻いていた。アーテルが魔法を解けば水が消え、コーディリアが魔法を解けば光が消え、ラヴィックが魔法を解けば、歌魔法で干渉した光と水の渦が止まる仕組みだ。この玉の唯一の弱点といえば、トトーが魔法を解くまでアーテルかコーディリアのどちらかが魔法を解くことができないという部分だが、こればかりは使用できる魔法が互いに限られているので仕方がない。しかし今回は目的地に無事到着したかの有無が確かめられればいいだけなので、そこは大した問題ではなかった。
ヴィータたちの動向を気にしつつ、玉に視線を向けていると、光る水が渦巻くのを止め、数分も経たないうちに光が静かに消えていった。
(全員到着した見たいだね)
アーテルもその二つを確認して、玉の中から水を消す。そうして残ったのはロセウスが結界魔法で作った玉の空だけとなる。各々の魔法が消えたことによって、全員が配置についたことを把握した。あとは開始の合図を送るだけだ。
「ベル、いいかい?」
その合図は、各々が持っている結界の玉をロセウスが消すことだった。ベルが頷けば、ロセウスは即座に結界を解くだろう。
これから行うことに失敗は許されない。だから何度も頭の中でシュミレーションしてきた。準備はすでに万端だ。
「セス、お願い」
その言葉に迷いはなかった。
(ヴィー!!)
傷を所々負っているものの、しっかりと地面に足をつけて危なげなく立っているヴィータの姿を見つけ、思わず声をかけてしまいそうになる。その衝動を必死に抑えて、近くの繁みに身を隠した。二人とも互いしか視界に入っていないのだろう。まだベルたちがこの場にいることに気づいていない。
(これはまたとないチャンス)
ベルは視線でロセウスに指示を出した。視線のみで理解をしたロセウスは頷くと、ヴィータがまとっている結界魔法へ干渉をした。ヴィータは異界の湖の番人。様々な魔法を駆使できるが、その中でも幻惑魔法と結界魔法が抜きんでている。そんな結界魔法に干渉されれば、誰が干渉してきたのか一発で見抜くことができるだろう。これはヴィータにのみベルたちが応援に駆けつけたことを教えることが出来る最善の方法だった。
「……!!」
ヴィータはベルの思惑通り、すぐにロセウスの魔法に気づいた。一瞬クライシスが行ったことかと、クライシスに疑いの視線を向けるが、すぐにそうではないことに気づく。ならば誰が行ったのかと魔力の色を辿り、ロセウスに辿り着いたようだ。ひょっこりと繁みから顔を出すベルの姿が視界に入るなり、クライシスが気づかないように小さく指を動かす。
何を行ったのか分からずロセウスに視線を向ければ、小声で教えてくれた。
「私の結界魔法に干渉して、ベルにかけている結界を強化したようだ」
(つまり、セスの結界魔法に干渉することによって私たちがいることに気づいたよって合図してくれたわけね)
一番わかりやすくて、クライシスにベルたちの存在がバレにくい方法ではあるが、ただでさえヴィータは強敵であるクライシスと一対一でずっと戦っているのだ。わざわざベルのために結界を強化してくれなくてもいいのに、と思ってしまう。そんな思いが顔に出ていたのだろう。アーテルとアルブス、それぞれに肩を軽く叩かれた。
「番人はお嬢が大切だからな。それくらい分かってやれ」
「ま、俺が番人の立場でもそうするしな」
「……わかった」
確かにベルがヴィータの立場だとしたら、迷いもなくそうするだろう。ベルは好意をありがたく受け取ることにした。
(さて、ここからが本番)
キュロットのポケットの中に入っている二つのもののうち一つを取り出す。それは直径五センチほどの光る小さな玉だった。
この世界には、スマートフォンのような便利な連絡手段はない。
けれどこうして三手に別れて行動している以上、どうにかして連絡を取って連携プレーを行う必要がある。
そこで考えついたのがこれだった。まずロセウスに結界魔法で三つの玉を作ってもらい、アーテルに水魔法、そしてコーディリアに光魔法、トトーには歌魔法でそれぞれ魔法を入れてもらった。なので玉の中には光る水が幻想的に渦を巻いていた。アーテルが魔法を解けば水が消え、コーディリアが魔法を解けば光が消え、ラヴィックが魔法を解けば、歌魔法で干渉した光と水の渦が止まる仕組みだ。この玉の唯一の弱点といえば、トトーが魔法を解くまでアーテルかコーディリアのどちらかが魔法を解くことができないという部分だが、こればかりは使用できる魔法が互いに限られているので仕方がない。しかし今回は目的地に無事到着したかの有無が確かめられればいいだけなので、そこは大した問題ではなかった。
ヴィータたちの動向を気にしつつ、玉に視線を向けていると、光る水が渦巻くのを止め、数分も経たないうちに光が静かに消えていった。
(全員到着した見たいだね)
アーテルもその二つを確認して、玉の中から水を消す。そうして残ったのはロセウスが結界魔法で作った玉の空だけとなる。各々の魔法が消えたことによって、全員が配置についたことを把握した。あとは開始の合図を送るだけだ。
「ベル、いいかい?」
その合図は、各々が持っている結界の玉をロセウスが消すことだった。ベルが頷けば、ロセウスは即座に結界を解くだろう。
これから行うことに失敗は許されない。だから何度も頭の中でシュミレーションしてきた。準備はすでに万端だ。
「セス、お願い」
その言葉に迷いはなかった。
0
あなたにおすすめの小説
異世界から来た華と守護する者
桜
恋愛
空襲から逃げ惑い、気がつくと屍の山がみえる荒れた荒野だった。
魔力の暴走を利用して戦地にいた美丈夫との出会いで人生変わりました。
ps:異世界の穴シリーズです。
兄様達の愛が止まりません!
桜
恋愛
五歳の時、私と兄は父の兄である叔父に助けられた。
そう、私達の両親がニ歳の時事故で亡くなった途端、親類に屋敷を乗っ取られて、離れに閉じ込められた。
屋敷に勤めてくれていた者達はほぼ全員解雇され、一部残された者が密かに私達を庇ってくれていたのだ。
やがて、領内や屋敷周辺に魔物や魔獣被害が出だし、私と兄、そして唯一の保護をしてくれた侍女のみとなり、死の危険性があると心配した者が叔父に助けを求めてくれた。
無事に保護された私達は、叔父が全力で守るからと連れ出し、養子にしてくれたのだ。
叔父の家には二人の兄がいた。
そこで、私は思い出したんだ。双子の兄が時折話していた不思議な話と、何故か自分に映像に流れて来た不思議な世界を、そして、私は…
花嫁召喚 〜異世界で始まる一妻多夫の婚活記〜
文月・F・アキオ
恋愛
婚活に行き詰まっていた桜井美琴(23)は、ある日突然異世界へ召喚される。そこは女性が複数の夫を迎える“一妻多夫制”の国。
花嫁として召喚された美琴は、生きるために結婚しなければならなかった。
堅実な兵士、まとめ上手な書記官、温和な医師、おしゃべりな商人、寡黙な狩人、心優しい吟遊詩人、几帳面な官僚――多彩な男性たちとの出会いが、美琴の未来を大きく動かしていく。
帰れない現実と新たな絆の狭間で、彼女が選ぶ道とは?
異世界婚活ファンタジー、開幕。
異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜
京
恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。
右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。
そんな乙女ゲームのようなお話。
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
わたしのヤンデレ吸引力が強すぎる件
こいなだ陽日
恋愛
病んだ男を引き寄せる凶相を持って生まれてしまったメーシャ。ある日、暴漢に襲われた彼女はアルと名乗る祭司の青年に助けられる。この事件と彼の言葉をきっかけにメーシャは祭司を目指した。そうして二年後、試験に合格した彼女は実家を離れ研修生活をはじめる。しかし、そこでも彼女はやはり病んだ麗しい青年たちに淫らに愛され、二人の恋人を持つことに……。しかも、そんな中でかつての恩人アルとも予想だにせぬ再会を果たして――!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる