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事例1 九十九人殺しと孤高の殺人蜂【事件篇】
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尾崎の言う通り、無線から他の署員が現着した知らせが入った。その無線の声は、若い女性の声だった。倉科の心当たりがある限りでは、現場に出たがる女性署員など、一人しかいない。
「おい、今の声って――」
「縁じゃないすか? 彼女、どうも署内で大人しくできないみたいっすから」
尾崎が下の名前で呼んだ女性。その女性もまた、倉科の頭痛のたねだった。あの殺人鬼よりは遥かにマシだが、曲がりなりにも上司である倉科からすれば、無視できるような問題児ではなかった。
「あの馬鹿キャリア……。大人しく内勤してりゃいいって、何度も言ってるんだがなぁ」
倉科がキャリアと呼び、そして尾崎が下の名前で呼んだ女性の名前は山本縁という。バリバリのキャリア組であり、研修という名目で倉科の下についている女刑事である。基本的に入ったばかりの女性は内勤に就くのだが、キャリアのプライドがあるのか、やたらと現場に出張たがる。それだけならば、仕事に対して積極的ということで済まされるかもしれないが、彼女には刑事として大きな欠点があった。さっさと現場を離れて上に行って欲しいと倉科が願うほどの欠点が。
「尾崎、やっぱりもっと飛ばせ。放っておくと、あいつのゲロで現場が汚されるぞ!」
倉科は溜め息混じりに無茶な注文を尾崎につけた。ついさっき、これが限界であると尾崎が訴えたばかりなのであるが、状況が変わった。
「縁、死体とか血を直視できねぇっすからねぇ。仕方がねぇっす。なんかあったら倉科警部が責任を取るっすよ!」
彼女といい尾崎といい、どうして自分はこうも部下に恵まれないのだろうか――。溜め息を漏らした倉科の隣で、ただでさえアクセルをベタベタに踏んでいた尾崎が、力任せにアクセルを踏み込んだ。
周囲の景色が瞬く間に通り過ぎて行く。挙げ句の果てに、左折する際にドリフト走行ときたものだ。スピードを出せとは言ったが、そんな曲芸まがいのことをしろと言った覚えはない。
「おい尾崎! 曲がる時くらいはもう少し慎重に運転を――」
「警部殿が責任を取ってくれるから心配いらねぇっすよ!」
その警部殿とは自分のことなのであるが……。しかし、焚き付けたのは自分であるから、今は尾崎がどこかにパトカーをぶつけたりしないことを祈るのみだ。
肝を冷やすドライブは、しかし何事もなく現場である川沿いの土手へと到着。生きた心地がしなかったものの、尾崎の絶妙なドライビングテクニックのおかげで事なきを得た。先に到着していたパトカーとパトカーの間に、半回転スピンをしながら縦列駐車をした時には、思わず尾崎にげんこつをくれてやったが。
「おい、今の声って――」
「縁じゃないすか? 彼女、どうも署内で大人しくできないみたいっすから」
尾崎が下の名前で呼んだ女性。その女性もまた、倉科の頭痛のたねだった。あの殺人鬼よりは遥かにマシだが、曲がりなりにも上司である倉科からすれば、無視できるような問題児ではなかった。
「あの馬鹿キャリア……。大人しく内勤してりゃいいって、何度も言ってるんだがなぁ」
倉科がキャリアと呼び、そして尾崎が下の名前で呼んだ女性の名前は山本縁という。バリバリのキャリア組であり、研修という名目で倉科の下についている女刑事である。基本的に入ったばかりの女性は内勤に就くのだが、キャリアのプライドがあるのか、やたらと現場に出張たがる。それだけならば、仕事に対して積極的ということで済まされるかもしれないが、彼女には刑事として大きな欠点があった。さっさと現場を離れて上に行って欲しいと倉科が願うほどの欠点が。
「尾崎、やっぱりもっと飛ばせ。放っておくと、あいつのゲロで現場が汚されるぞ!」
倉科は溜め息混じりに無茶な注文を尾崎につけた。ついさっき、これが限界であると尾崎が訴えたばかりなのであるが、状況が変わった。
「縁、死体とか血を直視できねぇっすからねぇ。仕方がねぇっす。なんかあったら倉科警部が責任を取るっすよ!」
彼女といい尾崎といい、どうして自分はこうも部下に恵まれないのだろうか――。溜め息を漏らした倉科の隣で、ただでさえアクセルをベタベタに踏んでいた尾崎が、力任せにアクセルを踏み込んだ。
周囲の景色が瞬く間に通り過ぎて行く。挙げ句の果てに、左折する際にドリフト走行ときたものだ。スピードを出せとは言ったが、そんな曲芸まがいのことをしろと言った覚えはない。
「おい尾崎! 曲がる時くらいはもう少し慎重に運転を――」
「警部殿が責任を取ってくれるから心配いらねぇっすよ!」
その警部殿とは自分のことなのであるが……。しかし、焚き付けたのは自分であるから、今は尾崎がどこかにパトカーをぶつけたりしないことを祈るのみだ。
肝を冷やすドライブは、しかし何事もなく現場である川沿いの土手へと到着。生きた心地がしなかったものの、尾崎の絶妙なドライビングテクニックのおかげで事なきを得た。先に到着していたパトカーとパトカーの間に、半回転スピンをしながら縦列駐車をした時には、思わず尾崎にげんこつをくれてやったが。
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