召喚術師はじめました

鈴野あや(鈴野葉桜)

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第二章

六十二話

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 ずっとこの近辺で戦っていたのだろう。クライシスとヴィータを中心として、木々や草花が無残な状態となっていた。

(ヴィー!!)

 傷を所々負っているものの、しっかりと地面に足をつけて危なげなく立っているヴィータの姿を見つけ、思わず声をかけてしまいそうになる。その衝動を必死に抑えて、近くの繁みに身を隠した。二人とも互いしか視界に入っていないのだろう。まだベルたちがこの場にいることに気づいていない。

(これはまたとないチャンス)

 ベルは視線でロセウスに指示を出した。視線のみで理解をしたロセウスは頷くと、ヴィータがまとっている結界魔法へ干渉をした。ヴィータは異界の湖の番人。様々な魔法を駆使できるが、その中でも幻惑魔法と結界魔法が抜きんでている。そんな結界魔法に干渉されれば、誰が干渉してきたのか一発で見抜くことができるだろう。これはヴィータにのみベルたちが応援に駆けつけたことを教えることが出来る最善の方法だった。

「……!!」

 ヴィータはベルの思惑通り、すぐにロセウスの魔法に気づいた。一瞬クライシスが行ったことかと、クライシスに疑いの視線を向けるが、すぐにそうではないことに気づく。ならば誰が行ったのかと魔力の色を辿り、ロセウスに辿り着いたようだ。ひょっこりと繁みから顔を出すベルの姿が視界に入るなり、クライシスが気づかないように小さく指を動かす。

 何を行ったのか分からずロセウスに視線を向ければ、小声で教えてくれた。

「私の結界魔法に干渉して、ベルにかけている結界を強化したようだ」

(つまり、セスの結界魔法に干渉することによって私たちがいることに気づいたよって合図してくれたわけね)

 一番わかりやすくて、クライシスにベルたちの存在がバレにくい方法ではあるが、ただでさえヴィータは強敵であるクライシスと一対一でずっと戦っているのだ。わざわざベルのために結界を強化してくれなくてもいいのに、と思ってしまう。そんな思いが顔に出ていたのだろう。アーテルとアルブス、それぞれに肩を軽く叩かれた。

「番人はお嬢が大切だからな。それくらい分かってやれ」

「ま、俺が番人の立場でもそうするしな」

「……わかった」

 確かにベルがヴィータの立場だとしたら、迷いもなくそうするだろう。ベルは好意をありがたく受け取ることにした。

(さて、ここからが本番)

 キュロットのポケットの中に入っている二つのもののうち一つを取り出す。それは直径五センチほどの光る小さな玉だった。

 この世界には、スマートフォンのような便利な連絡手段はない。

 けれどこうして三手に別れて行動している以上、どうにかして連絡を取って連携プレーを行う必要がある。

 そこで考えついたのがこれだった。まずロセウスに結界魔法で三つの玉を作ってもらい、アーテルに水魔法、そしてコーディリアに光魔法、トトーには歌魔法でそれぞれ魔法を入れてもらった。なので玉の中には光る水が幻想的に渦を巻いていた。アーテルが魔法を解けば水が消え、コーディリアが魔法を解けば光が消え、ラヴィックが魔法を解けば、歌魔法で干渉した光と水の渦が止まる仕組みだ。この玉の唯一の弱点といえば、トトーが魔法を解くまでアーテルかコーディリアのどちらかが魔法を解くことができないという部分だが、こればかりは使用できる魔法が互いに限られているので仕方がない。しかし今回は目的地に無事到着したかの有無が確かめられればいいだけなので、そこは大した問題ではなかった。

 ヴィータたちの動向を気にしつつ、玉に視線を向けていると、光る水が渦巻くのを止め、数分も経たないうちに光が静かに消えていった。

(全員到着した見たいだね)

 アーテルもその二つを確認して、玉の中から水を消す。そうして残ったのはロセウスが結界魔法で作った玉の空だけとなる。各々の魔法が消えたことによって、全員が配置についたことを把握した。あとは開始の合図を送るだけだ。

「ベル、いいかい?」

 その合図は、各々が持っている結界の玉をロセウスが消すことだった。ベルが頷けば、ロセウスは即座に結界を解くだろう。

 これから行うことに失敗は許されない。だから何度も頭の中でシュミレーションしてきた。準備はすでに万端だ。

「セス、お願い」

 その言葉に迷いはなかった。
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