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事例2 美食家の悪食【エピローグ】
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坂田は自分の家族を奪った仇である。本人はきっと覚えてもいないだろうが、それは紛れもない事実だ。表面上は0.5係として、坂田と共に事件に挑む姿勢は見せているものの、彼はいずれ復讐すべき相手。それを決して忘れてはならない――。自分に言い聞かせる。
「おはようっす……」
気だるそうな表情を浮かべながら尾崎がご出勤。自分の中に隠れている黒い部分を慌てて隠し、縁は「おはようございます」と、取り繕いながら挨拶をする。尾崎もデスクに着席するが、その途端に大きく溜め息を漏らした。
「あー、今日もきっと、何もせずに一日が終わるっすよ」
この地下空間という独特な環境と、ここしばらく何もせずに毎日缶詰状態になっていることが、尾崎にとって相当堪えているようだ。仕事をせずに給与が貰える――なんて言うと聞こえはいいのだが、こんな息苦しい地下に一日中閉じ込められ、特にやることもなく過ごすというのは苦痛である。一日や二日ならばいいのだろうが、もうこんな状態がしばらく続いていた。
尾崎が席についてしばらくすると、無機質なチャイムが流れる。これはアンダープリズン全体の始業点検の合図だ。歓楽街の地下で、それこそ存在そのものが機密であるのに、チャイムを垂れ流すのはいかがなものか。中嶋の話だと、無駄に防音だけはしっかりしているとのこと。他に力を入れる部分があったのではないかと思うのは縁だけなのであろうか。
とにもかくにも、縁と尾崎の一日は、この始業点検のチャイムから始まる。24時間体制であろう刑務官達にとっては、始業点検というよりは交代のタイミングと言ったほうがいいのかもしれない。
またしても無為な時間を過ごさねばならないのか――。先の長い一日のことを考えると溜め息が出たが、今日はどうやら救世主が現れる日だったらしい。チャイムが鳴ってしばらくすると、恐らく0.5係の実態を把握していないであろう倉科が、表向きだけは【捜査一課対凶悪異常犯罪交渉係】なんて立派な名前がつけられた、単なるコンクリートで固められた小部屋に入ってきた。
「――ここの居心地はどうだ? まだ慣れてないだろうから、何とも言えないだろうが」
倉科にとっては挨拶のようなものなのかもしれないが、今の縁と尾崎に対しては、完全なる地雷である。
「最悪っす。ここにいると頭がおかしくなりそうっすよ」
ここで遠慮せずに思っていることをぶちまけることができるのは、尾崎の強みであると言えよう。あまりにもストレートな言葉に、倉科も苦笑いを浮かべる。
「おはようっす……」
気だるそうな表情を浮かべながら尾崎がご出勤。自分の中に隠れている黒い部分を慌てて隠し、縁は「おはようございます」と、取り繕いながら挨拶をする。尾崎もデスクに着席するが、その途端に大きく溜め息を漏らした。
「あー、今日もきっと、何もせずに一日が終わるっすよ」
この地下空間という独特な環境と、ここしばらく何もせずに毎日缶詰状態になっていることが、尾崎にとって相当堪えているようだ。仕事をせずに給与が貰える――なんて言うと聞こえはいいのだが、こんな息苦しい地下に一日中閉じ込められ、特にやることもなく過ごすというのは苦痛である。一日や二日ならばいいのだろうが、もうこんな状態がしばらく続いていた。
尾崎が席についてしばらくすると、無機質なチャイムが流れる。これはアンダープリズン全体の始業点検の合図だ。歓楽街の地下で、それこそ存在そのものが機密であるのに、チャイムを垂れ流すのはいかがなものか。中嶋の話だと、無駄に防音だけはしっかりしているとのこと。他に力を入れる部分があったのではないかと思うのは縁だけなのであろうか。
とにもかくにも、縁と尾崎の一日は、この始業点検のチャイムから始まる。24時間体制であろう刑務官達にとっては、始業点検というよりは交代のタイミングと言ったほうがいいのかもしれない。
またしても無為な時間を過ごさねばならないのか――。先の長い一日のことを考えると溜め息が出たが、今日はどうやら救世主が現れる日だったらしい。チャイムが鳴ってしばらくすると、恐らく0.5係の実態を把握していないであろう倉科が、表向きだけは【捜査一課対凶悪異常犯罪交渉係】なんて立派な名前がつけられた、単なるコンクリートで固められた小部屋に入ってきた。
「――ここの居心地はどうだ? まだ慣れてないだろうから、何とも言えないだろうが」
倉科にとっては挨拶のようなものなのかもしれないが、今の縁と尾崎に対しては、完全なる地雷である。
「最悪っす。ここにいると頭がおかしくなりそうっすよ」
ここで遠慮せずに思っていることをぶちまけることができるのは、尾崎の強みであると言えよう。あまりにもストレートな言葉に、倉科も苦笑いを浮かべる。
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